初めて転職活動をする場合、「どのように転職活動を進めていけばいいのか」「全体の流れが掴めない」という方もいるでしょう。スムーズに転職を実現するためには、全体の流れを把握した上で、計画的に活動を進めることが重要です。組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が、転職活動の全体の流れや、事前準備から選考過程、内定・入社といった各ステップでやることを解説します。やることリストや在職中の転職活動のメリット・デメリットなども解説するので、参考にしてみましょう。
目次
転職活動の流れと期間の目安
転職活動に要する期間は、経験・スキルや希望する条件によってさまざまですが、一般的に「3~6カ月程度」と言われています。
目安としては、自己分析や情報収集、書類作成、応募書類の作成などの「事前準備」に約1カ月〜1カ月半、「面接選考」に約1カ月〜2カ月、「内定・退職・入社」に約1カ月〜2カ月半といった期間をかけるケースが多いようです。おおまかなスケジュール感を踏まえた上で、転職したい時期から逆算し、無理のない活動計画を立てることが重要です。
以降で、「事前準備でやること」「面接に向けてやること」「内定から退職・入社までにやること」を解説していきます。
【事前準備でやること】自己分析・企業分析・応募書類の作成
ここでは、転職活動の事前準備でやることを解説していきます。
自己分析とキャリアの棚卸しを行う
まずは自己分析で転職によって実現したいことや希望する条件などを整理し、自身の志向性を明らかにしましょう。また、キャリアの棚卸しを行うことで、これまでのスキルや経験から、自身の強みや得意分野を明確にすることができます。これらの結果を踏まえ、転職先に求めることや活かせる強みなどを基に、何を軸にして転職活動を進めるのかを決定します。
情報収集
転職サイトやビジネスSNS、ハローワークなどで情報を収集し、希望にマッチする求人を探します。転職エージェントやスカウトサービスなどを活用するのも良いでしょう。一般に公開されていない求人が見つかる可能性もあります。また、友人や知人などに、リファラル採用について聞いてみたり、興味のある企業のコーポレートサイトに求人が掲載されていないか確認してみたりする方法もあります。
業界研究・企業研究を行う
応募したい企業が見つかったら業界研究・企業研究を行います。求人情報や企業のホームページなどで、求められている経験・スキルや事業内容、応募職種の仕事内容などが自身にマッチしているかを確認しましょう。また、企業の採用ページで経営者や先輩社員のインタビュー記事を読んだり、カジュアル面談を実施してもらったりするなどで、社風や働き方などがマッチしているかを確認することもポイントです。転職エージェントを利用している場合は、紹介を受けた企業について、知りたい情報を確認することも可能です。
業界研究では、業界の動向を調べるだけでなく、応募を検討している企業と競合他社の比較も行うと良いでしょう。
応募企業を選定する
応募企業の選定では、求人情報の「募集要項」「仕事内容」「求める人物像」を確認し、経験・スキルや強みが活かせそうな仕事を中心に選びましょう。キャリアチェンジの場合も、応募先の業務に活かせるポータブルスキルがあるはずです。「課題発見力」「調査分析力」「チームビルディング」など、業界や職種が異なっていても活用できるスキルを探してみましょう。
また、希望条件があまりに高いと、応募できる求人が減り、転職活動を長期化させる原因となります。安易に妥協する必要はありませんが、すべての条件を満たす求人はなかなか見つからないものです。あらかじめ「譲れない条件」と「妥協できる条件」を整理して、希望に近い求人に応募するようにしましょう。
さらに、複数の企業に応募する際は、内定時期を揃えるために、同じタイミングで動くことがポイントです。同時期に複数社から内定が出ていれば、条件などを比較検討することが可能です。選択肢を増やすことで、より納得のいく転職を実現しやすくなります。
応募書類を作成する・企業に応募する
転職活動で求められる応募書類は、一般的には履歴書・職務経歴書の2点であることがほとんどです。
履歴書は、応募者のプロフィールを確認するためのものです。記載する内容がフォーマット化されており、氏名・連絡先・年齢・学歴・職務経歴など、基本的な情報を記載する欄が設けられています。職務経歴書は、これまで経験してきた職務内容や活かせるスキル・技術・経験などを中心に、採用担当者にアピールしたい項目を自由につけ加えて記載していきます。
