扶養家族とは?履歴書に「扶養家族」欄があった場合の書き方【社労士監修】

履歴書には、「扶養家族」欄が設けられていることがあります。法的に扶養家族として認められるためには細かな条件が設けられており、記載時に迷う方も少なくないでしょう。そこで、扶養家族として認められる条件や、「扶養家族」欄の具体的な記載方法について解説します。

扶養家族とは?履歴書に「扶養家族」欄がある理由

扶養家族とは、文字通り、自分の収入によって養っている家族のこと。条件を満たせば、遠方に暮らす両親や、大学に通う子どもなども扶養家族に含めることができます。

履歴書に「扶養家族」欄がある理由

扶養家族の人数が税金や社会保険に影響することから、従来は履歴書に「扶養家族」欄が設けられ、企業は手続き時に参照することがありました。具体的には、扶養家族がいる場合、人数に応じて所得税や住民税が減額され、健康保険や厚生年金の手続きも変わります。また、家族手当や住宅手当についても、「扶養家族」欄を判断材料にしている会社もあります。

ただし、2021年に厚生労働省が作成した履歴書様式例には、応募者のプライバシー要素が非常に高い情報であることなどをふまえて「扶養家族」欄は設けられていません。扶養家族に関する情報は、採用が決まれば改めて企業から確認されるため、書く必要性を感じない場合は「扶養家族」欄のない履歴書を使用することもできます。

履歴書には、健康保険法上の扶養家族を記載する

扶養家族の定義は、「健康保険などの社会保険での取り扱い」と「所得税・住民税などの税法上の取り扱い」とで大きく異なります。「扶養家族」欄のある履歴書を使用する場合は、基本的に健康保険法上の定義に沿って記載します(後述)。税法上の定義は意識する必要はありません。

「扶養家族」欄の内容は選考に影響するのか

「扶養家族」欄の内容が選考に影響することはありません。あくまでも、社会保険や税法上の手続きのために把握するためのものです。

扶養家族の条件とは

先述したとおり、履歴書の「扶養家族」欄は、健康保険法上の定義に基づいて記載します。健康保険法では、扶養家族の範囲は、下記のA、Bいずれかに当てはまる人とされています。

A.同居・別居に関わらず、直系尊属(父母、祖父母)、配偶者(事実婚や内縁関係を含む。但し、双方に戸籍上の配偶者がいないこと)、子、孫、弟妹、兄姉

B.同一の世帯(同居して家計を共にすること)で暮らす3親等以内の親族、事実婚状態の配偶者の父母および子(配偶者が亡くなった後も、配偶者の父母と子は扶養対象となる) ただし、後期高齢者医療制度の被保険者等である人は、除く

さらに、扶養家族として認められるためには、収入基準を満たす必要があります。

・同居している人の場合
年間収入が130万円未満かつ被保険者の年間収入の半分未満であることが条件です。ただし、60歳以上または障がい者の場合は、年間収入が180万円未満かつ被保険者の年間収入の原則半分未満であれば、扶養家族として認められます。

・同居していない人の場合
年間収入が130万円未満かつ被保険者からの仕送りなどの合計額よりも年間収入が少なければ扶養家族として認められます。

家族構成別「扶養家族」欄の書き方

実際にどのように「扶養家族」欄を書けばいいのか、家族構成別に解説します。

独身で一人暮らし(扶養家族0人)

<家族構成>
本人:年収500万円

この場合、同居して家計を共にしている人はいないため、「扶養家族」欄には「0人」と書き、「配偶者」「配偶者の扶養義務」欄の「無」に丸を付けます。

独身で一人暮らしの場合の「扶養家族」欄の書き方例

なお、別居している父母、祖父母、兄弟姉妹の年収が130万円未満、かつ、その年収額以上の仕送りを毎月行っている場合は、仕送りを受け取っている人物を扶養家族として申請し、認定を受けることもできます。

年収130万円以上の配偶者と2人暮らし(扶養家族0人)

<家族構成>
本人:年収800万円
配偶者:年収500万円

共働きでともに年収130万円を超えているため、本人から見た配偶者は扶養家族に入ることができません。扶養家族欄には「0人」と書き、「配偶者」欄は「有」に、「配偶者の扶養義務」欄は「無」に丸を付けます。

年収130万円以上の配偶者と2人暮らしの場合の「扶養家族」欄の書き方例

年収130万円未満の配偶者と子ども2人(扶養家族2人)

<家族構成>
本人:年収800万円
配偶者:収入なし
子ども2人:収入なし

この場合、配偶者の収入がなく、同じく子どもの収入もありませんので、本人から見た扶養家族は3人です。ただし、履歴書には「扶養家族(配偶者を除く)」と記載されているため、「扶養家族」欄には「2人」と書き、「配偶者」「配偶者の扶養義務」欄の「有」に丸を付けます。

年収130万円未満の配偶者と子ども2人の場合の「扶養家族」欄の書き方例

年収130万円未満の配偶者と別居中の子ども1人(扶養家族1人)

<家族構成>
本人:年収800万円
配偶者:収入なし
子ども1人:年収60万円、仕送り額80万円

この場合、配偶者は収入がないため扶養家族となります。また、子どもは別居中で収入もありますが、年収130万円未満、かつ、仕送り額が年収額を上回るため、扶養家族の範囲に含まれます。すなわち、本人から見た扶養家族は2人です。ただし、履歴書には「扶養家族(配偶者を除く)」と記載されているため、「扶養家族」欄には「1人」と書き、「配偶者」「配偶者の扶養義務」欄の「有」に丸を付けます。

年収130万円未満の配偶者と別居中の子ども1人の場合の「扶養家族」欄の書き方例

年収130万円以上の配偶者と子ども1名(扶養家族1名)

<家族構成>
本人:年収800万円
配偶者:年収500万円
子ども1人:収入なし

共働きでともに年収130万円を超えているため、本人から見た配偶者は扶養家族に入ることができません。子どもが配偶者の扶養家族に入ってない場合、本人から見た扶養家族は子どもの1人です。扶養家族欄に「1人」と書き、配偶者は「有」、配偶者の扶養義務は「無」に丸を付けます。

年収130万円以上の配偶者と子ども1名の場合の「扶養家族」欄の書き方

独身だが年収150万円の同居している60歳以上の親が1人いる(扶養家族1人)

<家族構成>
本人:年収700万円
親1人:年収150万円

この場合、親の年収は130万円を上回っているものの、60歳以上の場合、年間収入が180万円未満かつ被保険者の年間収入の半分未満であれば扶養家族として認められるため、扶養家族は「1人」と書き、「配偶者」「配偶者の扶養義務」欄は「無」に丸を付けます。

独身だが年収150万円の同居している60歳以上の親が1人いる場合の「扶養家族」欄の書き方
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社会保険労務士法人 岡佳伸事務所 岡 佳伸(おか よしのぶ)氏

アパレルメーカー、大手人材派遣会社などでマネジメントや人事労務管理業務に従事した後に、労働局職員(ハローワーク勤務)として求職者のキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は、雇用保険を活用した人事設計やキャリアコンサルティング、ライフプラン設計などを幅広くサポート。特定社会保険労務士(第15970009号)、2級キャリアコンサルティング技能士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士など保有資格多数。

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。