【転職決定人数部門】No.1ヘッドハンターに聞く年収・キャリア形成・最新動向

リクルートダイレクトスカウトが提携する約3,700名のヘッドハンターの中で、2020年、2021年※と2年連続でハイクラス(年収800万円以上)転職の決定人数部門ランキングNo.1を獲得したヘッドハンター、株式会社エリートネットワークの髙橋寛氏にインタビュー。ハイクラス人材の最新転職動向とともに年収やキャリアのポイントについて伺いました。最近担当されたケースで高年収や満足度の高い転職をかなえた事例もご紹介します。

※2020年は、リクルートダイレクトスカウトの前身である「キャリアカーバー」でのヘッドハンターランキング(提携ヘッドハンター約2,800名)による

【転職トレンド】海運、総合商社、総合不動産など業績好調企業が「攻めの採用」を拡大

当社は主に、大手上場企業を中心とする優良企業と、ハイクラス人材とのマッチングを手掛けています。私は1997年の創業からジョインし、約25年に渡り、さまざまな業界の大手企業と関係性を築いてきました。各業界、その中に位置する個別の各企業を熟知するには膨大な時間を要するため、人材業界では1つの業界や単一の職種に対する強みを持つことが一般的ですが、あえて、業界を限定せず、広く深く接点を持ち、全方位から情報を得ることを重要視してきた結果が、決定人数No.1に結び付いたのではと考えています。

加えて、当社は本社である銀座のオフィス1拠点に集中して人員を配属することにより、無用の転勤や人事異動を回避し、顧客企業と10年~20年の永続的な信頼関係を構築してきました。その結果、当社のみがお預かりしている「個別案件」を抱えていることも要因でしょう。

前述の通り、日ごろから特定の業界に偏らず全業種の転職マーケットを見ていますが、コロナの影響を大きく受けた一部の業種を除いて求人意欲はコロナ前の水準に完全に戻り、かつ旺盛になっています。

特に、業績が好調で企業体力もある海運大手や総合商社、総合不動産などは、「今が優秀な人材を採用するチャンス」と捉え、コロナ前に比べ1.5~2倍ほど採用人数を増加。呼応するように求職者の方からのご相談も増えています。求められる人物像や社風、働き方などに特色のある企業も多いため、十分なカウンセリングの上ご推薦しています。

職種別にみても、バラつきなくまんべんなく採用ニーズがあるという印象ですが、特にIT・DX人材やエンジニア、SDGs人材はどの業界も引く手あまた。そもそも採用枠に対して、転職市場の母集団自体が不足している状態なので、一定のスキルを有する人材に対しては、企業間で引っ張り合いの様相であります。

【転職市場の今後の見通し】少なくとも向こう半年は旺盛な採用ニーズが続く

髙橋寛氏

人材不足はすべての企業共通の課題であり、好業績企業を中心に旺盛な採用意欲が当面続くと見ていますが、半年先のことはわからないのが今の世の中。2008年のリーマン・ショックも、今回のコロナ禍も、誰も予測していなかったと思います。したがって、我々も必ずしも楽観視はしていません。

ただ、どんな時代であっても求人ニーズ自体は存在します。そのニーズを顕在化させ、その時々の情勢に合わせながら高い精度でマッチングを行うのが人材紹介会社の使命。我々も企業も、そして転職希望者の方々も、変化に対する柔軟な対応力を磨き続けることがますます大切になると考えています。

【決定年収の傾向】好業績企業の採用増加に伴い、必然的に年収提示額も上昇傾向に

業績好調企業が採用を増やしているので、必然的に決定年収も上がっています。
伝統ある大手企業の多くは、ベースとなる賃金テーブルは決まっており、そこが大きく変動することはありませんが、利益が増えた分を賞与で還元しています。求職者への年収提示額も、その数字を基に決められるため、ここ数年は上昇傾向にあります。

なお、時には私たちから企業側に年収アップを働きかけることもあります。例えば、同業他社に比べて賃金テーブルが低く、そのために採用で競り負けている場合、ベースの給与自体の見直しを提案するケースもあります。もちろん、従前からの強固な信頼関係がベースにあってこその提案ですが、実際に給与改定に動き、その後の採用に成功している上場企業も何社も存在します。
よい人材を採用するために必要であり、かつ求職者のメリットになると思われることは、たとえ企業にとって耳障りの悪いことであっても積極的に提案する姿勢を大事にしています。

【企業が求める人材像とキャリアのポイント】スキルや経験はもちろん「相性」を重視する傾向が強まる

求人件数が増えている一方で、質を重視する姿勢はどの企業も変わりません。自社の業務内容や抱えている課題に、よりフィットしたスキル・経験を持つ人材を厳選採用しています。

