【社労士監修】ボーナスをもらってから転職するスケジュールとは?損をしにくい退職・入社時期を解説

ボーナス日が書かれたカレンダー

転職活動を進めるうえで、金銭面でのメリットを考慮し、「ボーナスをもらってから転職したい」と考えている方も少なくないでしょう。では、ボーナスを受け取ったうえでスムーズに転職するためには、どのようなスケジュールで転職活動を進めていけば良いのでしょうか。スケジューリングの具体的な方法や注意点について詳しく解説します。

ボーナスをもらってから転職するためのポイント

ボーナスをもらってから転職する計画を立てる際は、次の点に留意しましょう。

就業規則などで現職の「退職の申出期限」「ボーナスの支給規定」を確認する

ボーナスが支給されてから退職するために確認しておきたいのが、「退職の申出期限」「ボーナスの支給条件」「ボーナスの査定時期」の3つです。これらの3つが、退職日と退職を申し出る時期を決める上でも、ボーナスの満額支給を受ける上でも重要な情報となります。

退職の申出期限は、民法上は退職日の2週間前ですが、多くの企業では、「退職日の1〜2カ月前まで」などと就業規則などで規定しています。また、ボーナスの支給条件として、ボーナスの支給日に在籍していることを条件としている企業も多いため、自社ではどのように規定されているか、就業規則や給与規程(賃金規程)、賞与規程、人事ハンドブックなどで確認しましょう。

退職の申し出は、ボーナスの査定終了後が得策

また、ボーナスの査定中に退職を申し出た場合、企業によっては、評価を下げられ、本来もらえるはずだった金額よりも少ない金額が支給される可能性があります。できることなら、査定が終わってから退職を申し出るのが良いでしょう。

例えば、ボーナスの査定対象期間が4〜9月、査定時期が10〜11月半ば、支給日が12月10日、退職の申出期限が退職日の1カ月前までであった場合、12月31日を退職日として11月半ばの査定終了後に申し出れば、減額される可能性を避けることができ、満額受給した上で退職することができます。

転職活動にかかる期間と、内定〜入社までの期間も考慮

ボーナスの支給を受けられる退職日と退職を申し出る日の目安がわかれば、そこから、転職活動にかかる期間も考慮して転職活動の開始時期やスケジューリングを検討します。次の「転職活動のスケジュールの目安」をふまえて検討しましょう。

転職活動のスケジュールの目安

転職活動に要する期間は、経験・スキルや希望する条件によってさまざまですが、目安は「3~6カ月程度」。次に紹介するプロセス・期間を経て転職に至るのが一般的です。

【1】自己分析、情報収集、応募書類作成、応募:約1カ月

転職活動はまず「情報収集」から始まります。どのような転職を望んでいるのかを自己分析し、自身が希望する業界・職種・企業などについて調べます。そして、応募に必要となる履歴書や職務経歴書などの応募書類を作成し、志望する企業に応募します。

なお、書類選考を通過すると面接に進みますが、管理職や専門職などハイクラス層の転職の場合は、マッチする求人がそれほど多くない傾向があります。応募したい求人が見つかるまでに時間がかかったり、書類選考に時間がかかったりと、面接に至るまでの期間が長引く可能性があります。

【2】面接:約1カ月

最近ではオンライン面接が増えており、以前に比べると面接の日程調整がしやすくなっています。ただし、在職中の転職活動は、業務との兼ね合いで面接の日程調整に苦慮するケースもあり、また、選考通過率によっても、長引く可能性があります。

【3】内定、退職交渉、入社:約1カ月〜3カ月

応募した企業から無事に内定を獲得できれば、在籍企業との退職交渉に臨みます。この段階で多いのが、退職交渉に予想以上に時間がかかるケースです。特に管理職や専門職の場合、期中やプロジェクト途中であったり、後任の選定がスムーズに進まなかったりすることを理由に強い引き留めが発生することも考えられます。内定・退職交渉期間の目安は約1カ月半ですが、ポジションによっては3カ月ほどかかるケースもあるようです。

「ボーナスをもらって転職」ケーススタディ

ボーナスをもらって転職する場合、具体的にどのようなスケジュールで退職すると、満額受給できるでしょうか。「夏のボーナスを受け取って転職する場合」「冬のボーナスを受け取って転職する場合」の2パターンについて紹介します。

