転職する際に必要な書類とは?退職〜入社時の提出書類について解説【社労士監修】

書類を書く人

転職する際には、退職時・入社時にさまざまな書類を交わし、手続きを行う必要があります。そのため、必要な書類を把握し、事前に準備しておくことが大事です。退職から入社までに行う手続きや必要な書類、必要な書類が揃わない場合の対処法などについて、社会保険労務士の岡佳伸氏が解説します。

転職で必要な書類のチェックリスト

転職で必要な書類には、現職企業に返却・提出する書類や、現職企業から受け取って転職先に提出する書類、転職先から入手して提出する書類などがあります。代表的な書類をご紹介するので、まずはどのようなものが必要になるかを次のチェックリストで押さえておきましょう。なお、転職で必要となる書類は企業によっても異なるので、転職する企業に確認をしておきましょう。各書類の詳細については以下の章でご紹介します。

退職時に現職の企業へ提出・返却する書類・退職届・退職願
・健康保険証(被保険者証)(有効期限が残っている場合)または健康保険資格確認証(貸与された場合)
※健康保険証は交付されておらず、マイナ保険証の利用だけなら返却は不要です。
・支給、貸与されていた備品
・業務に関連する書類やデータ
退職時に現職の企業から受け取る書類・雇用保険被保険者証(企業が保管している場合)
・年金手帳(企業が保管している場合)、基礎年金番号がわかるもの
・源泉徴収票 ※退職後に送付される。
退職時に必要に応じて現職の企業から受け取る書類・健康保険、厚生年金保険の資格喪失証明書
・離職票 ※退職後に送付される。
・退職証明書
転職先の企業へ提出が必要な書類・マイナンバー(個人番号)がわかる書類
・雇用保険被保険者証
・源泉徴収票
・年金手帳(企業が保管している場合)、基礎年金番号がわかるもの
※原則、マイナンバー(個人番号)がわかれば不要です。
・扶養控除等(異動)申告書
・健康保険扶養者異動届(扶養家族がいる場合)
・給与振込先届出書
・健康診断書
転職先の企業によって提出が必要な書類・退職証明書
・入社承諾書・入社誓約書
・免許や資格の証明書
・身元証明書
・卒業証明書

【現職企業】提出・返却する書類

退職時に、現職企業に返却・提出することが必要な書類について解説します。

退職届・退職願

退職する際は、直属の上司に退職の申し出を行います。法律上では、退職の申し出は「退職希望日2週間前まで」と定められていますが、企業によっては就業規則で「1カ月前まで」といった期限が定められていることもあるので確認をします。一般的には、引き継ぎや有給休暇の消化期間なども含めると、申し出から退職まで2カ月程度の余裕があると良いでしょう。

上司に退職を申し出るタイミングで、退職届や退職願の提出についても確認しましょう。
一般的に「退職願」は、企業へ退職を願い出て、退職についての合意を得るための書類です。一方「退職届」は、退職の意思を伝えて受理された後に、自身の退職意思が確定したことを表明・証明するために提出するものです。退職の意思表示は口頭でも可能ですが、トラブルに発展しないよう、事務手続きの記録として書面で提出します。就業規則に期限や書式について定めがある場合は、企業のルールに従って提出しましょう。

健康保険証(被保険者証)

健康保険は、加入者が企業を退職した時点で脱退し、転職先の健康保険に新たに加入します。退職後には前職で加入していた健康保険証は使用できないため、健康保険証を返却することが必要です。有休消化などで最終出社日に直接返却できない場合は、後日、郵送で返却します。

なお、2024年12月2日から健康保険証(被保険者証)の新規発行はされなくなり、原則マイナンバーカード(マイナ保険証)を活用した仕組みに変更しています。よって、返却は不要になります。マイナ保険証の登録をせずに健康保険資格確認証が交付されていた時は返却が必要です。

現職企業から支給・貸与されていた備品

社員証や入館証、社章、IDカードなど、社員としての身分を証明するものを返却します。他にも制服、鍵、パソコン、携帯電話、名刺など、現職企業から支給・貸与されていたものも全て返却します。自身の名刺も返却しますが、仕事を通じて受け取った名刺も現職企業の所有物になるため、原則的に返却すると考えた方が良いでしょう。

また、定期券については、企業から数か月分の定期代として交通費が支給され、個人で購入しているケースもあります。企業によっては有効期限内の退職の場合、退職日から定期券の有効期間満了日までの期間に相当する部分の交通費を返還するように求められることもあるので、就業規則を確認するか、人事に聞いてみると安心です。

