U・I・Jターン転職のメリット・デメリットとは?転職を実現させるポイントや注意点を解説 

引っ越し準備の風景

昨今テレワークを実施する企業が増え、オフィスの場所や通勤に縛られない働き方が可能になってきました。また「故郷へのUターン」を考える方や、環境を変えたいと考えたり、ワーク・ライフ・バランスを整えたいと考えたりすることから、地方での働き方や生活スタイルに注目が集まっています。今回は、U・I・Jターン転職が注目されている理由やメリット・デメリット、転職を実現させるポイント、注意点などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

Uターン転職とは?Iターン、Jターン転職との違いは?

Uターン転職とはどのような転職を指すのでしょうか。また、Uターン転職と似た言葉としてIターン転職、Jターン転職を耳にしたこともあるかもしれません。それぞれの違いについて、まずはご説明します。 

Uターン転職

Uターン転職とは、生まれ故郷以外の地域で就職した方が、故郷に帰って地元の新たな職場で働くことを意味します。一般的には、地方で生まれ育ち、都市圏で働いた後、故郷に戻って就職するケースを指します。家庭の事情、生まれ故郷の地域活性化・地域貢献などの理由から、Uターン転職を決意する方が多いようです。 

Iターン転職

Iターン転職とは、出身地とは異なる地域に移住して働くことです。特に都市圏から地方に移住することを指すことが一般的です。転職理由としては、旅行や出張などで地方の自然や食べ物、文化などの魅力に惹かれた、都市圏にはない地方独自のビジネスや産業に携わりたい、都市圏での通勤・生活ストレスから解放されたいなどの理由が見られます。 

Jターン転職

Jターン転職は、出身地を離れて都市圏などで働いた後、さらに出身地ではない別の地域に移住して転職することです。例えば、「岩手県出身の方が東京都で就職した後、宮城県の企業に転職する」といったように、地元ではなく、地元に近い中核都市に転職するケースが多いようです。 

主な転職理由は、家族や地元の友人と近い距離でつながりを深められる一方で、新たな地方の価値観や文化、自然などに触れられること、都市圏と比較して生活費が安くなること、交通渋滞や通勤などの生活環境が良くなることなどが、挙げられます。 

U・I・Jターン転職や地方移住が増えている?

最近は地方創生の推進や、新型コロナウイルス感染症の影響によってテレワークなどの柔軟な働き方が可能となってきたため、地方や郊外への移住に興味を持つ方が増えてきました。株式会社リクルートが2021年8月に実施した、東京都内在住の会社員2,479名を対象に行われたアンケート調査(※1)によると、全体の46.6%が「地方や郊外への移住に興味がある」と回答しています。 

その理由としては、「新型コロナの環境で、テレワークなどの柔軟な働き方が可能になったため、地方や郊外への移住に興味を持った」(43.4%)、「新型コロナの環境で在宅勤務が増え、よりよい住環境で生活したいと思ったため、地方や郊外への移住に興味を持った」(33.1%)、「新型コロナの環境で、都市部の生活に魅力を感じなくなったため、地方や郊外への移住に興味を持った」(20.5%)が挙げられています。 

(※1)株式会社リクルート「地方移住および多拠点居住の考え方についてのアンケート調査」(https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2021/0916_9555.html

地方移住(U・I・Jターン)の主な理由

内閣官房が2020年10〜11月に実施した、首都圏から地方への移住者1,366名(U・Jターン者821名、Iターン者545名)を対象に行われたアンケート調査(※2)によると、地方に住むことを最初に意識したきっかけとして、U・Jターン者は「将来のライフプランを考えたこと」(13.2%)が最も高く、次に「自身の転勤」(13.0%)、「現在の生活や仕事に違和感や限界を感じたこと」(11.9%)と続きます。Iターン者は、「結婚」(20.4%)が最も高く、次に「自身の転勤」(14.9%)が挙げられています。 

(※2)内閣官房ホームページ (https://www.chisou.go.jp/sousei/pdf/r2_09_tokyoken_ijuu_ishikichousa.pdf

