転職活動で使用する履歴書のテンプレートと使い方、各項目の記載内容をご紹介します。あわせて、書き方のルール、送付時の注意点、よくある疑問などについて、社会保険労務士の岡佳伸氏監修のもと、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
履歴書のテンプレートダウンロード(Excel・Word・PDF)
履歴書は、テンプレートをダウンロードして作成すると効率的です。
履歴書の様式は、厚生労働省が作成したものが一般的ですが、インターネット上からダウンロードできる履歴書や市販の紙の履歴書など、様々な様式があります。
以下に3種類のテンプレートをご紹介します。それぞれWord、Excel、PDF形式でダウンロードできますので、自身に合うものを選んでご活用ください。
1.厚生労働省様式の履歴書テンプレート
2021年4月、厚生労働省が公正な採用選考を行うことを目的として作成したテンプレートです。「性別欄」が選択式ではなく任意記載欄となっており、記載しないことも可能です。また、「通勤時間」「扶養家族数」「配偶者」「配偶者の扶養義務」などの項目がありません。
2.職歴欄が大きく、経験豊富な方向けの履歴書テンプレート
厚生労働省様式の履歴書をベースに、免許・資格の記入欄を小さくし、職歴欄をたっぷりと確保したテンプレートです。社会人経験が豊かな方や転職回数が多い方など、免許・資格よりもこれまでの経験や実績を積極的にアピールしたい方に向いています。
経験と志望動機、自己PRを伝えたい方向けの履歴書テンプレート
厚生労働省様式の履歴書では、志望動機と自己PRが同じ欄になっていますが、こちらのテンプレートではそれぞれが別々の欄で詳しく記入できるようになっています。これまでの経験・実績のアピールに加えて、志望動機や自己PRを通じて入社への意欲を強調したいという方に向いているテンプレートです。
ダウンロードした履歴書テンプレートの使い方
履歴書のテンプレートは、Word形式・Excel形式・PDF形式の3つが一般的です。それぞれの形式の使い方とポイントをご紹介します。
必要項目を記入する
Word形式・Excel形式・PDF形式のテンプレートは、専用のアプリケーションを使用して必要項目を入力するか、印刷して手書きするかのどちらかになります。アプリケーションを使用する場合、文字のフォントは書類全体で統一し、明朝やゴシックなど、ビジネスで一般的に使用されるものを選ぶようにしましょう。また、各欄のスペースに合わせて文字のサイズは調整します。
なお「志望動機・自己PR」欄は、小さな文字で多くの文章を詰め込みすぎると読みづらくなるため、読みやすい文字サイズで収まる文量にします。全ての項目を記入したら、必ず誤字・脱字がないかを確認してください。
企業によって記入内容を変える
複数企業に応募する場合、一つの履歴書をそのまま使い回すと、応募企業にマッチする経験・スキル・志向などをアピールできない可能性があります。そのため、応募企業ごとに記載内容が異なる項目は書き分けるようにしましょう。
なお、履歴書を手書きする場合、応募するたびに全項目を記入する必要があるため、手間がかかります。複数企業に応募する場合は、できるだけデジタル化すると、一部を変更するだけで済むため便利です。
PDF化してファイル名をつける
Word形式・Excel形式で作成したファイルは、PDFに変換し、「履歴書/○○社」など応募先の社名を入れて保存しましょう。PDF化することで第三者による改ざんを防ぐことができ、印刷した場合も書式が崩れにくくなります。手書きで作成した場合も、スキャンしてPDFに変換しておくと、メールで送付することができます。
履歴書の書き方見本
履歴書の書き方について、それぞれの項目を解説します。
日付
日付欄には、履歴書を作成した日ではなく「提出日」を記載します。メールで送信する場合は送信日、郵送する場合は投函日、面接時に持参する場合は面接当日の日付とします。
証明写真
履歴書に貼付する証明写真の規定サイズは、一般的に縦40㎜×横30㎜。3カ月以内に撮影したものを使用するのが基本です。写真の裏側に氏名を記入し、はがれないようにしっかりと糊付けします。
住所・連絡先
都道府県から住所を記載します。自宅に固定電話がない場合、携帯電話のみの記入でも問題ありません。また、メールアドレスも併せて記載しましょう。専用の記入欄がない場合、連絡先の空きスペースに記入しておきます。
学歴
学校名は正式名称で記載します。中途採用の場合、義務教育の期間を省略しても問題ありません。高校以降の学歴については、入学年次・卒業年次、学部・学科、専攻、研究科などを、略さずに正式名称で記載します。
職歴
原則として、これまで在籍したすべての企業の入社・退社歴を省略せずに記載します。