履歴書・職務経歴書は、テンプレートをダウンロードして使うと便利です。履歴書は、厚生労働省が推奨している様式が主流となっています。職務経歴書の様式は自由なため、自身にマッチするものを選びましょう。転職回数や異動が多いなど、書くべき職務経歴が多い場合は、職務経験ごとにまとめるキャリア式のフォーマットがおすすめです。
応募書類を作成したら、応募企業の指定の方法で送付します。なお、転職エージェントから紹介を受けて応募した場合は、応募書類の送付も転職エージェント経由で行います。
【面接に向けてやること】面接日程の調整・面接対策
ここでは、面接選考に向けてやることを解説します。
面接日程を調整する
採用担当者と面接日程の調整を行います。在職中などで平日の日中などの日程調整が難しい場合は、業務時間外やオンライン面接などで対応してもらえることがあるので確認してみるといいでしょう。
なお、転職エージェントを利用している場合は、担当のキャリアアドバイザーを通じて日程調整を行います。
面接で回答する内容を準備する
面接でよく聞かれる質問に対し、回答する内容を整理しておくことが大事です。
自己紹介、転職理由、志望動機、自己PR、逆質問は必ずと言っていいほど聞かれるので、アピールしたいことを簡潔に伝えられるように準備しておきましょう。
また、キャリアプラン・キャリアビジョン、企業の経営方針・事業方針・業界展望に対する考えなどを聞かれる可能性もあるので、情報収集をした上で、自身の考えをまとめておくこともポイントです。なお、回答内容を準備していても、口頭で簡潔に伝えられないケースもあるので、声に出して練習しておくこともポイントになるでしょう。
【内定から退職・入社までにやること】内定承諾・退職交渉・各種手続き
内定を得てから退職・入社までにやることを解説します。
ほかの選択肢と比較検討の上、内定承諾する
内定承諾をする前に、ほかの選択肢と比較検討することが大事です。並行して選考を進めている企業や、ほかに内定を得た企業だけでなく、現職にとどまる場合についてもしっかりと検討した上で判断することで、より納得のいく選択ができるでしょう。内定承諾する際には、ほかの応募企業に選考辞退・内定辞退の連絡を迅速に行い、社会人としてきちんとした対応を心がけることも大事です。
また、内定承諾時には、労働条件を明示した「労働条件通知書」の内容を確認することが重要です。契約期間(入社日)、勤務地、労働時間、賃金や各種手当などをきちんと書面で確認しておきましょう。業務内容や退職時の条件などは、書面に記載されていない可能性もあります。疑問点や不明点がある場合は、採用担当者に質問し、解消した上で内定承諾をすることがポイントです。
内定先と入社日を決定の上、退職交渉を行う
内定先の採用担当者と入社日の調整・決定を行います。在職中の場合は、入社日に間に合うようにスピーディーに退職交渉を進めることが重要です。退職の申し出は、直属の上司に対して行うケースがほとんどです。法的には退職希望日2週間前までに行うこととされていますが、一般的には退職希望日までの1〜2 カ月前までと定めていることが多いでしょう。後任者の手配、業務の引き継ぎ、有給休暇の消化なども踏まえると、転職先が決まったら早めに現職の会社に退職意思を伝えるのが望ましいと言えます。
退職に必要な各種手続きを行う
業務の引き継ぎなど、今後について上司と話し合いを行った後、正式に退職日が決定したら退職届を提出します。法的には口頭でも良いとされていますが、会社の規定などに従って書面を作成するのが一般的です。現職の会社の就業規則などを調べ、退職届の提出が必要であるか、いつまでに提出すればいいかなどを確認しておきましょう。
退職時には、会社から付与・支給・貸与されていた物などを返却します。健康保険被保険者証、身分証明書、社員証、名刺、パソコン、スマートフォンなどに加え、業務で使用していた書類やデータなども返却することが必要です。また、退職時・退職後には、転職先で必要になる雇用保険被保険者証、源泉徴収票などを受け取ることも忘れないようにしましょう。
転職活動の流れに合わせた「段階別やることリスト」
ここでは、「事前準備」「面接」「内定から退職・入社」の3段階に分けて、「やることリスト」を紹介します。
事前準備でやることリスト
□ 自己分析
□ キャリアの棚卸し
□ 求人情報の収集
□ 業界研究・企業研究