業務に関連する書類やデータ

業務に関連する資料やデータは返却が必要です。退職時のデータの持ち出しは規約違反になる恐れがあります。社内のルールに則って対応するようにしましょう。

【現職企業】受け取る書類

退職時・退職後に、現職企業から受け取ることが必要な書類について解説します。

雇用保険被保険者証

雇用保険に加入していることを証明する書類です。入社後に交付されたものを自身で保管するケースと、現職企業が保管しているケースがあり、後者の場合は受け取りが必要です。転職先で新たに雇用保険に加入する際には、この書類に記載されている「雇用保険被保険者番号」が必要となります。

年金手帳、基礎年金番号通知書

雇用保険被保険者証と同様に、現職企業で保管されているケースがあるので、その場合は忘れずに受け取るようにしましょう。なお、2022年4月1日に年金手帳の新規発行は廃止されたため、今後、新たに国民年金や厚生年金に加入する方は、年金手帳に代わって交付される基礎年金番号通知書を使用します。

源泉徴収票

所得税の年末調整に必要な書類です。退職前の最終の給与計算終了後に発行されるため、受け取れるのは退職後となり、自身で確認・保管する必要があるので注意が必要です。所得税法(第226条1項)により、退職後1カ月以内に交付することが定められているため、期間を過ぎても手元に郵送されない場合は前職の勤務先に問い合わせましょう。

源泉徴収票は転職先での年末調整の際に提出が必要となりますが、入社日が11月〜12月などの場合、転職先の年末調整に間に合わないケースもあります。その際は、自身で翌年に確定申告を行い、併せて源泉徴収票も提出する必要があります。

【現職企業】必要に応じて受け取る書類

「転職先が決まっていない」「退職から入社まで日数が空く」「転職先へ提出の必要がある」といったケースで、必要に応じて現職の企業から受け取る書類について解説します。分からないことがあれば、人事部などの担当部署に確認すると良いでしょう。

健康保険、厚生年金保険の資格喪失証明書

退職後、転職先に入社するまで1日でも間が空く場合や、転職先が決まっていない場合、自身で国民健康保険や国民年金に加入することが必要となります。国民健康保険の申請の際には、健康保険の資格喪失証明書を提出することが必要です。また、自治体によっては、国民年金への切り替えの際にも厚生年金保険の資格喪失証明書を求められるケースがあります。

離職票

転職先が決まっていない場合、雇用保険の基本手当(失業保険)を受ける際の申請に必要となるもので、離職したことを証明する公的な書類です。雇用保険法で、被保険者でなくなった日の翌日(退職日の翌々日)から原則10日以内に前職の勤務先が発行のための手続きを行うので、詳細な受け取り時期を人事部などに確認しておきましょう。

退職証明書

退職していることを証明する書類です。転職先の企業によっては、提出を求められることがあります。必ずしも発行されるものではありませんので、必要な場合は前職または現職企業 に発行を依頼しましょう。
退職証明書や離職票は、自治体によって国民健康保険に切り替え手続きを行う際にも使用できます。通常は健康保険資格喪失証明書を使用しますが、退職証明書や離職票のみでも届け出を可能とするケースもあります。

【転職先企業】提出が必要な書類

一般的に、転職先に入社する際に提出する必要がある書類について解説します。

マイナンバー(個人番号)がわかる書類

社会保険や雇用保険の手続きにマイナンバー(個人番号)が必要となります。マイナンバーカードの写し(表面・裏面)、または住民票など、個人番号が確認できるものを提出します。

雇用保険被保険者証

転職先に一度提出し、その後は自分で保管するのが一般的です。被保険者番号のみでも手続きは可能なので、転職先に確認しましょう。

源泉徴収票

転職先での年末調整に使用するため、年末調整を行う時期に間に合うように提出します。源泉徴収票は退職後に給与が支払われてから発行するため、前職の企業から郵送されて手元に届くまでは、1カ月程度の期間が掛かると考えましょう。

基礎年金番号通知書

転職先に提出して、厚生年金に加入する手続きを行ってもらいます。なお、転職先の事業主が「個人事業主で常時従業員が5人未満」などの場合は、社会保険は任意加入のため、厚生年金に加入していないこともあります。こうした場合は、自身で国民年金に加入する手続きが必要です。

