転職の面接で志望動機を伝える際のポイントと注意点を解説【回答例つき】

採用面接の風景

採用面接においてよく聞かれる質問の一つが「志望動機」。仮に経験・スキルが十分とは言えなくても、志望動機が採用担当者の心を動かし、採用に至るケースもあります。面接で志望動機を伝える際のポイントや伝え方について、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

採用担当者が面接で志望動機を聞く理由

企業の採用担当者が志望動機を確認する理由はさまざまですが、主には次の4つが考えられます。

  • 応募者の入社意欲の高さを見極めるため
  • 自社や事業内容や業務内容についての理解度を知るため
  • 自社に定着して長く働いてくれそうか判断するため
  • 強みを活かして活躍してくれそうか判断するため

従って、これらについて採用担当者に伝わるよう、次の3点を盛り込みながら、「なぜ『この会社』の『この仕事』を志望するのか」を答えられると良いでしょう。

  1. 応募企業を選んだ理由(応募企業に魅力を感じているポイント)
  2. 応募企業で活かせる自身の経験・スキル
  3. 入社後に実現したいことや、目指したいキャリアパス

志望動機と「自己PR」「転職理由」の違い

志望動機のほかに、面接で必ずといっていいほど聞かれる質問に、「転職理由」「自己PR」がありますが、それぞれの内容と伝え方の違いについては以下のように考えると良いでしょう。

「志望動機」…その企業を志望した理由がメイン+入社後に貢献できるだろうと考えている内容や、キャリア面で実現できそうだと考えていることを伝える。

「自己PR」…「自分の強み」を伝えることがメイン+それらを活かしてどのように貢献・活躍できるかを具体的に伝える。

「転職理由」…自分が転職するのはなぜかという目的や、転職によって実現したいことを伝える。

志望動機、自己PR、転職理由で語るエピソードは重なることが多いですが、この場合はむしろ共通項がある方が自然です。これらの回答内容については、事前に考えておくことをおすすめします。

志望動機の基本的な答え方

最初にご紹介した「1.応募企業を選んだ理由」「2.応募企業で活かせる自身の経験・スキル」「3.入社後に実現したいことや、目指したいキャリアパス」を盛り込んだ志望動機を伝えるためには、次のように内容を整理していくと良いでしょう。

転職理由を振り返る

まずは、「自分は転職によって何を実現したいのか」という転職の目的を改めて振り返ります。実現したいことと、応募企業との接点が志望動機になり得ます(後述)。

なお、前職(現職)への不満など、退職・転職を考えるきっかけになったことは「退職理由」であって、転職理由ではありません。現状への不満が転職の動機になっている場合、「その不満が解消されれば○○が実現できる」→「○○をしたい」と転換して考えてみましょう。

自身のスキルや経験、強みを整理する

先述したように企業は、志望動機から「強みを活かして活躍してくれそうか」という点も把握しようとします。そこで次に、これまでの自分の経験・スキル、実績、強みなどを整理しましょう。

応募企業・職種と、自身の転職理由や経験・スキルとの接点を探す

転職理由と自身のスキルや経験、強みを整理できたら、応募企業や職種について調べ、共通点を見つけます。それが志望動機の核となります。

例えば、「より成果や実績を正当に評価される環境で仕事をしたい」という転職理由があり、応募企業には「労働時間や年次よりも成果を評価する」という環境があれば、それが志望動機になり得ます。

このほか、「携わる業界や商品、サービス」「業績、シェア」「仕事内容、働き方」「社員のカラー、企業風土」「経営理念、目指すビジョン」などの中から、「この企業だから自分の希望(転職理由)を実現できる。だから、魅力に感じる」という点があれば、その点を志望動機としてエピソードを交えて表現できると良いでしょう。

また、「経験・スキル、強みを発揮できるか」を伝える上では、自身の経験やスキル、強みと応募企業や職種で求められている要素との共通項を見つけ出すことがポイントになります。例えば、募集要項などから募集職種のコアスキルとなるキーワードを読み取り、自身の経験・スキル、強みとマッチする要素を見つけてアピールすると良いでしょう。

面接での志望動機の伝え方(ストーリー構成のコツ)

面接で志望動機を伝える際には、次のようなストーリーで構成すると、採用担当者の納得を得やすくなります。

結論=応募企業に魅力を感じる点

まずは、志望するメインの動機となった「応募企業に魅力を感じているポイント」を簡潔に伝えると良いでしょう。いきなりエピソードから語り始めると、採用担当者は「結局、何が言いたいのだろう?」ともやもやしながら話を聞き続けることになってしまいます。「結論」を述べた後で「理由」を語る流れであれば、「論理的思考力がある人物」という印象も与えられる可能性があります。

応募企業を選んだ理由

最初に伝えた「魅力を感じるポイント」について、具体的な理由を説明します。これまでの経験も踏まえつつ、「抱いている課題意識と理想とする姿」「自身が仕事で大切にしたいこと・こだわりたいこと」などを挙げた上で、応募企業であればそれを実現できると考えていることを伝えましょう。

