転職を検討する際、候補企業を選ぶ基準の一つとして重要なのが「社風」です。経験・スキルがマッチしていても、給与や待遇に満足していても、社風が合わずにストレスを抱えるケースは少なくありません。社風に注目する必要性、自身に合う社風の見極め方などについて、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏が解説します。
社風とは
「社風」とは、人によって解釈が異なる言葉ですが、端的に表すなら、「その企業独自の雰囲気」といえるでしょう。その雰囲気は、企業が歩んできた歴史、従業員同士の関係性、仕事の進め方など、さまざまな要素が重なり合って醸し出されるものです。
そして、同じ企業でも人によって社風の感じ方は異なり、心地良く働ける人もいればストレスを抱えてしまう人もいます。
すべての人にとって「良い」社風はあり得ません。働く人の主観によるため、「良い・悪い」ではなく「合う・合わない」という観点で語るべきものであるといえます。
類似した言葉に「組織風土」「組織文化」などがあります。「組織風土」は年月を経て自然に形成されたもの。一方、「組織文化」は「価値観」に近く、合併や経営方針など環境の変化に応じて変わることもあります。「組織風土」と「組織文化」の掛け合わせによって、「社風」を生み出すといえるかもしれません。
転職で社風が合う企業を選ぶメリット
転職活動においては、社風にも注目して候補企業を選ぶことが重要です。その理由は以下のとおりです。
イキイキと働ける
社風が自分に合っていると、職場の空気に自然になじむことができ、居心地の良さを感じられます。また、その場にいることに違和感を持たなければ、その分仕事に集中しやすくなり、イキイキと働けるでしょう。
成果を出しやすい
社風が合う企業では、社内のメンバーとのコミュニケーションもスムーズに運ぶことが期待できます。連携や協力がしやすいため、チームワークを発揮して成果を出しやすくなります。
評価されやすい
「社風」には、目指す方向性や大切にしている価値観などが反映されるものです。それらが企業と自分で一致していると、企業が求める行動を自然にとれるため、評価を得やすくなるでしょう。
自分に合った社風の見極め方
転職先の候補企業の社風が自分に合っているかどうかを見極めるには、次のような方法があります。
求人・採用ページをチェックする
求人や採用ページには、応募検討者が働くイメージを持てるようにするため、社風を伝える情報が掲載されていることがあります。職場や社内イベントの写真からも、雰囲気を感じとることができるでしょう。
社員インタビュー記事では、ふく数名が発している共通するキーワードに注目してみてください。例えば「スピード感」「チャレンジ」など、頻繁に登場するキーワードが分かれば、そこから社風が見えてくるでしょう。
ホームページでVMVを確認する
企業ホームページには、「VMV(ビジョン/ミッション/バリュー)」「理念」「パーパス(企業の存在意義)」「クレド(社員が心がける信条や行動指針)」などが紹介されています。
抽象的・端的な言葉で表現されているものの、そこには企業が大切にしている思いが込められています。特に、行動指針は、社風や職場の雰囲気に反映されやすいものです。自身が素直に共感できるかどうかを確認してみてください。
面接で聞いてみる
面接の場で、採用担当者にストレートに聞いてみるのも一つの手です。このとき、「どのような社風ですか?」といった漠然とした聞き方ではなく、例を挙げながら具体的に聞くと、面接担当者も答えやすくなります。例えば、「現職はチームの和を大切にする風土なのですが、御社はいかがでしょうか」「ホームページやSNSを拝見すると、御社は○○な社風であると感じたのですが、実際はいかがでしょうか」といった聞き方をするといいでしょう。
職場見学をする
面接を受けるだけでは、社内の雰囲気はつかみにくいものです。実際に働くオフィスを見学させてもらったり、一緒に働くメンバーと話をする機会を設けてもらったりして、現場の雰囲気を感じとってみるという方法もあります。職場見学は企業によって実施の有無が異なるので、希望している場合は見学可能かどうかを企業に相談してみましょう。
口コミやSNSなどを確認する
企業に関する口コミサイトを見たり、SNSで企業名を検索したりして、どのようなコメントが投稿されているかをチェックする方法もあります。ただし、退職した人が意図的にネガティブなコメントを書き込んでいるケースも多く、すべてが真実とは限りません。鵜呑みにせず、参考にする程度にとどめましょう。
また、昨今はSNSや社員ブログを通じて情報を発信している企業も多く見られます。ホームページなどでは見られない、職場やメンバーの自然な姿が伝わるでしょう。
転職エージェントに聞いてみる
転職エージェントのキャリアアドバイザーは、企業を訪問して経営者や社員と対話することにより、社風をつかんでいることもあります。冒頭で伝えたように、人によって感じ方は異なるものの、参考にしてみるのもいいでしょう。
自分が求める社風を明らかにすることが大切
社風は、数値として客観的な指標で表せるものではありません。そのため、自己分析を行い、自身が求めている社風とはどのようなものかを考え、イメージを描いておくことが重要です。これまで勤務してきた職場において、違和感や不満を抱いていたポイント、心地良さや満足を感じていたポイントを振り返り、書き出してみてもいいでしょう。
振り返る観点として、「人間関係」「コミュニケーションのとり方」「雰囲気」「仕事の進め方」「評価基準」などについて分析してみてください。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。