転職活動を通じて複数の企業から内定が出た場合は、入社を希望する企業以外には内定辞退の連絡を入れなければいけません。内定辞退をする場合、どのような点に注意すればいいのでしょうか。そこで、本記事では電話・メールで辞退を告げる時の例文も紹介しながら、内定辞退をする際の注意点について社会保険労務士・岡佳伸氏が解説します。
承諾前であれば、内定辞退は可能
内定の通知時に応募企業から送付される「内定通知書」「採用通知書」などに記載されている回答期限内で、内定承諾をしていないのであれば内定辞退は可能です。内定を辞退したい企業がある場合は、できるだけ早く内定辞退の旨を伝えるようにしましょう。ただし、内定を辞退した場合は、企業は別の応募者の選考を進めるため、辞退を取り消すことはできなくなります。内定が出ている企業を比較検討して、冷静に判断するようにしましょう。
内定辞退の方法
内定辞退の方法は、電話かメールのどちらかの手段で伝えるのが一般的です。企業に直接伝える場合と、転職エージェントを利用している場合の2通りの方法をご紹介します。
企業に直接伝える場合
企業に内定辞退を直接伝える場合は、電話かメールのいずれかの方法で直接企業に内定辞退を伝えれば問題ありません。ただしメールだけだと、開封に時間がかかったり埋もれてしまったりする可能性があるので、メール送信後に電話でも連絡しておくと確実です。
転職エージェントを通じて伝える場合
転職エージェントを利用している場合は、企業に直接連絡を入れるのではなく、必ず転職エージェントから内定辞退の旨を伝えてもらうようにしましょう。転職エージェントを介する場合も、転職エージェントの担当者に内定辞退の旨をメールで送ったら、送信後に電話でも連絡しておくと安心です。
内定辞退の伝え方
内定辞退は以下の3つの要素を意識しておくと伝わりやすくなります。伝え方のポイントを解説します。
内定へのお礼
電話でもメールでも、まず内定を出してくれたことに対する感謝の意を示します。「この度は内定をいただき、誠にありがとうございました」などの文章で、お礼を述べるようにしましょう。
辞退の旨
お礼に続いて、内定辞退の旨を伝えます。辞退する事実のみを述べるだけでなく、内定通知を受けて、入社する企業を真剣に検討した結果であること、辞退することが苦渋の決断だったことなどを含めて表現すると良いでしょう。
辞退理由
内定を辞退する理由について詳しく伝える必要はありませんが、全く触れないと採用担当者や転職エージェントは気になってしまうものです。概略が分かる程度で伝えておきましょう。
内定辞退の電話・メール例文
内定を辞退する場合の電話とメールの例文をご紹介します。
内定辞退の電話例文
企業と転職エージェントに内定辞退を伝える場合の電話例文です。
企業に直接伝える場合
お世話になっております。〇〇職の中途採用の選考で内定をいただきました△△です。
今お時間をいただいてもよろしいでしょうか?
先日は内定をいただき誠にありがとうございました。
頂戴した内容を、今後のキャリアを含めて改めて検討させていただきました。
その結果、大変心苦しいのですが、内定を辞退させていただきたくご連絡差し上げました。
(※理由を聞かれた場合)
面接で詳しく業務内容や仕事に求められるものなどをお聞きしていくなかで、自分が抱いていた働き方のイメージと違うことがわかり、自分の能力では御社に貢献していくことが難しいと感じました。
貴重なお時間をいただいたにもかかわらずこのような結果となり、誠に申し訳ございません。
なにとぞよろしくお願い申し上げます。
転職エージェントに伝える場合
お世話になっております。△△です。
〇〇社の内定の件でご連絡させていただきました。
今お時間をいただいてもよろしいでしょうか?