転職先での厚生年金加入手続きには、基礎年金番号と紐付けられたマイナンバーの使用が一般的となっているため、最近は基礎年金番号の確認や年金手帳の提出が求められないケースも増えてきています。ただし、自身で厚生年金を国民年金に切り替える手続きを行う際には、基礎年金番号を確認するための書類として、基礎年金番号通知書や年金手帳の提出が必要となります。

※2022年4月以降に国民年金や厚生年金に初めて加入する人には、年金手帳は発行されず、代わりに基礎年金番号通知書が交付されます。年金手帳がないため、年金を切り替える手続きの際には、基礎年金番号通知書が必要となります。

扶養控除等(異動)申告書

給与所得の源泉徴収額を計算するために必要な書類です。転職先から用紙を受け取り、必要事項を記入します。扶養家族の有無にかかわらず提出を求められます。

健康保険扶養者異動届

扶養家族がいる場合、転職先で被扶養者の健康保険加入手続きをしてもらうために、被扶養者異動届を出す必要があります。転職先から用紙を受け取り、必要事項を記入して提出します。なお、その際は被扶養者全員のマイナンバーの記載も必要となります。

給与振込先届出書

給与の振込先を申告する書類です。転職先に指定された用紙に必要事項を記入して提出します。また、転職先の指定銀行の口座が必要なケースなどもあるので、事前に確認しておきましょう。

健康診断書

入社時には、転職先から「雇入れ時健康診断」の受診を求められます。指定された提携病院などで診断を受け、転職先に直接、診断書が郵送されるケースが多いですが、自身で病院を探して「雇入れ時健康診断」を受けるケースもあります。

【転職先企業】必要に応じて提出する書類

転職先の企業によって、提出を求められる書類について解説します。

退職証明書

前職の職務内容や在職期間などのバックグラウンドチェックのために、転職先から退職証明書の提出を求められるケースもあります。転職先に確認の上、提出が必要な場合は、現職企業を退職することが決まった時点で発行を依頼すると良いでしょう。

入社承諾書・入社誓約書

履歴書の記載に虚偽がないことや就業条件などについて確認・承諾する書類です。転職先から内定を得たタイミングで書類を渡されることもあります。

免許や資格の証明書

転職先の業務に特殊な免許や資格が必要な場合、資格取得を証明する書類の提出を求められることがあります。

身元保証書

転職先に入社する際、身元保証人を立てる必要がある場合に提出します。親や兄弟などの署名、捺印が必要となるケース、親族などの緊急連絡先を提出するだけで良いケースもあります。信用が重視される金融機関などでは提出を求められることが一般的です。

卒業証明書

一般的に中途採用で提出をすることはありませんが、企業によっては履歴書の内容を確認するために求められることがあります。

退職・転職時に必要な公的手続き

企業を退職する時や転職する時には、健康保険・年金の切り替えや雇用保険などの公的手続きをすることが必要になります。ここでは「退職日の翌日に転職先に入社する場合」と、「入社までにブランクがある場合」ないし「転職先が決まっていない場合」に分けて、それぞれの手続きについてご紹介します。

退職日の翌日に入社する場合は、転職先で手続きを行う

転職先が決まってから退職する場合でも、「退職日の翌日に転職先に入社するケース」と「入社までに何日か日にちが空くケース」では手続き内容が違うため、良く把握しておくことが大切です。
まず、退職日の翌日にブランクを開けずに転職先に入社する場合について解説しましょう。

健康保険

入社後、転職先が健康保険に加入するための手続きを行います。扶養家族がいる方は、同時に被扶養者の分の必要書類も提出します。マイナ保険証を持たずに資格証明書の発行を希望する場合は、転職先が手続き・申請を行った後、1週間から3週間前後の期間を経て転職先宛てに届けられることが一般的です。マイナ保険証の場合は、通常手続きから10日程度で登録の更新が完了します。

なお、転職先の事業主が社会保険に加入していない場合は、自身で国民健康保険に加入する手続きを行う必要があります。

雇用保険(失業保険)

転職先が決まっている場合は、雇用保険の基本手当(失業保険)の受給資格がないため、手続きも不要です。転職先に雇用保険被保険者証を提出すれば、必要な手続きを行ってくれます。

公的年金

転職先に基礎年金番号やマイナンバーを提出すれば、厚生年金の切り替え手続きをしてくれます。転職先の事業主が社会保険に加入していない場合は、自身で国民年金に加入する手続きを行う必要があります

入社まで日数がある場合や、転職先が決まっていない場合は自身で手続きを行う

退職日から入社日まで1日でも日数が空く場合や、転職先が決まっていない場合には、自身で各種公的手続きを行うことが必要です。それぞれの詳細と注意点を把握しておきましょう。

