【マーケティングの転職】No.1ヘッドハンターに聞く年収・キャリア形成・最新動向

リクルートダイレクトスカウトが提携する約3,700名のヘッドハンターの中から、マーケティング職のハイクラス(年収800万円以上)転職決定人数部門ランキングで2021年にNo.1を獲得したヘッドハンター、パソナの白石沙織氏にインタビュー。マーケティング職の最新転職動向とともに年収やキャリアのポイントについて伺いました。最近担当されたケースで高年収や満足度の高い転職をかなえた事例もご紹介します。

【マーケティング職の転職トレンド】昨年後半から求人ニーズが急拡大。企業の重要戦略を担う「機密案件」も増加

マーケティング領域のハイクラス人材ニーズは、2021年後半から急速に伸びています。昨年の転職決定人数は、一昨年に比べて4割以上増えています。

各社ともコロナを機に、今までの事業戦略の転換や、オフラインからオンラインへのシフトなどの大変革を迫られました。そのため、新規事業展開や、海外進出・エリア拡大などに伴うマーケティング全般を担う人材や、オフラインのデータをもとにオンラインの戦略を練られる人材などのニーズが高まっています。

これまで採用を絞っていた企業群も、足元ではその多くが「攻めの経営」に転じています。それに伴い、攻めのマーケティングができる即戦力のニーズが急増。特に新規事業にかかわる案件の場合は、ファンド経由で秘密裏に動いたり、経営トップ直々に「コンフィデンシャルに求人をしたい」と相談を受けたりするケースが増えています。

【転職市場の今後の見通し】需給ひっ迫で採用未充足の企業が多く、旺盛な採用ニーズが続く

白石沙織氏

業界や企業規模問わず、マーケティング職の需要が増えているため、多くの企業で採用充足できていないのが現状。自社の戦略を支え、課題解決に動けるマーケティング職はどの企業でも引く手あまたの状況が続いています。

特にハイクラス人材へのニーズは高く、マーケティング部門を拡充するため責任者候補を採用したいという企業も少なくありません。したがって、高いスキル・経験と専門性に加え、ピープルマネジメント経験のある人はとりわけ高く評価されています。これまでマーケティング専任者を置いていなかった中小・ベンチャーからの要望も増えつつあり、しばらく求人ニーズは旺盛な状態が続くと見られます。

【決定年収の傾向】大きな変動はないが、細かい条件を備えたハイクラス人材は厚待遇で迎えるケースも

決定年収はコロナ前と大きな変動はありませんが、ハイクラス人材においては企業が求める条件に合った人材は高い年収を提示する例が増えています。

後に詳しく説明しますが、ハイクラス人材の求人ニーズは求めるスキルレベルが高く、求める経験も個社ごとに細分化しています。その求める条件にピッタリ合った人材については厚待遇で迎え入れるケースも増えつつあります。

【企業が求める人材像とキャリアのポイント】求める条件は、企業の戦略ごとに細分化。要望レベルも上がっている

マーケティング領域の求人数は、コロナ前の水準に完全に戻っています。
コロナ前は、例えば広告運用ができる人、MAツールが使える人など、現場で手を動かせるメンバークラスの求人が多かったのですが、足元では新規事業や海外進出・拡大など経営戦略に紐づいて活躍できるコア人材を求める案件の比率が増えています。

一方で、企業のニーズは細分化し、ハイクラス人材への要望レベルはかなり上がっていると感じます。
例えば、海外進出をもくろむ企業からは、「この国の中の、このエリアで、この年齢層に対するマーケティングを経験している人」などのピンポイントな要望を受けることが多く、かつ進出エリアの経済動向だけでなく文化、風土、宗教理解などまで求められるケースもあります。
つまり、マーケティング経験が長いからいいというわけではなく、各企業の戦略と課題にいかに合致しているかがポイント。少しでもずれがあると、企業と求職者双方にとって不幸な転職になってしまう恐れがあります。精度の高いマッチングを行うべく、我々ヘッドハンターは決裁者に細かいヒアリングを行い、求人背景の理解に努めています。

