【転職先の選び方】転職して後悔しないために知っておきたい判断基準

ノートパソコンを操作する人

転職エージェントには「転職したが後悔している…」という相談が寄せられることもあります。転職先選びがうまくいかなかった原因は何でしょうか。どうすれば、そうした後悔を防ぐことができるのでしょうか。転職して後悔する人によく見られるケースの紹介と悔いが残らない転職活動の進め方、転職先選びに悩んだ時の相談先など、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

転職で後悔する人に見られる3つのケース

大きな転機ともいえる転職において、後悔するような事態は避けたいものです。転職後に本人が後悔するケースで、一般的によく見られるのは次の3つです。

【ケース1】自身の認識と実情が食い違っていた

「リモートワーク率が○%だと聞いていたのに、ほとんど出社しなければ業務が進まず、予想外に通勤の負担が重かった」
「入社してすぐにプロジェクトの責任者を任されるという認識だったが、実際はまだ決定事項ではなかったとわかって落胆した」

【ケース2】社風になじむことができない

「将来性の高さに惹かれて会社を選んだが、入ってみると実力主義の社風で、一人一人が独立して業務を進める環境。チームワークを大切にしてきた自分に合わなかった」
「専門性を高める転職ができて満足していたが、働き始めると、意思決定のスピードが遅すぎることにストレスが溜まるようになった。もっとスピーディーにチャレンジする社風かどうか事前に見極めておけば良かった」

【ケース3】経験・スキルが合わず活躍できない

「面接の場で経験・スキルを強くアピールして、志望度の高い企業に入社できたが、自分の実力以上の期待をされてしまい、結果が出せず会社に居づらくなってしまった」
「希望していた仕事に転職することができたが、業界や職種の研究が不十分だったため、入社後、自分に適性がないことに気づいてしまった」

「思っていた(聞いていた)業務内容や働き方と違った」というケースは、面接時の約束が守られなかったり、説明が不十分であったり、求職者側の「思い込み」が原因のことも多いようです。これは、面接や面談時にしっかりと確認を取り、双方の認識をすり合わせることで、ある程度回避できるでしょう。

一方で、後半の「社風に馴染めない」「経験・スキルが合わず活躍できない」というケースについては、転職先の選び方が合っていなかったのかもしれません。
まずは後悔しないための転職先選びのポイントをご紹介します。

「転職の軸」を決めると転職先選びで後悔しにくくなる

転職活動を始めるにあたっては、「転職の軸」を決めることがポイントの一つになります。
転職の軸を明確にしないと、企業を比較検討する中で転職で実現したかった本来の目的以外のことに目を奪われがちになります。その結果、入社後の後悔に繋がりやすくなるからです。

【転職の軸を決めるメリット】

・応募企業を決める際に、より自分に合った企業に絞り込みやすくなる。
・選考を受けるときに、より説得力のある志望動機やアピール内容を組み立てることができる。
・入社する企業に迷ったとき、自分の目的と合致する企業かどうかを判断しやすくなる。

「転職の軸」の決め方

転職の軸を整理するための方法を3つご紹介します。自分がやりやすい方法を試してみましょう。

「転職で何を実現したいのか」を書き出す

まず、これまでの仕事での経験・スキルを振ります。自身の強みは何なのか、どのようなことに喜びを感じるのかなど、自身の特性や志向を整理します。例えば次の項目をもとに考え、その上で自分が転職で何を実現したいのかを書き出してみましょう。

・組織の中でどのような役割を果たしてきたか。
・周囲の人々とどのようなスタンスで関わってきたか。
・どのような成功体験や失敗体験があるか。そこから学んだことは何か。
・仕事において、どのような場面で喜びややりがいを感じてきたか。
・仕事において、どのような場面で苦痛やストレスを感じてきたか。
・今後、どのような経験・スキルを活かしていきたいか。

さらに、現職への不満が転職を考えるきっかけになっている場合は、何に不満を抱いているのかを具体化してみてください。例えば次の観点をベースに、不満を洗い出してみましょう。

・会社の方向性・方針に対する不満
・仕事内容・役割への不満
・組織体制への不満
・一緒に働く人への不満
・評価・待遇への不満

現職への不満点を明確にしたら、「○○が嫌だ」を「□□したい」というように、ポジティブな表現に変換します。例えば次のように言い換えてみると、これがそのまま転職活動の「軸」になるでしょう。

「評価に納得できない」→「働きが正当に評価される会社で、納得感を持って働きたい」
「休みが取れないのが辛い」→「ON/OFFを切り替えられるメリハリのある働き方をして、パフォーマンスを上げたい」

4つのポイントを使って転職の軸を可視化する

転職の軸は、以下の「人が企業や組織に期待するポイント」によって大きく4つに分類することができます。これらのポイントを使って、「現状」と「転職で実現したいこと」のギャップを可視化してみましょう。

1:会社の理念や経営方針、事業の方向性などに共感できる。
→「何のために仕事をするのか」「仕事を通して何を実現したいのか」「事業がどこに向かうのか」などの大きな目的や目標・理由を重視する人、挑戦意欲が強い人、社会貢献意識がモチベーションになる人などは、会社の理念や経営方針を重視するいいでしょう。

