転職での市場価値とは?価値の決まり方と高める方法を解説

ミーティングの風景

日本では、長らく終身雇用がスタンダードだったこともあり、自分が社外でどの程度通用するのかを意識してキャリア構築しているビジネスパーソンはまだ多くはないのが現状です。では、初めて転職活動をするにあたり、自身の市場価値をどう認識すると良いのでしょうか。もしくは、ゆくゆくの転職を考えた時、自身の市場価値を高めるにはどのようなことを行ったら良いのでしょうか。組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

転職時の市場価値とは?

中途採用では、企業がすべてのポジションを常時募集しているわけではなく、その時その時で必要とする人材を募集し、採用が決まっていきます。そうした中で、求職者が希望通りの転職を実現できるかどうかは、転職時の「市場価値」によって左右されます。

そもそも市場価値とは?

転職市場における市場価値とは、人材に対する「需要」と「供給」のバランスによって決まる、企業が求職者を評価する指標のことです。簡単に言うと、例えばAという仕事があったとして「Aが供給できる人材に対して企業の需要が高まっている状況」と、「Aが提供できる人材の絶対数が少なく、供給が追いつかない状況」の両方が揃った場合、その人材は「市場価値が高い」ということになります。

市場価値を決める要素

市場価値は、「企業のニーズ」×「保有する経験(実績を生み出した思考や行動)・スキル、その希少性、再現性」×「年齢相応の期待値」を総合して、相対的にどれだけ多くの企業から求められるかで決まります。
例えば、ある若手人材が国内でも希少な職種に携わっており、そのスキルに対する企業ニーズが高ければ、たとえ経験が1、2年で実績が少なくても「市場価値が高い」と評価されるでしょう。こうした市場価値は相対的なものであり、常に変化します。同じ経験・スキルを保有していても、その時々のビジネスのトレンドや、社会情勢によっても、価値が上下します。

自分の市場価値を意識すべき理由

転職の市場価値は常に変化するものですが、折に触れて自身の市場価値を確認しておくのは大切なことです。転職するかどうかに関わらず、自分の現在地を知り、「強み」や「弱み」を客観的に理解しておくのは、自身のキャリアプランやキャリアビジョンを描くために不可欠だからです。
市場価値を把握できていれば、転職活動で経験・スキルや条件に合致した転職先を的確に探すことができ、希望のキャリアプランを叶えることに役立ちます。また、普段から「自分に足りないもの」を意識してスキルを磨いておけば、会社の事業が縮小される、リストラに遭うなどの不測の事態が起きたときも、キャリアの選択肢を広く持って働ける可能性が高まるでしょう。

自分の転職市場価値を知るための4つの方法

自分の転職の市場価値を知るためには、自身のキャリアの社外的な評価について把握することが必要です。そのための方法を4つご紹介しましょう。

転職エージェントに相談し、フィードバックを受ける

転職エージェントは、企業の内情を含めて、転職市場のトレンドを把握しています。これまでの経歴や、希望する業界、年収などの情報を登録することで、多くの人材の転職支援をしてきた経験豊富なプロフェッショナルから、客観的な視点で話を聞くことができるでしょう。例えば、「今の転職市場での評価はどうか」「保有する経験・スキルはどのような業界や企業から求められるか」「希望の業界へ進める可能性はどの位か」などについて、現実的な求人ベースでアドバイスを受けることができます。なお、転職エージェントは1カ所に限定せず、複数に相談すると、多角的な視点からのアドバイスが得られるのでおすすめです。

転職サイトやビジネスSNS等の転職サービスに登録する

最近は無料の転職サービスが数多くあり、Web上で登録ができるものもあるため、手軽に始められます。まず、転職サイトやビジネスSNSに掲載されている求人情報を読むことで、自身の経験・スキルにどれほどのニーズがあるかが把握できます。さらに自身のキャリアや転職の希望条件を公開しておくと、興味を持った企業や転職エージェントからスカウトが届く、スカウトサービスも、新たな転職サービスとして注目されています。
届いたスカウトの件数や内容から、「可能性があるのはどのような求人や企業の募集なのか」「年収などの希望条件はどの程度実現しそうか」などが確認できるでしょう。