□ 応募企業の選定
□ 応募書類の作成
□ 応募
面接に向けてやることリスト
□ 面接日程の調整
□ 面接の回答内容を作成
□ 口頭での回答練習などの面接対策
内定から退職・入社でやること
□ 内定先と、ほかの企業・現職にとどまる場合などを比較検討
□ 労働条件通知書の確認
□ 内定承諾
□ 退職交渉(在職中の場合のみ)
□ 退職願・退職届を提出(在職中の場合のみ)
□ 現職の会社からの支給品・貸与物などを返却(在職中の場合のみ)
□ 現職の会社から退社時に必要な書類を受け取る(在職中の場合のみ)
在職中に転職活動をするメリット・デメリット
在職中に転職活動をする場合のメリット・デメリットを解説します。
メリット
在職中に転職活動をするメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
1:収⼊面の不安がない
2:ブランクなく次の仕事に就ける
3:現職にとどまる選択もできる
1:現職の給与で定期収入を得ることができるため、納得がいくまで転職活動に取り組むことができます。退職後に転職活動を進める場合は、定期収入がない焦りからミスマッチな転職先を選択してしまうケースもあります。
2:ブランクなしで転職できる点もメリットと言えます。ブランクが長引けば、転職活動を進める際に企業から「ブランクの理由」について懸念される恐れがあり、自身としても「仕事に取り組む勘やスキルが鈍るのではないか」という不安を抱える可能性もあります。
3: 希望にマッチする転職先が見つからない場合は、現職にとどまることも可能です。また、転職活動中にさまざまな企業を見る中で「現職の職場のほうが待遇や環境が良い」と気付くケースもあります。
デメリット
在職中に転職活動をするデメリットは、以下の2点が挙げられます。
1:現職の業務と並行するため、活動時間が限られる
2:退職時期と入社時期の折り合いがつかない場合がある
1:現職の業務も並行しなくてはならないため、転職活動に時間を割くことができず、集中しにくいと言えるでしょう。現職の業務時間内に面接設定することが難しいというデメリットもあります。
2:希望に合う転職先から内定を得ても、「現職を退職する時期」と「転職先が求めている入社時期」の折り合いがつかないケースがあります。入社予定日に間に合わせるために、自己都合のみで退職予定日を決めようとすれば、現職の職場とトラブルになる可能性もあるでしょう。
初めての転職活動でよくあるQ&A
転職活動を始めるにあたって、よくある疑問にお答えします。
中途採用の書類選考期間は、5~10日程度(営業日)が目安です。早い企業であれば2~3日で回答があります。具体的な期間が求人に記載されているケースもあるので、応募する求人の「応募方法」や「選考の流れ」などの欄を確認してみましょう。
面接実施から結果の通知が来るまでの日数は企業によって異なります。一般的には「3日~10日後」の連絡が目安とされています。また、面接時に「○日ほどで結果をお知らせします」「○月○日を目安にご連絡します」などと伝えられることもあります。気になる場合はその場で確認してみても問題ないでしょう。
応募企業から「希望給与」「前職(現職)の年収条件」などを聞かれたときが、給与・年収交渉を切り出しやすいタイミングと言えます。また、内定前に条件面談を設定する企業の場合には、そこで切り出す方法もあります。
応募前、選考中、内定後などにカジュアル面談を設定する企業もあります。求職者から希望する場合は、企業側が了承すれば実現できます。企業に直接確認したいことがある場合や、現場の社員などから直接話を聞きたい場合は、申し出てみると良いでしょう。
転職エージェントやスカウトサービスを転職活動に役立てることもできる
転職エージェントでは、求人の紹介を行うだけでなく、応募書類、面接対策のアドバイス、企業との面接日程調整など、キャリアアドバイザーが伴走して転職活動をサポートするケースもあります。また、非公開の求人を持っているケースもあるため、チャンスが広がる可能性もあるでしょう。また、スカウトサービスでは、求職者のキャリアに興味を持った企業や転職エージェントからスカウトを受けることができます。情報取集に役立てることができるでしょう。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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