【求職者側の動き】会社や業界の成長に貢献したいという前向きな求職者が動き出している

白石沙織氏

コロナ禍当初は、勤務先の業績不振や早期退職募集に伴う先行き不安から転職を考える方が大半でした。しかし足元では、自身の経験・スキルを活かして新たなミッションに取り組みたい、企業の成長に貢献したいという前向きな思いを持って動いている方が増えていると感じます。また一部には、「自身の働きが社会貢献につながる企業」を条件に転職先を探す方も出始めています。
特にハイクラス人材は、転職で年収やポジションを上げるだけでなく、「仕事を通じて世の中全体をよくしたい」と考える方が一定数います。

あらゆる業界出身者や年代の方が動いているという印象ですが、外資系企業から日経グローバル企業に転身するケースが増えていると感じます。少し悲しい話ですが、グローバル展開する外資系企業から見て、日本マーケットの魅力が相対的に低下し、日本ブランチを縮小する企業が増加。かかわれる業務や責任の幅が狭まり、「もっと攻めの仕事がしたい、自身の領域を広げたい」との思いで外資を飛び出し、日本企業の門を叩く方が目立っています。

マーケティング職の高年収&満足度の高い事例TOP3を紹介

企業が求める高く細かい要望に合った、経験・スキルを持った人材が高く評価されています。求職者側が応募企業のニーズに合わせた自己PRを行ったことも、年収アップにつながっています。実際の事例を紹介します。

【Case1:40代前半】ビジネス縮小の外資系から日系グローバル企業に転職し、年収100万円アップ

外資系エンターテインメント企業でPR・マーケティングを担当していたAさん(40代前半・女性)。「もっとマーケッターとしてかかわれる領域を広げたい」との思いを持っていましたが、日本ブランチのビジネス縮小が決まり、当社に相談に来られました。

ご紹介したのは、日系のグローバル消費財メーカー。IMC(統合型マーケティング)を任せることができる人材を求めておられたので、領域を広げたいAさんの志向に合致します。同社は海外展開も行っており、外資系でマーケティングの最前線で長く経験を積んできたAさんを高く評価。女性管理職候補を増やしたいという意向もあったため、とんとん拍子で話が進みました。

年収は700万円弱から800万円にアップ。現在は、あるブランドのIMCの責任者として、オンライン展開や海外展開に関するマーケティングに注力。各拠点の戦略立案や、上がってきた課題の解決など、海外拠点を統括する立場も担っています。

【Case2:30代後半】ニッチ分野でのマーケ経験が買われ、年収約700万円→900万円に

ニッチ分野でトップシェアを持つ精密機器会社で、マーケティング経験を積んできたBさん(30代後半・男性)。さらなるステップアップを目指して転職活動に取り組んでいましたが、転職回数が多い点がネックになっていました。

ただ、Bさんはその分野のマーケティングでは突出したスキル・経験を持った人材。海外でのマーケティング経験も豊富です。彼の力を求めている企業は必ずあるはず、とさまざまな企業のニーズを探っていく中で、ある総合商社の求人案件に注目しました。

同社はアフリカで新たな事業展開をもくろんでおり、マーケットリサーチ・分析からアライアンス先の開拓まで任せられる人材を求めていました。同社が手掛ける新規事業はBさんが手がけているニッチ領域と近しく、即戦力になれると確信しました。
当初は、人事担当者がBさんの転職回数の多さ、そしてTOEICを受けていない点を不安視し「条件に合わない」と二の足を踏んでいましたが、事業責任者と直接会話をして、面接の機会を設けていただくことに。

