転職の書類通過率を上げる方法は?落ちる要因と選考通過のポイント解説

転職活動において、書類選考は選考の最初の関門と言えます。募集要項にマッチするスキルや経験があっても、「書類選考に通過しにくい」という悩みを抱える方もいるでしょう。組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタントの粟野友樹氏に、転職の書類選考における通過率や不採用となる要因、通過率を上げるためのポイントなどを伺いました。

転職の書類選考における通過率と判断のポイント

最初に、書類選考の通過率は一般的にどのくらいなのか、企業が何を判断ポイントとしているのかを解説します

20~30代の書類選考の通過率は平均5割程度とされている

リクナビNEXTによるアンケート調査(5年以内に転職した20〜30代の正社員男女1000名に実施)によれば、応募社数に対する書類選考の通過率は平均5割程度となっています。20代などの若手人材はポテンシャルも含めて評価されるため、募集要項に合致しない場合でも、育成による可能性や他部署における採用などを検討するケースが少なくはないでしょう。
一方、40代以降の場合は書類選考の通過率が低下する傾向があります。一定のキャリアを積んだ人材を募集する際には、年齢相応のスキルや実績、マネジメント経験の有無など、求める条件は増え、採用基準も高くなると言えます。企業の募集要件に対し、応募書類の内容がどの程度合致しているかが書類選考の判断に影響するため、よりマッチしている内容とすることが重要です。

※参考:転職するときの適切な応募数とは?転職成功者の平均応募数・内定率

企業は書類選考で何を判断しているのか

「採用水準を満たしていること」が前提となります。自社の募集要件に対し、応募者の強みや経験・スキルにどのような接点があるのかを見極め、マッチしている人材か判断しているでしょう。また、長く定着して活躍してくれる人材かどうかも採用のポイントとなるため、応募者のこれまでの働き方やキャリアに対する志向などが自社とマッチしているかなども含めて判断するケースもあります。

書類選考に通過しにくい要因としては「そもそも応募社数が少ない」「募集要件と自身の経験・スキル・実績がマッチしていない」などの可能性が考えられます。反対に「募集要件に経験・スキルがマッチしているはずなのに落ちている」という場合は、書類に書く内容や書き方が要因となっている可能性があるでしょう。また、応募企業における働き方や企業のミッション・バリュー・ビジョンなどを理解した上で、自身の価値観とマッチしている内容を書くことも重要です。

複数社に応募する場合、書類選考は並行して進めた方が良い

「1社ずつ結果を出したい」「複数の選考を並行して進める時間がない」などと考えて、応募社数を絞る方もいますが、書類選考に落ちるたびに振り出しに戻るので、転職活動が長引く可能性があります。
一方、応募社数を増やし、複数社の選考を並行することには、時間効率を高められる上「選考を進める中で企業を比較検討できる」というメリットがあります。また、応募書類に書く内容を修正することでより精度を高められますし、面接選考を受けていく中で面接スキルを高めることもできます。
複数社の選考を並行することは、自身の選択肢を増やすことにつながり、より希望に合致する企業を選ぶことができるでしょう。

書類選考で不採用となる4つの要因。通過率を上げる改善ポイントとは?

書類選考に落ちる要因を知り、応募書類の内容修正に役立てましょう。また、それぞれの要因に対し、通過率を上げるための改善ポイントもご紹介します。

経験・スキルが募集要件を満たしていない

自身の経験・スキルが募集要件を満たしていない場合は「求める人材にマッチしない」と判断されるでしょう。若手人材のポテンシャル採用を行う企業の場合はこの限りではありませんが、書類の内容が募集要件と大きく乖離(かいり)していれば選考通過は難しいと言えます。

一方、採用水準を満たす応募者が多い場合は、書類選考の段階で相対評価による判断を行うため、より求める人材要件に近い人物を優先するでしょう。また、人材要件との合致率が高い応募者の場合でも、年収や勤務地などに対する希望条件が募集内容と合致していないために選考見送りとなることもあります。年収については、企業側の給与水準より高い条件を希望し、昇給などを含めた年収の上げ幅とも合致しない金額だった場合「応募者の希望とマッチしていないため、入社の可能性が低い」と判断されることがあります。

通過率を上げるポイント

企業選びの際、自身の経験・スキルにマッチしていない企業を選んでいる可能性があるので、それらをしっかり棚卸した上で企業を探すことをお勧めします。また、応募書類に書く内容では、募集要件に自身のスキル・経験がマッチしていることをしっかり伝えることを意識しましょう。スキル・経験に自信がない場合は、志望動機などに結びつけ、応募企業への熱意を伝えると良いでしょう。

希望年収については、まず企業の募集要項などから年収や昇給による上げ幅を確認しましょう。自身の希望を満たしているか把握した上で、応募するかどうかを判断することが大切です。応募書類に希望年収を書く際、企業側が提示している年収条件を大幅に上回る金額とする場合は、書類選考に落ちる可能性も考慮しておきましょう。希望条件と最低条件を考え、書類に書く金額は企業の年収条件に収まる金額とし、面接で希望年収を聞かれた際に交渉してみる方法もあります。

読みにくい書式で、情報に抜け漏れがある

職務経歴書に記入する内容は、以下の6項目が一般的です。

  • 記入年月日と氏名
  • 職務経歴の要約
  • 過去の勤務先の会社概要
  • 職務経歴
  • 資格・特技など
  • 自己PR(活かせる経験、知識、技術など)

これらの項目に抜け漏れがあると情報不足となり、どのような経歴を持つ人材なのかが伝わりにくくなります。特に、独自で職務経歴書を作成した場合、一般的な書式と違うために、企業の採用担当者が情報を把握しにくくなり「判断が難しいので選考見送り」となる可能性もあります。また、書類に不備や誤字脱字がある場合も「きちんと確認していない」「志望度が低い」などのマイナス印象につながりやすいでしょう。

