会社都合退職と自己都合退職の違いは?会社都合退職後の転職成功のポイント

会社側の事情による解雇など、「会社都合退職」の経歴がある場合、転職活動にはどのような影響があるのでしょうか。転職成功のポイントとあわせて、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタントの粟野友樹氏に伺いました。

会社都合退職とは?どのような場合に会社都合退職となる?

会社都合退職には、大きく分けて次の2つのケースがあります。

1.事業主からの働きかけによる退職

事業所の倒産・廃止などによる「整理解雇」や、希望退職の募集に応じての退職(人員整理が目的のもので、募集期間が3カ月以内のものに限る)、事業の縮小などに伴う退職勧奨に応じての退職、労働者の職務懈怠・勤怠不良などにより使用者が労働契約を解除する「普通解雇」など、事業主からの働きかけによるケースです。

なお、不正などの違反行為に対する制裁としての懲戒処分による「懲戒解雇」は、会社都合退職とは扱われません。

2.事業主事情に伴う、労働者判断による退職

給与の未払いや遅配、業績悪化による賃金カット、過度な長時間労働、セクハラ、パワハラといった会社や仕事の状況により、労働者が「辞めざるを得ない」と判断したことに正統性があるケースも、会社都合退職として扱われます。

自己都合退職との違い

自己都合退職は、労働者の事情で、労働者の判断によって退職するケースを指します。「会社に不満がある」「キャリアアップのため」「病気療養のため」「家庭の事情のため」などの理由による退職は、すべて自己都合退職となります。

退職理由ごとの、転職活動への影響

転職活動への影響度合いは、退職理由によって次のように異なります。

整理解雇や、希望退職の募集に応じる場合

求職者個人に責任はないので、選考に大きく影響することはありません。企業もやむを得ない事情だと受け止めます。業績不振などを起因とする退職勧奨の場合も同様です。

ただ、メディアで報じられていない、あるいは、企業の人事間で認知されていない企業の人員整理にかかわる退職の場合や、面接での発言内容の信憑性が怪しまれる場合などは、整理解雇や希望退職の募集の事実を確かめるために離職票の提出を求められる場合があります。

事業主事情に伴う、労働者判断による場合

この場合も、やむを得ない事情であると企業は受け止め、選考に大きく影響することはありません。ただ、面接などで把握できる情報は求職者本人の主観に基づくものであるため、客観的な事実を把握できる資料の提出が求められる場合があります。

例えば、セクハラ・パワハラが理由だった場合、離職票の提出を求められたり、給与の支払い遅延が理由だった場合、給与振込口座の入出金明細などの提出が求められたりすることがあります。

普通解雇の場合

書類選考段階でスクリーニングの対象となることや、内定した場合も契約社員からのスタートとなるケースもあります。

ただ、解雇の事実は偽らないほうが良いでしょう。前職を解雇されている事実は企業側が採用を検討する際にマイナスポイントとして映りやすいですが、少しでも前向きな印象に持っていくことが重要です。

履歴書にはどこまで書くべき?

どの場合も、履歴書には「会社都合により退職」と記載するだけで問題ありません。

ただし、おおむね面接で詳しい理由や背景を確認されるので、整理解雇や希望退職の募集に応じての退職、事業主事情に伴う労働者判断による退職の場合は、履歴書で理由を補足しておくと、面接で理解してもらいやすいでしょう。

会社都合退職での転職活動を成功させるポイント

採用する側も慎重になる面があり、求職者も不安を覚えることが多い会社都合退職後の転職活動を成功させるには、次の3点に留意して活動を進めるとよいでしょう。

1. 退職理由は、事実ベースで正直に答える

いずれの理由・事情も、開示できる範囲で事実に基づき正直に答えることが、企業が正確に情報を把握する上でも、自身の状況を伝える上でも重要です。ごまかして内定を得たとしても、のちのち事実が判明する事態となれば、内定取り消しになる可能性もあります。

2. 選考では、次のキャリアに前向きであることを伝える

特に、普通解雇や退職勧奨(労働者起因による)による退職の場合、企業は「能力が足りるのだろうか?」「会社員としての適性はあるのだろうか?」とリスクに考えるので、普通解雇あるいは退職勧奨(労働者起因による)による退職という事実を受けて、今後自身をどのように改善していくのかを説明しましょう。

また、希望退職の募集に応じて退職した場合も、「いい機会だと思って応募した」だけだと、計画性がないと受け止められるので、「希望退職の募集がキャリアを考えるきっかけとなり、今後のキャリアをこのように考えるようになった」など、次のキャリアについて前向きであることを伝えましょう。そうすることで、企業も社内に推薦する場合に前向きな理由を伝えることができます。

3. 転職エージェントを活用する

転職エージェントのキャリアアドバイザーは、次に挙げる3つの点において、会社都合退職後の転職活動の大きな助けとなってくれます。

●気持ちの整理・フォローをしてもらえる

求職者の「隠したい」という気持ちや、転職活動に対する焦りなどに対して、過去に同じような境遇から転職成功した人の情報の共有などを通して、フラットな気持ちに戻してくれます。

●選考通過率アップのための助言をもらえる

応募先の選定の仕方や応募書類の書き方、面接での伝え方などのアドバイスをもらえます。

●選考通過率アップのためのフォローを受けられる

企業も、転職エージェントから会社都合退職の経歴がある求職者の紹介を受けた際は、採用して問題ない人物かどうかを気にしてキャリアアドバイザーに詳細を確認・相談します。その際に、人物像や専門性・スキルなどをフォローしてもらえます。

また、普通解雇や退職勧奨(労働者起因による)による退職を経ての転職活動の場合、場合によって、求職者の同意のもと、前職ないし前々職の上司や同僚に、その人の働きぶりをヒアリングするリファレンスチェックを企業に働きかけてくれることもあります。

このように、会社都合退職の場合、転職エージェントは大きな力となってくれます。困っている状況や悩みをできるだけ正直に伝えて、サポートを受けることを検討してみましょう。

【アドバイザー】

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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