役職を記載するかどうかは自由です。書く場合には、職歴欄に昇進した年月と部署名、役職名を記載します。会社経営や個人事業主の経験がある人は、会社設立や活動を開始した年月日と、解散や廃業をした年月日を記入します。
在職中のケースでは、職歴の最後に「在職中」もしくは「現在に至る」と書くのが一般的です。退職歴については、自己都合で退職した場合は「退職」または「一身上の都合により退職」、会社都合の場合は「会社都合により退職」と記載します。全ての職歴を記載したら最後に「以上」と記載します。
免許・資格
資格や免許は、取得した順に、略称ではなく正式名称で記載します。資格・免許がない場合には、空欄のままにせず、「特になし」と記入します。勉強中であるもののまだ取得できていない資格については、「○○資格取得に向けて勉強中」「○年○月、資格取得予定」などと記載しても良いでしょう。
TOEIC・英検などの検定試験も免許・資格欄に記載します。TOEICは、取得年月と試験の名称である「TOEIC公開テスト」、次いで「○点取得」と記載します。学校や企業を対象とした「団体特別受験制度」による「IPテスト」を受けた場合は、「TOEIC IPテスト」と記載しましょう。ただし、「IPテスト」でスコアを取得しても公式の認定証は交付されないため、企業によっては正式なスコアとして認めないケースもあります。応募要件にTOEICのスコアについて記載があった場合は、応募企業に確認してみると良いでしょう。
英検は、取得年月、英検の正式名称である「実用英語技能検定」「○級合格」と記載します。英検の取得年月日は合格証明書の発行日とされているため、証明書の右下に明記してある年月を確認した上で記入しましょう。
志望動機
履歴書の志望動機は、選んだフォーマットのスペースにもよりますが、100~200文字程度でまとめるのが一般的です。「志望企業を選んだ理由」「活かせる経験・スキル」「入社後に実現したいこと」の3つのポイントを押さえて書くようにしましょう。
自己PR
志望動機同様に、自己PRも100~200文字程度を目安に伝えたいことを端的にまとめます。仕事に対する姿勢や、大切にしているこだわりなどを記載したうえで、それを裏づける具体的なエピソードを紹介し、得られた成果を伝えると良いでしょう。
趣味・特技
自身の人となりや長所が伝わるような趣味・特技を記載すると良いでしょう。また、応募職種の業務に活かせるような趣味・特技があれば、伝えておくとアピールにつながります。
本人希望記入欄
入社にあたり譲れない条件がある場合などに記入します。特に条件がない場合には、「貴社の規定に従います」と記入します。
その他項目
前述のとおり、通勤時間、扶養家族、健康状態、賞罰などを記入する欄は厚生労働省様式にはありませんが、インターネット上からダウンロードできるフォーマットや市販の履歴書用紙には欄が設けられていることもあります。記載する際には下記のポイントを押さえてください。
通勤時間
徒歩を含め、自宅から会社までの片道の最短時間を書きます。5分単位で切り捨て・切り上げをして記入し、交通手段についても補足します。
扶養家族
健康保険などの社会保険での取り扱いに従って記入します。扶養家族として認められるためには、収入基準などさまざまな条件がありますので、事前に確認しておきましょう。
健康状態
健康状態は、必ず伝えなくてはならないものではありません。しかしながら、「通院のため休暇を取ることがある」「職場環境で配慮してほしいことがある」など、伝えておく必要があると自身で判断した場合は記載しておきます。業務に支障がなく、事前に申告しておくべき健康上の事情がない場合は「良好」と記載します。
賞罰
賞罰欄も厚生労働省の様式には入っていませんが、履歴書フォーマットによっては設けられているものもあります。自身の判断で、特にアピールしたい賞がある場合は、賞罰欄があるフォーマットを選ぶことも一案です。
履歴書の書き方ルール
履歴書の基本的な作成方法とルールについて解説します。
和暦・西暦の年号は統一する
履歴書に記載する「年」は、西暦・和暦のどちらを使用しても構いません。ただし、必ず履歴書全体で統一するようにしましょう。
空欄にせず「特になし」と記載する
資格・免許欄や本人希望記入欄など、特に記載する項目がなかったとしても、空欄のままにしておくのは適切とは言えません。記載漏れでないことが分かるように、「特になし」「貴社の規定に従います」といった一文を記載しておきます。
文字の色は黒が基本
パソコンで入力する場合も、手書きする場合も、文字の色は「黒」が基本です。
手書きする場合、文字が消せるタイプのペンを使用すると、摩擦などによって消えてしまう可能性があります。インクが消える心配のないボールペンを使用しましょう。
履歴書をメール送付・郵送・手渡しする場合は?
