転職後の確定申告が必要な場合とは?必要書類・手続き方法を解説【社労士監修】

転職 確定申告

転職のタイミングによっては、年末調整を行うことができず、自身で確定申告をしなければならないことがあります。転職時に確定申告が必要なケース・不要なケース、必要な書類や手続き、転職後の確定申告に関するさまざまな疑問について、社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士の岡佳伸先生に解説していただきました。

確定申告とは?

確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間で得た所得にかかる税金を自身で申告する制度のことです。通常、翌年の3月中旬が申告期限となっており、申告する金額に応じて、納税の手続きを行うことになります。 

確定申告では、所得税と復興特別所得税の額を申告する手続き、あるいは納め過ぎた所得税と復興特別所得税の還付申告を行います。なお、復興特別所得税は平成25年1月1日から令和19年12月31日までの特別措置となっています。 

確定申告と年末調整との違いは?

年末調整と確定申告は、どちらも個人の1年間の所得を確定し、国に治める「所得税」を申告・納税する手続きです。 

そのうち、年末調整は会社が従業員の代わりに申告と納税をする手続きであり、一方の確定申告は個人が自身で所得の申告を行い、税金を納付する手続きとなります。どちらも税金に関する手続きであるため、正確で適切な申告と納税を行うことが大切です。 

会社員でも確定申告が必要な場合がある

会社員の場合は会社が年末調整を行ってくれることが一般的ですが、自身で確定申告が必要なことがあります。例えば、以下に挙げるような場合が該当します。 

  • 給与収入が年2,000万円を超えている
  • 副業などで2カ所以上の会社から給与をもらっている
    ※ただし、2カ所以上からの給与がある人でも、確定申告の必要がない場合があります。「従たる給与」が年20万円を超えない場合、確定申告は必要ありません
  • 副業所得が年20万円を超えている
  • 医療費控除、雑損控除などを受けている
  • 住宅ローン控除を受ける初年度である
    ※2年目以降は年末調整で行うことができます
  • ふるさと納税の納付先自治体が6カ所以上ある

転職で確定申告が不要なケース 

転職先の年末調整業務に間に合うのであれば、自身で確定申告を行う必要はありません。一般的に年末調整作業が行われる11月末~12月中旬までに転職先の企業に入社し、前職分の源泉徴収票を提出している場合は、転職先企業が対応してくれるため、自身で確定申告を行うことはありません。 

転職で確定申告が必要なケース

転職の時期などによって、自身で確定申告を行う必要が出てきます。ここでは、確定申告が必要となるケースについて解説します。 

年内に転職先企業に入社しなかった場合

例えば、10月に退職したものの年内には転職先が決まらず、翌年1月に入社したケースなどが該当します。年末時点でどの企業にも所属していない場合は、自身で確定申告を行うことになります。 

年末近くに転職し、転職先の年末調整に間に合わない場合

12月までに入社していても、転職先の年末調整のタイミングまでに前職分の源泉徴収票の提出が間に合わなければ、年末調整を依頼することができません。そのため、原則翌年3月の申告期限までに自身で確定申告を行う必要があります。(ただし、還付申告(源泉徴収された税金など)が納め過ぎになっている場合の申告期限は、過去5年間に遡及して申告が可能) 

なお、給与所得の源泉徴収票の交付は法律で定められています。企業にもよりますが、源泉徴収票の発行は、法律の上の期限は退職日以後1カ月以内と決められていますが、即日~1週間程度で対応してもらえるケースが多いでしょう。 

個人事業主から会社員に転職した場合

個人事業主から会社員に転職した場合には、転職前までの事業所得などを申告する義務があるため、入社した時期に関わらず自身で確定申告をしなければなりません。 

通年で年収2000万円を超す場合

前述の例にも挙げましたが、転職の有無に関わらず、年間の給与収入が2,000万円を超えている場合は、確定申告をする必要があります。そのため、前職と現職の給与収入を合算し、2,000万円を超えているようであれば、年末調整ではなく自身で確定申告をすることになります。 

