履歴書のフォーマットによっては設けられていることのある「通勤時間」欄。採用担当者が通勤手当の額や通勤による心身への負荷を判断しているケースもあるので、正確に記入することが大切です。通勤時間の基本的な書き方やルールなどについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
履歴書の「通勤時間」とは?
履歴書における通勤時間は、「自宅から会社までの通勤にかかる片道の所要時間」を記入します。所要時間は、電車やバスなどの交通機関や自動車や自転車などの乗り物に乗っている時間、徒歩時間すべてを含みます。
厚生労働省が推奨している履歴書様式には通勤時間の項目はありません。応募企業に通勤時間について伝えたいことがある場合は、「通勤時間」欄の履歴書を使用する、もしくは厚労省推奨の履歴書を使う場合は、「本人希望記入」欄に記載しましょう。
出典:厚生労働省「新たな履歴書の様式例の作成について」(求職者向け)
履歴書の「通勤時間」の基本的な書き方
履歴書に記入された通勤時間の情報によって、企業の採用担当者は、自宅から通いやすいかどうかを判断するだけでなく、希望する通勤手段や勤務地が複数ある場合は配属先を検討するためにも用いられます。ここでは、履歴書に通勤時間を記入する際の一般的な書き方について解説します。
ドアtoドアの片道時間を入れる
通勤時間は、自宅から会社までのドアtoドアでかかる、片道の所要時間を書きます。自宅から最寄り駅までの徒歩時間、交通機関に乗っている時間、会社最寄り駅からの徒歩時間など、通勤にかかるすべての時間を合計して記入します。
いくつかの交通手段がある場合は、ドアtoドアの最短時間を記載するようにしましょう。また、通勤時間が1時間未満の場合は「0時間XX分」と記入します。
<記入例>
電車、バス
約0時間50分
一般的に時間は5分単位で記入
通勤時間は、5分単位で記入するのが一般的です。42分であれば「40分」、53分であれば「55分」といったように、1分単位の端数は四捨五入して書きましょう。
<記入例>
8分→10分、22分→20分、58分→1時間
交通手段も補足しておく
通勤時間だけでなく、交通手段についても記入します。公共交通機関を利用するのが一般的ですが、自家用車での通勤を希望している場合などは、あらかじめ履歴書に記載しておきましょう。
<記入例>
自家用車で約0時間20分
「通勤時間」が分からない・複数ルートある場合などの書き方
入社後の勤務地が複数候補あり、勤務地がどこになるかわからない場合や、入社後に引っ越しする予定がある場合など、応募前の時点では通勤時間がはっきりわからないこともあるでしょう。ここでは、そうした場合の書き方についてご紹介します。
入社後に引っ越しの予定がある場合
入社時点での引っ越しが決まっている場合は、「※〇月〇日引っ越し予定」と補足し、引っ越し先からの通勤時間を記入します。
<記入例>
電車、バス
約0時間40分
※〇月〇日引っ越し予定
また、配属先に合わせて引っ越しを検討しており、通勤時間が確定していない場合は、「※配属に合わせて転居を考えています」と記載しましょう。
<記入例>
電車、バス
約1時間10分
※配属に合わせて通勤30分以内エリアへの転居を考えています。
入社後の勤務地が複数候補ある場合
入社後の勤務地候補が複数ある場合や、具体的な配属先が不明の場合など、勤務地が明確にわからない場合は、希望する勤務地までの通勤時間を記入し、希望する勤務地までの通勤時間を書いたことを補足しましょう。
<記入例>
電車、バス
約0時間30分
※〇〇支店に通勤する場合の通勤時間
寮・社宅を利用したい場合
寮や社宅を利用したい場合には、現在の自宅からの通勤時間を示したうえで、希望の勤務地やエリアと、寮・社宅の利用を希望している旨を、本人希望欄などに記載しましょう。
<記入例>
電車、バス
約1時間30分
※〇〇エリアの配属、寮・社宅の利用を希望します。
フルリモート(在宅勤務)の場合
