「ディレクション」とは?意味や仕事内容、必要とされる業界などを解説

ミーティングの風景

ビジネスの場で耳にする「ディレクション」という言葉。どのような仕事のことを指す言葉なのでしょうか?その意味や具体的な仕事内容、ディレクション業務を必要とする業界などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

「ディレクション」とは

ディレクションとは、ビジネスの場においては、プロジェクトの完遂や制作物の完成に向けて、品質を適切に管理しながらゴールに導くことや、その仕事をいいます。

「ディレクション」という呼称は、英語の「方向」「管理」「指示」「指揮」などを意味する「direction」に由来します。

具体的な業務としては、プロジェクトや制作物の企画立案やコンセプト決め、進捗管理、社内外のメンバー・スタッフへの指示出し、クライアントとの交渉やヒアリング、進行上生じたトラブルへの対応などがあります。ただし、これらのうち、ディレクションを担う人がどこまでを担当するかは、業種やプロジェクト・制作物により異なります。

また、これらのディレクション業務を担う人・職種は、「ディレクター」と呼ばれているケースが多く見られます。

「ディレクション」と「マネジメント」「プロデュース」との違い

「マネジメント」や「プロデュース」と呼ばれる仕事も、ディレクションと似ているように見えることがあるかもしれません。それぞれの違いは次のとおりです。

マネジメントとの違い

マネジメントとは、ビジネスの場においては、企業や部門の目標達成に向けて、事業や組織全体を管理すること、またその業務をいいます。

経営資源を効率的に活用し、リスクを適切に管理しながら経営上の効果を最適化することがマネジメントであるのに対し、ディレクションは、特定のプロジェクトや制作物の進行、携わるスタッフを指揮・管理するという違いがあります。

プロデュースとの違い

プロデュースとは、事業やプロジェクト、テレビ番組や雑誌、動画をはじめとするコンテンツなどを企画・制作することと一般には言われており、この役割を担当する人・職種は「プロデューサー」と呼ばれています。

プロデューサーは、プロジェクトやコンテンツ制作の総責任者として、予算管理や資金調達、人員管理などを行います。担当プロジェクト・事業の成功まで責任を負う場合は、営業や広報活動も担うケースもあります。

ディレクターの業務と似ているところがありますが、多くの場合、プロデューサーはプロジェクトや制作全体を統括し、その下で、ディレクターが現場責任者として進捗管理や社内外のメンバー・スタッフへの指示出しを行い、求められている品質で成果を出すという関係が作られています。

ただし、業種や企業、プロジェクトによっては、プロデューサーとディレクターの担当業務が重複している場合もあります。また、映像制作、出版、広告など、クリエイティブ系の業種においては、プロデューサーやディレクターがマネジメント職を兼務していることもあります。

ディレクション業務が必要とされる業界

ディレクション業務を担う人が働く業界には、Web、広告、ゲーム、映像制作、音楽などの業界があり、ディレクターはそれぞれ次の役割を担っています。

Web業界

Web業界において、ディレクション業務を担う人は「Webディレクター」と呼ばれています。その役割は、Webサイトの企画立案から制作、公開後の運用(アクセス解析に基づく改善など)に至るプロセスにおいて、マーケターやリサーチャー、プログラマー、Webデザイナー、SEO担当など、Webサイトの構築に関わる多様なスタッフを指揮し、プロジェクトを完遂させることにあります。

プロジェクトや制作規模に応じて、複数人でディレクションにあたることもあります。逆に1人のWebディレクターが同時に複数の案件の制作を指揮するケースも多くあります。

広告業界

広告業界においては、CMなどの映像、新聞広告・ポスターなどの印刷物、Webサイト、イベントなどの制作物ごと、また、クライアントの案件ごとに制作スタッフをまとめ、指揮するディレクターがいます。指揮・管理する範囲・分野に応じて、「クリエイティブディレクター」「アートディレクター」「CM(映像)ディレクター」「テクニカルディレクター」「CGディレクター」「イベントディレクター」「空間ディレクター」などの呼称があります。

ゲーム業界

ゲーム業界においては、ゲームの開発・制作を指揮・管理する「ゲームディレクター」と呼ばれる職種があります。ゲームプロデューサーやゲームプランナーと連携して企画立案から携わり、制作においては、プログラマーや2D/3Dデザイナー、サウンドクリエイター、デバッガーなどを指揮・管理してゲームの完成・リリースまで導きます。

番組・映像制作(テレビ、映画など)、音楽

テレビ番組の製作や映画などの映像制作においては、ディレクターはスタッフをまとめ、目指す質や内容の番組・作品・映像づくりを指揮・管理する役割を担います。現場によっては、役に適した俳優のキャスティングを専門に担当するキャスティングディレクターがいるなど、役割が細分化されていることもあります。

また、音楽制作においても、ディレクション業務があります。アーティストの楽曲の企画からリリース、プロモーションまでを計画どおり進められるよう管理する役割や、楽曲制作に関わる各スタッフ(作曲家、作詞家、アレンジャー、サウンドクリエイター、レコーディングエンジニアなど)を指揮し、楽曲を完成させる役割を担います。後者を担う人は「レコーディングディレクター」と呼ばれているケースもあります。

アパレル

アパレル業界においては、特定のブランドの企画からアパレルデザイン、店舗デザイン、広告・マーケティング、生産管理までを指揮・管理する「ブランドディレクター」「クリエイティブディレクター」という仕事などがあります。

出版

出版業界においても、編集者をディレクターと呼んでいるケースがあります。

ディレクションの仕事に求められるスキル

ディレクション業務を行う人には、担当するプロジェクトや制作物、領域に関する一定程度の知識や専門性に加え、次のスキルを備えていることが期待されます。

プロジェクトマネジメントスキル

プロジェクトや制作を、求められている品質で期日までに完遂するには、タスクやスケジュール、人員、コスト、品質、リスク、スタッフのモチベーションなどを適切にマネジメントすることが求められます。

コミュニケーションスキル

プロジェクトや制作には、クライアントからスタッフまで、社内外の多様な人が関わっています。多様な関係者と関係性を構築し、円滑にプロジェクトや制作を進めていくコミュニケーションスキルは必須でしょう。

論理的思考力

市場や課題を分析し、解決策となる企画を立案すること、また、スタッフに対して納得感のある指示を出すこと、トラブル発生時に適切に対処することなどには、論理的思考が必須です。

リーダーシップ

多様なスタッフをまとめ、求められている品質のものをつくり上げるには、ゴールを示し、メンバーを統率する、また、成果に責任を持つといったリーダーシップも必要です。

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組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。