ハイクラス人材のU・I・Jターン転職が注目される理由

さらに、ハイクラス人材のU・I・Jターン転職も昨今では見られ、注目される理由には以下のようなものが挙げられます。 

地方創生への貢献

近年は地方創生が注目されており、地方都市におけるビジネスチャンスにも期待が高まっています。そこで、地方都市における新しいビジネスやサービスの創造に興味を抱く方も増えています。またハイクラス人材の中には、故郷に貢献したいと考える方も見られ、地元企業の活性化に一役買いたいと転職をするケースもあるようです。 

事業承継

地方の企業の中には経営者の高齢化により、世代交代の時期にさしかかっているケースも見られます。例えば、経営を引き継ぐ子息がまだ若く経営経験が不足しているため、後継社長を支えるベテラン人材を経営幹部ポジションとして迎えることもあるようです。 

また、後継者がいない場合はオーナーがファンドに事業を売却、ファンドがその企業の経営を引き継ぐ人材を採用し、社長や経営幹部に据えるケースもあります。こうした動きから、大都市圏で経験を積んだハイクラス人材がU・I・J ターン転職をする機会が見られます。 

大学発のベンチャー立ち上げ

大学発のベンチャー企業が人材を募集しているケースも一つの理由として挙げられます。 

ベンチャー企業を教授が個人で立ち上げたり、若手研究者数人で立ち上げたりとパターンは様々ですが、いずれにしてもビジネスの経験がない、もしくは少ないため、事業企画・マーケティング・営業・組織作りなどを担える人材が必要とされています。 

中でも、スキルや経験が豊富なハイクラス人材の採用に注目が高まっているようです。地方にも大学発のベンチャー企業は多く存在するため、U・I・J ターン者に期待する声があります。 

ワーク・ライフ・バランスの改善

ハイクラス人材は責任のある役職についていたり、専門性の高い業務を担っていたりするため、なかなか休みが取れない、労働時間が長くなるケースも考えられます。そのため、リフレッシュを兼ねて自然豊かな地域での転職を求める方や、ワーク・ライフ・バランスを整えて家族やパートナーとの時間を増やすためにU・I・J ターン転職を考える方も見られます。 

移住スタイルの多様化

首都圏から地方へのU・I・Jターン転職を図る場合、いきなり移住するのではなく「テレワーク+出張」のスタイルから始めたり、単身赴任からスタートして後に家族やパートナーが移住してきたりするケースなど、必ずしも定住型でない移住スタイルの選択肢も増えています。 

例えば、都市圏に住居を持ちながら地方都市に別荘を持つなど、複数の地域で生活する「多拠点型」、期間限定プロジェクトなどで短期的に滞在する「短期滞在型」、リゾート地や自然豊かな地方で仕事と休暇を両立する形での移住を実現する「ワーケーション型」、民泊やシェアハウスに滞在して一定期間生活してみる「お試し型」などがあります。 

U・I・Jターン転職のメリット

前述した内閣官房のアンケート調査における「実際に地方に移り住んで感じた魅力」の上位回答では、「自然も便利もある地方都市での暮らし」「ワーク・ライフ・バランスの良い職住近接の暮らし」にメリットを感じる傾向が見られます。 

<U・Jターン転職のメリット>

1.自然も便利もある地方都市での暮らし(28.0%)
2.親や昔の友だちの近くにいる暮らし(27.2%)
3.ワーク・ライフ・バランスの良い職住近接の暮らし(12.5%)
4.自然がすぐ近くにある暮らし(7.9%)
5.地方ならではのアウトドア趣味中心での暮らし(6.7%)

<Iターン転職のメリット>

1.自然も便利もある地方都市での暮らし(32.8%)
2.ワーク・ライフ・バランスの良い職住近接の暮らし(13.8%)
3.自然がすぐ近くにある暮らし(13.8%)
4.自分好みの快適で広い家での暮らし(9.2%)
5.街の趣や情緒に触れる暮らし(6.4%)

U・I・Jターン転職のデメリット

前述した内閣官房のアンケート調査における「地方での暮らしで感じている不満」の上位回答では、「生活利便性(買い物、交通利便性など)の低さ」「収入の低下」「余暇・文化を楽しむ場所や機会の少なさ」にデメリットを感じる傾向が見られます。一方で、「特に不満は感じていない」方も一定数いるようです。 

