「ハイキャリア」とは?企業のニーズと転職を実現する方法を解説

ハイキャリア

最近、主に転職活動や転職市場の領域で「ハイキャリア」「ハイキャリア人材」という言葉を耳にすることがあります。ハイキャリアとはどのような意味で、ハイキャリア人材と言われる基準は何なのでしょうか。そしてハイキャリア人材を目指し、ハイキャリア転職を実現させるにはどうしたら良いのでしょうか。組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

「ハイキャリア」とは

「ハイキャリア」という言葉の意味と、似たニュアンスで使われる他の用語について解説します。

「ハイキャリア」の定義

「ハイキャリア」とは、「high(高い)」と「career(経歴)」を組み合わせた造語であり、特に明確な定義というものはありません。

転職市場では、「何らかの領域や分野で高いスキル、専門性、独自の強みを持っている」「企業経営に関する豊富な経験がある」「経営課題の解決に関して顕著な成果を出している」といった人材を、「ハイキャリア人材」と呼ぶことがあります。

ハイキャリアと呼ばれるためには、年齢や年代は関係なく、年収や役職についても明確な基準はありませんが、一般的にハイキャリア人材は組織内で高いパフォーマンスを発揮できるため、結果として年収や役職が高くなるケースが多く見られるようです。

「ハイクラス」「エグゼクティブ」との違い

ハイキャリアと似ている用語に「ハイクラス」や「エグゼクティブ」がありますが、それらとはどう違うのでしょうか。

「ハイクラス」は「ハイクラス求人」という表現で用いられることが多く見られます。ハイクラス求人は多くの場合、年収帯が高いコンサルティングや金融などの業界、外資系企業、管理職ポジションや高度なスペシャリストなどが対象です。また、それと同等の年収の人材のことをハイクラスと称することもあるようです。

一方「エグゼクティブ」とは、会社組織の中の役職を指す言葉です。一般的に役員などの経営陣、部門責任者、上級管理職など、企業経営の中核を担う役職についている人を指します。ただしこちらも、「○○以上の役職でなければいけない」といった明確な定義はありません。

企業が求めるハイキャリア人材とは

「ハイキャリア人材」と言われる人に対して、企業は何を求めているのでしょうか。また、そうした人材の転職事例もあわせてご紹介します。

変化の時代に対応できる人材が広く求められている

DXの急速な発展やグローバル化など、変化の激しい「VUCA(Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べたアクロニム)」と呼ばれる現代において、企業は前例を踏襲した事業を展開していくだけでは経営が立ち行かなくなってきています。こうした時代背景がある中で、即戦力として高いパフォーマンスを発揮し、会社の成長をけん引することができる、あるいは組織の変革を担うことができる、ハイキャリア人材を求める企業が増えてきているようです。

ハイキャリア人材のニーズはさまざまです。例えば、社運を賭けた「海外進出」や「新規プロジェクト」を成功させるために、事業を展開する業界や国について知見があり、新規事業の立ち上げで大きな業績を上げた人材を採用するケースはよく見られます。また、「組織改革」や「会社の立て直し」のために、組織マネジメントの豊富な経験を持ち、部門全体を引っ張る力のある人材を求めることもあります。

DX化の推進や新規事業開発などの課題を解決するには、より専門的で高いスキルが必要とされることもあるため、社内に人材がいない場合には、中途採用で解決するケースが今後も増えていくことでしょう。

ハイキャリア転職の事例

ハイキャリアと呼ばれる人材はどのようなプロセスでキャリアアップをしてきたのか、具体的な転職事例を、識者の経験をもとに2つご紹介します。

【事例1】30代後半・会計コンサルティングファームの執行役員

新卒で監査法人に入社後、コンサルティングファームに出向。その後、事業会社へ経理財務課長として転職し、部長に昇進してIPOを実現。

「公認会計士の専門性」「IPO実務の知見」「経営幹部としてのマネジメント経験」などが評価され、会計コンサルティングファームの立ち上げに執行役員として参画。

【事例2】40代半ば・ITスタートアップ取締役CRO(チーフ・レベニュー・オフィサー)

IT大手企業でエンジニア、プリセールス、営業を経験。大企業での営業組織作りが評価され、外資系IT企業へ転職し、営業部長から営業執行役員へ。

「IT業界の20年超の経験」「ゼロから完成度の高い営業組織の組成」「リーダーシップ・実行力・実績」が評価され、ITスタートアップ企業の取締役CROへ。

ハイキャリアの求人を探す方法

ハイキャリア人材を求める求人や、ハイキャリア人材を目指せる求人は、一般的な求人サイトなどで公開されることはあまりありません。ここではハイキャリア人材の求人を探す方法を解説します。

転職エージェントに登録する

企業の経営戦略を中心的に担う重要ポジションであるほど、求人は一般に公開されないケースが多くなります。公開されていない求人情報を入手するためには、転職エージェントを活用することがおすすめです。

