転職先で新たに健康保険に加入する際、家族を被扶養者にするためには「健康保険被扶養者(異動)届」を提出する必要があります。「健康保険被扶養者(異動)届」を記入する際の注意点や被扶養者の認定基準、被扶養者の認定を受けるために必要となる書類などについて詳しく解説します。
健康保険被扶養者(異動)届とは
家族を扶養している人が転職先で新たに健康保険に加入する際、提出を求められるのが「健康保険被扶養者(異動)届」です。健康保険被扶養者(異動)届とは、従業員の被扶養者に変更や増減があった際、勤務先の企業が年金事務所や健康保険組合に提出する書類のこと。転職時だけでなく、以下のような変更があった場合に提出する必要が生じます。
- 扶養者が転職し、協会けんぽ(年金事務所)や健康保険組合が変わった場合
- 被扶養者に氏名変更や入れ替わりなどがあった場合
上記に該当しているにも関わらず、「健康保険被扶養者(異動)届」がもらえない場合は、転職先の担当者や健康保険組合に必ず問い合わせるようにしましょう。
被扶養者とは?扶養に入るメリットや条件
扶養に入ると、どのようなメリットがあるのでしょうか。被扶養者として認められる範囲や条件についてご説明します。
被扶養者とは?被扶養者として認められる範囲
被扶養者とは、その名前の通り、「扶養されている人」のことを指します。健康保険においては、保険に加入している人(被保険者)の直系尊属、配偶者(事実婚状態を含む)、子、孫、兄弟姉妹の、生計を維持されている人のことを言います。
一般的には、同居している親や子供をイメージしますが、必ずしも同居している必要はありません。例えば、実家で暮らしている親に仕送りをして、生活を支えている場合なども被扶養者に該当します。また、原則として国内に住所があることが条件ですが、海外在住者であっても、特例的に被扶養者に認められるケースもあります。(外国に一時的に留学をする学生、外国に赴任する被保険者に同行する家族等)
扶養に入るメリットと条件
被扶養者に認められることの最大のメリットは、被保険者と同じように保険給付が受けられる点にあります。別途、国民健康保険などに加入して保険料を納付する必要がなくなるため、経済的に大きな恩恵があります。
ただ、被扶養者となるためには、年間収入の条件を満たす必要があります。被扶養者として認定されるのは、基本的に年間収入が130万円未満(60歳以上、または障がい者の場合は180万円未満)であり、かつ同居の場合は被保険者の年間収入の原則2分の1未満、別居の場合は収入が被保険者からの仕送り額未満であるケースとなります。
なお、この収入基準は、所得税・住民税における扶養とは異なります。混同されることがとても多いので、両者の違いを改めてチェックしておくと良いでしょう。
<参考>所得税法上の控除対象扶養親族とは?
所得税法上の扶養親族とは、その年の12月31日(納税者が年の中途で死亡しまたは出国する場合は、その死亡または出国の時)の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人です。
(注)出国とは、納税管理人の届出をしないで国内に住所および居所を有しないこととなることをいいます。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
- 納税者と生計を一にしていること。
- 年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
被扶養者認定を受けるための必要書類
新たに被扶養者の認定を受けるためには、基本的に下記の書類が必要となります。
- 所得証明書または(非)課税証明書
- 住民票(世帯全員記載・続柄の省略がないもの)
- 在学証明書または学生証
- 戸籍謄本(被保険者と被扶養者の続柄の確認できるもの)
なお、被扶養者の認定を受けるために必要となる書類は、転職先が加入する協会けんぽ(年金事務所)や健康保険組合によって異なる可能性があります。なかには、役所などに出向いて改めて書類を取得しなければならない可能もあるため、被扶養者がいる場合には、企業の担当者に早めに相談し、前もって準備しておくようにしましょう。
健康保険被扶養者(異動)届の書き方
健康保険被扶養者(異動)届は、必ず被保険者本人が記入します。被保険者が扶養している被扶養者をすべて書き出しますが、この届に記載された情報をもとに保険証が発行されることになるため、氏名の間違いなどが起こらないように、漢字・フリガナなどは正確に分かりやすく記載するようにしましょう。
扶養されるようになった日には、「出生日」、「婚姻日」、「退職日」などを、扶養されなくなった日には、「就職日」などを記入してください。なお、扶養者の認定日は、すべての書類が年金事務所や健康保険組合に到着した日となりますので注意してください。出生や本人の入社時以外で原則遡って認定してもらうことはできません。
被扶養者がいる場合は、必ず健康保険被扶養者(異動)届の提出を
実際に親や子を扶養していても、必要な書類の提出や手続きを怠れば、被扶養者に認定されることはありません。被扶養者がいるにも関わらず、健康保険被扶養者(異動)届を提出しなければ、被扶養者である家族の健康保険証が発行されず、保険給付を受けることができませんので、転職時には忘れずに申請するようにしてください。
また、転職時以外にも、配偶者が会社を辞めたなどの理由で、被扶養者の対象者になることがありますので、こうした場合にも直ちに申請を行うようにしましょう。
社会保険労務士法人 岡 佳伸事務所 岡 佳伸(おか よしのぶ)氏
大手人材派遣会社、自動車部品メーカーなどで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。各種講演会講師および記事執筆、TV出演などの実績多数。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
記事掲載日 :
記事更新日 :