<U・Jターン転職のデメリット>

1.生活利便性(買い物、交通利便性など)の低さ(31.1%)
2.収入が低下したこと(29.1%)
3.余暇・文化を楽しむ場所や機会の少なさ(24.7%)
4.生活様式や環境の変化への対応の難しさ(11.3%)
5.家族・親族の近くで暮らすことで様々な指摘を受けること(8.9%)
※特に不満は感じていない(29.0%)

<Iターン転職のデメリット>

1.生活利便性(買い物、交通利便性など)の低さ(37.1%)
2.余暇・文化を楽しむ場所や機会の少なさ(25.5%)
3.収入が低下したこと(20.2%)
4.地域の人間関係に溶け込むことの難しさ/コミュニティの狭さ(18.7%)
5.生活様式や環境の変化への対応の難しさ(15.4%)
※特に不満を感じていない(29.9%)

U・I・Jターン転職の流れ

U・I・Jターン転職活動は、通常の転職活動に比べて長期間に及ぶ可能性があります。効率よく進めるためにも転職までの流れを理解しておきましょう。 

希望条件や転職理由、キャリアプランを整理 

地方へのU・I・Jターン転職では、都市圏よりも求人の選択肢が少ないことが予想されます。転職の理由や目的、キャリアプランなどを整理して、希望条件に優先順位を付けておきましょう。希望条件を絞ることで、マッチする求人の幅が広がる可能性があります。 

多方面から求人情報を収集

全国区および対象地域に特化した求人情報サイトや転職エージェント、地方自治体や地域の経済団体が運営する就職相談窓口、ハローワーク、地域に特化した求人誌など、あらゆる手段を活用して多方面から求人情報を収集することが大切です。都市圏でU・I・Jターン者向けの転職イベントが開催されることもあります。複数の企業の採用担当者が集結するので、このような転職イベントに参加してもいいでしょう。 

希望する企業に応募・面接 

求人に応募して書類選考を通過すると、面接へと進みます。近年1次~2次面接などは対面だけでなく、オンラインで行われる企業も見られますが、最終面接は現地で行われるケースが少なくありません。遠隔地の場合、企業との日程調整、有給休暇の取得などに時間と手間がかかる可能性があることを認識しておきましょう。同地域の複数社に応募する場合は、なるべく1回の滞在期間中(1泊2日~2泊3日など)にまとめて面接を受けられるようスケジュールが組めれば効率的でしょう。 

内定・入社

内定を得たら、現職での残務処理・引き継ぎ期間、引越しにかかる期間などをふまえて、転職先と入社日を相談します。移住先での住居の確保については、企業側がサポートしてくれることもありますから、一度相談してみることも一案です。 

会社の就業規則にもよりますが、現職への退職意思の表明は、退職希望日より1カ月~2カ月前が目安です。業務の引き継ぎと引越し準備の同時進行で混乱や漏れが生じる可能性があるため、ToDoリストを作成するなど、計画的に進めるようにしましょう。 

社風や組織体制はできるだけ確認しておく

地方ごとに歴史や土地柄があり、独特の価値観や組織文化、判断基準を持つ企業も存在します。経営者としっかり目線を合わせ、組織風土や大切にしたい価値観、そして自身にどんな期待を寄せられているかを、内定前後に面談を設けてもらい確認しておきましょう。

できるだけ社内の見学や社員と話をする機会を設けてもらい、自身の知識や経験を実践できる組織体制であるか、そのためのリソースがあるかどうかを見極めてください。

U・I・Jターン転職を実現させるポイントと注意点 

ビジネス環境・生活環境が大きく変わるU・I・J ターン転職だけに、通常の転職活動よりも慎重に進めることが大切と言えそうです。次のようなポイントを意識しましょう

譲れない条件を明らかにする

「仕事内容」「ポジション」「裁量範囲」「年収」「勤務時間」「休日休暇」「勤務地(居住地からの通勤時間)」など、仕事と生活の両面から希望条件を細かく書き出してみてください。 

