転職の面接でよく聞かれる質問と回答例・事前準備を解説

採用面接の風景

転職活動を進めるうえで、重要なポイントとなるのが面接です。志望する企業に対して、強みやアピールポイントを直接伝えられる場であり、自分自身をきちんと理解したうえで、しっかりと準備をして臨むことが大切です。転職の面接でよく聞かれる質問と回答のポイント、面接に臨む前の準備や心構えについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。

転職の面接で聞かれる質問と企業の意図

一般的な面接の流れとしては、簡潔な自己紹介に続いて、職務経歴、転職理由、志望動機などを聞かれ、さらに自己PRを求められることもあります。採用担当者はこうした質問を通じて、採用ポジションの業務をきちんと遂行できるか、自社にマッチした人材であるか、自社で活躍できる可能性があるかどうか、などを確認します。

特に定番の質問である「自己紹介」「職務経歴」「転職理由」「志望動機」「自己PR」については、事前にしっかり回答を準備して臨むことをおすすめします。

面接でよく聞かれる「定番質問」と回答例

転職の面接で聞かれることの多い定番質問と質問の意図、回答例、回答のポイントをご紹介します。ぜひ面接対策に役立ててください。

自己紹介

面接の冒頭に会話のきっかけをつくり、応募者の緊張をほぐす目的で、自己紹介を求められることが多いようです。回答の目安は1分程度で、企業によっては「〇分程度で自己紹介をお願いします」など、時間を指定されることもあります。

【質問例】

「まず簡単に自己紹介をお願いします。」
「簡単にこれまでのご経歴を教えていただけますか?」

【質問の意図】

応募者の経歴を把握し、面接で深掘りするポイントを判断します。また「準備をしっかりして面接に臨んでいるか」で志望度の高さを見るとともに、「コミュニケーション力」や「表情や話し方なども含めた第一印象」などもチェックします。

【回答例】

○○と申します。本日は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます。私は○年に○○大学を卒業後、○○社の営業部門で5年間法人営業を務め、○年に○○社に転職し、現在は部下10名のマネジメントを行っております。キャリアを通じて○○業界を対象とし、新規顧客開拓や他部署と連携しての組織営業と、近年は若手の自走力を伸ばす育成に力を注いできました。現職の営業チームにおいては前年対比120%以上を3年続けて達成しております。御社の○○事業の成長に私の経験を活かせると考え、応募いたしました。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

【回答のポイント】

自己紹介で話す内容は、(1)氏名と挨拶、(2)簡単な経歴、(3)現職または前職について、(4)アピールしたいことの要点、(5)締めの言葉という流れで組み立てるといいでしょう。

職務経歴

職務経歴書にある記載の中から、今回の採用職種・ポジションに関連する経験について聞かれることが多いようです。

【質問例】

「これまでの職歴を教えてください。」
「今までの仕事で最も誇れる実績や成功体験は何ですか?」

【質問の意図】

これまで身に付けたスキルが自社で発揮され、活躍に繋がるかどうかを判断します。「どのような仕事をしてきたか」という事実確認だけでなく、成果を挙げられた理由を聞くことで「自社での再現性はあるか」にも注目しています。

【回答例】

私は○○社で、10年間にわたり営業職を経験してきました。主に○○エリアの既存顧客に自社開発の工作機械を販売するなかで、ものづくりの現場を理解し、現場が抱える課題を解決に導く提案力が身に付きました。3年前に課長となってからは、タブレット端末などのITツールを活用した新たな提案方法を採用しました。機械導入のメリットをより具体的に伝えやすくなったことで、前年対比150%の売上を達成したのに加えて、営業社員の業務効率化にも繋がり、営業社員一人当たりの残業時間を50%削減できました。

【回答のポイント】

経験については、職務経歴書と同じ内容をそのまま話すのではなく、応募している仕事内容に活かせる経験やスキルに絞り、メリハリをつけて話すことが大切です。

転職理由

転職理由というと、「退職したい(退職した)」理由のことだと受け取る方もいますが、それだけでなく「転職によって叶えたい希望」も含めた理由を聞かれていると考えましょう。

【質問例】

「転職理由をお聞かせください。」
「今回の転職で叶えたいことはありますか?」

【質問の意図】

応募者の転職の背景を知ることで、「同じ理由でやめてしまわないか」という「定着性」と、「この会社で希望を叶えて生き生きと働けるか」という「入社後の活躍の可能性」を判断したいと考えています

【回答例】

製薬企業の営業担当として○年勤めてきましたが、医薬品の情報提供がITに代替されつつあることでやりがいを感じづらくなってきたことから、転職を決意しました。『医療を通じて社会に貢献したい』という思いは変わらず、医療業界の知識と対人スキルを活かしていきたいという考えから、次のステップとして、医療に携わる個人の幸せを実現する仕事を考えました。医療系の転職支援に特化し、業界出身のコンサルタントを多数抱えている御社であれば、事業への貢献を通じて医療と社会に貢献できると考えております。

