転職したいが勇気が出ない…一歩を踏み出すための対処法 

「転職したい」と思いながらも、なかなか勇気が出ないとき、どのようにして不安を払拭すると、一歩を踏み出せるのでしょうか。勇気が出ない背景にある不安の例とその解消法などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

勇気が出ない理由を整理し、抱えている不安を解消しよう

「勇気が出ない」という状態の背景には、何かしらの不安があることが考えられます。まずは不安がどこにあるのか、あるいは、なぜ勇気が出ないのか、自分自身の状態を見つめてみましょう。

例えば、よくある不安には次に挙げるものがあります。当てはまるものがあれば、併記している解消法を実践し、抱えている不安を和らげてみましょう。

よくある不安とその解消法

転職活動に際して抱えがちな不安として、主に次の8つが挙げられます。 

転職先が決まるのか・転職できるのか不安 

転職活動を検討するにあたり、「転職先が無事に決まるだろうか?」という不安を抱くことはよくあります。その場合、まずは転職活動を始めてみて、転職市場の相場を掴むことも一案です。自身の希望するポジションや役職、職種、条件が、自身のスキル・経験で実現可能性のあるものなのかを把握することができるでしょう。

相場を掴む方法には、次のものがあります。 

  • 転職情報サイトに登録して、公開されている求人を見てみる。 
  • スカウトサービスに登録して、届いたスカウトの求人内容から自身の評価を把握する。 
  • 転職エージェントに登録して、キャリアアドバイザーから助言を受ける。 

このようにして情報収集した上で、転職活動を始めるのか、現職に留まり足りないスキル・経験を積むのか、転職活動を始める場合、希望する条件を変更するのかなどを検討すると良いでしょう。

なお、リクルートワークス研究所が行った民間企業における2023年度の中途採用実績に関する調査によると、中途採用と新卒採用の割合の前年との比較において、2022年度と2023年度では「新卒採用の割合を増やす予定」の企業が「中途採用の割合を増やす予定」の企業を上回っていましたが、2024年度では「中途採用の割合を増やす予定」の企業(14.7%)が「新卒採用の割合を増やす予定」の企業(11.1%)を上回りました(※1)。このことから、中途採用に力を入れる企業が増加し、求職者のチャンスは広がっていると期待できるでしょう。 

(※1)出典:リクルートワークス研究所「中途採用実態調査(2023年度実績、正規社員)」 

自分のスキル・経験が評価されるか不安 

この場合、まずは自己分析とキャリアの棚卸しを行い、これまで培ってきたスキル・経験を整理しましょう。その上で、転職情報サイトの公開求人の情報や、スカウトサービスからのスカウト、転職エージェントからの情報などから自身のスキル・経験がどこまで評価されそうか、何をアピールすれば評価されるかなどを確認します。 

もし、希望する企業や職種、ポジションに対して自身のスキル・経験が不足していることが明らかになった場合は、現職でさらに経験を積んでスキルアップすることや、資格取得によるスキルアップなどを検討するのも一つの手です。

自身の年齢が転職活動にどう影響するか不安 

少子高齢化に伴う労働人口の減少により、年齢を問わず転職の門戸は広がっています。「ミドル世代」と呼ばれる世代においても同様で、株式会社リクルートが『リクルートエージェント』の転職者データを分析した調査によると、40代・50代の転職者数は、2014年度を「1」とすると、2023年度は「5.00」で、大幅に伸びています(※2)。転職者全体では「2.74」であることからも、40代・50代にも転職のチャンスは広がっていることがわかります。

したがって、自身の年齢が気になるという場合も、まずは自己分析やキャリアの棚卸しを行ってスキルや経験、実績を整理し、その上で、それらが評価されるよう応募・アピールしていきましょう。

(※2)出典:株式会社リクルート「ミドル世代の転職動向」 

年収が下がらないか不安 

厚生労働省の「雇用動向調査」によると、令和5年上半期の転職入職者の賃金変動状況として、前職の賃金に比べて「増加」した割合は38.6%、「減少」した割合は33.2%、「変わらない」の割合は26.4%という結果が出ています(※3)。 

転職後の年収については、個々の求職者の経験やスキル、希望する転職先や転職条件により異なりますが、上述した調査では、減少した人の割合に比べて、増加した人の割合の方が高いことから、過度に不安になる必要はないでしょう。また、例えば、次の方法をとるなどして、年収を維持あるいは上げられるよう工夫することもできるでしょう。 