近年は、テレワークを導入する企業が増えており、企業や職種によっては、「テレワークのみで通勤なし」というフルリモート(在宅勤務)のポジションもあります。
テレワークを導入している企業を希望する場合は、求人や採用ページを確認して、テレワークの頻度や遠距離在住でも応募可能か確認してみましょう。特に記載がない場合は、本人希望欄に「テレワークを希望しています」と記載し、応募してみることをお勧めします。
テレワークの場合の通勤手当は、企業によって実費支給にしていたり、通勤手当を廃止してテレワーク手当などの支給にしていたりするケースが多いようです。
<記入例>
電車、バス
約1時間10分
※テレワークを希望しています。
「通勤時間」を調べる方法
履歴書に正確な通勤時間を記載するために、インターネットやスマートフォンアプリで提供されている乗換案内サービスや地図検索サービスを活用しましょう。自宅と会社の住所、使用する交通手段や通勤時間などを入力して検索すると、最短ルートと所要時間を調べることができます。
乗換案内サービス
乗換案内サービスは、自宅の最寄り駅から会社の最寄り駅までの電車やバスなどの公共交通手段を使ったルート検索や所要時間を調べる際に適しています。検索する際は、実際に通勤する時間で設定するようにしましょう。所要時間がわかったら、徒歩時間と合わせた通勤時間を記入します。
地図検索サービス
徒歩や複数の交通手段を組み合わせたルート検索や所要時間を調べることができます。インターネットやスマートフォンアプリなどでサービス提供されており、公共交通機関に加えて、自家用車、自転車などを使った場合のルートや所要時間も調べることが可能です。
こちらも実際に通勤する時間帯で設定し、正確な所要時間を調べるようにしましょう。
採用担当者が「通勤時間」で確認したいこと
企業の採用担当者は、履歴書に記載された応募者の通勤時間から、どのようなことを確認しているのでしょうか。ここで改めてその理由をご説明します。
「通勤時間」の長さが体力的な負担にならいないか
応募者の通勤時間を確認することによって、通勤による負担や業務への支障を判断しています。通勤時間が長くなると、日々の通勤がストレスになり、仕事へのモチベーションの低下や、健康面への悪影響が出るなど、様々な問題が生じる可能性があります。長く働き続けてもらえる人材を採用するために、通勤時間も判断軸のひとつにしていることも考えられます。
会社が負担する交通費が高額にならないか
距離や交通手段によっては、通勤手当が高額になってしまう可能性があります。また、事故防止のために、自動車や自転車による通勤を禁止している企業もあります。企業の採用担当者は、履歴書の通勤時間欄を確認することで、通勤手当の目安や交通手段の確認を行っています。
複数の勤務地がある場合の配属先や社宅や寮などを検討
複数の勤務地がある場合は、なるべく近いエリアへの配属を検討したり、社宅や社員寮などを保有する企業であれば、その入居についても検討を行ったりしている可能性もあります。勤務地や社宅や社員寮などを希望する場合は、履歴書に補足して記入するようにすると良いでしょう。
「通勤時間」は採否に影響するのか
通勤時間が長いことが、採用における選考にどのくらい影響するのか気になる人も少なくないでしょう。基本的には採用に影響はありませんが、通勤時間が2時間を超えてくると、「本当に通勤できるのか?」「体力的に負担なのでは?」といった不安を抱かれる可能性があるようです。
通勤時間が長いことが不安な場合は、自己PR欄や本人希望欄で「通勤時間がかかりますが、業務に支障はございません」「採用いただけましたら転居を検討いたします」などと補足すると良いでしょう。
履歴書を作成する際の関連ノウハウ記事一覧
以下に履歴書作成の際に活用できる記事をまとめました。
ぜひ参考にしてみてください。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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