転職活動の応募数は何社必要?内定獲得を目指す応募のコツ

転職 応募数

転職活動を始める際に「何社くらい応募したら良いのだろうか」「応募数は多い方が良いのか、絞った方が良いのか」などが気になる方は少なくないようです。結論から言うと、転職活動の応募数は人によって大きく異なり、正解はないと言えるでしょう。

今回はリクルートエージェントの過去のデータから、平均的な応募数の傾向をご紹介します。さらに、希望の転職を実現するための応募の仕方や、転職活動の進め方のコツを、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。

データから見る、転職経験者の応募数

転職活動の際に、何社くらいに応募するかは、転職市場の状況や、個人の経験・スキル、希望条件によって異なります。ここでは、リクルートエージェントを利用して、転職先が決まった転職者のデータをご紹介しましょう(※1)。

(※1)出典:リクルートエージェント 転職データライブラリ「転職者の応募数」https://www.r-agent.com/data/market/application/

転職者の3割以上が11~30件に応募している

以下は、2023年7月~12月にリクルートエージェントを通じて転職活動を行い、転職を実現した人の応募数の分布です。これによると、11~30件が35.4%で最も多く、次いで10件以下が19.2%、31~50件が18.6%、91件以上が11.5%、 51~70件が9.7%となっています。転職者によって件数は大きく異なりますが、全体の8割を超える人が11件以上に応募していることが分かります。

転職者応募数 分布

職種別の応募数

リクルートエージェントを使って転職先が決まった転職者の応募数を「職種別」に見てみると、30件以下の応募で転職先が決まった転職者の割合が最も多い職種は、営業・販売・カスタマーサービスで48.5%、次いでエンジニア(設計・生産技術・品質管理)の46.7%でした。逆に、30件以下の応募で転職先が決まった転職者の割合が少ないのは、金融専門職の29.1%でした。

職種別 応募数分布

業界別の応募数

リクルートエージェントを使って転職先が決まった転職者の応募数を「業界別」に見てみると、30件以下の応募で転職先が決まった転職者の割合が最も多い業界は、機械・電気業界で43.9%、次いでIT・通信業界の39.5%でした。逆に、30件以下の応募で転職先が決まった転職者の割合が少ないのは、Web・インターネット業界の21.0%でした。

業界別  応募数分布

転職で重要なのは応募数ではなく応募先の選び方

上のデータからも分かるように、転職を実現した人の多くは複数の企業へ応募しています。ただ、転職市場の状況や個々人の経歴、経験・スキル、希望条件、目指すキャリア、転職活動に利用できる時間、応募経路によっても応募数は異なってきます。そのことから、一概に「転職活動の応募数は○件くらいが良い」「多い方が良い」「少なくても大丈夫」などと言うことはできません。

転職活動で応募する企業を決める際は、「何社に応募するか」という数ありきではなく、「何を基準に応募先を選ぶか」の方が重要です。転職活動の目的は内定を得ることではなく、最終的に自分が納得のいく転職をすることだからです。従って、平均的な応募数は参考にとどめ、実際には個々が転職活動を進めながら調整していくことになるでしょう。

過去に転職経験がある場合は、過去の自身の実績を参考に考えてみましょう。転職活動や転職が初めての方の場合は、転職エージェントなどのアドバイスも参考にしながら、自身の市場価値を確認する意味でも、少し広めに応募先を検討することをおすすめします。

応募する企業の選び方のポイント

効率良く転職活動を進めて、納得のいく転職を実現するための求人の選び方・絞り込み方について解説します。

自身の転職の軸を明確にする

転職活動では、「仕事が正当に評価される現場に行きたい」「スキルアップしたい」「ビジョンに共感しながら働きたい」といった、転職の軸を決めることが重要なポイントの一つです。

転職で実現したいことを明確にしておかないと、応募企業を比較検討する中で、外的条件など、本来の目的以外のことに目を奪われやすくなります。その結果、応募先の選択が定まらずに転職活動が長引いたり、入社後の後悔につながりやすくなったりする可能性もあります。まずは、自分が転職に何を求めるかを整理しておきましょう。

希望条件の優先順位を明確にする

明確にした転職の軸をもとに、職務内容やポジション、年収、勤務地などの希望条件を整理してみましょう。それらの優先順位を決めていくことで、応募先を選ぶ際の基準が明確になっていきます。