  • 自身の経験・スキルを採用要件としている企業に応募する、または、自身の経験・スキルがより高く評価される可能性があるポジションを選んで応募する。
  • 自身の専門性・経験・スキル・実績を明確にし、それらが応募企業で再現可能であることを的確に伝える。 

(※3)出典:厚生労働省ホームページ 「令和5年上半期雇用動向調査結果の概要」

転職活動と現職の仕事を両立できるか不安 

転職活動と仕事の両立に不安を抱く人は多いでしょう。例えば、次の方法で時間をつくったり、転職支援サービスの助けを借りたりすることで、両立が可能になる場合があります。 

  • ゴールデンウィークや年末年始などの長期休暇中に情報収集や書類作成を進め、応募は一気に行うなどして時間を確保する。 
  • 業務が落ち着くタイミングを選んで活動する。 
  • 終業後の時間や有給休暇を活用する。 
  • 求人情報の検索や面接対策、面接の日程調整などのサポートを依頼できる、あるいは、企業との条件交渉などについてアドバイスを受けられる転職エージェントに登録し、サポートを受ける(転職エージェントによって受けられる支援は異なる)。 

ミスマッチな転職をしてしまわないか不安 

「今の職場以上に自分に合う職場に出会えるかどうか不安」「より自分に合う・活躍できる仕事に出会えるか不安」などの不安を抱く場合もあるでしょう。その際は、例えば、次のような方法をとることで、より広い選択肢から検討することができるでしょう。

複数の方法で求人情報を調べる 

求人情報は、転職情報サイト、ハローワーク、転職エージェント、スカウトサービス、リファラルなど、多様なチャネルから入手することができます。これらのうち1つのチャネルだけを活用するのではなく、複数のチャネルを活用することで、より多くの選択肢を得られる可能性が高まります。

例えば、複数の転職エージェントと面談をして異なるアドバイスや情報を得る、スカウトサービスの登録情報を詳細かつ丁寧に記載し自力では探せなかったスカウトを得るなどの工夫もできるでしょう。

希望に合う求人があれば、積極的に企業と接点を持つ 

希望に合致する求人があったときには、多少の不明点や戸惑いがあったとしても、まずはカジュアル面談を希望したり、応募したりしてみましょう。求人情報だけでは分からない、企業とそこで働く社員を直接見聞きするからこそ得られる情報によって、本当に合うかどうかを判断しやすくなります。

転職することを目的にせず、焦らず活動する 

焦って内定を承諾したり、転職すること自体を目的にしたりしてしまうと、ミスマッチが起こりやすくなります。在職中であれば、内定を得た際には、現職や他の応募企業と冷静に比較・検討しましょう。その際、懸念点や疑問点があれば、内定先に依頼して職場訪問やオファー面談など情報収集の機会を設けてもらいましょう。その結果、自身の転職の目的などに合わない場合は、辞退も選択肢になるでしょう。

家族の理解を得られるか不安 

独立行政法人労働政策研究・研修機構による、30歳〜54歳の自己都合離職者を対象にした調査によると、家族・親族に転職の相談をした人の約14%が「反対された経験がある」と回答しています(※4)。

家族やパートナーの理解を得るためのポイントは、転職を検討している段階からキャリアについての考えなどを共有し、相手の考えも確認しておくことです。転職活動中も経過をこまめに報告してお互いの考えを共有し合うことで、最終的な決定に同意を得られる可能性が高まるでしょう。家族やパートナーが納得する説明ができるよう、自身の考えを整理しておくことも重要です。

(※4)出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「ミドルエイジ層の転職と能力開発・キャリア形成〜転職者アンケート調査結果」

転職するかどうかを慎重に判断したい3つのケース

他方で、転職を慎重に判断した方が良さそうなケースも見受けられます。例えば、次の3つのケースなどが挙げられます。あくまでも一例ではありますが、判断に迷ったときの参考にしてみてください。 

転職理由が「不満解消」であるケース 

現職への不満が先に立ち、とにかく今の状況から逃げたいあまり「転職さえすれば全ての問題が解決する」と考えているケースです。不満だけを理由に転職活動をしてもうまくいかない可能性もあります。仮に採用されたとしても、新しい職場でまた不満を抱えてしまえば、転職を繰り返すことになるかもしれません。