履歴書の提出方法は、「メール送付」「郵送」「手渡し」など、企業によって異なります。それぞれの送付方法と注意点をお伝えします。
メールで送る場合
メールの件名は、「履歴書のご送付/○○○○(氏名)」など、採用担当者がメールボックスを開いた瞬間に一目で分かる内容にします。
メールの本文も、分かりやすく簡潔に書くことを心掛けましょう。分かりやすい文章に仕上げるポイントは「宛先」「氏名」「用件」「結びの言葉」「署名」の5つです。これらの要素を押さえた上で端的にまとめることを意識すれば、読みやすい文面に仕上げることができます。
メールを送信する前に、誤字脱字がないかを必ずチェックしましょう。「企業名を省略していた」「担当者名を間違えていた」といったミスは意外に起こりやすいものです。念のため、送信前に確認するようにしてください。
郵送で送る場合
履歴書や職務経歴書などの応募書類を郵送する際には、角2号封筒を使います。書類が折れ曲がらないよう、クリアファイルなどに挟むと良いでしょう。封筒の表面に記載する宛名は「縦書き」が一般的です。企業や部署宛てに送付する場合は「○○御中」、個人の場合は「○○様」と記載します。志望する企業によっては、あらかじめ「○○行」と企業名が記載された封筒を使用するように指示を受けるケースがあるかもしれません。こうした場合には、「行」の部分を二重線で消したうえで、その横に「御中」と書きます。
切手は140円を目安に
角2号の封筒は定形外郵便となり、郵送の基本料金は、50g以内が120円、100g以内が140円、150g以内が210円となっています。(2023年9月現在)
角2号の封筒に「送付状、履歴書、職務経歴書2枚、クリアファイル」を封入した場合、100g以内で140円が料金の目安になりますが、料金不足が起こらないように郵便局の窓口で計量してから出すと安心です。
急いでいる場合は速達で送る方法もある
速達で履歴書を発送する場合、おおむね、午前中に発送すれば、翌日中には届きます。ただし、島嶼(とうしょ)部や遠隔地発着の場合、また、地域の小さな郵便局から発送した場合などは翌々日になることもあるので、正確な情報は日本郵便のホームページなどで確認しましょう。
送付状(添え状)を同封して送付する
応募書類を郵送する際には、送付状(添え状)を同封するのが一般的です。送付状(添え状)はA4サイズで作成し、郵送する履歴書、職務経歴書などの応募書類の一番上になるように重ねて送付します。
手渡しする場合
企業を訪問して履歴書を直接手渡しする場合は、職務経歴書も一緒に持参するケースが一般的です。応募書類はクリアファイルにまとめて挟んだ上で封筒に入れておき、受付で渡す場合は封筒ごと手渡しするのが良いでしょう。第三者に個人情報を見られず、セキュリティの面でも安心です。
面接時に採用担当者に直接渡す場合は、封筒から応募書類を出して渡しましょう。
履歴書に関するQ&A
履歴書に関するよくあるQ&Aをご紹介します。関連リンクと合わせて参考にしてみましょう。
在職中であることを明確にするために、履歴書の「職歴」の最後には、必ず「現在に至る」と記入しましょう。また「本人希望記入欄」に「連絡を取りやすい方法」「退職・入社が可能な予定日」なども記入しておくと良いでしょう。
【見本あり】履歴書の「学歴・職歴」欄の書き方|在職中や書ききれない時の対処法
休職した期間がある場合は、応募書類にその旨を記載するようにしましょう。企業は休職期間も含めて求職者のキャリアを知りたいと考えているため、休職期間も含めた職歴を正確に伝えてください。
休職は履歴書や職務経歴書に書く必要がある?書き方のコツと休職中の転職活動の注意点
転職を複数回経験している場合、転職回数の多さが気になるかもしれません。そのような場合は、履歴書の経歴欄や職務経歴書に、転職理由や背景などを簡潔に明記しておくことも一案です。
【見本あり】履歴書の「学歴・職歴」欄の書き方|在職中や書ききれない時の対処法
【転職回数が多い場合の職務経歴書】キャリアをアピールする方法を例文付きで解説
「学歴欄の義務教育を省略する」「学歴・職歴欄のスペースが広い履歴書を用意する」「職歴欄を簡潔にまとめ、1社につき1行で書くように文章を短縮する」などの方法で対処しましょう。
ブランクが長期にわたる場合は、選考に不利になるのではないかと心配になる方もいるかもしれません。「スキルアップのために留学した」「家族の事情でやむを得ず休職した」などの明確な理由がある場合は、履歴書の志望動機の欄などで「今後、目指したいキャリア」などに結びつけて伝える方法があります。
