最終面接(役員面接)の逆質問でアピールする方法|例文7選一覧、気を付けたいポイントも紹介

最終面接において「逆質問」の時間を設ける企業は少なくありません。面接担当者から「何か質問はありますか?」と聞かれたときのために、質問を準備しておくことも重要です。より相互理解が深まり、評価にもつながりやすい「逆質問のポイント」ついて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

最終面接(役員面接)の逆質問はその他の面接とどう違う?

最終面接は、採用選考の最後に実施する面接であり、内定を出すかどうかの最終判断を行う場となります。そのため、多くの場合は、社長や役員、事業責任者などが面接を担当します。

最終面接までのその他の面接では、求める人物像や仕事内容にマッチした人物かどうかを確認する企業が多い傾向にありますが、最終面接では、「会社のビジョンや社風と合っているか」「応募者が描く将来像と会社の方向性が合っているか」などを確認し、入社後の定着性や将来的な活躍・貢献性に判断を下す傾向があります。

企業が最終面接(役員面接)で逆質問を求める

最終面接で、企業が応募者に対して「何か質問はありますか?」と逆質問を求める主な理由を3つご紹介します。

志望度の確認

企業は、質問内容から「自社に対する興味の度合いや志望度の高さ」を判断したいと考えています。例えば、複数の応募者の面接を並行していた場合、企業のホームページなどで入手できる情報について質問したり、質問が思いつかずに「大丈夫です」と答えたりする応募者よりも、より具体的な質問を投げかける応募者のほうが「志望度が高い」と判断されることもあるでしょう。

企業や仕事に対する理解度の確認

ミスマッチを回避するために、質問内容から企業・仕事に対する理解度を判断しているケースもあります。応募者が自社の情報を事前に調べていることが伝わる質問をした場合は、「自社のことを理解した上で応募している」「前提として自社の考え方にマッチしている」という判断につながるでしょう。一方、求人や採用情報などで確認できるようなことを質問した場合は、「自社に対する理解が浅い」「自社に興味がない」などの判断をされる可能性があります。

応募者が抱いている懸念点をクリアにする

応募者が気になっていることを確認した上で、懸念点を払拭し、入社意欲を高めようとするケースもあります。質問内容に対し、具体的な説明や追加情報の提供をすることで、応募者の疑問や不安を解消してマッチ度を向上させていきたいと考えています。

逆質問の時間は、応募者にとっても有意義な機会となる

逆質問の時間は、応募者にとっても「入社すべきかどうか」の判断材料を入手できる機会と言えます。経営に関するコアな情報や中長期的な方針、経営陣の価値観・人柄など、相手が経営陣だからこそ得られる情報をとりにいくことができます。また、これまでの選考などを経て生じた疑問点や懸念点をクリアにしたり、自己PRや入社意欲を補足・訂正したりする機会として活用することもできます。

ただし、逆質問時のアピールが採否に大きく影響することは稀なので、アピール機会と捉えるよりは、企業に対する自分の理解を深める機会と考えたほうが良いでしょう。

最終面接(役員面接)に向けて逆質問の準備をする際のポイント

最終面接での質問を考えるにあたっては、次のような準備をしておくことをおすすめします。

採用情報やIR情報から疑問点を洗い出す

応募企業の求人票やIR情報、プレスリリースなどの一般的な情報を見直し、経営方針、事業内容、新たなサービスや製品などについて、疑問点や知りたいことを洗い出してみましょう。

これまでの面接でわからないことを洗い出す

一次・二次面接を振り返って、採用担当者とやりとりした内容を整理し、まだ確認できていない点や、新たに疑問を感じた点などをリストアップしてみましょう。

面接担当者の情報を探してチェックする

企業によっては面接の連絡をする際に、担当者の役職や氏名まで案内するケースもあります。また、転職エージェントを活用している場合は、担当キャリアアドバイザーに最終面接を担当する人物の情報を確認することも可能です。そこからより詳細な情報(経歴やメディアなどでの発言内容など)を調べ、人物タイプを想定の上で逆質問の準備に役立てることもおすすめです。

