「自己研鑽」とは?効果的な方法や具体例、自己啓発との違いを解説

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ビジネスパーソンとして成長し続けるには自己研鑽が大事などと言われることから、自己研鑽に興味を持ち、自身でもやってみようと思っている方もいらっしゃることでしょう。この記事では、自己研鑽の意味や、自己啓発や自己実現との違い、そして自己研鑽をするメリットや具体的な方法などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

「自己研鑽」とは?

まずは自己研鑽という言葉の意味、そして似たような使われ方をする言葉との違いについて解説します。

「自己研鑽」の言葉の意味

自己研鑽とは一般的に、自分自身のことを指す「自己」と、磨き深めるという意味の「研鑽」を合わせた言葉で、自分自身を鍛えることで学問などに磨きをかけることを指します。ビジネスにおいては、仕事を充実させ高い成果を上げるために、スキルや知識の向上を目指す取り組みのことを指します。主体的、かつ継続的に自己研鑽に取り組むことで、ビジネスパーソンとして成長することができます。

「自己啓発」や「自己実現」との違い

自己研鑽と似たような言葉に、「自己啓発」「自己実現」がありますが、いずれも意味合いがやや異なります。

「自己啓発」とは、周りから指示されるのではなく自分の意志で、知識や能力向上のために行動すること。「啓発」という言葉は人を教え導くことを指すため、自己啓発とはスキルや知識よりも、主に自分自身の精神的な成長を目指す際などに使われます。

「自己実現」は、自分の夢を叶えるために自分を成長させるという意味合いで使われることが多いですが、心理学者であり「欲求5段階説」で有名なマズローの定義によると、「偽りのない自分の姿で好きなことをして、それが社会貢献につながる状態」であるとされています。すなわち自己実現とは、人生の目標を定め、それを実現することで社会貢献を目指すという取り組み全般を指します。

ビジネスパーソンが「自己研鑽」を行うメリット

ビジネスパーソンが自己研鑽に取り組むと、仕事においてどのようなメリットが得られるのか解説します。

専門的な知識が増えることで経験値が上がる

自己研鑽し続けることで、スキルアップとステップアップの実現につながると期待されます。
自身の仕事に関する知識を習得すれば、それを武器に仕事で力を発揮しやすくなります。力を発揮した結果、成果を上げることができれば、より難易度の高い仕事、より責任ある仕事など、今よりも「面白みのある仕事」が回ってくるようにもなるでしょう。それにより経験値が上がり、ビジネスパーソンとしてのステップアップにもつながると考えられます。

視野が広がる

自己研鑽により視野が広がることも、メリットと言えるでしょう。
株式会社リクルートが2022年に行った「社会人の学びに関する意識・実態把握調査(※1)」によると、自己研鑽の1つとして「大学・大学院」へ進学をした人の65.1%が、進学後の変化について「自身にポジティブな変化があった」と回答し、その変化の内容として「視野が広がった」「専門性が深くなった」「自信が持てるようになった」がトップ3に上がっています。

この調査結果は、「自己研鑽のために大学・大学院に進学した人」のものであり、あくまで一例ではありますが、自己研鑽によって知識が増えると視野が広がり、これまでとは違った視点で物事が考えられるようになると予想されます。その結果、クリエイティブな発想ができるようになったり、今まで見逃していた課題に気づけるようになったりという効果も期待できます。

出典(※1):「社会人の学びに関する意識・実態把握調査」

ビジネスパーソンとしてのスキルと市場価値が上がる

前述の調査によると、自己研鑽のために「大学・大学院」への進学をした人の23%が「年収が増えた」と回答しており、その額は平均85万円となっています。「ポジティブな変化」として「転職できた」「昇進・昇格」を上げる人もいます。
自己研鑽による専門性の向上や視野の拡大、資格取得などを通じて市場価値が上がり、結果として希望の転職が実現できたり、現職で昇進・昇格ができたりしたことで、年収増加につながったのではないかと考えられます。

スキルアップを目指して自己研鑽に取り組み続けてきた姿勢も、転職市場ではプラスの評価につながります。豊富な知識が仕事に活かせるのはもちろん、新しい仕事に対しても真摯に取り組み早期にキャッチアップしてくれるだろうと、ポジティブに受け止められる可能性が高いでしょう。