転職に対する期待値が高すぎるケース

転職に対して高い期待を抱いている一方、自分自身の「転職する目的」を明確に持っていないような場合は、転職に慎重になった方が良いかもしれません。面接で説得力のある志望動機を語れず、回答全般に一貫性を持たせることが難しくなり転職活動で苦戦する可能性もあります。

実際に転職を検討する可能性がある4つのケース

逆に、次に挙げる4つのようなケースでは、実際に転職を検討するようになることが多いようです。

転職でなければ解決しない問題があるケース

転職に迷っている状態のときにありがちなのは、現職への不満などから転職すること自体を目的にしてしまうことです。一方で、「この問題は転職でしか解決できないのか?」と考えたときに、「解決できない」と思える理由、例えば、仕事内容や待遇、働き方、評価制度などの希望について、どうしても現職では実現できず、転職によって実現できる可能性があるという場合などは、転職を前向きに検討する理由となるでしょう。

今あるメリットを捨ててでも得たいものがあるケース

慣れ親しんだ環境を心地よく感じ、そこから抜け出すときにはパワーを必要とする方も多いのではないでしょうか。そのような居心地の良い環境や、現職で築いてきたポジションや信頼関係、評価、待遇といったメリットを失ってでも転職によって得たいものがあるという場合も、転職を前向きに検討する理由となるでしょう。

迷う場合、「迷うポイント」を可視化してみると整理しやすくなります。例えば、検討する条件や項目ごとに「現在の会社」と「転職先候補の会社」それぞれを採点して比較してみましょう。「仕事内容は今の会社:5点・転職先候補:7点…」と点数化して総合してみると、転職するメリット・デメリットのバランスを判断しやすくなるかもしれません。

比較項目の一例としては「企業理念」「ビジョン」「事業戦略」「事業の特徴」「仕事内容」「社風」「経営者」「社員」「評価制度」「給与」「設備」「福利厚生」「勤務場所」などが挙げられます。自分が大切に思っている項目を選んで採点してみましょう。

転職後の変化やギャップを受け入れられるケース

また、リクルートエージェントの登録者を対象にしたアンケート調査によると、転職者が入社後に戸惑った上位3項目は「前職との仕事の進め方ややり方の違い 」「社内や業界用語等、専門知識が が分からない」「職場ならではの慣習や規範になじめない 」でした(※6)。

転職後、新たな職場の仕事の進め方や、社風、人間関係などにギャップを感じるのは、多くの人が経験することです。その分、さまざまなことを一から学び直し、適応していく意志や覚悟がある場合、転職へ踏み切る理由の一つになるでしょう。

(※5)出典:「リクルートエージェント」登録者アンケート集計結果

転職のタイミングは今だと思えるケース

「今のタイミングで転職をしなければ、後々悔やむことになる」と思えるかどうかも一つの判断軸となります。例えば、世の中の景況により、求人の状況も採用のハードルも変化します。今、希望する業界の中途採用が活況だとしても、それがこの先何年も続くとは限りませんし、その逆もあり得ます。また、自分自身の勤務状況や生活環境が変化する可能性もあります。これらを鑑みて「今が比較的動きやすい」と思えるならば、転職に踏み切るタイミングかもしれません。

転職エージェントやスカウトサービスを使ってみることも一案

転職エージェントは、転職への決心が固まらずに悩んでいる場合でも相談できます。登録後の面談を通じて、「なぜ自分は転職したいのか」という理由を整理しつつ、転職支援のプロの客観的な視点を借りて経験・実績・スキルの棚卸しを行ったり、転職市場の状況を詳しく聞いたりすることができたり、転職市場における自身の市場価値について助言をもらえる場合もあります。その過程で自身の考えが整理され、客観的な情報を得ることで迷いが払拭される効果が期待できます。

また、スカウトサービスに登録して情報を収集したり、自分の経験・スキルを棚卸しして、それを元に履歴書や職務経歴書を書いてみたりするのも転職活動の一環です。その中で、転職市場の状況や、自分の現状・立ち位置を理解し「転職するか、しないか」という迷いをより現実的に見据えることができます。キャリアや人生を見つめ直し、新たな可能性を発見できれば、どちらに決めても納得度の高い選択ができることでしょう。

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アドバイザー

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。