2:仕事内容や商品・サービスなどに魅力を感じる。
→毎日の仕事内容や扱う商品・サービスに納得して働きたい人、業界や市場規模などを重視したい人、起業や新規事業を起こすことに興味があり、そのために経験を積んでスキルアップしたい人などが注目するといいポイントでしょう。

3:経営陣や社員、社風が自分と合っている。
→風通しのいい環境で働きたい人、人間関係の豊かさを大切にしたい人、誰と働くか・どういった人的環境で働くかを重視したい人、組織貢献意欲が高い人などは、この点がポイントになるでしょう。

4:給与や人事制度、働き方、ワーク・ライフ・バランスに納得できる。
→仕事を続けるにあたり、自身のライフスタイルや労働環境全般を重視したい人、成果に応じた公正な評価を得たい人、充実した教育制度の中で専門スキルを磨きたい人などが、大切にしたい要素でしょう。

現在の職場や仕事について、各項目に10点満点で点数をつけてみてください。そして、最後に転職後に目指したい状態について項目ごとに点数をつけます。ただし、それらの合計点数は「現在」でつけた点数の合計から変えず、同じにしてください。

4つのポイント現在の仕事転職後に目指したい状態ギャップ
1:理念や経営方針・事業の方向性8点7点-1
2:仕事内容や商品・サービス6点9点+3
3:経営陣や社員・社風8点8点±0
4:給与や人事制度・働き方9点7点-2
合計31点31点±0

この表を作成すると、「現在」と「理想」のギャップが浮き彫りとなります。このギャップをふまえて、これから働く上で特に大切にしたい項目はどれなのか、どのギャップを埋めたいのかなどを考え、優先順位を付けることで、転職の軸がクリアになっていきます。

条件項目をMASTとWANTで整理する

転職先を選ぶ際に検討したい項目を書き出して、すべてを「MUST」と「WANT」に分類してみましょう。

「MUST」――どうしても譲れない必須条件
「WANT」――必須ではないが「あれば尚いい」条件

【優先順位を検討する項目例】

・企業理念
・ビジョン
・事業戦略
・事業・商品の特徴
・仕事内容
・社風
・経営者
・社員
・評価・教育制度
・給与
・設備
・勤務場所

分類した結果として「MUST」に入ったものが、転職の軸に繋がります。

「MUST」「WANT」を区別しておかないと、応募したい企業が見つからず、転職活動が長引くことも考えられます。候補の企業が複数ある場合にも「MUST」を指標とすることで、比較検討がしやすくなるでしょう。

転職先を選ぶときに確認したいポイント

自身の「転職の軸」に沿って、実際に企業を選ぶときに着眼したい点と、参考にしたい情報源を解説します。転職エージェントを利用している場合は、担当キャリアアドバイザーに聞いたり、確認してもらったりすることも有効です。

自身の経験・スキルと仕事内容がマッチしているか

転職先で活躍するためには、自身の経験・スキルと合致した仕事であることが重要です。求人情報の人材要件をチェックするほか、社員インタビューを読んだり、ビジネスSNSで社員の情報を検索したりして、「どのような経歴やスキルを持つ人が活躍しているか」を確認することもおすすめです。

ただし、同じポジションの募集でも、その時によって企業が求めるものが変わることもあります。求人情報を確認してもわからない場合などは、面接の中でも「人材要件の中では何が重視されるのか」「どのくらいのレベルが必要か」を直接確認してみてもいいでしょう。

経営理念や事業戦略に共感できるか

「ビジョン・ミッション・バリュー」や「現在と今後の事業展開」「成長性」などを重視する場合は、企業ホームページや経営者の発信や記事、IR情報、ニュースなどで情報を探してみましょう。

面接においては、「(経営理念を具現化するために)どのような施策やアクションを起こしているのか」「社員に浸透させるために何を行っているか」などを確認するといいでしょう。

商品やサービス内容、顧客は誰か

商品や仕事内容を重視する場合は、「誰に対して何を提供しているか」「シェアはどのくらいか」「業界内での優位性は何か」などに注目しましょう。

企業ホームページや求人情報、ユーザーの口コミのほか、ホワイトペーパー(商品サービスに関する説明資料・レポート、製品カタログ、導入事例、市場調査など)を読み込んでみるのもおすすめです。面接では、競合他社との違い(顧客、サービス、ビジネスモデルなど)について担当者に確認するといいでしょう。

社風や風土、一緒に働く人に共感できるか

社風や従業員の魅力については、求人情報やホームページ、社員インタビューなどから、ある程度は把握できるでしょう。

ただ、実情については、自分の目で確認するのが確実です。面接はもちろん、職場見学や面談で複数の社員と会い、職場の雰囲気や仕事の進め方などに注目して、社風や文化を判断する材料にしましょう。