実際に会ってもらったところ、求める経験・スキルをBさんがほぼ持ち合わせていることがわかり、企業からの評価が急上昇。Bさん自身も、これまでの経験がフルに活かせることにやりがいを覚え、マッチングが実現。年収は約700万円から約900万円に大幅アップしました。

【Case3:40代半ば】新規事業展開に必要な経験をすべて備えている点が評価され、ポジションもアップ

ある食品専門商社では、新たな食材に進出するうえで、海外からの仕入れ・調達、市場リサーチ、商品企画などを一貫して任せられる人を求めていました。社内にはその食材の知見がないため、各エリアのサプライヤー開拓も手掛けられることが条件。かなり難易度が高い案件でした。

そんな時に、本州以外にある国内食品商社で働くCさん(40代半ば・男性)の経歴に注目。該当食材を長く担当し、調達やマーケティングを幅広く担当しており、経験は申し分なし。同社も乗り気でした。

Cさん自身は今すぐ転職を考えているわけではなく、東京に出てくることにも不安感を抱いていましたが、面接で詳しく話を聞くうちに考え方が変化。経験を活かしつつも新しい事業の立ち上げに責任者として一から関われること、サプライヤー開拓などにも携われることに惹かれ、「もう1度大きなチャレンジをしてみたい」と転職を決意してくれました。
入社時の年収は30万円アップの850万でしたが、すぐに力を発揮し成果が評価されたことで、さらにポジションもアップ。それに伴い年収も上乗せされたと伺っています。

【マーケティング職のハイクラス転職のポイント】求人の背景をつかみ、それに沿って経験・スキルをアピールすることが大切

マーケティング領域では、求人の背景を理解することが大切だと考えています。
ハイクラス人材の求人には、その会社のミッションや戦略、そして経営課題が隠れています。求人の裏を読み、背景をつかむことが転職成功の最大のポイントです。

例えば、求人広告に「増員」と書かれているだけだったとしても、その裏には例えば「新規事業に着手するため」「オンライン展開が好調で人員が足りないから」「コロナが落ち着き、再び海外展開を積極化するため」など、増員する具体的な背景が必ずあります。自分なりにその会社の情報を集めて、背景をつかんでおきましょう。前述のように、企業ごとにニーズが細分化しているので、背景をしっかり把握しておかないと、見当違いの経験・スキルをアピールしてしまう恐れがあります。

高年収で決まるハイクラス人材は皆さん、応募前にその企業のことを徹底的に調べ上げ、情報収集しています。相手を知れば「自分はこのように貢献できる」と数ある経験・スキルの中から企業に合ったものをアピールすることができ、結果的に高く評価され年収も上がることがわかっているからです。

情報がなかなか収集できない場合は、企業に入り込み、求人ニーズをつかんでいる転職エージェントにご相談いただければと思います。どの経験・スキルがその企業に合致するのか、ともに整理しアドバイスすることも可能ですので、我々をうまく活用してほしいですね。

白石沙織氏

株式会社パソナ キャリアアドバンテージ事業部コンシューマープロダクツ&サービス統括部 部長

大学卒業後、ディスコ入社。法人営業として、新卒およびグローバル採用支援を行う企業様に対し、採用広報ブランディング、採用フロー設計、面接力が向上施策等の導入に従事。その後パソナに入社し、人材紹介事業部にて企業担当としてインターネット業界を担当したのち、経営者・PEファンドへの総合営業に従事。現在は食品・化粧品・日用消費財業界および商社を担当する統括の責任者となる。経営層からのコンフィデンシャル案件での入社サポート実績など多数。国家資格キャリアコンサルタント取得。

リクルートダイレクトスカウトは、リクルートが運営する会員制転職スカウトサービスです。リクルートの求職活動支援サービス共通の『レジュメ』を作成すると、企業や転職エージェントからあなたに合うスカウトを受け取ることができます。レジュメは経験やスキル、希望条件に関する質問に答えるだけで簡単に作成可能です。一度登録してみてはいかがでしょうか。