そしてどの企業も、自社との「相性」を重視しています。相性は、求職者の人物的素養、転職にあたりこだわりたい軸や避けたい事柄などをじっくりヒアリングしながら測っていますが、最も重要なポイントが「就労観」。どちらがいいというわけではないですが、できるだけお金を稼ぎたい人と、やりたい業務に没頭したい人とでは、たとえ似たようなご経歴であったとしても、ご紹介できる案件はおのずと変わってきます。

就労観に関する本音は、なかなか言い出しづらいものです。中にはご自身の本当の就労観に気づいていない(あるいは、言語化できていない)人もいます。そして、言語化できていたとしても、それを実現できる場所はどの企業のどのポジションなのかの答えを持っている方は多くありません。ですが、このポイントがずれていると、入社後にミスマッチが起こりやすく、双方にとって不幸。面談で時間をかけて本音を引き出し、就労観のマッチングを図るように努めています。

【求職者側の動き】総じて活発だが、特に国家公務員のマッチング事例が増加

髙橋寛氏

大局では大きな変化はなく、あらゆる業界の人が動いているという印象ですが、近年特徴的なのは、国家公務員総合職の動向。いわゆる霞が関勤務の「キャリア組」と呼ばれる人たちが、一般企業に転職するケースが増えています。
転職理由は大きく分けて「ワークライフバランスの改善」「仕事の手触り感がない、介在価値を感じにくい」の2つ。当社が国家公務員総合職の転職で数多くの実績を出していることから、口コミで相談にいらっしゃる方が増えており、結果的に決定人数も増えています。

国家公務員総合職の強みは、「スーパーゼネラリスト」である点。1年タームでの異動により業務内容が変わり、他の省庁への出向機会も多いので、幅広い知識や変化に素早く対応して短期間で成果を上げる力に長けています。価値観の異なる相手との合意形成能力や抜群の文書作成能力も買われています。

昨今、採用面接の場では専門性を評価する風潮がありますが、伝統的な大手名門企業の事務系総合職採用においてはまだまだジョブローテーションが多いのが現状。専門性を磨くことも大事ですが、こと名門企業に関してはハイクラスであっても「入社したらどんな仕事・職種にもチャレンジしたい」という就労観の人のほうが好まれる傾向にあります。したがって、国家公務員の実務経験とポテンシャルの高さを評価し採用する大手企業も少なからずあります。

そして求職者側も、「何をやりたいか」のみならず「誰と働きたいか」「どんな風土で働きたいか」を重視する傾向が強まっているため、大手企業とのマッチングがしやすくなっているとも感じます。

高年収&満足度の高い事例TOP3を紹介

今の勤務先よりも業績が好調な企業に転職することで、年収アップを実現する人は増えています。さらに相性をも重視することで、年収もやりがいも得られるケースも増えています。

【Case1:40代後半】投資銀行部長職→M&A仲介会社の役員に転身、年収3500万円+インセンティブを実現

投資銀行で部長職に就いていたAさん(40代後半・男性)。「さらなるステップアップを目指したいけれど、今の職場では役員クラスに上がるのは難しい」と、相談にお越しになりました。

Aさんにご紹介したのは、大手M&A仲介会社。同社はこれからの法人営業戦略を描ける役員候補を求めており、Aさんの要望に合致すると考えたのです。
もちろん、相性も合うと直感。同社は顧客へのコミットを重視する企業ですが、Aさんは長らく法人営業畑で顧客の上場企業への深耕を強化し、信頼関係を深めてきた人物。仕事に本気で向き合うスタンスもぴったりで、社長面談ではものの5分で意気投合しトントン拍子で転職が決定しました。

Aさんは前職での実績が高く、年収はインセンティブを含め約5000万円以上でした。多少下がることも考えられましたが、決定年収は3500万円+インセンティブで合意。Aさんの頑張り次第の部分はありますが、実質前職同額を維持できる見通しです。

【Case2:30代半ば】サステナビリティ経営の知見を活かし、自動車メーカーから財閥系総合商社に転職、年収1000万円→1500万円にアップ

中堅自動車メーカーで、エンジニアとしてサステナビリティ対応に携わっていたBさん(30代半ば・男性)。サステナビリティに関する知見を活かし、広くカーボンニュートラルに関わりたい、企業に対して自社製品だけでなくさまざまなソリューションを提案して環境問題に対応したいとの思いから、総合商社への転職を目指していました。