福利厚生や働き方、人事制度に納得できるか

給与や福利厚生、働きやすさなどを優先する場合も、ホームページや求人情報のほか、口コミやニュース、政府系サイトで開示されている情報も参考にするといいでしょう。

面接では「制度の実際の運用状況はどうか」「どのような成果を上げると評価されるか」「昇進昇格の実例」などを、採用担当者に確認してみましょう。

転職して後悔しないための転職活動の進め方

転職後の後悔を避けるための、転職活動の進め方を解説します。

転職に踏み切る前に現職で可能性を探る

どのような転職でも、多かれ少なかれ入社後のギャップは生じるものです。「前の会社の方が良かった」という後悔を避けるためには、まず現職で不満を解消したり、希望を叶えたりする道がないかを探ることも大切です。

例えば、上司に率直に考えを伝えて話し合うこと。直属の上司に相談しにくい場合は、さらに上の上司や人事担当者に相談したり、担当変更・異動・出向などを願い出たりする方法もあるでしょう。また、現在の職場で、改善や新たな取り組みへの提案をしてみてもいいかもしれません。責任者に手を上げて、自ら推進することで、転職しなくても求めている仕事や環境を手に入れられる可能性もあります。

勢いで転職先を決めない

「今の状況から脱したい」という不満解消の気持ちだけが先走ると、転職がゴールになってしまいがちです。

選考で高く評価されたり、採用担当者と意気投合したりすると、そのままの勢いで転職を決めてしまうケースもありますが、自身が本当に得たいものが得られるかどうかを見極めたうえで決断することを忘れないようにしましょう。

心から「働きたい」と思う企業が見つからないのであれば、転職を焦らず、長期スパンで臨むという考え方もあります。そもそも転職先選びに迷っているなら、いま一度、転職の目的や理由に立ち返って考えてみてもいいかもしれません。

転職先に求める条件の優先順位付けをする

転職をするからには、「やりがいがあって年収もアップ。人間関係が良く、働きやすい制度も…」と、あれこれ希望を叶えたくなるものです。しかし、すべての条件において満足できる企業は少ないかもしれません。過度な期待を抱いて転職すると、入社後に少し不満を感じただけで、後悔してしまうかもしれません。納得感を持って働くためにも、優先順位が大切です。

面接では企業側と「共通認識」をすり合わる

面接はリアルな「一次情報」を得ることができる貴重な場です。転職後の後悔を防ぐためには、自身の重要ポイントを面接の場でしっかり確認しましょう。注意したいのは、言葉の定義を曖昧にしないこと。例えば、「早い段階で新規事業の立ち上げを任せたい」といわれたら、「早い段階とはいつか」「新規事業は決定事項なのか」まで、しっかりすり合わせをしておきましょう。また、内定後に「労働条件通知書」を受け取ったら必ず内容を確認し、疑問があれば面談などでクリアにすることをおすすめします。

転職先選びに悩んだ時の相談先

転職活動に迷いが生じたとき、第三者に相談することで迷いが晴れたり、不安が解消されたりするケースがあります。ここでは転職の相談相手の候補と、相談する際のポイントについて解説します。

家族やパートナー・友人

家族やパートナー、友人は、あなたの性格・志向・価値観などを理解しているため、それを踏まえた意見を聞けるでしょう。自身では意識していなかった「強み」に気付かせてくれることもあります。転職自体に迷っているとき、転職しても問題ないか相談したいときに適した相手です。

キャリアチェンジを検討している場合は、その業界で働いている友人に相談してみるのも一案です。業界の内情や今後の展望、人材ニーズなどについて尋ねてもいいでしょう。ただし、そうした情報はその友人の主観であったり、限られた一部の事情であったりする可能性もあります。すべてを鵜呑みにはせず、参考程度に留めておくことをおすすめします。

転職をした元上司・元同僚

会社を辞めて転職をしている元上司・元同僚は、今の会社で得た経験・スキルを活かして、次の職場で働いている可能性が高いと考えられます。「今の経験・スキルを転職活動でどう活かせるか」「前職と現職を比較してどう感じるか」などについて意見を聞くことができるでしょう。

ただし、そうした情報も、あくまでもその人自身の主観であったり、全体の一部のことだったりする可能性があります。その人が語ることが全てではないという認識を持って受け止めることが大切です。

転職エージェント

転職活動をしていると、ときに「自分自身が何を望んでいるのか」を客観視できなくなることもあります。転職エージェントを活用すれば、自身の経験・スキルの市場価値や今後のキャリアについて、客観的な視点で助言してもらえるでしょう。

最近は、オンラインで気軽に面談ができる転職エージェントも増えています。転職のプロと一緒に、現在抱えている課題や今後の目標を整理することで、迷いが解消され、納得度の高い転職を実現する可能性が高まるでしょう。

粟野友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

リクルートダイレクトスカウトは、リクルートが運営する会員制転職スカウトサービスです。リクルートの求職活動支援サービス共通の『レジュメ』を作成すると、企業や転職エージェントからあなたに合うスカウトを受け取ることができます。レジュメは経験やスキル、希望条件に関する質問に答えるだけで簡単に作成可能です。一度登録してみてはいかがでしょうか。