一般的に、ハイキャリアの人材を対象にした採用枠は少なく、即戦力となる経験・スキルをピンポイントで求める傾向が見られます。ハイクラス求人やエグゼクティブ求人などを多く扱っている転職エージェントに依頼すれば、自分にマッチした求人案件と出会える可能性が高まるでしょう。

スカウトサービスに登録する

スカウト型の転職支援サービスに、自身の経歴や実績、希望条件などの情報を登録し、企業や転職エージェントからのスカウトを待つ方法もあります。どのような企業から、どのようなポジションのスカウトが来るかをチェックすることで、自身の市場価値をある程度把握することもできるでしょう。

スカウトを活用することで、自身では想定していなかった業界や企業で、これまでのキャリアを活かすチャンスに巡り会える可能性もあります。

リファラル採用、ビジネスSNSも利用する

ハイキャリア人材は、リファラル採用(社員が友人・知人を自社に紹介する採用手法)という形で転職に至るケースも多数あります。自身のことを良く知っている友人・知人からの推薦を受けることで、マッチングの精度も高められる可能性があります。自社からキャリアアップする転職を実現した知人など、一緒に仕事をしたことがある人とのつながりを大切にしておくと良いでしょう。

また、ビジネスSNSに登録し、積極的に自身の経験・スキルの情報を発信して企業の目に留まるのを待つ、あるいは応募したい企業のビジネスSNSのアカウントにメッセージを送り、採用担当者と直接コンタクトをとるという方法もあります。さまざまな方向から情報が入るように、幅広くアンテナを張りましょう。

ハイキャリア転職を実現させるための注意点・ポイント

希望するハイキャリア転職を実現させるために、心がけたいポイントについてお伝えします。

現職で実績を上げる

まずは現職で積極的にチャレンジして、実績を残すことが大切です。さまざまな経験を積みながら、周囲から高く評価される成果を上げたり、組織を成長させるマネジメントスキルを磨いたりすることで、企業に対するアピールポイントを増やし、ハイキャリア人材としての市場価値を上げていきましょう。

キャリアの棚卸しをしっかり行う

転職エージェントに対して自身の経験・スキルや希望するキャリアを伝えたり、スカウトサービスに経歴やアピールポイントを登録したりするためには、「キャリアの棚卸し」が欠かせません。

キャリアの棚卸しとは、これまで自分が積み重ねてきたキャリアを振り返り、どのような経験や実績があるか、それによって成長してきたポイントは何かなどを確認していく作業のこと。積んできた経験・スキルを整理して言語化することで、自身の強みやアピールポイントが分かり、今後のキャリアビジョンについても明確に描くことができるでしょう。

上述したように、ハイキャリアを対象とする求人では、即戦力となる経験・スキルをピンポイントで求める傾向があります。従って、希望通りの求人やスカウトと出会うためには、しっかりと自身のキャリアを振り返り、それらを明確にしておくことが大切なのです。

転職エージェントやスカウトサービスを広く活用する

ハイキャリア求人の案件は一般的な求人と比べて少ないため、転職エージェントやスカウトサービスを利用する場合は、対応可能な範囲で複数の会社に登録し、選択肢を増やすことをおすすめします。転職エージェントとスカウトサービスを併用するのも一つの方法です。

転職エージェントに相談する際は、希望条件に優先順位をつけておくことと、転職回数などは正確に伝えることが大切です。また、転職活動を進める過程で、希望する条件が変わった場合は、迅速に条件の変更を伝えるようにしましょう。

スカウトサービスを利用する場合は、転職活動を継続していることを示すため、登録したら定期的にログインすることも一案です。また、レジュメをこまめに見直し、希望条件が変わったり、現職でのポストが変わったり、新たな実績が加わったときなどは、内容を更新しておくようにしましょう。

転職活動の期間は余裕を持って取り組む

ハイキャリア求人は、採用ポジションで求められる経験・スキル・専門性が具体的、かつ高度であるケースが多いため、自身にマッチする求人に出会えるまで時間がかかることがあります。転職エージェントに登録しても、すぐに条件に合った求人を紹介してもらえるとは限りません。

従って、十分に納得の上で転職をしたい場合は、転職活動が長期に渡る可能性があると想定し、情報収集を継続しながらチャンスを待つのも一案です。「こういったキャリアを歩みたい」「こういう機会があれば挑戦したい」という希望を転職エージェントに伝えた上で、いつでも動けるように準備しておくと良いでしょう。

リクルートダイレクトスカウトは、リクルートが運営する会員制転職スカウトサービスです。リクルートの求職活動支援サービス共通の『レジュメ』を作成すると、企業や転職エージェントからあなたに合うスカウトを受け取ることができます。レジュメは経験やスキル、希望条件に関する質問に答えるだけで簡単に作成可能です。一度登録してみてはいかがでしょうか。
アドバイザー

粟野友樹

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。