履歴書の様式によっては、押印欄を設けているものがあります。そこで、履歴書に押印が必要なケースや、履歴書用のハンコの選び方を、組織人事コンサルティングSeguros代表コンサルタントの粟野友樹氏に解説していただきました。履歴書への押印を失敗してしまったり、印鑑を忘れて提出してしまったりした時の対処法もご紹介します。
履歴書に印鑑は基本的に不要
かつては市販の履歴書の多くに押印欄がありました。しかし近年は、市販の履歴書にも、インターネット上でダウンロードできる履歴書のフォーマットにも、押印欄のないものが増えています。背景としては、1997年に閣議制定された「押印見直しガイドライン」によって「履歴書や職務経歴書には押印を求める意義が薄いため、記名のみでよい」とされたことがあります。従って、基本的に履歴書に印鑑は必要ありません。
転職活動で印鑑が必要になるケース
面接で交通費を支給する企業では、交通費の書類への押印のために「印鑑を持参してください」と言われるケースがあります。また、選考が進んで内定を承諾し、雇用契約書を結ぶ際にも署名と押印が必要になります。転職活動で印鑑が必要なケースはこの2つになりますが、念のため転職活動中は認印を用意し、面接などの際には持ち歩くようにすると便利です。
転職活動で押印するハンコの選び方
履歴書にはどのようなハンコを使えば良いでしょうか。ハンコの種類と選び方についてご紹介します。
朱肉を使う「認印」で大きすぎないものがお勧め
一般的に個人が所有するハンコには、次のような種類のものがあります。
- 実印(市区町村に印影を登録した、公的に認められたハンコ)
- 銀行印(銀行などの金融機関に、印影の届出をしているハンコ)
- 認印(郵便物や荷物の受け取りなどに使用するハンコ)
この中で履歴書に押印する際は、朱肉を使用した「認印」がお勧めです。あまり印影が大きすぎるものは大げさな印象を与えることもあるため、一般的な直径1.2cmほどのサイズで、読みやすい行書体や楷書体のものを選ぶと良いでしょう。朱肉を使うタイプであれば、100円ショップや文具店で手軽に買えるもので構いません。
実印や銀行印は避けるのが無難
履歴書の印鑑に「実印」や「銀行印」を使用しても決して間違いではありません。ただ、実印や銀行印は、保険契約や不動産取引、預金の引き出しなど重要な場面で使うものであり、応募書類で使用するのは不自然だと受け取られる可能性があります。また、履歴書の紛失などによるリスクもゼロではないため、防犯の観点からも、履歴書で使用するのは避けたほうが良いでしょう。
「シャチハタ」のような「インク浸透印」は使わない
普段は「シャチハタ」のような「インク浸透印」を認印として使っている方も多いかもしれませんが、それらは履歴書に押すハンコとしてはお勧めできません。インク浸透印は時間が経つと色褪せてしまうケースもあり、重要な書類には使わないのが一般的。企業から「ビジネス文書にふさわしくない」と見られる可能性もあります。従って、履歴書には朱肉を用いたハンコを使うのが良いでしょう。
印鑑でミスをした時の対処法
履歴書への押印を失敗してしまったり、印鑑を押し忘れて提出してしまったりした時はどうすれば良いでしょうか。
わずかな「かすれ」や「傾き」なら問題ない
細心の注意を払ってハンコを押しても、印影がかすれたりにじんだりしてしまうことはあるものです。ただ、文字がしっかりと読める範囲で「部分的ににじんだ」「文字ではない部分が一部欠けた」「わずかに傾いた」という程度の失敗なら、そこまで気にする必要はありません。送り状などにお詫びのひと言を添えて企業に提出すれば問題ないでしょう。
明らかなミスの場合は書類の作り直しを
一方「印影が二重になった」「90度以上傾いた」「文字が欠けた」「全体がにじんだ」など、明らかな失敗をしてしまった場合、そのまま提出するのは避けましょう。書類から「丁寧さ」や「気配り」に欠ける印象を与えてしまいます。
履歴書で書き損じをした場合は、修正液などで直したりせず、新たに作り直すのが基本です。押印に失敗した時も最初から書き直すか、新たにプリントアウトするようにしましょう。なお、履歴書を手書きする場合は最初にハンコを押し、インクをよく乾かしてから書き始めると安心でしょう。
印鑑を忘れて提出したら応募先に連絡を
応募企業から押印の指定があった場合や、押印欄のある履歴書を使用した場合に印鑑を忘れて提出してしまったら、気づいた時点ですぐに企業に連絡を。押印を忘れたことを謝罪し、どのように対応すれば良いかを問い合わせましょう。履歴書を再提出する、面接時にハンコを持参して押印するなど、企業の指示に従ってください。
きれいにハンコを押すためのコツ
履歴書にきれいにハンコを押すために、覚えておきたいコツをご紹介します。自信のない方は、ノートやメモ用紙などで何度か練習してみましょう。
1.ハンコの印字面がきれいなことを確認
ハンコの印字面をチェックし、文字の間にゴミが詰まっていたり、文字が欠けたりしていないかを確認します。汚れている場合は、爪楊枝などできれいに掃除し、ティッシュでふいておきましょう。履歴書に押印する前に、メモ用紙などに押してテストをしておくと安心です。
2.用紙の下に捺印マットなどを敷く
ハンコを押す際は、捺印マットを履歴書の押印欄の下に敷くと、印字面が用紙としっかり密着して、ズレやかすれを抑えることができます。捺印マットがない場合は、厚みのある雑誌やノートなどを履歴書の下に敷くと良いでしょう。
3.軽く叩くように朱肉を付ける
朱肉は、しばらく使っていないとインクが乾いていることがあります。押印の前に色がつくかどうかを確認し、乾いていたら補充するようにしましょう。ハンコに朱肉を付ける時は、ポンポンと3回程度軽く叩くようにするのがコツ。ギュッと押しつけてしまうと、印字面の溝にインクが溜まり、文字がきれいに出ない原因になるので注意しましょう。
4.印字面を紙に密着させる
印字面を見て上下が正しいことを確認したら、押印欄の中心に上からまっすぐ押しましょう。まずは力を入れず、ゆっくりと確実に紙に密着させるのがコツです。次に反対の手を添えて、接地面がズレないように注意しながら、小さな「の」の字を書くように重心をずらしていくと、フチが欠けることなくきれいに押すことができるでしょう。
電子捺印を利用する企業も増えている
労働基準法には、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と規定されています。そのため、企業は、規定された項目が記載されている「労働条件通知書」の明示が義務付けられています。一方で、雇用契約書の締結は法で義務付けられていませんが、書面を残しトラブルを回避するために、多くの企業で雇用契約書が交わされています。
以前は、労働条件は「書面での交付」と定められていたため、企業は雇用契約書と労働条件通知書を用意し、雇用契約書に捺印する手続きが一般的でした。しかし、電子化の流れに伴って、2019年4月から労働条件の明示はFAXやメール、SNSなどでも可能になりました。そこで、雇用契約書と労働条件通知書を電子化し、雇用契約書の電子捺印を利用する企業が増えています。
履歴書を作成する際の関連ノウハウ記事一覧
以下に履歴書作成の際に活用できる記事をまとめました。
ぜひ参考にしてみてください。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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