人事職への転職を志す際、どのようなポイントを押さえて志望動機を書けば書類選考に通過しやすくなるのでしょうか。リクルートエージェントのキャリアアドバイザーが、志望動機の書き方のポイントを解説します。また、人事経験者、未経験者の志望動機の例文も併せてご紹介します。
人事職の仕事内容
人事の業務の代表的なものには、「採用」「人材開発（教育・育成）」「人事企画（制度企画、人事戦略立案）」「労務（給与・社保）」などがあります。
加えて、人的資本経営を推進する動きや企業の海外展開の加速などにより、人事には、従来の管理業務に加え、戦略的な取り組みによって経営戦略の実現に貢献する役割が求められるようになってきています。それに伴い、新たな業務・役割も増えています。代表的なものが、次の4つです。
- タレントマネジメント：従業員が持つ能力やスキル、経験を把握し、育成や配置を戦略的に行うための仕組みや制度の企画・設計・運営などを行います。
- HRBP：Human Resource Business Partnerの略で、事業責任者のパートナーとして、事業単位での業績向上、目標達成を人事戦略面から支援します。
- グローバル人事：海外の拠点で働く社員（駐在員、現地採用社員等）の能力・スキルを最大限に活かすための仕組み・制度の構築・運用などを担います。
- HRIS：Human Resource Information Systemの略で、従業員の詳細情報や勤怠、給与などを管理するシステムです。このシステムを始めとした人事情報管理システムの導入と運用、蓄積されたデータの分析などを行います。
志望動機の基本構成
人事職の志望動機の書き方をお伝えする前に、まずは志望動機の基本構成について紹介します。履歴書や職務経歴書で志望動機を伝える際には、次のような構成で記載すると採用担当者の納得を得やすくなります。
書き出し
応募企業に魅力を感じているポイントを簡潔に記しましょう。いきなりエピソードから書き始めると、文章に締まりがないように感じられるかもしれません。
応募企業を選んだ理由
応募企業を選んだ理由を伝えます。これまでの経験もふまえつつ、「抱いている課題意識」「自身が仕事で大切にしたいこと・こだわりたいこと」などを挙げた上で、応募企業であればそれを実現できると考えていることを記載します。
活かせる経験・スキル
自身の経験・スキルが、応募企業でどのように活かせるかを伝えます。そのためには、これまで培ってきた経験・スキルと、応募企業で求められている要素との共通点を見つけ出すことが大切です。求人情報を確認し、マッチする経験・スキルがあれば、前面に押し出してアピールしましょう。
なお、企業が求めている経験・スキルとの共通点が見出しにくい場合には、「仕事の進め方」「企業理念」などに着目し、別の切り口から接点を見つける方法もあります。
入社後に実現したいこと
最後は応募企業で働く意欲が伝わるような言葉で締めくくります。入社後にどのような活躍・貢献がしたいかという意思表示をすることで、採用担当者の期待が高まるでしょう。
人事経験者が志望動機を書く際のポイント
人事経験者の場合、「人事業務の中で応募者が強みを持つ業務は何か」「会社の経営方針をふまえて、どのように人事業務にあたっていたか」などの点に採用担当者は注目します。これらの強みを、入社後の業務や応募企業の人事課題にどのように活かしたいかを記述するとよいでしょう。
より高い水準の情報公開を求められる上場企業の場合、統合報告書やサステナビリティレポート、人的資本レポート（ヒューマンキャピタルレポート）、データ集などに、その企業の人事戦略が記載されています。それらを参考に企業の人事課題を読み解き、その課題に対して発揮できる自身の強みは何か、また、その強みをどのように発揮できるかを考え、志望動機として記載すると、採用担当者の納得感も高まるでしょう。
人事未経験者が志望動機を書く際のポイント
人材紹介会社や人材コンサルティング会社など、人事に近い領域での経験はあるものの、人事業務そのものは未経験の場合、採用担当者が着目するのは「なぜ人事として働きたいのか？」という点です。
したがって、自身の経験や強みを基に、人事として働きたい理由を具体的に記述しましょう。例えば、人材紹介会社の営業経験者であれば、クライアントの立場に立って採用支援をした経験などが評価されるため、経営者の考えを十分に理解し、採用戦略を提案した経験などを活かせるスキル・経験として伝えながら、入社後、人事として取り組みたいことや人事課題にどのように取り組みたいかを伝えるとよいでしょう。
人事職の志望動機の例文
上述したポイントをふまえて、人事志望者の志望動機例文を、経験者、未経験者に分けて紹介します。
人事経験者の志望動機例文
○○業界で後発ながらトップを狙う貴社の志に共感し、志望いたしました。現職では、500名規模の企業の人事部門に10年間勤務し、直近5年間は人事企画グループのマネジャーとしてタレントマネジメントシステムの導入を牽引するとともに、各種人事制度の見直しに携わっています。事業のさらなる成長を目指して従業員のキャリア自律と適材適所の配置を強化していく貴社においても、人事制度の整備・改善の面から貢献したいと考えています。
人事未経験者の志望動機例文
（※人材紹介会社の営業→事業会社の人事への応募を想定）
貴社のプロダクトに魅力を感じて志望いたしました。現職では、転職エージェントの企業担当として、ベンチャー企業に対して、経営者、CTOの意向をふまえた人材要件や評価観点、採用チャネルの設定・提案を行い、ITエンジニアを年間で30名採用するという先方の目標を達成するなど、エンジニア採用支援に強みを発揮してきました。貴社においても、自社プロダクトをより市場に浸透させるための鍵を握るエンジニアの採用に貢献したいと考えています。
履歴書を作成する際の関連ノウハウ記事一覧
履歴書作成の際に活用できる記事を以下にまとめました。
ぜひ参考にしてみてください。
高橋紀夫
国家資格1級キャリアコンサルティング技能士。大手スポーツメーカーにて販売促進を経験した後、外資系人材エージェントを経て、2008年に株式会社リクルートキャリア（現株式会社リクルート）に入社。一貫して事務系領域（人事、経理、法務）を担当。現在は人事職領域のハイキャリア層の転職支援を手がける。
※本記事での内容は取材時点での情報になります。