「自己研鑽」の方法とポイント

自己研鑽の具体的な方法とそのポイントについて、以下に整理します。

Step1:目的を明確にして、今の自分に必要な知識やスキルを洗い出す

まずは何のために自己研鑽を行うのか、目的を明らかにしましょう。
今の仕事にはどのようなスキルが必要なのか、足りない知識やスキルは何なのか、どの分野を強化したいのか、じっくり考えてみましょう。自分ではなかなかピンと来ない場合は、上司や同僚など、自分の普段の仕事や働きぶりを知っている人に聞いてみるのも一つの方法です。

Step2:目的に合わせて方法を考える

自己研鑽は、大学院や通信制大学のような高等教育機関での学習以外に、スクールやセミナー、書籍やアプリによる独学などさまざまな方法があります。何を学び、強化するのか明らかにしたら、その目的に合わせて自己研鑽の方法を考えましょう。具体的な方法については、下記で改めて説明します。

Step3:目標を立ててスケジューリングする

自己研鑽の目的と方法が決まったら、「いつまでに○○する」と目標を立て、目標達成のための手順を洗い出しスケジューリングしましょう。
長期的な計画になると、モチベーションの維持が難しくなるので、目標を細分化して小さな目標をいくつか設定しておくと、達成感が得やすく継続しやすくなります。

Step4:習得したことを実践して振り返る

自己研鑽で得た知識は、インプットのまま終わらせるのではなく実践することでこそ自身に装着することができます。現在の仕事の中で活かしたり、新たな知識が活かせそうな業務に手を上げてみたりして、どんどん実践していきましょう。実践すればそこから学びが得られ、「今度はこうしてみよう」と工夫を凝らすことができます。もし失敗したとしても、なぜそうなったのか振り返って原因を洗い出し、対策することでブラッシュアップが可能。上司など第三者からフィードバックをもらい、PDCAを回すのも有効です。

「自己研鑽」の具体的な方法

前述のとおり、自己研鑽はさまざまな方法があります。たとえば、「業務に役立つ資格を取得する」のであれば、資格のスクールに通ったり、参考書やアプリ、オンライン動画などを活用しながら独学したりする方法が考えられます。

「マーケティングについて学びたい」「統計学の知識を得たい」「ロジカルシンキングを身につけたい」など、特定のビジネススキルの修得を目指すのであれば、上記に上げた独学のほか、社会人でも通いやすい大学院や通信制大学などで学ぶ方法もあります。期間が比較的短めで、学びたいテーマだけを学べる「科目等履修制度」や「履修証明プログラム」などをうまく活用するといいでしょう。

仕事に関する知識を増やしたい、有益な情報を収集して視野を広げたいという目的であれば、有志を集めて勉強会を催したりセミナーに参加したり、ほしい情報が多く載っている書籍や新聞・雑誌、情報サイトなどから情報収集したりする方法も考えられます。社内に目標となるロールモデルがいれば、その人にどのように自己研鑽しているのか、具体的な方法を聞いてみるのもいいでしょう。

「自己研鑽」を継続するためには?

自己研鑽は一時的なものではなく、継続して行うことでスキルや知識を習得でき、ビジネスパーソンとしての成長につながります。モチベーションが続くかどうか心配という人は、前述した「小さな目標を立て、それをクリアし続けることでやる気を鼓舞する」ほか、以下のような方法を試してみるといいでしょう。

一人で取り組むのではなく周りを巻き込む

一人で取り組むとモチベーションの維持が大変ですが、周りを巻き込めば互いに支え合いながら学び続けることができます。周りの頑張りに刺激を受け、奮起もできるでしょう。
たとえば、同じ部署の仲間や仲の良い同期などに、「○○について勉強したいと思っているんだけど、一緒にやらないか」と声をかけ、勉強会などを催したり、意見交換をしたりするのは一つの方法です。

資格スクールや大学院を選ぶのも、モチベーション維持には有効。教員や学生仲間からフィードバックを受けたり、意見交換や議論の機会が得られたりするので、学びが継続しやすくなります。

得た知識を積極的にアウトプットする

自己研鑽で得られた知識は、積極的に周りにアウトプットすることをお勧めします。チーム内で共有したり、勉強会を主催したりすることで周りにアウトプットすれば、周りのポジティブな反応がモチベーションになり、自己研鑽への意欲も高まると思われます。有益なフィードバックが得られれば、さらに高い目標に向かう原動力にもなるでしょう。

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組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。