転職エージェントを利用するメリットは?活用法や注意点も紹介

転職エージェントの利用は、転職活動の手段として一般的になっています。転職エージェントを活用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?転職エージェントの特徴や有効な活用方法、利用にあたっての注意点などを、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

転職エージェントとは?

転職エージェントとは、希望の転職先を見つけたい求職者と人材を求める企業をマッチングさせるサービスのことです。

求職者は転職エージェントに登録したのち、「キャリアアドバイザー」と呼ばれる担当者と面談することとなります。キャリアアドバイザーは、面談で求職者の経験・スキルや転職の目的、希望業界・職種などについてヒアリングを行った上で、求職者に応じた支援をします。

求職者が受けられる支援として、例えば、マッチする求人の紹介や求人企業についての情報提供、面接の日程調整や応募書類の添削、面接のアドバイスなどが挙げられますが、詳細は転職エージェントによって異なります。なお、面談の所要時間は、転職エージェントにもよりますが30分~1時間ほどです。昨今はオンラインでの面談が主流ですが、転職エージェントのオフィスで行われることもあります。

転職エージェント利用の流れ

転職エージェントの利用の流れは企業によって異なりますが、多くの場合、次のようなステップで進みます。

  1. 利用申し込み(登録)
  2. 面談(応募書類の添削やキャリアアドバイスなど)
  3. 求人紹介・応募(希望にマッチした求人紹介など)
  4. 選考(面接対策や日程調整などのサポート)
  5. 内定(条件交渉のアドバイスなど)
  6. 入社(退職交渉へのアドバイスなど)

詳細は、下記記事をご参照ください。

転職エージェントを活用するメリット

転職エージェントを活用するメリットとして、次のような点が代表例として挙げられます。

無料で利用できる

転職エージェントのビジネスモデルは、人材を募集している企業と求職者をマッチングし、採用に至った段階で採用企業から成功報酬を得るケースがほとんどです。したがって、求職者が登録料などの費用を負担することは基本的にはなく、前述したさまざまなサポートを無料で受けられます。

希望に合う求人を探してもらえる

転職エージェントのキャリアアドバイザーは、求職者が登録した情報や面談でのヒアリング内容をもとに、求職者の経験やスキル、希望条件、キャリアの意向などに沿った求人を提案します。「多種多様な求人の中から自分に合う求人を探す」という時間のかかる作業の一端を担ってもらうことができます。

自分では気づきにくい業界・企業に出会える

キャリアアドバイザーは、数多くの求職者をサポートし、転職の実現を導いてきた「転職支援のプロ」です。求職者の経験・スキルだけでなく、転職市場の動向など多様な観点から、時には求職者自身が気づきにくい業界や企業を提案してもらえることがあります。

面接の日程調整など企業とのやり取りのサポートを受けられる

転職エージェントでは、応募企業との面接の日程調整や条件交渉に関するサポートをしてもらえます。特に、条件交渉などを進める際には、業界・職種ごとの年収水準を把握しているキャリアアドバイザーに相場観などを聞いたり、企業との交渉についてアドバイスをもらったりすることができるでしょう。求職者にとって、時間だけでなく精神的な負担の軽減になります。

自分の市場価値を把握できる

キャリアアドバイザーは、転職支援のプロとして最新の転職市場の状況などを把握していることから、求職者の経験業界・職種が現在の転職市場でどのように評価されるのか、また、求職者がこれまで築いてきた経験・スキルに合う求人やその数、転職実現可能性などについて面談などを通じて客観的にアドバイスをすることがあります。その内容から、自身の現在の市場価値を把握することもできるでしょう。

今後のキャリアについてアドバイスを受けられる

同様に、今後のキャリアの方向性などについても、キャリアアドバイザーに相談すれば、求職者の経験・スキルや転職市場の状況などをふまえて客観的なアドバイスを受けることもできるでしょう。

応募企業の最新・詳細情報を入手できる

転職エージェントは、応募企業の特徴や募集背景、選考の傾向など、求人には記載されていない情報も把握していることがあります。また、企業の働き方や社風、昇給・昇格の実態などを把握していることもあるため、それらの情報を得ることにより入社後のミスマッチを防止できるかもしれません。応募企業への転職支援実績がすでにある転職エージェントの場合、支援した求職者の入社後のキャリアを把握していることもあるでしょう。