健康保険

退職日の翌日から無保険となるため、自身で公的健康保険への加入手続きをする必要があります。健康保険に加入する方法としては、以下の3つの方法が挙げられます。

(1)「任意継続被保険者制度」を利用する
退職後も前職の企業の健康保険に最長2年まで継続して加入できる制度です。加入する条件は、「資格喪失日までに健康保険の被保険者期間が継続して2カ月以上あること」「資格喪失日(退職日の翌日など)から20日以内に『任意継続被保険者資格取得申出書』を提出すること」です。前職の健康保険組合などに問い合わせてみましょう。

(2)「国民健康保険」に加入する
離職日の翌日から14日以内に住民票のある市区町村役場で手続きしましょう。

(3)「家族の健康保険」に被扶養者として加入する
前職を退職した後、求職期間が生じる場合、雇用保険の基本手当(失業保険)の受給開始前の期間については、家族が加入している健康保険の被扶養者となることも可能です。

転職先に入社し、企業の健康保険への加入手続きが完了した後に、自身で国民健康保険から脱退する手続きを行います。

雇用保険(失業保険)

転職先が決まっている場合は、雇用保険の基本手当(失業保険)の受給資格がないため、入社まで日数があっても手続きは必要ありません。

転職先が決まっていない場合は、原則、自身の住所地を管轄するハローワークに離職票などを持参し、受給申請の手続きをします。基本的には、7日の待機期間(離職票の提出し、求職の申込みを行った日から通算した7日間のこと)の後、約1カ月の給付制限期間を経て手当が支給されます。

また、就職をする意思がない方、ケガや病気、妊娠・出産などですぐに就職するのが困難な方などは、失業保険の対象外となりますが、「就職可能な時期になれば働く意思がある」という場合は、基本手当の受給期間延長手続きをしておきましょう。基本手当(失業保険)の受給期間は、原則として離職した日の翌日から1年間に限られ、通常は、離職してから1年を超えると雇用保険の給付を受けられなくなります。

公的年金

「転職先にすぐ入社しない」もしくは「転職先が決まっていない」ために無職の期間がある場合は、国民年金への切り替えが必要です。退職の翌日から14日以内に、住民票のある市区町村役場で手続きしましょう。必要書類は、年金手帳(基礎年金番号通知書)、マイナンバーがわかる書類、離職票、厚生年金保険の資格喪失証明書などですが、自治体によって異なるため、あらかじめ調べておくことをお勧めします。

切り替え手続きを行わない場合でも、日本年金機構から手続きをするよう書類が届きますが、手続きを行わない場合には、職権で加入手続きが取られることもあります。手続きをしない場合や、加入しても保険料を納付しなかった場合には、退職月分の国民年金保険料が未納となり、将来の年金が未納となった月分、少なくなってしまうので注意しましょう。

転職先に入社した後は、再度、厚生年金保険に加入する手続きを行ってもらえます。年金制度は基礎年金番号で一元管理されているため、転職の合間に加入した国民年金をやめる手続きを自身で行う必要はありません。

転職先への提出書類が間に合わない場合の対処法

転職先への書類提出が期限に間に合わない場合は、それが分かった時点で、すみやかに転職先の担当者に事情を説明し、指示を仰ぎましょう。その際は、提出できそうな大体のスケジュールまで伝えるようにしましょう。

必要な書類を紛失していることに気づいたら、マイナンバーが分かれば可能な手続きもあるので、転職先の担当者に相談してみましょう。公的書類の場合は再発行できるものも多いので、迅速に再発行の手続きをします。前職企業から受け取る書類の場合は、紛失した旨を伝えて、新しい書類を用意してもらう必要があります。

もし前職の企業に問い合わせても源泉徴収票を発行してくれない場合は、所轄の税務署にて「源泉徴収票不交付の届出書」を提出すれば、企業への指導が入り、交付してもらうことができるでしょう。倒産などで企業の実体がない場合は、税務署に相談してみることをお勧めします。

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監修

岡 佳伸氏

大手人材派遣会社にて1万人規模の派遣社員給与計算及び社会保険手続きに携わる。自動車部品メーカーなどで総務人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険適用、給付の窓口業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として複数の顧問先の給与計算及び社会保険手続きの事務を担当。各種実務講演会講師および社会保険・労務関連記事執筆・監修、TV出演、新聞記事取材などの実績多数。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。

※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。