夏のボーナスをもらって転職する場合

夏のボーナスをもらって転職するスケジュール

査定対象期間が10〜3月、査定時期が4〜5月、支給日が6月30日、退職の申出期限が退職日の1カ月前までの場合、6月のボーナス支給から逆算し、3月頃から転職活動を開始します。そして、4月~5月に企業への応募や面接を進め、5月末〜6月初めの内定獲得を目指します。内定を得たら6月上旬に上司に退職の意思を告げ、6~7月は引き継ぎと有休消化期間に充て、7月末に退職します。

冬のボーナスをもらって転職する場合

冬のボーナスをもらって転職するスケジュール

査定対象期間が4〜9月、査定時期が10〜11月、支給日が12月10日の場合、退職の申出期限が退職日の1カ月前までの場合、12月のボーナス支給から逆算し、9月頃から転職活動を開始します。10~11月に企業への応募や面接などを進め、11月末~12月初めの内定獲得を目指します。内定を得たら12月上旬に上司に退職の意思を告げ、12~1月は引き継ぎと有休消化期間に充て、1月末に退職します。

転職先で最初の賞与日にボーナスが支給されるケースは多くない

現職でボーナスを満額受け取って退職したあと、転職先の最初のボーナスの機会にもボーナスを受け取りたいという期待を抱く場合があるかもしれませんが、両方で支給を受けるのは難しいケースが多いのが実情です。

例えば、現職と転職先がどちらも4〜9月が査定対象期間で12月支給、10〜3月が査定対象期間で6月支給というスケジュールで、12月末に退職して1月1日に入社した場合、1〜3月の勤務が査定対象となり半額が支給されるケースと、査定対象とならずボーナスは支給されない、または金一封程度のみ支給されるケースがあります。実態としては後者が多く、とくに、目標管理制度に基づいている企業の場合、そもそもの目標が設定されておらず評価不能のため後者の対応が取られるケースが多く見られます。

転職先でも満額支給されるケースとしては、現職と転職先の査定対象期間にずれがある場合です。転職先の査定対象期間の開始月に入社すれば、満額支給されます。気になる場合は、内定後の条件面談の機会などに、ボーナスの査定対象期間や受給日などについてそれとなく確認してみましょう。

ボーナスをもらって転職する場合の注意点

ボーナスを受け取ったうえでの転職は、金銭的なメリットが大きいものの、注意すべき点もあります。次の2点に気を付けましょう。

ボーナス受給にこだわりすぎない

「選考が思うように進まない」「退職交渉が上手くいかなかった」など、転職活動は想定通りに進まないこともあります。ボーナスを受け取ることにこだわりすぎてしまうと、退職日や入社予定日を変更するなど、在籍中の職場や転職先に迷惑をかけてしまうかもしれません。ボーナスはもらえることに越したことはありませんが、固執しすぎないことが大切です。在職企業でもらえなくても、時期によっては転職先の企業でボーナスがもらえることもあります。トータルでプラスになるように考えるようにしましょう。

面接の回数や内容によってスケジュールを調整する

転職時の面接回数や内容は、企業によって大きく異なります。複数回の面接が必要となる企業もあれば、早々に役員面接が設定され、すぐに内定が出るといったケースもあります。また、オンライン面接の場合、会場の手配などが不要になるため、たとえ回数が多くても選考期間は短くなる傾向があります。ボーナスの支給時期を念頭に置きながら、柔軟にスケジュール調整するようにしましょう。

リクルートダイレクトスカウトは、リクルートが運営する会員制転職スカウトサービスです。リクルートの求職活動支援サービス共通の『レジュメ』を作成すると、企業や転職エージェントからあなたに合うスカウトを受け取ることができます。レジュメは経験やスキル、希望条件に関する質問に答えるだけで簡単に作成可能です。一度登録してみてはいかがでしょうか。

社会保険労務士法人 岡佳伸事務所 岡 佳伸(おか よしのぶ)氏

アパレルメーカー、大手人材派遣会社などでマネジメントや人事労務管理業務に従事した後に、労働局職員(ハローワーク勤務)として求職者のキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は、雇用保険を活用した人事設計やキャリアコンサルティング、ライフプラン設計などを幅広くサポート。特定社会保険労務士(第15970009号)、2級キャリアコンサルティング技能士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士など保有資格多数。

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。