非公開求人に応募できる

非公開求人とは、転職エージェントのサイトや企業の採用ページで公開されていない求人のことを指します。応募者の殺到が予想される求人や企業が公にしたくない場合などに使用されます。非公開求人の応募は、求職者のスキルや経験をふまえて、転職エージェントの担当者からマッチした求職者に紹介されることが一般的です。

応募書類や面接のアドバイスを受けられる

転職エージェントには、応募書類や面接のアドバイスといったサポートを行っているところもあります。特に、社会人経験が長い求職者の場合、豊富な経験・スキルがあると思われる一方で、どのような経験・スキルをアピールすればいいか迷うこともあるようです。そのような場合も、キャリアアドバイザーに効果的なアピールの方法を相談できるでしょう。

また、選考の過程では、応募企業からの評価や懸念点などについてキャリアアドバイザーを介してフィードバックをもらえる場合があり、次の選考に活かすこともできるでしょう。

退職交渉のアドバイスを受けられる

転職エージェントの支援を受けて転職が決まった場合、相談すれば現職での退職交渉についてアドバイスを受けられるケースがあります。例えば、退職交渉を進めるにあたっての注意点や退職交渉の開始時期、退職意思の伝え方、退職交渉が難航した際の対処法などについてアドバイスをもらったり、退職交渉の進捗を転職先の企業に伝えてもらったりといった支援を受けられることがあります。

転職エージェントを活用するデメリットと対処法

一方で、転職エージェントの利用にデメリットを感じるケースもあります。その場合の対処法と併せて紹介します。

希望条件に合う求人を扱っていない場合がある

転職エージェントの中には、特定の業界や職種、エリア、年代に特化しているところもあります。したがって、求職者が希望する条件(業種や職種など)が、その転職エージェントの専門外だった場合、求人紹介や転職サポートを受けられないケースも考えられます。

なお、転職エージェントによっては、「条件に合致した求人が出れば案内する」というサポートをしているケースもあるようです。

対処法:大手・総合型のエージェントを選ぶ/希望条件を再度見直してみる

大手・総合型の転職エージェントは、幅広い業界・職種・エリア・年代の求人を保有しているので、選択肢を広げたい場合は、そうした転職エージェントを選ぶと良いでしょう。反対に、特定の業界や職種などを希望する場合は、その分野に特化している転職エージェントも利用することをおすすめします。 また、希望条件を絞りすぎていることで求人とのマッチングが難しくなる可能性もあるので、再度、希望条件を見直したり、業界や職種の幅を広げたりすることもポイントです。

相性やサービスに差がある場合がある

時には、キャリアアドバイザーと相性が合わないケースや、サービスに差を感じるケースも考えられます。

対処法:改善してほしい点を率直に伝える

キャリアアドバイザーの対応に違和感を覚えたり、サポート不足を感じたりする場合は、改善してほしい点やサポートしてほしいことなどを率直に伝えましょう。場合によっては、「別の担当者にも相談したい」などと担当変更を申し出てみてもいいでしょう。

転職エージェントの利用がおすすめなケース

転職エージェントのメリット・デメリットをふまえると、以下に当てはまる人には、転職エージェントの利用がおすすめです。

目指すキャリアや希望条件にマッチする求人を探したい

キャリアアドバイザーという伴走者を得ることで、目指すキャリアや希望条件に合う求人をより効率的に探すことが可能になります。また、キャリアの棚卸しなどのサポートを受けられることもあるため、転職先に求めることを明確にしやすいでしょう。したがって、キャリアアドバイザーとの面談では、キャリアや希望条件に対する考えや思いを率直に伝えましょう。キャリアドバイザーに理解を深めてもらうことで、マッチングの精度を高められます。

在職中に転職活動を進めたい

転職エージェントを活用すると、前述のような手厚いサポートを受けることができるため、在職中・離職中を問わず転職活動の効率を高める一助になります。特に在職中の場合、面接の日程調整や企業とのやり取りなどを転職エージェントがサポートしてくれることで仕事と転職活動を両立しやすくなるでしょう。

未経験の業界・職種に転職したい

キャリアアドバイザーに自身の希望や考え方を伝えて相談すれば、未経験でも転職可能な企業や職種などについてアドバイスや提案を受けられる可能性があります。現状で足りない経験・スキルについてのアドバイスはもちろん、場合によってはその経験やスキルを身につけられる企業に転職してから、改めてより希望に沿った企業に転職する、などの提案を受けることもできるでしょう。