ただし、全ての希望条件を叶える企業を探そうとすると、選択肢が狭まり、求人が全く見つからないこともあります。希望条件は「絶対に譲れない条件」と「できれば叶えたい条件」に分けて設定し、「絶対に譲れない条件」の数は2、3項目と少なめに抑えることで、優先順位を考えておくと良いでしょう。

求められる人材が自分とマッチしているか考える

転職活動を始める際には「キャリアの棚卸し」を行い、自身が発揮できる強みを客観的に整理した上で、これまでの経験・スキルを活かせる企業に応募しましょう。自身の経験・スキルを整理できないままマッチしていない企業に応募すると、なかなか選考を通過できず、転職活動が長引く要因の一つになることがあります。

「この企業は良さそう」などと、やみくもに手を広げて応募するのではなく、企業がどのような領域を得意とする人材を求め、どのようなレベルの経験・スキルを必要としているかをよく確認することが大切です。

最初から応募企業を絞りすぎない

近年は異業界・異職種から人材を積極的に中途採用する企業が増え、業界・職種を飛び越えたキャリアチェンジ転職も増える傾向にあります。従って、最初から希望業界・職種などを限定せず、幅広い視野を持って、自分の経験・スキルが活かせそうな求人には積極的に応募していくのも一つの方法でしょう。

ただしその場合、面接対策や面接日程の調整に対応できる範囲で、応募数を検討することが大切です。

複数企業に同時に応募することのメリット

上でご紹介したデータから、転職を実現した人の多くが、複数の企業に応募していることが分かりました。さらに、転職活動の期間の目安は一般的に3〜6カ月程度と言われることから、一度に複数の企業に応募し、同時進行で選考を進めるケースが多いと考えられます。

ここでは、転職で複数の企業に応募することの主なメリットをご紹介しましょう。

転職活動をスピーディーに進められる

例えば、「志望度が高い企業の選考に集中したい」などの理由で1社ずつ応募して選考を進めていった場合、不採用になるとまた1からやり直しとなり、転職活動が長期化してしまうこともあります。一度に複数の企業に応募する方が、転職活動をスムーズに進め、早く転職が実現できる可能性が高くなるでしょう。

複数の企業を比較検討できる

上述したように、転職活動の目的は「より自分に合った企業」を見つけて、納得のいく転職を実現することです。その意味で、一度に複数の企業に応募をすることは、転職活動を通じてより多くの企業に出会うことができ、それらを同時に比較検討できるというメリットがあります。

在職中に転職活動をする場合は、面接対策や面接のスケジュール調整が必要になりますが、複数の企業に応募して選考時期を揃えるようにすれば、同じ時期に複数の内定を獲得できる可能性もあります。いくつかの選択肢の中から、仕事内容や条件を比較検討して選ぶことができれば、より納得感の高い転職が実現でき、入社後のモチベーションにもつながるでしょう。

機会を逃さずに応募ができる

転職活動は一期一会。中途採用では、応募があった人から順次選考を進めていくのが一般的なので、興味関心のある求人が出たら、できるだけ早く手を挙げることが大切です。その点、複数応募の体制で転職活動を進めていれば、新たに出た興味のある求人にも、臨機応変に対応することができるでしょう。

また、多くの企業と出会うことにより「自分にとって譲れないこと」や「優先したい希望」などの判断軸がより明確になり、求人を見る際の解像度も上がってきます。その結果、より自分に合った企業に出会える可能性も広がっていくでしょう。

企業選定や日程調整は転職エージェントの支援を受けることもおすすめ

転職活動で複数の企業に並行して応募する場合、企業とのスケジュール調整に手間と時間が取られてしまい、十分に面接対策をするのが難しくなるケースもあります。そうした場合は、転職エージェントの利用を検討してみてはいかがでしょうか。

転職エージェントによっては、求職者の経験・スキル、志向するキャリアや転職希望時期などに応じて、それらにマッチした応募先企業や、適切な応募数、応募の優先順位付けなどのアドバイスを受けることができます。さらに、あらかじめ希望を伝えておけば、応募者に代わって企業との面接日程の調整や、選考のスケジュール交渉のサポートも行ってくれるケースがあるので、安心して転職活動を進めることができます。

スカウトサービスを使った場合も、転職エージェント経由でスカウトを受けると、同様の支援を受けることができます。より納得度の高い転職を実現するために、うまく活用してみてください。

アドバイザー

粟野友樹氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。