総合商社はどこもサステナブル関連ビジネスを積極化しています。しかし、自社内に知見を持つ人は少なく、転職市場にも経験者はほとんど存在しません。そんな中、開発現場の最前線でサステナビリティに関わってきたBさんのキャリアは極めて貴重。さまざまな転職可能性が考えられましたが、中でもサステナビリティ経営に本腰を入れている財閥系の総合商社への転職が決まりました。

年収は、前職の1000万円から1500万円に大幅アップ。利益を社員に還元する仕組みがしっかりと整っている業績好調企業への転職で、年収水準そのものを引き上げることができました。

【Case3:30代前半】国家公務員から大手生保の商品企画に転職、年収650万円→1000万円に増えワークライフバランスも実現

霞が関のある省庁で国家公務員総合職として活躍してきたCさん(30代前半・女性)。仕事にやりがいは感じていたものの、毎月の残業が約150時間にも上り、このまま同じペースで働き続けられるだろうか…と不安を抱えていました。まだ小さい子どももいるため、「民間企業に移って、仕事と子育てを両立しながらワークライフバランスを整えたい」と相談に来られました。

そんなCさんに紹介したのは、大手生命保険会社の商品企画職。少子高齢化など今後の社会情勢を踏まえ、新しい視点で商品を設計し、料金設定や販売戦略まで一気通貫で手掛けられる人材がほしいというニーズをお持ちでした。国家公務員は、日本でこれから起こるであろう事象を予測し、環境を整えたり法を整備したりするのが主な仕事。保険会社に蓄積されている膨大なデータを読み解き、今後を予測するのは得意であろうと期待し、Cさんにオファーを出されました。
Cさん自身も、ワークライフバランスを担保しながら、新しい業務にチャレンジできることに魅力を感じ、マッチングが成立。年収は650万円から1000万円にアップしました。

【ハイクラス転職のポイント】転職成功は「準備」がすべて、企業研究と面接準備の徹底を

ハイクラス転職を成功させるには、事前準備がすべて。特に応募先企業の事業内容は事前にとことん調べるべきです。私は相談にお越しになる方々に、「1社につき最低5、6時間は勉強してほしい」と伝えています。各社のホームページをくまなく精読することはもちろん、上場企業ならば有価証券報告書にも目を通しておくべきです。

相手を知れば、自身のどんな経験やスキルが活かせると思うかをより具体的に自分の言葉で伝えられますし、自身の志向や就労観と合いそうかどうか見極めることもできます。勉強すればするほど、希望に沿った企業に転職できる可能性も高まるはずです。

そして、面接準備も重要です。「見ず知らずの人に自分自身を売り込んだ経験」はほとんどの人が持ち合わせていません。たとえ営業の第一線で多数のクライアントと相対してきた営業職の人であっても、面接の場ではうまく自己アピールができないケースが多いのです。
面接で思うように腹から声が出せない人も、意外に多いです。普段、メールやチャットで会話する機会が多く、ましてやリモートワークが増えていることから、張りのある声を発する機会そのものが減っています。いざ面接に臨んでも弱々しい声しか出せず、テンポの良いコミュニケーションがうまくできないまま終了してしまうケースをいくつも見てきました。
大切なのは、この事実を自分で直視し、認識すること。そして自らギャップを埋める努力をすることです。当社は面接対策も徹底的に行っているので、是非、我々のような転職カウンセラーと模擬面接でトレーニングしてほしいですね。

そして、我々をご活用いただく際には、是非「自己開示」を徹底してください。仕事内容について、希望する諸条件について、そして就労観についてなど、転職に関するあらゆる本音をぶつけてもらえれば、我々もそれを叶えるために本気で向き合います。ともに未来について話し合い、転職成功のために今何をすべきかを徹底的にすり合わせしますので、是非、すべてをさらけ出してほしいと願っています。

髙橋 寛氏

株式会社エリートネットワーク 執行役員

1987年4月に新卒で株式会社リクルートに入社。以来、人材採用事業を中心にキャリアを構築し、同部門の千代田営業部マネージャーも歴任し、11年間在籍。1998年、リクルート退職と同時に、株式会社エリートネットワークの立ち上げに参画し、現在に至る。以降、法人営業(企業担当)兼転職カウンセラーとして、約25年、一貫して転職支援業務に従事している。直接取材した企業は2,000社を超える。

リクルートダイレクトスカウトは、リクルートが運営する会員制転職スカウトサービスです。リクルートの求職活動支援サービス共通の『レジュメ』を作成すると、企業や転職エージェントからあなたに合うスカウトを受け取ることができます。レジュメは経験やスキル、希望条件に関する質問に答えるだけで簡単に作成可能です。一度登録してみてはいかがでしょうか。