【回答のポイント】

現職(前職)に対する不満への言及が多いと、採用担当者にネガティブな印象を与える可能性があります。入社後に実現したいことなどをしっかり伝え、ポジティブな転職であることをアピールしましょう。

志望動機

多くの場合は「転職理由」からの流れで質問されます。転職理由との整合性がとれるように答えることが大切です。

【質問例】

「志望動機をお聞かせください。」
「入社後に担当してみたい業務はありますか?」

【質問の意図】

採用担当者は、「志望度の高さ」や、入社後の「定着性」、入社後の「活躍の可能性」を見極めるためにこの質問をします。また、「自社について正しく理解しているかどうか」にも注目しています。

【回答例】

御社のサービスの社会貢献度の高さと、組織力に魅力を感じています。 御社が提供する○○サービスは私も現職で利用しているため、生産性の高さやコストパフォーマンスにおいても優位性が高いと実感しています。営業としてこのサービスを手がけ、顧客に喜ばれる価値を提供したいと考えました。また、御社ではセールス部門と開発部門が密に連携し、改善を図っているとお見受けします。私も営業として、顧客の潜在ニーズを引き出し、企画開発部門にフィードバックすることに注力してきました。その経験を活かし、○○サービスのさらなる価値向上とシェアの拡大に貢献したいと思います。

【回答のポイント】

同業他社でも通用するような一般的な回答は避け、企業研究で得た知識をもとに「なぜこの会社でなければいけないのか」を、説得力を持って伝えることがポイントです。

自己PR

自己PRでは、自身の実績や強みを自由に語ることができます。これまでの経歴を振り返って自己分析を行い、強みを言語化しておきましょう。

【質問例】

「これまでのご経験に触れながら自己PRをお願いします。」
「あなたの得意な分野について教えてください。」

【質問の意図】

自己PRから、「自社が求める経験・スキルを持っているか」「自社の風土・カルチャーに合っているか」「入社後に成果を出せそうか」などを見極めようとしています。

【回答例】

複数のアプリの新規開発プロジェクトのリーダーを務め、マネジメントスキルを磨いていきました。社内外からの要望に伴う仕様変更などが生じた際には、個々のメンバーの稼働可能な時間や進捗状況を見極めて、必要な人員の確保や機能・仕様の優先順位づけなどを行い、開発メンバーに過重な負荷がかからない体制を維持しながら、利用者の満足度を高めるアプリを目指してきました。リリース後は目標を上回る○%の利用者満足度を達成し、メンバーもバージョンアップに意欲的に取り組んでいます。 こうした調整力やミッションを完遂するチーム運営のスキルを御社でも発揮し、開発をリードする役割を担っていきたいと考えております。

【回答のポイント】

「自身の強み」を冒頭で端的に述べ、根拠となる「エピソード」、具体的な「成果・実績」を一緒伝えるようにします。「入社後にどのように活かせるか」が採用担当者に伝わるように意識するといいでしょう。

面接で聞かれるその他の質問と回答例

上で紹介した定番質問以外に、面接で聞かれることがある質問について解説します。

長所・短所

面接では長所(強み)のほか、短所(弱み)を聞かれることもあります。特に短所については、率直に答えていいものかどうか迷うことが多いので、事前にきちんと考えておくと安心です。

【質問例】

「これまでの仕事の中で、どのような強みを発揮してこられましたか?」
「ご自身の中で、今後改善していきたいと考えていることはありますか?」

【質問の意図】

長所や短所についての回答から、応募者の人物タイプや、自社との相性、募集する仕事への適性を判断します。また、自分を客観視できているかどうかで、応募者の入社後の伸び代を評価する意図もあるでしょう。

【長所の回答例】

提案力と実行力が私の強みです。新たな営業手法を取り入れることで、前年対比130%の実績を上げることができました。御社でも積極的に、視点を変えた新たな施策を講じることで、新規顧客の開拓につなげていきたいと考えています。

【短所の回答例】

几帳面さが裏目に出てしまい、ときに取り組みの経過まで管理してしまうことが課題です。私の組織から異動した部下の中で、異なる業務に能動的に対応しきれていない人材がおり、成長に繋がっていないと気づきました。現在は結果のみの管理にシフトし、それまでの過程では皆が自律的に行動できる環境を心掛けています。

【回答のポイント】

長所は、仕事のどのような場面でどのように発揮されているのか、採用担当者がイメージできるように伝えましょう。具体的な成果も添えると説得力があります。短所の場合は、長所として言い換えることもできる特徴を挙げながら、課題をカバーするためにしている行動を伝えるといいでしょう。