情報収集や企業研究をサポートしてほしい

転職エージェントでは、キャリアアドバイザーが求職者の経験・スキルに合った求人を探し、紹介してくれるため、求人を自分で収集する時間を短縮することができます。情報収集や企業研究に割く時間がないという場合も、スムーズに転職活動が進められるでしょう。また、キャリアアドバイザーは企業の実態などを把握していることもあるため、仕事の進め方や働き方、社風などについても詳しく聞くことができるでしょう。

応募書類の作成や面接対策に不安がある

キャリアアドバイザーに選考準備のサポートをしてもらうことで、応募書類の内容や面接で話す内容をブラッシュアップできます。面接でアピールにつながりやすいポイントや話し方などについてアドバイスを受けることもできるでしょう。

転職エージェントを有効活用する方法

転職エージェントのメリット・デメリットをふまえて有効活用するためのポイントとしては、次のものが挙げられます。

自分に合った転職エージェントを複数利用する

転職エージェントによって得意な業界・職種があり、見解も異なる可能性があります。また、キャリアアドバイザーとの相性もあるため、複数の転職エージェントに申し込んで相談し、納得できる相手を選ぶことが大切です。複数の観点でアドバイスを受けることにより、転職の選択肢が広がるかもしれません。転職エージェントを1社に絞り込む必要はないため、信頼できるキャリアアドバイザーが見つかれば、転職支援を依頼しましょう。ただし、利用する転職エージェントが多すぎると調整ややり取りに手間がかかってしまうため、自身が対応できる範囲にするといいでしょう。

なお、転職エージェントに相談する際には、どのようにサポートしてほしいか伝えておくのも一つの方法です。例えば、「初めての転職なので丁寧に説明してほしい」「自分の市場価値とキャリアの将来性を知りたいので、事実をはっきりと言ってほしい」など、希望するサポートのスタイルがあれば具体的に伝えておきましょう。

希望条件に優先順位をつけておく

求める条件が多すぎる場合、すべてを満たす求人がなかなか見つからず、転職活動をスムーズに進めにくくなります。キャリア採用は、そもそもの採用枠が限られているケースが多い上に、枠が埋まればその時点で募集が終了してしまうことも少なくありません。チャンスを逃さないためにも、「決して譲れない条件」と「望ましい条件」を分けて整理するなど、あらかじめ条件に優先順位をつけておくことが大事です。

事実は隠さず正直に伝える

転職回数の多さや離職期間の長さなどについて「転職活動に不利になるかもしれない」という不安から、キャリアアドバイザーに事実を隠す人が稀にいるようです。しかし、適切なキャリア支援ができなくなるため避けたほうがいいでしょう。事実を隠して転職活動を続けたとしても、選考段階や入社後に明らかになる可能性があるため、求職者にとってもメリットはありません。キャリアアドバイザーには事実を正直に伝え、どのように企業に伝えるといいのか相談してみましょう。

条件が変わった場合はすぐに共有する

転職活動を進める過程で、希望する条件が変わることは少なくありません。その際は、遠慮せずに条件の変更を伝えましょう。「すでに求人を探してもらっているのに言いづらい」と考え、遠慮してしまうケースもあるようですが、希望に叶う転職ができなければ本末転倒になってしまいます。

転職エージェントは、あくまで求職者の理想の転職をサポートする伴走者です。条件を見直したい時には遠慮せずに情報を共有し、一緒に転職プランを練り直しましょう。

転職エージェントとスカウトサービスを併用する方法もある

スカウトサービスとは、利用登録をすることで、企業や転職エージェントからのスカウトを受けられるサービスのことです。スカウトサービスに自身の経験やスキル、希望条件などの情報を匿名で登録することで、興味を持った企業や転職エージェントからスカウトメールが届きます。

そのため、転職エージェントでは必要なアドバイスやサポートを受け、スカウトサービスは情報収集の幅を広げるために活用するなど、両者を併用するのも一つの方法です。

なお、必ずしも転職エージェントにスカウトサービスを併用していることを伝える必要はありませんが、転職活動の状況を共有したほうがより適切なサポートを受けられる可能性があります。キャリアアドバイザーに「どのような企業からスカウトメールが届いたのか」「条件が合わないと思った求人はどのような内容か」などを伝えることで、今後の紹介・提案の精度を高められるでしょう。

リクルートダイレクトスカウトは、会員制転職スカウトサービスです。リクルートの求職活動支援サービス共通の『レジュメ』を作成すると、企業や転職エージェントからあなたに合うスカウトを受け取ることができます。レジュメは経験やスキル、希望条件に関する質問に答えるだけで簡単に作成可能です。一度登録してみてはいかがでしょうか。

粟野友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。

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