意見や見解も加えつつ質問できるようにしておく

「なぜそれが知りたいのか」という質問の意図を明確に伝えることも重要なポイントです。自身の考え方が伝わりますし、相手も回答しやすくなります。「自分は○○と考えていますが…」「これまで○○を経験してきましたが…」など、自分なりの意図や見解を加えて質問できるように準備しておきましょう。

転職エージェントに質問内容をチェックしてもらう

転職エージェントを活用している場合は、担当のキャリアアドバイザーに質問内容をチェックしてもらうこともおすすめです。そもそも面接で聞くべきことなのかを確認したり、実際に質問する際にどのような伝え方をすれば良いのかを相談したりすることで、より安心できるでしょう。

逆質問の例文7選【質問内容別に一覧で紹介】

逆質問の例文を質問内容別にご紹介します。

経営方針、ビジョン、経営者の思いについて質問する例

御社が掲げていらっしゃる「○年後に○億円企業を目指す」という目標の達成に向けて、新規事業やM&Aなども検討されていると拝察します。具体的な方向性について、開示いただける範囲で教えていただけますでしょうか

事業、商品・サービス、顧客などについて質問する例

○○事業では今後○○業界や△△業界以外への展開も進めていかれると二次面接で伺いました。御社のプロダクトの特性上、私の経験してきた◎◎業界や▲▲業界でもニーズがあると感じており、それらの業界への事業展開の可能性があれば私もより貢献できるのではないかと考えておりますが、いかがでしょうか?

組織、人、社風などについて質問する例

御社独自の「従業員の成果を公平に評価する人事評価制度」に魅力を感じております。導入背景を採用ホームページで拝読しましたが、組織のカルチャーなどは導入前後でどのように変化したのでしょうか?中には新しい制度・カルチャーに合わない人もいて、組織としての痛みもあったのではないかと思いますが、どのように乗り越えられたのでしょうか?

今後の展望について質問する例

決算説明会資料を拝読し、「◯年後に◯億円規模の事業を◯個作る」という目標の下、さまざまな施策に取り組まれる計画があることを把握しました。既存事業、新規事業、M&Aなどに対し、どのような選択肢を用意されているのでしょうか?優先順位なども含めて、今後の展望についてのお考えを教えていただけますでしょうか?

求められる力について質問する例

一次・二次面接を通じて、◯○事業部門の組織改革をリードする人材を求めていらっしゃることを理解しております。私は過去2社における組織再建を経験したことから、御社の組織改革において特に重要な力は△△力と××力ではないかと考えておりますが、経営者としての視点で△△社長が重視されている経験・スキルがあればご教示いただけますでしょうか。

面接を通じて得た情報について質問する例

一次面接にて人事担当の◯◯様から御社独自の評価制度について具体的なお話を伺い、大きな魅力を感じました。△△部門の若手の方や、××部門に中途入社された私と同年代の方が「入社1〜2年で事業責任者クラスに抜擢された」と聞き、自分も実績を挙げて同じように事業拡大を牽引する立場に立ちたいと考えております。□□社長の目線から、特に評価する人材のポイントや具体例を教えていただくことは可能でしょうか?

最終面接(役員面接)での逆質問のポイント

最終面接に向けて、逆質問を準備するために意識したいポイントを解説します。

経営計画や事業内容について、具体的な数字を挙げる

経営計画や事業内容について、具体的な数字を挙げて質問をすることで、応募企業についてよく調べていることが伝わります。経営指標や経営戦略、事業内容・ビジネスモデル、会社の競争優位、組織体制、事業課題などを把握し、具体的な数字なども調べるためには、応募企業のホームページに掲載されているIR資料を確認すると良いでしょう。

また、金融庁が運営するEDINET(金融商品取引法に基づく有価証券報告書などの開示書類を電子開示するシステム)から有価証券報告書を検索することもできます。上場企業の場合には、関連の証券取引所が公開しているアナリストレポートなどを参考にすることもできるでしょう。

背景まで調べ、自分なりの仮説を持っている

入手した情報の背景までしっかり調べている場合は、「志望度や入社意欲が高い」「思考力や情報収集力などがある」という評価につながりやすくなります。また、IR情報やアナリストレポートなどに書いてある情報をそのまま伝えるのではなく、自身の経験・知見を基に考察を深め、自分なりの仮説を立てた上で質問することもポイントです。