通過率を上げるポイント

職務経歴書を作成する際は、一般的なテンプレートを活用し、読みやすい書式とすることがポイントです。職務経歴書の書式は、業務経験を時系列で記す「編年体式」を利用するケースが多いですが、キャリアが長く、転職回数が多い場合は、コンパクトにまとめることが大切です。職務内容ごとに経歴をまとめた「キャリア式」の職務経歴書を作成すれば、読みやすく、強みが伝わりやすい書類とできるでしょう。作成の際には、項目に漏れがないようにすべての書式をきちんと確認し、誤字脱字などにも注意しましょう。

アピールポイントが明確でない

職務経歴書に長々と事実を書けば、伝えたい内容がわかりにくくなり、アピールポイントも読み取りにくくなります。また、特に異業界への転職を目指す場合は、応募企業の人事担当者がほかの業界の特性を知らない可能性があります。共通認識を持てない内容を書けば、自身が経験した仕事の規模や難易度が伝わらず、アピールにつながりにくくなるでしょう。

通過率を上げるポイント

職務経歴書に書く職歴の要約は200~400文字程度が一般的です。特に、記載量が多くなりがちな職歴の要約や職務経歴、自己PRなどでは、これまでの職務経歴や業績、表彰事項、特記すべきプロジェクト、活用した技術や取得した資格などを簡潔にまとめましょう。また、共通認識を持てるようなキーワードを使い、数字の記載も意識すると、経験した仕事の規模感や難易度をイメージしやすくすります。

定着性や働く姿勢に懸念がある

転職回数、在籍期間、キャリアのブランクなどから、早期退職の懸念があると判断されることもあります。また、「チームワーク」「個人成果主義」などの働き方において、前職での働き方と応募企業の働き方がマッチしていない場合も懸念材料となる可能性があります。特に、管理職を募集している場合は、一般社員より周囲への影響力が大きいことを考慮し、働き方から社風とのマッチングを判断するケースもあります。

通過率を上げるポイント

転職回数が多い場合は、それぞれの転職における理由や目的を職務経歴書に書くと良いでしょう。背景を理解できるようにすることで、書類選考の通過率を高めることができます。ブランクがある場合も同様です。働き方のマッチングを判断しやすくするためには、応募企業の働き方と前職の働き方において、重なるようなエピソードを職務経歴書の自己PRなどに書くと良いでしょう。

また、応募企業の採用ホームページや代表へのインタビュー記事などから社風やミッション・バリュー・ビジョン・クレドなどを調べ、自身の働き方や価値観と重なるようなキーワードを取り入れることもお勧めです。共通点をわかりやすくすることで、よりマッチしているという判断につながるでしょう。

書類選考のよくあるQ&A

書類選考におけるよくあるQ&Aを参考にし、疑問や不安を解消しましょう。

Q. 書類選考の期間は?結果がくるまでどのくらいかかるのか?

A. 一般的に、書類選考の結果通知にかかる時間は5〜10営業日とされていますが、早い場合は2〜3営業日で通知する企業もあります。「通知が早い方が、内定の可能性が高い」と考える方もいますが、採用の判断とは関係ないケースがほとんどでしょう。企業側の採用選考の方式や体制、人事担当者の業務状況や応募者数などによって、結果通知に要する期間が異なるものだと考えましょう。

Q. 書類選考の結果が来ない場合、どうしたらいいか?

A. あまりにも連絡が遅い場合は、募集要件や採用ページに記載されている連絡先に問い合わせをしましょう。応募書類を送付後、1週間〜10日後を目安とすれば問題はありません。メール・電話のどちらにおいても、問い合わせの際には「いつ、どの職種に応募したのか」という背景を伝えた上で、状況確認をお願いしましょう。

Q. 書類選考の結果がメールで届いた。不採用でもメール返信した方がいいか?

A. すでに選考結果が出ているので、応募者、応募企業の双方にとって、これ以上のやりとりをする必要性はありません。「リファラル採用(社員による紹介制度)を利用した」「カジュアル面談を実施してもらった」などの場合は、個別に時間を割いてもらったことに対するお礼のメールを送っても良いでしょう。

Q. 書類選考で面接に進んだ。ほぼ内定と考えていいか?

A. 書類選考に通過しても、「ほぼ内定」とは限りません。面接選考を経た上で採用の判断をするケースがほとんどなので、面接対策や企業研究などの準備を行うことをお勧めします。

Q. 希望年収は低めに設定した方がいいのか?

年収の金額は生活水準に直結するので、慎重に検討した上で希望年収を伝え、応募企業に判断してもらっても良いでしょう。また、希望年収と最低希望年収の両方を伝える方法もあります。

転職の書類選考に通らないときはどうしたらいいか?

自己分析をしっかり行い、自身の経験・スキル・実績を棚卸しましょう。また、企業研究をきちんと行い、自身が活躍できそうな仕事内容か、働き方がマッチしているかを分析した上で、応募するかどうかを判断することも大切です。

「応募書類に何を書けばいいのかわからない」「書類選考に通過しない要因がわからない」という場合は、転職エージェントやスカウトサービスを利用する方法もあります。転職エージェントでは、応募書類の書式や誤字脱字のチェック、客観的な視点でアピールすると良い内容など、改善ポイントをアドバイスします。また、自身のキャリアや希望にマッチする企業を紹介するため、書類選考通過の確率も高められます。
スカウトサービスでは、募集人材にマッチしそうな人材にスカウトメールを送るので、マッチングの確率が高い企業が見つかりやすくなるでしょう。

【アドバイザー】

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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