活かせる経験・スキル

応募者側の一方的な思いを語るだけでは、「自社を気に入ってくれてありがとう」で終わってしまうかもしれません。「自社に貢献してくれそう」と期待につながるよう、自身の経験・スキルが、応募企業でどのように活かせるかを伝えましょう。

入社後に実現したいこと

最後は、応募企業で働く意欲が伝わるような言葉で締めくくりましょう。入社後にどのような活躍・貢献がしたいかという意思表示をすることで、採用担当者の期待が高まります。

【シチュエーション別】面接で伝える志望動機の回答例

今までと同じ業界・職種に転職する場合と、業界や職種を越えてキャリアチェンジをする場合では、「なぜ応募企業なのか?」「なぜ応募職種なのか?」という観点でアピールするポイントも異なります。経験・未経験を軸とした「転職シチュエーション別」に、志望動機の回答例をご紹介しましょう。

同業界・同職種に転職する場合の回答例

【IT・営業→IT・営業】

御社を志望する理由は、社会貢献度の高いサービスと組織力の強さです。
まず、御社が提供する○○サービスは、△△業務においての利便性・生産性を大きく向上させるものです。同じ業界で営業活動を行う中、導入企業から、「他社にはない機能が生産性を向上させた」「コストパフォーマンスで優位性が高い」などと聞くことが非常に多く、ぜひ営業としてこのサービスで顧客に価値を提供したいと考えました。
2点目の組織力については、御社ではセールスと開発部門が密に連携し、常に改善を図っていると伺っております。<私もこれまで顧客の潜在ニーズを掘り起こし、企画や開発部門にフィードバックすることで、○年連続で○%以上の目標達成を実現しており、その経験を活かしてサービスのさらなる価値向上とシェアの拡大に貢献したいと思います。そして近い将来には、営業部門をマネジメントする立場で組織を牽引していきたいと考えております。

【ポイント】

応募企業を志望する理由を明確に「2つ」とし、それぞれが実態をとらえた内容で説得力があります。同業界の営業としての高い実績や、将来的にマネジメント人材を目指す意欲の高さも評価されるでしょう。

同業界・異職種に転職する場合の回答例

【IT・エンジニア→IT・人事】

技術的に優れた、独自性のあるプロダクトを多数保有し、各領域で優れた人材が集っている御社の成長性に魅力を感じております。
現職でエンジニアチームのリーダーを務める中、組織の課題によって、スキルの高いエンジニアが力を発揮できずに開発がうまく進まないケースや、人材が毎月のように離職する場面を経験し、人事領域の重要性に強く興味を持つようになりました。
エンジニアである私は、技術の最新動向やエンジニアの心理を理解しております。ですから技術職の採用や評価・育成はもちろん、その他のビジネス系職種全般においても、技術側面から御社の強みや将来性を具体的に訴求することができると考えております。
常に業界をリードする御社において、エンジニアの経験を活かして採用担当として貢献し、将来的には事業・組織の成長を経営観点から実現する、戦略人事としての役割を果たしていきたいと考えております。

【ポイント】

エンジニアとして、技術面から応募企業の強みに魅力を感じていることが伝わります。また異職種を志望するに至った背景が具体的で、人材・組織への高い興味関心を持っていることもわかり、納得感があります。

異業界・同職種に転職する場合の回答例

【建設・人事→Web・人事】

御社の人材育成や、組織作りに対する考え方に強く共感しています。
人事職として採用や評価制度の企画に携わってきましたが、今後は個々の人材の能力を引き出す育成や、エンゲージメントの高い組織作りに力を入れたいと考えています。きっかけは、私自身が人事チームのリーダーを経験し、メンバーの成長やチームの一体感に喜びを感じたことです。
しかし現職の会社は、人材の専門性の高さや即戦力性を重視しており、人材の流動性も高いことから、人材育成や組織開発を重視していないのが実態です。そこで、組織拡大にあたり、若手の管理職への抜擢や、独自のキャリアパス制度を導入して、若手の成長の支援を大切にしている御社に興味を抱きました。これまでの経験を活かしつつ、御社の成長を加速させる人材育成と組織開発に貢献したいと思います。

【ポイント】

応募職種である人事としての経験・スキル、意欲の高さや使命感の強さがわかります。応募企業の人材育成やキャリアパスなどの具体的な情報も把握し、選んだ理由や背景も説得力のあるものとして伝わってきます。

