中央省庁で働くIT未経験のハイクラス人材を日系大手SIerに紹介成功
“GOOD AGENT AWARD 2020”金賞

梅澤氏と松田氏の共通点は、ITエンジニア出身のコンサルタントであり、IT業界の「不」の解消を目指していることだ。中央省庁で働くIT未経験のハイクラス人材を日系大手SIer(システム開発を請け負うIT企業)に紹介した今回の事例には、2人の想いが詰まっている。

「日系大手SIerはGさんのような方を必要としている」と仮説を立てた

話は、梅澤氏が、求職者・Gさんから転職サイト上で「相談に乗っていただけないか」と連絡を受けたことから始まる。Gさんは、20年以上にわたって中央省庁で働いてきた方で、民間企業への強い転職意向を持っていた。今後、自分がグローバル規模で日本に貢献するには、官僚でありつづけるよりも民間企業に移ったほうがよい、と考えていたのだ。

その時点で、梅澤氏は1つの仮説を立てた。「転職サイトのGさんのプロフィールを拝見して、日系大手SIerなら可能性があるのではないか、と感じました。なぜなら、日系SIerには、中央省庁にもっと深く入り込みたい、という課題を持つ企業が多いからです。中央省庁のシステム案件を受注するには、各省庁のお作法を知らないと難しい。しかし、多くの日系SIerには、各省庁の具体的な業務知識を持った人材が不足しているのです」(梅澤氏)。

梅澤陽子

実は、Gさんには、ITに関する経験・スキル・知識はまったくなかった。しかし、海外駐在経験があり語学が堪能で、マネジメント経験も豊富だった。「私自身、大手SIerで働いていたのでわかるのですが、大手SIerが、IT未経験のハイクラス人材を即戦力として採用した事例は、おそらくほぼゼロです。しかし私には、DX時代のSIerに第一に求められるのは、業務視点でのシステム開発・運用であり、Gさんのような業務知識に長けたハイクラス人材を採用する必要がある、という確信がありました。Gさんは語学・マネジメントスキルなどのポータブルスキルを豊富に持ち合わせており、熱意もありましたから、IT未経験の壁さえクリアできれば、採用可能性は十分にあると思いました」(梅澤氏)。

以上の仮説を立てた上で、梅澤氏はGさんと電話で面談し、日系大手SIerを紹介する同意を得た。では、どの企業を選ぶべきか。梅澤氏は、企業動向に詳しい松田氏に相談した。

H社は中央省庁経験者を史上初めて採用した

梅澤氏の話を受けて、松田氏が選んだのはただ1社、H社だけだった。「当時、H社は中央省庁向けの営業職を募集していました。Gさんの希望どおり、将来グローバルで活躍するチャンスが見込める会社でもありました。また、H社は梅澤さんの仮説に当てはまる条件を備えており、省庁の現場知識を強く求めている可能性が高いと考えました。ただし、H社は採用要件を細かく書き込むタイプの会社で、営業職の採用要件に書かれた主要ターゲットは、Gさんとはかけ離れていました。職務要件の観点のみでは書類で不合格となってしまう可能性も有りましたが、『H社の事業課題を解決できるのはGさんの経験とスキルである』ということを強く伝え、ご面接の機会を得ました。」(松田氏)。

松田 美由紀

面接時は、梅澤氏がGさんに何をどのように話すべきかを丁寧にアドバイスし、松田氏はクライアント企業とのコンタクトや、そこから得られた気づきを面接対策アドバイスとしてGさんにフィードバック。結果、Gさんは高く評価されて内定が決まった。年収も下がらなかった。Gさんの豊富な業務知識と熱意とポータブルスキルが、IT未経験の不足感を上回ったのだ。なお、H社は長い歴史のなかで、これまで中央省庁経験者を採用したことが一度もなかった。Gさんが史上初である。

業界全体が中央省庁経験者並びに他業界の人材を盛んに採用するきっかけになれば嬉しい

Gさんは、最初からH社への入社意向が極めて高く、転職活動中はずっと第一志望だった。グローバルで活躍しながら、日本のために役立てる場所だ、という想いが強かったのだ。H社の内定が決まった時点で即決し、これから入社する予定となっている。

松田氏は、今回のような事例こそ、まさに実現したかったことだと語る。「私は2019年まで15年間、大手SIerでSEやPMとして働いていました。転職コンサルタントに転身したのは、IT業界には人材の大きな偏りがあると強く感じていたからです。会社を越えた適材適所を実現し、人材の偏りというIT業界の『不』を解決するために、コンサルタントになったのです。いま世界はDX時代を迎え、ビジネスとITの一体化が急速に進んでいます。大手SIer に、Gさんのような業務知識の豊かなIT未経験のハイクラス人材が必要とされる時代がきたのです。コンサルタントとして実現したかった適材適所の1つです」。

梅澤氏は、企業もカスタマーも気づいていない選択肢を提示することこそ、人材紹介に最も期待されていることだと言う。「私たちの最大の強みは、採用状況や業界動向を俯瞰的に見て、いま業界に必要とされている新たなポジション、新たな採用をご提案できる点にあります。私としては、今回の事例が、H社はもとより業界全体が中央省庁経験者や他業界での活躍人材を盛んに採用するきっかけになり、自己実現できるひとが増えれば、これ以上嬉しいことはありません」。

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梅澤陽子 松田美由紀

株式会社リクルートキャリア

梅澤 陽子(うめざわ ようこ)
ハイキャリアコンサルタント。新卒で大手SIerに入社しシステムエンジニアとして主に流通業界向けシステム開発に従事。その後、リクルートキャリアにて、幅広いIT業界のお客様約300社の中途採用をご支援。

松田 美由紀(まつだ みゆき)
ハイキャリアコンサルタント。日系大手SIerで15年ほどにわたって、SE・PL・PMとしてさまざまなプロジェクトに参画した後、2019年にリクルートキャリアに入社して現職。