
「仕事に疲れた」と感じると、退職や転職を考えるようになるかもしれません。仕事に疲れを感じる原因はさまざまです。退職や転職を検討する前に、まず自身がなぜ疲れているかを認識し、疲れを解消できる方法を探ってみましょう。この記事では、疲れの原因、対処法、疲れたときの考え方、退職するかどうかの判断ポイント、退職する場合の注意点などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
仕事に疲れる主な原因
まずは、自身が仕事に疲れている原因を明らかにしましょう。問題点を認識すれば、具体的な解消法を検討しやすくなります。以下に仕事に疲れる原因としてよく見られるものをご紹介するので、参考にしてください。
労働時間が長い
残業や休日出勤など、長時間労働によって身体的な疲労が蓄積しているケースです。また、リフレッシュの時間を持てないこと、プライベートの時間を充実させられないことから、精神的にも疲れているのかもしれません。
人間関係が悪い
上司・同僚・部下など職場のメンバーとの人間関係がうまくいっていない場合、コミュニケーションでの気苦労が多く、精神的な疲れを感じやすいといえます。
職場になじめない
異動・転職などで仕事内容や職場環境が変わって間もない時期は特に、仕事の進め方や組織独自のカルチャーになじめず、精神的に疲れることもあるようです。職場の人々と考え方や価値観が合わず、組織の目標やビジョンに共感できなければ、さらにストレスを感じやすいといえます。
仕事が合っていない
「興味を持てない」「自身の能力を活かせない」など、仕事内容に対して違和感を抱いていると疲労感が高まるでしょう。仕事そのものは向いていたとしても、やり方が合っていなければ、やはり疲れを感じやすくなります。
プレッシャーが大きい
責任ある役割や重要なプロジェクトなどを任されている場合、「失敗できない」「期待に応えなければならない」と常に気を張り詰めているでしょう。やりがいは感じていても、プレッシャーが大きいと精神的疲労につながることもあります。
自分で気付かない疲れもある
実はひどく疲れているのに、自覚症状がなかったり軽く考えたりしていて、知らず知らずのうちに状況が悪化してしまうこともあるようです。ちょっとした自身の変化に敏感になり、軽いうちに解消を図ることも大切です。
仕事で疲れた自分の状態をストレスチェックで把握しよう
自身の疲れの原因やレベルを理解するために、ストレス診断ツールを活用しても良いでしょう。
厚生労働省が提供している「5分でできる職場のストレスセルフチェック」では、4つのステップで57問の質問に答えることで職場におけるストレスレベルを測定することが可能です。5分ほどでできますので、試してみてはいかがでしょうか。
出典:厚生労働省ホームページ こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「5分でできる職場のストレスセルフチェック」
仕事に疲れたと感じた場合の対処法
仕事に疲れたと感じたら、自身の状況に適した方法で改善を図りましょう。対処法の一例をご紹介します。
リフレッシュ期間を設ける
疲れたときは、やはり休息することが大切です。有給休暇を取得するほか、社内の休暇制度を活用しましょう。そして休みの日には仕事のことを一切考えないことが大切です。趣味に集中する、旅行に出かける、身体を動かすなど、自身にとって心地良い方法でリフレッシュしましょう。
生活習慣を見直す
疲れの解消には、十分な睡眠をとることが重要です。動画・SNS・ゲームなどでつい夜更かしをしてしまっていることもあるかもしれません。良質な睡眠のためには、適度な運動や入浴なども効果的と言われています。睡眠の時間・質の改善を図りましょう。
上司や周囲に相談する
自分1人で大量の仕事や課題を抱え込んでいたり、目標の高さや役割の重さにプレッシャーを感じていたりする場合は、上司や周囲に相談しましょう。そのような状況に陥っていることを上司や周囲の人が気付いていないケースも多いものです。アウトプットすることで担当業務量や目標の見直しや、周囲からのサポートを得られるなど、解決につながる可能性があります。
すぐには解決できないとしても、誰かに話を聞いてもらうことで気持ちが楽になり、精神的疲労を軽減できるかもしれません。
考え方や視点を変えてみる
責任感が強い方は、「自分がやらなければならない」と抱え込んでしまいがちです。「役割分担してチームで成果を挙げれば良い」「他のメンバーに任せることで、その人の成長につながる」など、無理のない範囲で発想を変えて負荷の分散を図るのも一つの手です。
また、「この仕事をすることで、このような人に喜ばれる」「このような貢献ができる」、あるいは「自身の経験値が高まり、成長につながる」といったポジティブな面を強く意識すると、徒労感を軽減できるかもしれません。
仕事の進め方を変える
仕事の進め方を変える、あるいはツールなどを活用して工数を削減するといったように、業務の効率化を図ることで時間や手間を省くのも一案です。これまでの慣習で続けていることが、実はそれほど必要ではないこともあるかもしれません。生産性向上のために、業務フローを見直してみましょう。
担当変更・異動願いを出す
「仕事が合わない」「職場になじめない」「人間関係が良くない」といった原因から精神的に疲れている場合は、担当業務や職場環境を変えると良いかもしれません。社内公募制度などを活用する、あるいは上司や人事に相談して他部署への異動や職種転換の可能性を探ってみると良いでしょう。