異業界・異職種に転職する場合の回答例

【SIer・営業→コンサルティングファーム・コンサルタント】

コンサルティングファームの中でも中小企業に特化した御社が、「組織変革」をテーマとされているところに興味を抱きました。
私はSIerで○○システムの営業を務めてきましたが、あるとき、クライアントのCTOにヒアリングを行う中で「システム導入の前に組織体制の整備が必要ではないか」と考え、自分なりに勉強して提案しました。それにより信頼を得て、より深い経営課題の相談を受けるようになり、その結果、自社サービスの適切な提案で、前年比○%アップの大型受注の獲得に至りました。この経験を機に、経営幹部のパートナーとして「経営課題の本質をとらえて提案を行う」という、より高度な仕事を極めていきたいと考えるようになりました。
IT知見はDXなどの提案において、また経営課題に対するソリューション営業の経験は、顧客企業の組織変革コンサルティングにおいて活かし、中小企業の成長に貢献できるコンサルタントとして専門性を高めていきたいと考えております。

【ポイント】

応募企業の特性(事業領域・顧客)をしっかり把握し、応募企業を選んだ理由を具体的に伝えられています。さらに異業界・異職種ながら、経験をどう活かすかもアピールできています。

【業界・職種別】面接で伝える志望動機の回答例文集

このほかの業界・職種別の志望動機の考え方は、以下の記事を参考にしてください。

面接で志望動機を伝える際に意識したいポイント・注意点

面接で志望動機を伝える際は、以下のポイントを意識すると良いでしょう。

応募書類よりも掘り下げた回答を準備する

面接は、履歴書や職務経歴書などに書かれた内容をベースに進めるのが一般的です。従って、面接で改めて志望動機を問われた場合も、基本的に応募書類と同じ内容を答えても問題ありません。

ただ、履歴書や職務経歴書には字数に制限があるため、応募書類に書き切れなかった関連エピソードなどをしっかり振り返り、面接で深掘りされたときに答えられるよう準備しておくと良いでしょう。

他の質問への回答と一貫しているかに気をつける

「転職理由」「自身の強み」などを聞かれたときに回答した内容と、志望動機に齟齬が生じないようにしましょう。例えば、転職理由として「前職ではできなかった○○をするために転職を決めた」と語っておきながら、応募企業を志望した理由が「前職ではできなかった○○ができる」ではないとすると、採用担当者に矛盾を感じさせてしまうでしょう。

また「△△が自分の強み」とアピールしているのに、志望動機では△△を活かそうとしていない様子が見えると、「本当の強みは何だろう?」と採用担当者が疑問を抱くことになるので注意しましょう。

企業研究を十分にする

志望動機として「抽象的で、他社でも同じことが言える」と思われるような内容はできるだけ控えましょう。「数ある同業企業の中で、あえてこの会社を選んだ理由」をなるべく具体的に伝えてください。そのためにも、企業研究をしっかり行い、競合との違いを把握することが大切です。

企業側の視点を意識する

志望動機として「御社のここに魅力を感じる」と語ったとき、「共感してほしいのはそこではないのだが」とがっかりされるケースもあります。また、「自分のこの経験・スキルが活かせる」とアピールしたとしても、企業側が求める経験・スキルとずれていると評価につながらない可能性があります。

こうしたギャップを生まないためには、応募企業の公式サイトや採用情報、応募企業について書かれたメディアの記事などから、応募企業の考え方やニーズを読み取り、自身の志望動機がそれらに沿っているかを考えると良いでしょう。

面接で聞かれる志望動機に関連する質問例

「志望動機を教えてください」以外にも、応募者の志望動機を把握するための質問をされる場合があります。よく聞かれる質問例とその意図、回答時の注意点を紹介します。

「当社について魅力を感じている点や競合他社と比較しての特徴などについて、ご自身のお考えを聞かせてください」

「どのくらい業界・企業研究をしているか」という点から志望度を把握する意図で質問されることがあります。企業研究などをもとに、できるだけ具体的に回答しましょう。

ただし、すべての情報を調べ切っているかどうかを評価するものではないため、わからないことや調べ切れていないことがあっても、ごまかしたり知っているふりをしたりする必要はありません。「このように理解していますが、適切でしょうか?」などと確認・質問をして企業と対話しながら理解を深めていきましょう。

「今回の転職活動では、どのような観点で応募企業を選択されていますか?」

転職活動で重視している点(転職活動の軸)を把握し、転職理由や志望動機との整合性や一貫性を確認したいときに、このような質問をされることがあります。もし矛盾があった場合、「自社で定着して働いてくれるだろうか?」と疑問を持たれる可能性もあるため、転職理由や志望動機で話したことと整合性のある内容を話すようにしましょう。聞かれない限り、具体的な企業名を答える必要はありません。

「ご自身の経験スキルの中で、当社に最も活かせる、あるいは合致すると考えるものを教えてください」

入社後に活躍・貢献できそうかどうか、また、企業と応募者との接点について、応募者自身がどのように自覚しているのかなどを確認する意図で、このような質問をされることがあります。

業界・企業研究と自身のスキル・経験などを整理し、両者の接点と考えた点を具体的に答えましょう。特に応募職種・業務のミッションや具体的な業務内容を想定して回答すると、企業は活躍イメージを持つことができます。また、業務の理解度の高さから、志望度の高さを伝えることもできるでしょう。

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組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。