実際に企業に応募し、転職活動を行ってみる

前述の方法と比較すると手間も時間もかかりますが、最もリアルに市場価値を把握できるのは、実際に企業に応募して転職活動を行うことです。複数企業の面接を受けることで、「自分のどの経験が評価されるのか」「自分の年齢に求められる役割に足りていない経験・スキルは何か」「今後伸ばすべきスキルは何か」など、多くのことに気づかされるでしょう。「転職するかどうか迷っている」という段階であれば、自身の市場価値を知るためにも、企業に応募してみることは決して無駄ではありません。

副業など他の企業等で働く経験を積んでみる

副業解禁の流れが加速しており、本業と両立しながら外での仕事を経験できるチャンスが広がってきています。これまでとは仕事の進め方や前提が異なるポジションで働くことによって、「自分には何ができる・何ができない」ということが明確に分かるようになってきました。また、現職の業務では当然のスキル・ノウハウなどが、他企業や異業界では非常に重宝されたというケースも少なくありません。もし、副業先で自身の経験・スキルが活きる機会が多ければ、世の中で困っている人が多い分野であることの裏返しであり、自分にはそれを解決できる強みや専門性があると分かるでしょう。

転職市場価値を高めるコツ

将来を見据え、自身の市場価値を高めていくためのコツをご紹介します。

キャリアの棚卸をして市場価値を把握する

まずはこれまでの職務内容を振り返り、キャリアの棚卸をすることで、自身が培ってきた経験・スキルを言語化してみましょう。自分の「強み・弱み」を明確にした上で、上述の方法を参考にして、現在の市場価値を正しく把握しましょう。転職市場全体から自身の現在地を俯瞰することで、今後どのようなキャリアを積んでいくか、どのように軌道修正を図るかなどの方向性も検討しやすくなります。また、社内外を問わずロールモデルになる人がいれば、その人とのギャップを把握することでも自分の立ち位置が確認できます。キャリアについて相談してみるといいでしょう。

現職で職務経歴に明記できる経験・スキルを積む

自身の市場価値を確実に上げるための方法は、まず現職で経験・スキルを積み、結果を出していくことです。例えば、マネジメントの経験を積む、新事業の立ち上げを主導する、業務改善に取り組む、新たな部署の組織作りを担うなど、職務経歴書に明記できる実績を重ねることを考えましょう。企業は、経験によって培った思考力や行動力を入社時に再現して欲しいと期待し、それを評価します。従って、転職で次のステップに進む際に、市場価値を上げやすくなると言えるでしょう。

社内外で新たなことに取り組む

キャリアプランの実現のために「プラスアルファすべきことは何か」を考え、新たな経験を取りに行くことも大切です。例えば、活かせる資格の勉強をする、経験を積む土台を作るために社内の研修制度を使う、社内公募のプロジェクトに手を上げる、スキルを磨くために副業をするなど、さまざまな方法があるでしょう。

もしも、目指す姿に向けて、必要な専門性を身につけるのが社内では難しいのであれば、「経験を取りに行くために転職する」という考え方もあります。キャリア構築のために、今の自分にはどのようなアクションが必要かを考えてみましょう。

転職市場の情報を積極的に収集する

転職市場に関する情報を積極的に取りに行くこともおすすめします。転職エージェントを利用している場合は、担当のキャリアドバイザーと定期的に面談をしましょう。その時々に出ている求人をベースに、自身の市場価値の確認、転職市場のトレンドの確認をすることによって、キャリアの方向性を修正したり、転職市場の相場観を見極めた上でベストな転職タイミングを把握したりすることもできるしょう。

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粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。