キャリアプラン・キャリアビジョン

採用ポジションの業務に関することだけでなく、入社後にどのようなキャリを歩んでいきたいのかを確認されることもあります。

【質問例】

「5年後・10年後にどのようなポジションに就いていたいですか?」
「将来の夢について教えてください。」

【質問の意図】

自社の人事制度やキャリアパスが応募者の希望に合っているかどうか、応募者に「中長期視点で成長していこう」とする意欲があるかどうかなどを見極めようとしています。

【回答例】

少しでも早く実績を出し、数年後には営業部を牽引する責任者として活躍したいと考えています。また、将来的には、急速に拡大を続けるDXのニーズを捉え、新規商材を取り扱う事業部を立ち上げ、売上の新たな柱を構築したいという思いもあります。

【回答のポイント】

5年後や10年後など一定期間を想定して「何を実現したいか」「そのためにどのような経験が必要か」を考えておきましょう。また、転職理由や志望動機との一貫性も意識する必要があります。

年収や入社日などの希望条件

自分から希望年収などの条件を切り出すのは難しいものですが、採用担当者から入社時期や年収等の希望を聞かれた場合は、希望条件をスムーズに伝えるチャンスです。

【質問例】

「ご希望の年収を教えてください。」
「入社可能時期はいつ頃でしょうか?」

【質問の意図】

自社が想定している採用条件と、応募者の希望との間にギャップがないかどうかを確認しようとしています。

【回答例】

求人に記載されていた経験とモデル年収を拝見し、年収900万円を希望しています。また、入社日については、内定承諾を正式にさせていただいてから1カ月ほどで入社可能です。

【回答のポイント】

選考終盤では、給与や賞与、勤務地、勤務時間など、労働条件の確認が行われます。入社後のトラブルを防ぐためにも、入社前にきちんと確認しておきましょう。譲れない条件がある場合は事前に整理しておき、なぜその条件を希望するのかを説明できるようにしておくことが大切です。

逆質問

面接の最後に、採用担当者から「何か質問はありますか?」などと聞かれることがあり、一般的に「逆質問」と呼ばれています。

【質問例】

「何か質問はありますか?」
「最後に確認しておきたいことはありますか?」

【質問の意図】

逆質問の内容から、応募者の「志望度の高さ」や、「自社と仕事に対する理解度」を確認します。また、応募者が抱いている懸念点を払拭し、追加情報を提供することで、入社意向を醸成しようとする意図も考えられます。

【回答例】

御社が掲げている『○年後に○億円企業を目指す』という目標の達成に向けて、新規事業やM&Aなども検討されていると拝察します。具体的な方向性について、開示できる範囲で教えていただけますか?

御社は部署間の連携が活発な風土であるとお聞きしましたが、具体的にはどのような形でコミュニケーションを取っているのでしょうか?

【回答のポイント】

逆質問を準備する時は、これまでの面接の振り返りやIR情報、面接担当者の情報などから疑問点を洗い出し、自分の意見や見解も加えつつ、意図を持って質問できるようにしましょう。企業ホームページなどで調べれば分かる質問、意見や仮説を提示しない抽象的な質問、面接の場にいない他の担当者に聞くべき質問は、避けた方がいいでしょう。

面接に向けた事前準備とポイント

面接前にはきちんと準備をしておくことが大切です。ここでは面接に臨む前に準備したいことや、心構えについてお伝えします。

一貫性のある回答を準備する

質問への答えを準備せず、場当たり的に回答していたり、自分をよく見せようと誇張して話していたりすると、いくつかの質問を重ねた時に、内容の一貫性が損なわれてしまいます。軸となる「転職理由」「志望動機」「自己PR」の回答は事前に準備しておき、他の質問に対しても、全体の整合性を意識して回答するようにしましょう。

回答は文字に起こして話す練習をする

誰にとっても、リハーサルをせずに面接の場で、考えを理路整然と述べるのは難しいものです。面接が決まったら、本番に備えてあらかじめ回答を文字に書き起こし、声に出して繰り返し練習しておくとことをおすすめします。丸暗記するというよりも、アピールしたいポイントを決めて話の流れを作っておくと、自分の言葉で自然に話せるようになるでしょう。

連絡先や経路、通信環境を確認

応募企業に出向いて面接を受ける場合は、前日までに交通経路や受け付け方法、担当者の連絡先などを確認しておきましょう。オンライン面接の場合「準備は当日で大丈夫」と考える人もいるかもしれません。しかし、間際になって「アクセス先や連絡先が見つからない」「通信環境が不安定になった」「ツールが使えない」などでバタバタしてしまうことも起こりがちです。

面接の案内が届いたら早めに目を通し、疑問点があれば問い合わせ、環境の確認などは事前に済ませておくことが大切。くれぐれも「動揺して力が発揮できなかった」ということのないようにしましょう。

面接は相互理解の場と考えて臨む

面接で答える内容は準備しておきたいものですが、プレゼンのように完璧を目指すことはありません。面接の本質は「応募者と企業との相互理解」であり、会話のキャッチボールを通じて互いをよく知ることが一番の目的だからです。面接は、企業が応募者の適性や意欲を判断する場ですが、同時に応募者が企業を見極める場でもあります。適度にリラックスして臨みましょう。

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粟野友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。