休職中の転職活動は可能?休職を隠したまま転職しても大丈夫? 

病気や怪我などで休職しているうちに、転職を検討するようになった場合、休職期間中に転職活動をしてもいいのでしょうか。また、応募企業に休職していることを伏せたまま内定を得ることは問題ないのでしょうか。今回は、休職中の転職活動について、注意点を解説します。

休職中の転職活動は可能だが、推奨されるものではない

たとえ休職中であっても、転職活動をすること自体は問題ありませんが、そもそも休職とは、ボランティアや留学など、企業に籍を残したまま社外での活動を行いたい場合、または病気や怪我によって意図せず一定の期間働けなくなった場合に利用されることの多い制度です。

休職期間中は、業務が免除される代わりに賃金の支払いが発生しませんが、復職することを目的としているため、企業負担分の社会保険は在籍する企業が支払い続けます。そのため、本来の目的から逸脱する形で転職活動をすることに対して、道徳観や自己管理能力を疑われる可能性があります。また、休職の事実がありながら隠して転職活動を進め、後から休職が発覚した場合は、会社からの信頼を損ね、「合否の判断に影響する情報を隠していた」と受け取られる可能性があります。

ですから、休職期間中は本来の目的に立ち返り、復職してから転職活動をした方がいいでしょう。

隠していた休職が発覚するケースとは?

休職していることを「隠し通せばいい」「バレなければいい」と考えている方もいるかもしれませんが、さまざまなきっかけから発覚するケースがあります。休職が明らかになる代表例をご紹介します。

源泉徴収票の給与額が低い

転職時には、年収を確認するために、源泉徴収票の提出を求められることがあります。源泉徴収票には1年間の給与総額が記載されているため、ここに記載された給与額があまりに低いと、理由を求められることがあります。

源泉徴収票は年末調整に必要な書類であるため、入社後しばらく経ってから提出を求められ、この時点で休職期間があったことが発覚するケースもあります。

リファレンスチェックの実施

企業によっては、内定を出す前に、前職の同僚や上司などに過去のキャリアや仕事ぶりなどを確認する「リファレンスチェック」が行われることがあります。特に、金融機関やコンサルティングファーム、外資系企業のほか、役員などの重要なポジションを採用する際などに用いられる傾向があります。そのため、休職を隠していても、リファレンスチェックで発覚する可能性があるでしょう。

住民税の納税額が低い

住民税は、前年の所得を基準に課税金額が決まります。そのため、「前年に長期間休職しており、納税額が極端に少ない」といった場合は、「休職期間があるのではないか」と疑われてしまうかもしれません。ただし昨今では、多くの市区町村では個人の住民税額の詳細を企業側に開示せず、総額や毎月の控除額だけ分かるような形で通知しているケースもあります。

傷病手当金の申請

業務外の事由による病気や怪我が理由で働けなくなった場合、健康保険から「傷病手当金」が支給されます。この傷病手当金は、同じ病気の場合の支給期間が通算1年6カ月以内と定められています。

転職先で病気が悪化して再申請を行うことになった場合、手続きの担当者が過去の受給歴を確認することもあるため、前職での休職期間が発覚することがあります。

休職中は「転職準備」に充てるようにする

疾病や怪我による休職の場合、休職中に無理をして転職したとしても、慣れない環境で再度体調を崩してしまう可能性があります。せっかく志望する企業への転職が決まったにも関わらず、すぐさま離職するようなことになれば、今後の転職活動やキャリア形成への悪影響も考えられます。さらに、病状が悪化するようなことになれば、より一層長い休職期間が必要になるなど、本末転倒な結果を招くことになりかねません。

「転職したい」という強い思いを抱いていたとしても、体調不良が理由で休職をしている場合は、転職「準備」に充てるようにしましょう。そして、体調が戻って職場に復帰した後、改めて転職「活動」を進めます。復職後の転職活動であれば、「業務に支障なく働ける状態である」という説明に説得力が出るため、採用担当者からの理解も得やすいでしょう。

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

社会保険労務士法人 岡佳伸事務所 岡 佳伸(おか よしのぶ)氏

アパレルメーカー、大手人材派遣会社などでマネジメントや人事労務管理業務に従事した後に、労働局職員(ハローワーク勤務)として求職者のキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は、雇用保険を活用した人事設計やキャリアコンサルティング、ライフプラン設計などを幅広くサポート。特定社会保険労務士(第15970009号)、2級キャリアコンサルティング技能士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士など保有資格多数。

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