転職後の確定申告に必要な書類と手続き

転職後に確定申告を行う場合、必要となる書類は以下となります。 

  • 前職の源泉徴収票 
  • 生命保険料控除証明書 
  • 住宅ローン控除証明書 
  • 各種控除証明書類(※小規模企業共済等掛金控除、医療費控除など) 
  • 確定申告書 

確定申告に必要な書類が用意できたら、確定申告書を作成します。確定申告書は郵送での提出や、国税庁の公式サイト「確定申告書等作成コーナー・e-Tax(国税電子申告・納税システム)」で申告書の作成・送信をすることも可能です。 

申告期間は、原則翌年2月16日から3月15日の間です。この際、失業保険などの雇用保険の給付や生命保険、医療保険の保険金は収入とは見なされませんので注意しましょう。 

転職後の確定申告に関するQ&A

転職後の確定申告に関する疑問について、社労士・岡先生が回答します。 

Q.年内に2社以上転職した場合はどんな対応が必要?

年内に2社以上の転職をして給与の支払いを受けており、転職先の会社で年末調整を行う場合は、これまでの会社全ての源泉徴収票を提出する必要があります。会社によって年末調整の時期が異なる場合もあるため、転職時期が12月だった場合は、年末調整を行ってもらえるのかどうかを確認してみましょう。 

Q.副業や兼業をしている場合はどんな対応が必要? 

副業や兼業で2カ所以上の会社から給与を受け取っており、得た所得が20万円を超える場合は、確定申告が必要となります。また、副業や兼業による収入がある場合は、所得の合計が20万円以下であっても住民税の申告は必要となるので、注意しましょう。 

Q.転職後に確定申告をしないとどうなる?(or し忘れたらどうなる?)

転職後、バタバタして確定申告をする余裕がなかったり、うっかり確定申告をし忘れていたりする場合、「払いすぎた税金の還付があるか」または「追加納税が必要か」で、申告期限が異なります。 
 
基本的には2月16日から3月15日の期間中に申告を済ませなくてはいけませんが、税金の還付がある場合は、5年前までさかのぼって確定申告を行うことができます。しかし、追加納税が必要な場合は、期間を過ぎると延滞税などのペナルティが課せられます。なるべく早めに申告を行うようにしましょう。 

Q.転職に伴い、引っ越ししている場合は年末調整や確定申告に影響する?

年末調整の書類に記載される住所は、原則として年末調整の対象となる翌年1月1日時点の住所となります。転職に伴い、引っ越しをした(する)場合は、年末調整に関する書類には1月1日時点の住所を記入するようにしましょう。 
 
確定申告の場合は翌年2月16日~3月15日の間に自身で書類の作成をするので、申請時点での住所を記載するようにしましょう。 

Q.前職の源泉徴収票の発行が間に合わなかった場合はどうなる?

転職する時期が年末になった場合など、前職の源泉徴収票が間に合わない場合もあるでしょう。その際は、転職先の会社で年末調整が受けられない場合もあります。年末調整が受けられない場合は所得税額が確定しないため、自身で確定申告を行う必要があります。 
 
前職の会社から源泉徴収票を受け取っていない場合や紛失した場合などは、前職の会社に相談して早めに発行してもらうようにしましょう。 

転職の時期、年収などによって確定申告の有無は異なるので注意しておこう

前述の通り、転職先に入社する時期や年収などによって自身で確定申告をするかどうかは異なります。特に転職時期については、年末調整の時期にギリギリ入りそうな場合などは、転職先の企業に手続きについて、入社前に確認しておくといいかもしれません。 

転職エージェントやスカウトサービスを利用している場合は、それぞれの担当者から企業の担当者に確認してもらうこともできるので、気になる場合は相談してみましょう。 

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社会保険労務士法人 岡佳伸事務所 岡 佳伸(おか よしのぶ)氏

アパレルメーカー、大手人材派遣会社などでマネジメントや人事労務管理業務に従事した後に、労働局職員(ハローワーク勤務)として求職者のキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は、雇用保険を活用した人事設計やキャリアコンサルティング、ライフプラン設計などを幅広くサポート。特定社会保険労務士(第15970009号)、2級キャリアコンサルティング技能士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士など保有資格多数。

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。