転職先が決まってから退職する場合の進め方【伝え方・手続き方法】

転職する際は、現在の勤務先に退職を告げなければいけませんが、どのように伝えればいいのか悩む方も多いようです。また、すでに転職先が決まっている場合、入社日までにスムーズに退職の手続きを進める必要もあります。そこで、一般的な退職手続きの流れや、転職先が決まってから退職する場合の注意点、上司への伝え方のポイントなどについて詳しく解説します。

【アドバイザー】

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

退職するまでの流れ

転職先が決まってから退職する場合、転職先企業への入社日が確定しているケースが大半です。そのため、在籍企業では退職までの各種手続きをスピーディーに進めていくことが重要となります。退職までの流れをご紹介します。

就業規則を確認し、退職の意思を上司に伝える

会社の「就業規則」には、退職は何カ月前に申し出なければならないかが明記されています。まずは就業規則の確認を。退職の申し出は、法的には退職希望日2週間前までと定められていますが、円満退職のために申し出から退職まで1カ月半~2カ月程度の余裕があるといいでしょう。

退職の意思は、まず直属の上司に伝えます。親しい先輩や同僚には早く伝えたくなるものですが、順序を守らずに退職の意思があることが広まってしまうと、上司の立場や感情を損ねる恐れがあります。円満退職のためには、伝える順番を守ることが大切です。必ず上司から許可を得てから伝えましょう。

退職の手続きをする(退職願・退職届の提出など)

退職を申し出るタイミングで、「退職届」「退職願」の提出についても相談しましょう。上司と退職に関する話し合いを行い、正式に退職日が決定したら退職届を提出します。法的には口頭でも良いとされていますが、会社の規定などに従って書面を作成するのが一般的です。

転職先が決まってから退職する場合の注意点

すでに転職先が決まっている状態で退職する際には、どのような点に気をつければいいのでしょうか。事前に押さえておきたい注意点について詳しく解説します。

転職先への入社日から逆算してスケジュールをしっかり決める

引き継ぎの期間や残っている有給休暇の日数などを確認し、転職先への入社日から逆算する形でしっかりとスケジュールを組むようにしましょう。引継ぎに要する日数、具体的なタスク、後任の条件などを事前にリスト化しておけば、引継ぎに要する期間を短縮でき、よりスムーズな退職につながります。

業務の内容にもよりますが、最終出社日の1カ月前くらいから残務整理や引き継ぎを進めるのが一般的です。後任者がまだ決まっていなくても、マニュアルを作成し、引き継ぐ資料はファイルやデータで保管しておきましょう。

転職先への入社日を優先して進める

入社日までに有給休暇を消化できず、入社日を後ろ倒しにできないか検討する方もいるようです。しかしながら、転職先の企業は入社日に向けて準備を進めているため、予定していた入社日に間に合わないとなれば大きな迷惑をかけることになります。仮に希望通りに入社日を後ろ倒しできたとしても、気まずい思いをしながらの入社スタートとなりますし、最悪の場合、内定取り消しの可能性もあります。退職する企業にも、入社する企業にも、円満な形で進めるようにしましょう。

引き留められないよう注意して伝える

すでに転職先への入社日が決定しているため、退職交渉が長引かないように、強い意思を持って退職の意向を伝えることが重要です。万が一、退職交渉に時間がかかってしまった場合、想定していたスケジュール通りに進まずに引き継ぎや有休消化を短縮するなどして、慌てて退職日を迎えることになるかもしれません。退職日まで予定通り進めるために、退職の申し出は引き留められないように注意して伝えましょう。

退職の伝え方

退職の意思を伝える際は、感謝の意を示すことが大切です。そのうえで、一方的な言い方にならないように注意し、前向きな姿勢で臨みましょう。

上司に時間をもらい、場所を確保する

退職の話は“交渉”ととらえ、冷静に落ち着いて話のできる時間と場所を確保するようにしましょう。面談時間を決め、他の社員がいるような場所ではなく、上司と二人だけで話ができて話し声のもれない会議室などを準備しましょう。所属企業がオンライン会議を実施しているのであれば、オンラインで面談する時間を設けてもいいでしょう。