「自社の課題を自分ごととして捉えてくれている」「具体と抽象を行き来しながら課題解決に向かう力がある」などの評価につながりやすいでしょう。応募企業の考え方とは異なる仮説であったとしても、より深いコミュニケーションへと発展する機会となりますし、「自社にない着眼点や見解を持っている人材」という評価を得られる可能性もあります。

価値観が一致している

今後の方向性や成長性についての期待や、興味・関心を伝えることで、「自社と応募者の価値観が一致している」という印象につながりやすくなります。企業が注力している事業(多角化や新規事業など)や、取り組みたい方向性(顧客拡大、新市場開拓・海外展開・組織再建・事業の再構築や再生など)について、しっかりと理解した上で興味・関心があると伝えましょう。

自身の貢献したい思いや貢献できることまで伝わるような質問をすると、「中長期的に自社で活躍・定着してくれる人材」という評価につながりやすいと言えます。

これまでの面接を通じて志望度が高まったことを伝える

これまでの面接を通じて応募企業への理解を深め、志望度が一層高まったことを伝えれば、入社意欲の高さをアピールできます。例えば、「個々の成果を評価する体制が構築されている点に魅力を感じた」「新たなチャレンジを推進する企業文化があるため、多くのことに挑戦していけると思った」「企業理念に沿った事業展開がされている点に共感した」などが挙げられますが、面接で得た情報を交えて、その企業ならではの魅力具体的に伝えることがポイントです。

自身との接点を見出して貢献する意欲を見せる

入社後の活躍貢献性をアピールする場合は、経験・スキルを活かして貢献できそうなことについて質問すると良いでしょう。企業理念や経営戦略、事業戦略、事業内容(商品・サービス)、組織・風土、人事制度や働き方など、自身と接点がある質問がおすすめです。

ただし、最終面接の場合は、一次・二次面接よりも解像度を高めていくことがポイントです。選考を通じて得た情報などを基に、「応募企業でそのポジションに自分が就いたら、どのように貢献していくのか」という視点から、自身が活躍・貢献できることの焦点を絞り、より具体化して伝えるように意識しましょう。

最終面接(役員面接)の逆質問で注意したいポイント

最終面接の逆質問で注意したいポイントも把握しておきましょう。

「さしつかえなければ」の一言で相手に配慮する

最終面接で経営戦略や事業展望などに踏み込んで質問する場合は、応募企業の経営状況や将来の事業展望などに言及することになります。しかし、質問しても企業としてオープンにできない情報であれば答えることはできませんし、「どう答えて良いのか、どこまで答えたら良いのか」と躊躇する可能性もあります。質問したいことを聞くのは問題ありませんが、ビジネスパーソンとして企業側の状況も想定・想像した上で、「さしつかえなければ、回答可能な範囲でお教えいただけますでしょうか?」という一言を伝えることも一案です。

相手の反応に応じて質問をストップしたり、追加で質問をしたりするコミュニケーションを心がけ、配慮するスタンスを示すことが大事です。

メモをとる場合は、相手に許可を取る

逆質問の場面に限らず、メモをとる場合は相手に許可を得ることをおすすめします。また、面接の冒頭にメモをとって良いかを確認していた場合でも、逆質問で聞く内容が応募企業にとって公表できない段階であったり、未確定の内容であったりする可能性もあります。例えば今後の事業展開や組織人員計画の数値など、現時点では非公開の情報かもしれないと思った場合は、メモをとっても問題ないかを再度確認しましょう。

ネガティブな内容を質問する場合は表現に注意する

離職率の推移や業績悪化の要因、口コミサイトの情報の真偽などは、企業にとってネガティブな情報と言えます。質問しても構いませんが、聞き方に注意しましょう。例えば、「昨年度の業績悪化の背景を教えてください」とストレートに質問した場合は、相手の心証を損なったり、戸惑ったりする可能性があります。

「昨年度の業績悪化について、IR情報などから○○が要因として大きかったように推測していますが、一番大きな要因はどのような点にあったとお考えでしょうか?」「昨年度の業績悪化の要因は○○だとこれまでの面接で伺いましたが、今後の改善方針をどのように考えていらっしゃいますか?」など、ソフトに伝える表現を意識することをおすすめします。

「逆質問はありません」はNG?思いつかない場合の対処法

最終面接で「逆質問はない」と回答したらNG?