所属企業の窓口に相談する
上司に相談しづらい悩みである場合、所属企業の窓口に相談してみましょう。労働環境に問題がある場合、パワハラやセクハラを受けた場合、あるいはメンタルヘルスに問題を抱えた場合などに対応するため、人事・法務・コンプライアンスなどの部署が社内相談窓口を設置していることもあります。
専門家に相談する
社内に相談先がない場合、外部の専門機関に頼る方法もあります。厚生労働省が設置している「総合労働相談コーナー」では、職場のトラブルなどを相談することができます。心身の健康に問題を感じたときは、医療機関やカウンセラーに相談しても良いでしょう。
出典:厚生労働省ホームページ こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「相談案内」
転職を検討する
あまりにも疲労感が強く、上記の方法でも問題解決が見込めない場合、転職を検討してみることも一つの方法です。しかし、疲れているときは冷静な思考や判断がしづらくなっていることも考えられるため、注意が必要です。さまざまな側面から、そして中長期的なキャリア構築の視点から、転職するメリット・デメリットを考えましょう。
なお、仕事をしながら転職活動を行うと、休息時間を確保しづらく、身体的に負担がかかる可能性があります。しかし、転職活動を進めるうちにさまざまな選択肢や可能性が見えてくると、気分が楽になり、精神的疲労は緩和されるかもしれません。
仕事に疲れを感じたときの過ごし方
仕事に疲れを感じたときの日常の過ごし方で、意識しておくと良いポイントをお伝えします。自身の状況と照らし合わせ、参考にしてみてください。
無理をしすぎない
日々仕事をこなしていく中で、ときには多少無理してでも頑張らなくてならない局面もあるでしょう。しかし、それを繰り返していると心身に疲れが蓄積してしまいます。優先順位を確認しながら、ときには「ほどほどで良い」「後日に回せば良い」として、無理しすぎないことが大切です。
抱え込まずに相談する
難しい課題に向き合い、自分だけで解決しようとすると、心身に負担がかかり、疲れてしまうかもしれません。1人で抱え込まず、周囲に相談してみましょう。悩みを言語化し、他者と対話することで、別の視点に気付き、原因や解決策が導き出されることもあります。
視野を広くしてみる
自分の問題だけに集中し、視野が狭くなっていることも考えられます。周囲を見渡して「うまくやっている人はどのように動いているのか」を観察してみてはいかがでしょう。疲れの原因となる悩みを解決するヒントを発見できるかもしれません。
また、仕事に対する不満や不安による精神的疲労を防ぐためには、「この会社に居続けなければならないのか」「他の選択肢はないのか」という視点で、社外にアンテナを張っておくと良いでしょう。情報収集によってさまざまな可能性を知ることで、気持ちにゆとりを持てることもあります。
退職するかどうか判断のポイント
仕事をしていて疲労感が強くなると「辞めたい」と思うようになることもあるでしょう。退職に踏み切るかどうかを検討するときの視点、判断のポイントは、以下を参考にしてください。
改善の余地があるか
疲れを感じている原因となっている問題について、改善の余地があるかどうかを考えてみましょう。「この問題は、会社を辞めなければ解決できないのか」を見極めることが大切です。解決策を試みても問題を解消できない場合、転職を具体的に検討してみても良いでしょう。
今の仕事で実現したいことはあるか
例えば「残業が多すぎて疲れたから、残業が少ない会社に移りたい」など、現状の不満を解消することだけを目的に転職先を選ぶと、残業時間の面では満足できても、他の不満が生じるケースがあります。
中長期視点で自身のキャリアを考え、現職だからこそ得られる経験・スキル、現職だからこそ実現できる目標や理想などがあれば、安易に転職に踏み切らない方が良いでしょう。
転職する場合の注意点
仕事に疲れた状態で転職活動を行う場合、次のような傾向があることを意識しておくことが重要です。
- 転職活動は求人情報収集・応募書類作成・面接対策などに負担を感じやすい。
- 面接の場は緊張し、精神的に疲れやすい。
- 選考を通過できないと、徒労感を抱いたり自信を失ったりと、精神的に不安定になりやすい。
- 転職先企業に入社後、働く環境や一緒に働くメンバーが大きく変わると、なじむまでに時間がかかり、疲れやすくなることを考慮しておく。
このように、転職までのプロセスではさらに疲れが増す可能性もあります。休息の時間をしっかりと確保しながらスケジュールをコントロールしましょう。現職に疲れている状態で面接に臨むと、覇気がない印象を持たれてしまう可能性もあるため、体調と精神面を整えることが大切です。
転職をする場合はスカウトサービスを活用する方法も検討を
転職活動を開始するにあたっては、スカウトサービスに登録するのも有効な手段です。自身の経験・スキルが活かせる企業からスカウトの声がかかる、あるいは転職エージェントから自身にマッチする可能性がある求人情報が寄せられるので、求人情報収集にかかる負担が軽減できるでしょう。また、転職エージェントに仕事の不満やキャリアへの不安を相談し、客観的なアドバイスを受けることも一案です。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。