上司に時間をもらう際には、「お話ししたいことがあるので、ご都合のよい時に少しお時間をいただけませんか」と、相手の都合を確認する内容にとどめておきます。退職についてはメールではなく、対面で理由とともに伝えた方がスムーズだからです。

退職の伝え方のポイント

はっきり意思表示する

退職交渉を行うときは、明確な退職の意思があることを示すことが重要です。そのため、希望する退職日と最終出社日をあらかじめ決めておくのがよいでしょう。具体的な日にちを決めずにあいまいな状態で交渉に臨むと、上司も組織長や人事などに具体的な話を伝えることができず、スケジュール調整や後任の手配をすることもできません。また、思いがけない引き留めや条件提示などを受け、退職までに時間がかかってしまうことも考えられます。

不平不満は避ける

退職を決めた理由に「会社に対する不満」を挙げると、円滑な退職を妨げるかもしれません。「条件の見直し」や「待遇改善」などを交渉材料に、引き留めを受ける可能性が高まるからです。現職への不満が退職の理由だったとしても、すでに転職先が決まっており退職の意思が固いのであれば、直接伝えずに前向きな理由に言い換えた方が抵抗が少ないでしょう。

転職先でしか実現できない退職理由にする

転職理由は、「業界を変えて知識を広げたい」「少人数のスタートアップで経営体験を身につけたい」など、現在の職場では叶えられない内容にしましょう。引き留めたいと考えていたとしても交渉材料がなく、退職を了承せざるを得ないからです。また、信頼関係が構築できている上司であれば、新たな旅立ちを応援してもらえる可能性もあるでしょう。

【職種別】退職の伝え方例文

退職を切り出す際の伝え方の例文をご紹介します。

営業の例文

「SMB(Small and Medium Business=中小企業)の経営者に対して提案を行うことで、営業として成長させていただきました。今後は、エンタープライズ(大手企業)を対象に、ソリューション営業の経験を積んでいきたいと考えています」

企画の例文

「大規模な事業で企画に携わり、大きなビジネスインパクトを与える経験を積ませていただきました。これからは、ある程度完成された事業や業務の改善を行うだけではなく、新しい事業づくりをイチから育ててみたくなりました。できれば規模の小さい企業で、事業の仕組みを構築するところから経験したいと考えています」

総務の例文

「これまで総務や人事・労務と、幅広い職種の経験を積ませていただき、会社というものを多角的に見る視点を養うことができました。幅広い職種を経験させていただいた結果、今後は人事としての専門性を高めるキャリアを歩みたいと考えています」

会社に返却するものと受け取るもの

退職時には、業務で使用していた書類やデータ、会社から付与・支給・貸与されていた物などを返却します。健康保険の被保険者証のほか、名刺や制服、携帯電話など、さまざまなものが考えられますので、退職日までに忘れないようにチェックしておきましょう。

退職時に会社に返却するもの

  • 健康保険被保険者証
  • 身分証明書、社員証、名刺など
  • パソコン、携帯電話、文房具、鍵など
  • 業務で作成・入手した書類、データ、顧客リスト、顧客の名刺など

退職時や退職後に受け取る書類は、以下の通りです。転職先の企業から提出を求められたり、雇用保険の手続きに必要となったりすることもあるので、必ず受け取るようにしてください。

退職時に会社から受け取るもの

  • 雇用保険被保険者証……新たな会社で雇用保険の加入手続きを行うために必要です。会社に預けていた場合は受け取ります。
  • 源泉徴収票……所得税の年末調整に必要となります。
  • 年金手帳……会社が保管している場合は受け取り、転職先に提出します。

場合によっては退職後に使用するため受け取っておくもの

  • 離職票……退職を証明する書類で、失業給付の手続きを行う際に必要となります。転職先が決まっている場合は不要です。
  • 退職証明書……会社を退職していることを証明する書類です。転職先の企業に入社するまでにブランクがある場合などに必要となります。

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