最終面接で「質問があるか」と聞かれたとき、「ありません」「大丈夫です」と答えることが選考に悪い影響を及ぼすとは限りません。これまでの面接や面談で十分なコミュニケーションができて相互理解が深まっていたり、疑問点がクリアになっていると判断できたりする場合は、「これまでの面接で丁寧にご説明いただきましたので」などと前置きした上で、「特に気になる点はございません」と答えても構わないでしょう。反対に、「何か質問しなければ」と無理に考えて、的外れな質問をしてしまうよりは、正直にそう伝えたほうが良いこともあります。

ただし、「興味が薄い」「志望意欲が低い」などの判断につながる可能性もないとは言えません。また、公開情報のみでは把握・理解しきれないことを経営層に直接聞けば、入社するかどうかを決める最終的な判断材料を得られる可能性もあります。今後の意思決定に役立てるためにも、逆質問の準備をきちんとしておくことをおすすめします。

最終面接の逆質問が思いつかない場合の対処法

「そもそも質問したいことがまったく思いつかない」という場合は、「お伺いしたいことはこれまでの面接の中でクリアになりました」と伝えた上で、志望度が高まった点についてアピールすると良いでしょう。「追加でお聞きしたい内容が出てきましたら人事の◯◯様にメールなどでご質問させていただければと思います」という言葉で締める方法もあります。

質問したい内容を先に説明されてしまった場合の対処法

事前に逆質問に備えて準備していた内容が、面接の中で話題になり、疑問を解消できてしまうケースもあります。こうした場合は、「〇〇についてお聞きしたいと考えていましたが、先程のお話の中で回答いただけたので、現時点では追加でお聞きしたいことなどはございません」と伝えるとよいでしょう。

最終面接(役員面接)の逆質問でよくあるQ&A

最終面接の逆質問に対し、よくある疑問にお答えします。

最終面接の逆質問は何個用意すればいい?

先にも述べた通り、逆質問の前に、面接の中で疑問を解消できることもあるため、複数の質問を用意しておくと安心できるでしょう。可能であれば5つ程度の質問を用意しておき、面接で得た情報や相手の職位などに合わせ、適切な質問を選ぶことをおすすめします。

一次面接と最終面接で同じ逆質問をするのはNG?

質問の内容によるでしょう。例えば、「◯◯様が御社に入社した決め手は何ですか?」などの質問を一次面接担当者と最終面接の担当者にそれぞれ聞くことには問題はありません。しかし、これまでの面接で「今後の事業展開について」聞き、説明を受けていた場合、最終面接でまったく同じ質問をすることは避けたほうが良いでしょう。面接でやり取りした内容は共有されるものなので、「話を聞いていなかったのでは?」という疑問を抱かれ、「理解度が低い」「入社意欲が低い」などと判断されるかもしれません。

ただし、一次面接で質問した内容を基に、追加で情報を集めて仮説を立てるなど、より発展させた質問をするのがよいでしょう。

「自分の印象」を聞く逆質問はあり?

自分の印象を聞く質問が歓迎されるかどうかは、そもそもの聞き方や最終面接でやりとりした内容、相手との関係性や相手のタイプなどによるでしょう。「今回の選考結果や転職活動に関係なく、ビジネスパーソンとして自分を客観視して改善点を見つけていきたいので、参考までに◯◯社長から自分はどのように見えたのか、気になった点を中心に忌憚のないご意見をお聞かせいただけると嬉しいです」といった質問をすれば、答えてくれるかもしれませんし、「謙虚で成長意欲の高い人材」と思う面接担当者もいるかもしれません。

しかし、「本日の面接での自分の印象や評価を教えてください」など、選考結果に関係する印象・評価を聞いている場合は、その時点で面接担当者が回答することは難しいと言えます。「一人のビジネスパーソンや人として、今回の選考には関係なく、客観的なアドバイスをいただければ」というスタンスを伝えることが大事でしょう。

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アドバイザー

粟野友樹氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。