
多くの企業で下半期がスタートする10月は組織再編や人事異動が行われるため、入社する方にとってはなじみやすい時期と言えるでしょう。10月入社を目指す場合の転職活動のスケジュール、10月入社のメリットと転職活動のポイント、年間の採用動向などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
10月入社を目指す場合、いつから転職活動を始める?
転職先の企業に「10月入社」を目指す場合、いつから転職活動を始めれば良いか、時期の目安をお伝えします。
転職活動にかかる期間
転職活動にかかる期間は、もちろん人によって異なりますが、仕事を続けながら転職活動をする場合、一般的には「3カ月程度」が目安となるでしょう。
情報収集・応募書類の作成……約1~2週間
応募・面接……約1カ月
内定後の退職交渉~入社……約1カ月
しかし、状況によっては上記より長引くこともあります。例えば、「希望に合う求人がなかなか見つからない」「職務経歴が多く、応募書類作成に時間がかかる」「応募企業の面接回数が多い」「面接の日程調整が難航する」「退職交渉や引き継ぎが進まない」といった場合には、想定以上に時間がかかる可能性もあります。
一方、面接日程の調整がしやすい「オンライン面接」の活用により、面接期間が上記より短縮されることもあります。
会社を辞めてから転職活動する場合は8~9月に開始
会社を辞めてから転職活動をする場合、ある程度時間に融通が利くようになり面接日程を調整しやすく、退職交渉や引き継ぎの期間がないため、転職活動期間の短縮が可能と言えるでしょう。
退職後であれば1~2カ月前に転職活動を開始しても、10月入社に間に合う可能性があると考えられます。面接回数が少なければ、1次面接~最終面接が1~2週間程度以内に完了するケースもあるため、スムーズに進めば10月に入社できるでしょう。
仕事を続けながら転職活動する場合は6~7月に開始
現職を続けながら転職活動をするなら、10月入社まで約3カ月かかることを想定すると、7月から転職活動を始めると安心でしょう。先述のとおり、想定以上の時間がかかることもあるため、6月から情報収集や応募書類作成に着手しておくと、余裕を持って進められる可能性が高まります。
10月入社のメリット
10月に転職先企業に入社するメリットは、人や企業によって異なりますが、一般的な例として挙げられるのは以下の通りです。
期の区切りであるため、組織になじみやすい
4月から新しい期がスタートする企業では、10月は下半期が始まるタイミングで、組織変更や人事異動が行われたり、新たなプロジェクトが始動したりと、組織体制が一新されるケースもあります。中途入社であっても組織になじみやすく、スムーズに人間関係を構築しやすい可能性があります。
ボーナスを受け取ってから転職できる
10月入社の場合、8月には退職交渉に入ることになるため、夏のボーナスをすでに受け取っており、金銭面で余裕を持てるとも考えられます。
加えて、新しい会社でのボーナス受給に関してもメリットが期待できます。夏季ボーナスの支給に際しては、「10月から3月」を査定対象期間に設定している企業が多いようです。つまり、10月に入社すれば、査定対象期間をフルに満たすことになるため、入社直後からの仕事ぶりや成果が夏季ボーナスに反映される可能性があるでしょう。
求人が増える傾向がある
企業では下半期の事業戦略に基づく組織体制を想定し、10月1日を入社日に設定した募集を行う傾向が見られます。求人が増え、多くの選択肢を検討できることが期待できます。
また、夏のボーナス支給後に退職する人が一定数出るため、6~7月には欠員補充の求人も出てくることが予想されます。欠員補充採用では、通年採用が行われていないような、専門的な職種やポジションの求人に出会えるケースもあるかもしれません。
企業の年間の採用動向
参考までに、1年を通じての転職市場の動向もご紹介しましょう。求人数や求職者数は、時期によって波があります。厚生労働省が発表している「有効求人数※」によると、1~3月および9~10月にかけては求人数が増える傾向が表れています。

※出典:厚生労働省ホームページ「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」(令和7年1月)
時期ごとの求人市場の特徴としては、一般的に下記の傾向が見られます。
1~3月:新年度の事業計画に基づく体制づくりに向け、採用が活発化
4~5月:新卒入社者の受け入れ、新卒採用活動の活発化で、中途採用は沈静化
5~8月:年度の方針が固まり、上位役職など希少ポジションの求人が出る可能性も
9~10月:下半期の事業計画に基づき中途採用が活発化
11~12月:求人数は横ばいだが、4月入社の募集を開始する企業も
10月入社を目指す場合の転職活動のポイント
10月入社を目指して転職活動を行う場合、以下のポイントを意識しておくといいでしょう。
長期休暇を考慮する
10月入社を目指して転職活動を行う場合、7月~8月に面接が組まれることになるでしょう。8月に入ると面接担当者が夏休みに入り、面接日程の調整がスムーズに運ばない可能性があります。
そのため、なるべく7月に面接を受けられるように活動を進め、8月初旬には内定を得て現職との退職交渉を始められるようにしておくと安心です。
また、引き継ぎ期間にあたる9月は、「シルバーウィーク(休日が多い期間)」の存在も忘れないようにしましょう。連休によって後任者の引き継ぎが進まないことも起こり得るため、余裕を持って引き継ぎの計画を立て、早い段階から引き継ぎ資料の準備を進めておくと良いでしょう。
転職活動の軸を明確にする
現職の企業でも、10月が組織変更のタイミングである場合、自身にも部署異動や転勤、昇進・昇格などの異動が起こり得るでしょう。退職を申し出たとき、「異動」「昇進・昇格」を提示されて引き留められることも考えられます。退職を決意した理由が異動や評価に関する不満で、退職交渉時に不満解消となる提案をされた場合、迷いが生じるかもしれません。
しかし、根本的な課題解決につながれば良いのですが、目先の不満を軽減できるだけで、中長期視点で見ればとどまる価値を見出しにくいケースもあります。「何のために転職するのか」「将来、どうなりたいのか」という転職の軸やキャリアプランを明確にしておくと、とどまるか転職に踏み切るか、納得のいく判断ができるでしょう。
10月入社に向けてスカウトサービスの活用を
スカウトサービスに登録しておくと、企業や転職エージェントからスカウトが届きます。事前に登録してスカウトを受け取ることで、自身の経験・スキルの市場価値や待遇などがわかるので、情報収集になるでしょう。
興味を持ったスカウトに返信して企業から話を聞くことで、これまで気づかなかった魅力を知り、転職活動がスムーズに進む可能性があるでしょう。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。