希望条件のうち「譲れないもの」「妥協できるもの」を仕分けし、優先順位をつけます。「譲れない条件」を明確にしておけば、選択の際に迷いがなくなり、入社後も納得感を持って働けるでしょう。 

できるだけ働きながら転職活動する

希望の勤務地で、条件もマッチする求人はすぐには見つからない可能性があります。コロナ禍以降は、多くの企業がオンライン面接を導入し、現地に赴かなくても転職活動ができるようになりました。オンライン面接を活用し、仕事を続けながら転職活動を進めることを視野に入れるといいでしょう。

なお、企業によっては都市圏にある拠点で面接を行ったり、土日に面接を設定してくれたりすることもあります。また、都市圏でU・I・Jターン者向けの転職イベントが開催されることもあります。複数の企業の採用担当者が集結するので、このような転職イベントに参加してもいいでしょう。

社風や組織体制はできるだけ確認しておく

地方ごとに歴史や土地柄があり、独特の価値観や組織文化、判断基準を持つ企業も存在します。経営者としっかり目線を合わせ、組織風土や大切にしたい価値観、そして自身にどんな期待を寄せられているかを、内定前後に面談を設けてもらい確認しておきましょう。

できるだけ社内の見学や社員と話をする機会を設けてもらい、自身の知識や経験を実践できる組織体制であるか、そのためのリソースがあるかどうかを見極めましょう。 

明確なキャリア目標をもった志望動機を伝える

「故郷に帰りたいから」「地方に移住したいから」などの志望動機では、その地域にあるどの会社にも当てはまるため、その企業に入社したい意欲が伝わりにくいことも考えられます。そもそも志望動機は、「なぜ『この会社』の『この仕事』を志望するのか」を伝えるものです。以下の3点を盛り込み、面接で答えられるように準備をしましょう。 

  1. 応募企業を選んだ理由(応募企業に魅力を感じているポイント) 
  2. 応募企業で活かせる自身の経験・スキル 
  3. 入社後に実現したいことや、目指したいキャリアパス 

長期的なライフプランを立てておく

生活をともにする家族やパートナーがいる場合は、長期的な視点でライフプランを立てることも大切です。U・I・Jターン転職は、家族やパートナーの生活、学校、キャリア形成にも少なからず影響を与えます。近い将来のことだけではなく、5年後、10年後、20年後も見据えて話し合っておくことも一案です。 

ハイクラス人材のU・I・Jターン転職体験談

監修者の経験をもとに、実際に U・I・Jターン転職を実現させたハイクラス人材の体験談をご紹介します。

数年間住んだ際に自然環境や人に魅力を感じ、移住・転職を決意

公認会計士のAさん(40代前半)は、監査法人からFAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)へ出向していた時代に、地方企業の再生支援を複数担当していました。担当した地域に数年間住んだ際、自然環境や人に魅力を感じました。

出向先から東京の監査法人へ戻った後、このまま都市圏でのキャリアを歩むか、やりがいやつながりを感じた地方でのキャリアを歩むか、改めて今後のキャリアプランを検討した結果、移住・転職を決意しました。Iターン転職をかなえた現在、地域活性化コンサルティング会社で、地方企業向けのコンサル業務に従事しています。

土地勘のある地域で、ビジネスパーソンとして新たなチャレンジ

ファンドが経営支援中の北陸地方の中小企業(機械部品系製造業)が、経営者候補を全国からサーチしていました。社内に技術者が豊富で、エンジニア出身でなくとも問題はありませんでした。 

自動車製造関連の中堅企業で管理部門長をしていたBさん(50代)は、子どもが社会人となり、経済的な自由度が高まっていました。ビジネスパーソンとしてもう一度新しいチャレンジをしたい、成長をしたいと思い応募したところ、経営者候補として決定。Jターン転職をすることになりました。 

リクルートダイレクトスカウトは、リクルートが運営する会員制転職スカウトサービスです。リクルートの求職活動支援サービス共通の『レジュメ』を作成すると、企業や転職エージェントからあなたに合うスカウトを受け取ることができます。レジュメは経験やスキル、希望条件に関する質問に答えるだけで簡単に作成可能です。一度登録してみてはいかがでしょうか。
アドバイザー

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。