仕事がうまくいかなかったり、面白くないと感じたりしたとき、「この仕事は自分に向いていないのではないか」と考える方は少なくないようです。「仕事が向いていない」と感じやすいタイミング、仕事が向いていないと感じたときの対処法、退職するかどうかの判断軸、向いている仕事を選ぶための転職活動のポイントなどについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
「仕事が向いていない」と感じるタイミングとは?
そもそもどのようなタイミングで「この仕事には向いていない」と感じるのでしょうか。原因は人それぞれなので、自分自身の状況を見つめ直してみましょう。
転職や異動など仕事が変わったとき
転職や異動などによって仕事が変わった直後は、「自分にこの仕事は向いていない」と感じるケースがあります。しかし、本当に向いていないわけではなく、すでに慣れてうまくできるようになった前の仕事と比較するとスムーズに進まないこと、これまでのやり方が通用しないことなどから、そのように感じてしまう可能性もあります。あるいは、入社前に抱いていたイメージと現実の仕事とのギャップを「自分に合わない、向いていない」と感じている可能性もあります。
成果がなかなか出ないとき
自分なりに努力しているつもりでも、なかなか成果が出ない状況が続くと、「自分にはこの仕事の能力がない」=「向いていない」と考えがちです。特に成果を挙げている人と自分を比較したとき、「向き不向きの違いだ」と捉えようとすることもあるかもしれません。
面白さ・モチベーションを感じないとき
それなりに成果が挙がっていたとしても、仕事をしていて面白さや楽しさを感じない、モチベーションが上がらないといった場合は、「自分の志向に合わない」=「向いていないから」と考えることもあるでしょう。
また、面白さを感じられない要因の一つに「成長している手応えがない」というものもあります。自己成長を感じられないと、「上達しない」=「向いていない」と判断するかもしれません。
仕事が向いていないと感じたときの対処法
仕事が向いていないと感じたときは、次のようなアクションを起こしてみてください。
上司や先輩・同僚に相談する
仕事が合わないと感じていることを、上司や先輩、同僚などに話してみましょう。自分では向いていないと思っていても、第三者の視点では「このような場面で強みを発揮している」などと思われている可能性もあります。
あるいは、同じ業務であっても「向いていないやり方」から「向いているやり方」に変えることで成果が出やすくなることもあります。仕事のやり方についてアドバイスを求めるという方法もあります。「面白くない」「モチベーションが上がらない」と感じている場合、同じ仕事を楽しそうにしている同僚に「この仕事のどこにやりがいを感じているか、面白いと思うか」を聞いてみてもいいでしょう。新たな視点に気づくこともあります。
強み・弱みを洗い出し対策を練る
自身の「強み」「弱み」を明確に認識することで、今の仕事に合っている部分・合っていない部分を洗い出せるでしょう。強みを活かせる業務を中心的に担っていくことで、「自分に合う」という手応えを得られるかもしれません。また、弱みを自覚することで、「その部分はチームメンバーに任せる」「その知識・スキルを学んで補強する」といった対策を取ることができます。
向いている仕事を探し、手を挙げる
より自分に向いている仕事を求め、「異動」「出向」などのチャンスを探る方法もあります。「社内公募制度」などがあれば手を挙げてみもいいでしょう。
異動まではかなわなくても、自分が興味を持てるプロジェクトにアサインしてもらえるよう、上司に相談するという方法もあります。社内で他の仕事を経験することが難しければ、「副業」でチャレンジしてもいいでしょう。
転職を検討する
仕事が向いていないと感じた場合の対処法として、転職を検討することも一案です。転職を決意していなくても、転職活動を通じてさまざまな求人を見てみることで視野が広がります。転職活動では、スカウトサービスに登録しておくと、思いがけない企業からスカウトの声がかかることもあります。「このような業種・職種があるのか」と、興味を持てる仕事、自分の強みを活かせそうな仕事に出会えるかもしれません。
転職エージェントに相談して自身の強み・志向の分析を手伝ってもらい、マッチする求人の紹介を受けてもいいでしょう。
退職・退職するかどうかを見極めるポイント
「今の仕事が向いていないからといって、辞めてもいいものだろうか」と迷った場合、次のようなポイントを検討したうえで判断しましょう。
担当変更や異動が難しい
社内での担当変更や異動・出向などの道を探ってみましょう。さらに選択肢を広げる手段の一つとして、転職も並行して検討ことも有効です。
強いストレスを感じている
自分が向いていないと自覚している仕事を我慢して続けることで、ストレスが溜まり心身に不調をきたすようであれば、転職によって解消を図るのも一つの方法です。
社風や経営に原因がある
「社風」や「経営理念・方針」が合っていないことで「向いていない」と感じているのであれば、部署や担当業務などが変わったとしても、志向性や価値観のギャップを解消することは難しいかもしれません。カルチャーがマッチしていて、経営理念・方針に共感できる企業に移ることで、モチベーション高く取り組めるようになる可能性があります。
改善を試みても変化がない
上司・先輩・同僚などに相談してアドバイスを受けたり、仕事のやり方を工夫したりしてみても「仕事が向いていない」と感じる気持ちに改善が見られないのであれば、新たな仕事・環境に移ることで活躍できるようになるかもしれません。
仕事が向いていないと感じた場合の転職活動のポイント
「自分に向いている仕事」を求めて転職活動をする場合、次のポイントを意識してみてください。
「やりたい仕事」と「向いている仕事」は異なることを理解する
前提として、「やりたい」と「向いている」は異なる可能性があることを理解しておきましょう。「面白そう」「興味をそそられる」など「この仕事をやりたい」と思っても、その仕事に必要なスキルや資質を持っていなければ成果を出せない可能性があります。結果、「自分に向いていない」という振り出しに戻ってしまうかもしれません。
「自分の強みをどのように活かすか」という観点で仕事を探すと、「向いている仕事」を見つけやすいでしょう。
キャリアの棚卸し・自己分析を行う
上記のとおり、向いている仕事を選ぶためには、自分の強みを認識することが大切です。そのため「キャリアの棚卸し」「自己分析」を行いましょう。
<強みの整理法>
1)経験や実績、習得した能力やスキルを書き出す
2)自分の成功パターンを分析する
3)自分の強みと、これから伸ばしたい点を書き出す
4)自分を表す「キーワード」を抽出する
自分の強みを認識するためには、「成果・実績を出せた要因を探る」「他者から褒められたことを振り返る」という方法も有効です。周囲の人に「自分はどのようなときにイキイキしているか」「楽しそうにしているか」などと聞いてみるのもいいでしょう。
仕事研究・業界分析を行う
自分に向いている仕事は、自分が知らない分野にあるかもしれません。さまざまな業界に目を向け、マーケットの状況や将来展望を研究するほか、どのような仕事があるかを調べてみましょう。
なお、「自分は○○職に向いていない」と、他職種へのキャリアチェンジを目指すケースもあります。しかし、同じ職種でも、業種・企業によって役割や活動は大きく異なります。例えば、「もう営業はしたくない」と考えて転職活動を始めた人が、自身の志向タイプに合う営業職を発見し、転職して成果を挙げているケースもあります。職種への固定観念を捨て、さまざまな角度から仕事を研究してみましょう。
粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。