また、退職後、すぐに転職活動を行わずブランクが長引いた場合には、履歴書の自由記載欄や職務経歴書に「転職活動の準備が遅れた背景」「活動をすぐ開始しなかったことにおける自身の考え方」などを記載すると、採用担当者に理解してもらいやすくなるでしょう。
空白期間(ブランク)は転職活動で不利になる?選考への影響と面接での伝え方【回答例あり】
募集要件に対して「スキル・経験がマッチしている人材であるかどうか」が選考判断のポイントとなります。履歴書や職務経歴書の自己PRの欄などで、応募企業にマッチする強みをアピールしましょう。スキル・経験に自信がない場合は、志望動機などに結びつけ、応募企業への熱意を伝えると良いでしょう。
転職の書類通過率を上げる方法は?落ちる要因と選考通過のポイント解説
中途採用における書類選考期間の目安は、営業日で5~10日程度です。早い企業であれば2~3日で回答が送られてくることもあるようです。目安となる期間が過ぎても選考結果が届かない場合は、企業に選考状況について問い合わせるメールを送っても問題ありません。
転職の書類選考期間の目安は?連絡が来ない場合の対処法
転職活動に要する期間は、経験・スキルや希望する条件によってさまざまですが、一般的に「2~6カ月程度」と言われています。全体の流れとしては、準備期間に情報収集、応募書類の作成を行い、応募後、書類選考を通過した場合は複数回の面接選考を受け、内定した場合は内定承諾の書類提出や退職交渉などを行います。
初めての転職活動のやり方|準備〜退職交渉の流れ、ハイクラス人材の進め方のコツを解説
一般的には、履歴書や職務経歴書を作成する際、年収は書かないことが基本とされています。本人希望記入欄などを利用して現在の年収や希望年収を書くことも可能ですが、企業側から求められていないのであれば、自らの判断で書く必要はありません。
応募企業から現在の年収や希望年収について記載を求められた場合は「総支給額」を記載しましょう。
履歴書や職務経歴書に現在の年収や希望年収の記載は必要?
転職活動の応募書類としては、履歴書と職務経歴書を求められるのが一般的です。また、エンジニアやデザイナーなどの職種に応募する場合は、過去の実績や作品をまとめたポートフォリオの提出を求められるケースもあります。
職務経歴書の書き方と職種別の書き方見本【テンプレートダウンロード】
会社都合退職の場合は、履歴書の職歴欄に「会社都合により退職」と記載するのみで問題はありません。ただし、整理解雇や希望退職の募集に応じての退職、事業主事情に伴う労働者判断による退職の場合は、履歴書や職務経歴書に理由を補足しておくと、面接の際により理解してもらいやすくなるでしょう。
会社都合退職と自己都合退職の違いは?会社都合退職後の転職成功のポイント
未経験転職の場合は「自分の経験・スキルを未経験の業界や職種でどのように活かせると考えているのか」が選考のポイントになります。加えて「なぜ業界や職種を変えて転職するのか」についても、納得感のある理由が必要です。転職を希望する業界・企業・職種について調べ、理解を深めた上で、これらを志望動機に結びつけて簡潔に記載すると良いでしょう。
【例文あり】未経験業界・職種へ転職する際の志望動機の書き方ポイント
履歴書を購入できる場所は、文房具店、オフィス用品専門店、書店、スーパー、ホームセンター、100円ショップ、オンラインストアなどが挙げられます。また、Web上で履歴書のテンプレートをダウンロードできるサイトもあります。どこで購入したものを使っても、テンプレートを利用して作成した場合でも、選考に影響することはありません。
コンビニで購入した履歴書でも問題ない?履歴書を購入する際の選び方と注意点
履歴書を作成する際の関連ノウハウ記事一覧
以下に履歴書作成の際に活用できる記事をまとめました。
ぜひ参考にしてみてください。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
岡 佳伸(おか よしのぶ)氏
大手人材派遣会社にて1万人規模の派遣社員給与計算及び社会保険手続きに携わる。自動車部品メーカーなどで総務人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険適用、給付の窓口業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として複数の顧問先の給与計算及び社会保険手続きの事務を担当。各種実務講演会講師および社会保険・労務関連記事執筆・監修、TV出演、新聞記事取材などの実績多数。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
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