先日は内定をいただき誠にありがとうございました。
大変心苦しいのですが、〇〇社の内定を辞退したくご連絡差し上げました。
(※理由を聞かれた場合)
面接で詳しく業務内容や仕事に求められるものなどをお聞きしていくなかで、自分が抱いていた働き方のイメージと違うことがわかり、自分の能力では〇〇社に貢献していくことが難しいと感じました。
恐れ入りますが、〇〇社の皆様に内定辞退の旨とお詫びをお伝えいただけますでしょうか。
なにとぞよろしくお願い申し上げます。
内定辞退のメール例文
企業と転職エージェントに内定辞退を伝える場合のメール例文です。
企業に直接伝える場合
件名:内定辞退のご連絡/△△(氏名)
〇〇株式会社
人事部 □□□様
お世話になっております。
〇〇職の内定をいただきました△△です。
この度は、内定のご連絡をいただき誠にありがとうございました。
頂戴した内容を、今後のキャリアを含めて改めて検討させていただいた結果、
大変心苦しいのですが、内定を辞退させていただきたくご連絡差し上げました。
上司と話し合った結果、現職に残ることにいたしました。
貴重なお時間をいただいたにもかかわらずこのような結果となり、
誠に申し訳ございませんでした。
今後の貴社の発展を心よりお祈りしております。
——————————–
氏名
郵便番号+住所
電話番号
メールアドレス
——————————–
転職エージェントに伝える場合
件名:内定辞退のご連絡/△△(氏名)
■■■エージェント
●●様
お世話になっております。△△です。
〇〇株式会社の内定の件でご連絡させていただきました。
この度は、内定のご連絡をいただき誠にありがとうございました。
頂戴した内容を、今後のキャリアを含めて改めて検討させていただいた結果、
大変心苦しいのですが、内定を辞退させていただきたくご連絡差し上げました。
上司と話し合った結果、現職に残ることにいたしました。
貴重なお時間をいただいたにもかかわらずこのような結果となり、
誠に申し訳ございません。
〇〇株式会社の皆様にも内定辞退の旨とお詫びをお伝えいただけますでしょうか。
なにとぞよろしくお願い申し上げます。
——————————–
氏名
郵便番号+住所
電話番号
メールアドレス
——————————–
内定を辞退するか迷っている場合
内定通知を受け取ったものの、承諾するかどうか迷っている場合はどうすればいいのでしょうか。判断に迷った場合のヒントや対応策について解説します。
1社しか内定が出ていない場合
内定が出た企業が1社のみの場合、「辞退する」という決断は、在籍企業に残る、転職活動を継続するなど、他の選択肢などを十分に検討したうえで下すようにしましょう。一時的な感情やあいまいな理由で辞退してしまうと、後悔することになりかねません。
判断に迷うようであれば、自身の判断基準を改めて整理したうえで、内定が出た企業や転職エージェントに相談しましょう。回答期限に余裕がある段階で、誠実に不安や悩みを伝えた場合、再度面談の機会を設けてもらえる可能性があります。
他社の選考結果がまだ出ていない場合
他の企業の選考が並行して進んでおり、回答期限までに選考結果が分からない場合は、応募企業に回答期限の延長を相談してみることも一案です。例えば、「申し訳ございませんが、他の選考も同時に進んでおり、その結果が分かるのが〇日になりそうです。回答までに少々お時間を頂戴してもよろしいでしょうか?」などと伝え、なるべく早い段階で回答期限の延長を相談するようにしましょう。
承諾後に内定辞退したい場合はどうする?
内定を一旦承諾した後、入社を辞退するのはトラブルのもとです。法的には原則として労働者の自由が認められているものの、内定承諾したことで、企業は入社までの手続きを進め、採用活動を終了しています。内定承諾をしなければ、他の応募者に内定が出ていた可能性もあるため、企業や他の応募者に多大な迷惑を掛けることになってしまいます。今後、その企業と関わりを持つ可能性もゼロではありません。承諾するか迷っている場合は、安易に回答するのではなく、まずは企業や転職エージェントに相談するようにしてください。
岡 佳伸(おか よしのぶ)氏
大手人材派遣会社にて1万人規模の派遣社員給与計算及び社会保険手続きに携わる。自動車部品メーカーなどで総務人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険適用、給付の窓口業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として複数の顧問先の給与計算及び社会保険手続きの事務を担当。各種実務講演会講師および社会保険・労務関連記事執筆・監修、TV出演、新聞記事取材などの実績多数。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。