【監修】
村松 鋭士(むらまつ さとし)氏
社会保険労務士
2010年に【TFS&SPIRAL社会保険労務士事務所】を開業。また、社労士事務所と併せてチームビルディングを主体とした人材育成研修やコンサルティング、コーチングを行う【株式会社スパイラル・アンド・ゴーゴー】を設立。社労士として15年以上、企業の人事労務に携わってきた経験をもとに、労務相談や人材育成研修、評価制度などを一体的に実施。
年末調整とは?
年末調整とは、給与を支払う側である企業が、従業員に支払った1月~12月まで1年間分の給料・賞与から源泉徴収した所得税を、12月の最終支払い日に計算し直し、12月の給与で再調整する作業のことです。所得税などの過不足分を清算することになりますが、通常は多めに源泉徴収されていることが多いため、従業員にとっては税金が還付される「還付申告」という側面が強いです。
年末調整は、その名の通り「年末」に行われる作業です。そのため、年の途中で転職し、12月時点で新しい会社に在籍している方は、新しい会社で年末調整が行われます。転職後の会社の給料だけで年末調整しても、通年での正しい税額は計算できませんし、たとえ多めに税金を支払っている場合でも、過払い分が戻ってくることはありません。
前職分の給料と、新しい会社の給料を合計した「この1年で支払われた給料」を申告するために必要となるのが「前職の源泉徴収票」です。年内に転職した人は、新しい会社が年末調整に取り掛かるまでに、前職の源泉徴収票を取り寄せ、提出しければなりません。
退職時期別の手続き方法
年の途中で転職した場合、新しい会社で前職分を合算して年末調整を行うのが基本です。ただし、年末に転職した場合には時期によって手続き方法が異なり、確定申告が必要となるケースが出てきます。ここでは、退職時期による手続き方法の違いについて解説します。
11月末~12月までに転職先に入社し、前職の源泉徴収票を提出している場合
この場合は、確定申告を行う必要はありません。年末調整作業を行う11月末~12月中旬までに前職分の源泉徴収票を提出していれば、転職先企業が対応してくれます。
11月末~12月までに転職先に入社したが、前職の源泉徴収票の提出が間に合わない場合
12月までに入社していた場合でも、年末調整のタイミングに前職分の源泉徴収票の提出が間に合わなければ、年末調整ができないため翌年3月の申告期限までに自身で確定申告することになります。
会社を辞め、11月末~12月は無職だった場合
例えば年内に退職し、翌年1月1日に入社するケースなど、年末時点でどの企業にも所属していなければ、年末調整を依頼することができません。この場合も自身で確定申告を行う必要があります。
確定申告の方法
確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間、どれだけの所得があったのかを申告し、その金額に応じた納税を行う手続きのことです。
通常、翌年3月中旬が申告期限となっており、所得税と復興特別所得税の額を「申告納税」するか、納め過ぎた所得税と復興特別所得税の「還付申告」をすることになります。
確定申告が必要な場合は、確定申告書を用意し、それぞれの項目に必要事項を記入したうえで、管轄の税務署に提出します。書類は税務署でもらえるほか、国税庁のホームページからも入手可能です。パソコンやスマートフォンからオンラインで入力し、e-Taxで手続を完結させることもできます。源泉徴収票、生命保険料控除証明書、住宅借入金等特別控除申告書と借入金の年末残高証明書、掛金控除証明書などが必要になりますので、早めに手続きの準備を進めておきましょう。
なお、転職の有無や時期に関わらず、以下の条件に当てはまる方は確定申告が必要です。
- 給与収入が2,000万円を超えている
- 副業所得が20万円を超えている
- 医療費控除、雑損控除などを受ける
- 住宅ローン控除を受ける初年度
※2年目以降は年末調整で行うことができます - ふるさと納税の納付先自治体が6カ所以上ある
前職の源泉徴収票は年末調整までに入手しておこう
年末近くに退職してすぐに新しい会社へ転職した場合は、前職の源泉徴収票の発行が間に合わず、手元にないまま年末調整時期が来てしまうといったケースが発生します。年末に転職する場合は、退職する企業に必ず源泉徴収票を発行してもらい、転職先の人事にも間に合うかどうかを確認しておきましょう。
なお、前職分の源泉徴収票がなければ、年末調整をしてもらうことはできません。もし紛失してしまった場合は再発行可能なので、前職の会社に連絡して依頼するようにしてください。
また、転職先の企業によっては、12月入社の場合、12月に支払う給与がなく、年末調整を行わないといったケースも考えられます。不明点などがあればあらかじめ確認しておくようにしましょう。