経理職への応募にあたり応募書類に志望動機の記載を求められた場合、どのように書くと評価を得られるでしょうか。リクルートエージェントのキャリアアドバイザーが、志望動機の書き方のポイントを解説します。志望動機の例文や、経理職の採用トレンド、求められる経験・スキルなども併せてご紹介します。
経理職の仕事内容
経理職の仕事には、財務会計(月次、四半期、年次の決算書作成)、税務、監査法人対応、開示書類の作成(上場企業の場合)などがあります。加えて、隣接する領域、例えば、財務、管理会計、IR、経営企画などと連携した経験が評価される場合があります。
転職市場においては、これらの業務について、「どの業務の経験があるか」「何年経験したか」「どの立場で経験したか(実務を担当したのか、取りまとめや承認を担当したのか)」などの掛け合わせでマッチングがなされる傾向にあります。
経理職の採用トレンドと求められる経験・スキル
経理職の採用ニーズの特徴や、求められる経験・スキルとして、次の点が挙げられます。
採用ニーズと転職トレンド
経理(財務会計)の仕事は、期日通りに確実に完遂する必要があるものが多く、企業各社においては、経理組織に対して着実性と効率性を重視する傾向にあるのが現在の状況です。
他方で、日経平均株価の上昇や、新型コロナウイルス感染症の流行の落ち着きなどを背景に、海外での売上増を目指した販路拡大や海外拠点の新設・拡大など、海外展開の動きが加速しています。それに伴い、海外子会社の連結決算の経験や、国際税務の経験、国際会計基準(IFRS)を扱った経験などがある人材への評価が高まっている傾向にあります。
また、効率化を推進する流れもあり、経理業務の改善プロジェクトなどに携わり効率化を実現した経験や、業務を分業化して外部委託した経験、経理業務へのITシステムの導入または刷新などのプロジェクトに関わった経験などがあると、高く評価される場合があります。
求められる経験・スキル
先述したとおり、経理職の転職においては、「どの業務の経験があるか」「何年経験したか」「どの立場で経験したか(実務を担当したのか、取りまとめや承認を担当したのか)」が応募企業のニーズとマッチしているかどうかが重視される傾向にあります。
したがって、応募企業が求めている経験・スキルを把握し、それに応えられる経験・スキルが自分にあるかどうかを見極めて応募・アピールすることが重要です。
また、経理の業務は多くの企業で共通しているものの、企業規模や業界、上場・非上場などによって職務内容は異なるため、職務経歴書等の応募書類には、経験のある業務を余すことなく記載することで、企業は「どのような業務を任せられる人材か」を判断しやすくなります。特に、上場企業に所属していた場合は「連結決算」「開示資料作成」「税務調査対応」「監査対応」「IR活動への関与」などの経験の有無は記載するとよいでしょう。
加えて、企業が求めるものと合致すれば評価を高める要素の一例となるのが、次に挙げる経験・スキルです。
財務、管理会計、IR、経営企画など、隣接する業務の経験、あるいは関わり合い
財務会計と隣接する業務との連携は、企業が攻めの経営を行っていく上で重要です。これらの業務やIPO、M&Aなどに財務会計の知見を持って携わった経験があれば、アピールポイントになります。
管理職として、経営陣への報告や、経営企画部門・管理会計部門と連携・協働した経験
マネジメント層は、経理部門として自社の財政状態を可視化するだけでなく、そこから次の一手をどのように導き出すかを他部署と連携して検討することが求められるケースがあるため、経理部門に閉じない経験は、アピールポイントになります。
経理経験者が志望動機を書く際のポイント
経理職の転職においては、前述の通り、自身が持つ経験・スキルのうち、応募企業が求める経験・スキルをいかにアピールするかが重要です。そのためには、職務経歴の書き方を工夫することはもちろんのこと、志望動機を書く際にも意識するとよいでしょう。
志望動機を書く場合のポイントとして挙げられるのは、自身が経験してきた複数の経理業務のうち、応募企業が求める内容とマッチするものを押し出して構成することです。求人情報を見て、応募企業が求めているものにしっくりくる自身の経験は何かを見極め、志望動機の中でも伝えていきましょう。
志望動機の基本構成
履歴書や職務経歴書で志望動機を伝える際には、次のような構成で記載すると採用担当者の納得を得やすくなります。
書き出し
応募企業に魅力を感じているポイントを簡潔に記しましょう。いきなりエピソードから書き始めると、文章に締まりがない印象を与えます。
応募企業を選んだ理由
応募企業を選んだ理由を伝えます。そのためには、これまでの経験も踏まえつつ、「抱いている課題意識」「自身が仕事で大切にしたいこと・こだわりたいこと」などを挙げた上で、応募企業であればそれを実現できると考えていることを記載するといいでしょう。
活かせる経験・スキル
自身の経験・スキルが、応募企業でどのように活かせるかを伝えます。そのためには、これまで培ってきた経験・スキルと、応募企業で求められている要素との共通点を見つけ出すことが大切です。求人情報を確認し、マッチする経験・スキルがあれば、前面に押し出してアピールしましょう。
なお、企業が求めている経験・スキルとの共通点が見出しにくい場合には、「仕事の進め方」「企業理念」などに着目し、別の切り口から接点を見つける方法もあります。
入社後に実現したいこと
最後は応募企業で働く意欲が伝わるような言葉で締めくくりましょう。入社後にどのような活躍・貢献がしたいかという意思表示をすることで、採用担当者の期待が高まります。
経理職の志望動機の例文
上述したポイントをふまえて、経理職への志望動機例文を紹介します。
ITによって生活を大きく利便化する貴社の事業に共感し、志望いたしました。現職では、15年間にわたり経理部門に所属し、連結・IFRSも含めた決算全般から監査対応まで幅広く経験してきました。
これらの経験に加え、課長として業務効率化のための経理システムの刷新と業務オペレーションの整理、BPOを牽引した経験を生かし、事業成長に伴い組織拡大のフェーズにある貴社において、経理業務の最適化に貢献したいと考えています。
履歴書を作成する際の関連ノウハウ記事一覧
西川栄展
大学卒業後、金融機関において営業職に従事。その後、株式会社リクルートに入社し、ハイキャリア部門において金融領域を担当。現在は同じくハイキャリア部門にて経理・財務・管理会計・監査領域におけるキャリア支援に従事。
※本記事での内容は取材時点での情報になります。