【転職の注意点20選】転職活動前・活動中・内定後・退職・入社などフェーズ別に気を付けたいこと

転職 注意点

転職活動を始める際には、どのような点に注意すればいいのでしょうか。組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が、転職活動前から活動中、内定後、さらには退職から入社後まで、それぞれの段階における注意点やチェックしておきたいことについて解説します。

転職活動前の注意点・チェックしたいこと

まずは、転職活動前の注意点やチェックしたいことをご紹介します。

1:転職する目的を明確に持つ

現職への不満のみを理由とし、転職する目的を明確にしていない場合は、転職先を探す際の軸も明確になっていない可能性があるでしょう。給与・待遇などの条件面や企業の規模・ネームバリューのみで転職先を探せば、ミスマッチな企業に応募してしまうことも考えられます。
転職によって何を実現したいのかを明確にすることが大事です。年収、働き方、今後のキャリア、目指すポジション、ライフスタイルなどの面で、どのようなことを実現したいのかを考え、希望条件も明確にしておきましょう。

2:転職活動の期間を決めておく

転職活動に要する期間は、経験・スキルや希望する条件によってさまざまですが、一般的には「3カ月程度」とされています。在職中の場合は業務の引き継ぎなどの期間も含めて、無理のないスケジュールを立てることがポイントです。 活動期間と具体的な活動計画を決めておかない場合は、転職活動が長引いてしまうケースもあるので注意しましょう。

3:「在職中」と「辞めてから」どちらで転職活動を進めるか決める

「現職が忙しすぎて転職活動をする時間がない」「しばらく休養期間をとってから次の道を考えたい」など、転職先を決めないうちに会社を辞める方もいます。しかし、「希望に合う求人が見つからない」「応募しても不採用が続く」などの理由から、転職活動が長引いて後悔するケースもあります。さらに、ブランクが長期化すると、企業からブランク期間に何をしていたのか確認されたり、定期収入がない焦りからミスマッチの転職先を決めてしまったりするケースもあります。

こうした状況に陥らないためにも、在職中に転職活動を進めるのか、もしくは現職を辞めてから行うのか、事前にしっかりと検討することをおすすめします。

退職してから転職活動を始める場合は、自己都合の退職は、退職後から雇用保険の基本手当(失業保険)が給付されるまでには2カ月以上かかるので注意しましょう。希望に合う転職先がすぐに見つからない可能性も踏まえ、失業保険と合わせて半年分程度の生活費を考慮しておくと、より安心できます。

転職活動中の注意点・チェックしたいこと

次に、転職活動を進めていく中での注意点やチェックしておきたいことをご紹介します。

4:転職市場の相場や自身の市場価値を把握する

転職活動をスムーズに進められるかどうかは、転職市場の需給バランスに左右されることが少なくはありません。在籍企業では高く評価されていても、転職市場において需要が少ない経験・スキルの場合は、選考で評価されにくいケースもあるので、自身のキャリアの「市場価値」を把握することが大事です。

転職市場の相場を把握しきれず、自身の市場価値を高く評価した場合、希望条件を高く設定してしまい、条件に合う求人が見つからずに転職活動が長引く可能性があります。また、応募企業の採用水準を満たすことができず、選考で苦戦するケースもあります。

一方、自身の市場価値を低く評価した場合は、自ら応募企業の幅を狭めてしまい、より条件の良い企業や今後のキャリアを広げていける企業に転職するチャンスを失ってしまうケースもあります。 より納得のいく転職を実現するためには、転職市場の相場観と自身の市場価値を正しくつかむことがポイントです。

5:転職活動について現職の会社に話さない

在職中に転職活動を進める場合は、現職の会社の上司や同僚などに話さないように注意しましょう。転職活動をしていることが発覚すれば、会社に居づらくなるケースもありますし、強く引き止めされて転職活動を進めにくくなるケースもあります。また、納得のいく転職先が見つからない場合は、現職の会社にとどまる選択肢を残しておくためにも、内密に転職活動を進めることが大事だと考えましょう。
なお、SNSなどで転職関連の話題を発信したり、転職活動の面接のために繰り返し有給休暇を取得したりすることで発覚するケースもあるので、避けることをおすすめします。応募企業と面接日程を調整する際に、在職中であることを伝え、業務時間外に対応してもらえるよう相談してみるのも一案です。転職エージェントを活用している場合は、担当のキャリアアドバイザーに相談しましょう。

6:希望条件に優先順位をつけた上で求人を探す

希望条件のすべてを満たす求人は簡単に見つかるとは限りません。条件の良い求人は競争率が高く、選考通過の難易度も高いケースがほとんどでしょう。採用の可能性を高めるためにも、応募企業を検討する前に、希望条件に優先順位をつけておくことが大事です。

求人を閲覧する前に、譲れない希望条件を決めておき、「この条件さえ満たしていれば、その他の条件は柔軟に考える」というスタンスで求人に向き合えば、応募先の選択肢が広がります。反対に、優先順位を明確にしていない場合は、企業の規模やブランド力・給与・役職など、目先の魅力や条件にとらわれやすくなり、本来の転職の目的にマッチしていない企業を選んでしまう可能性もあるので注意しましょう。

7:応募・面接の前に企業研究を行う

ミスマッチな企業を選ばないためには、応募前にきちんと企業研究を行い、自身の希望にマッチしているか検討することが重要です。希望条件に合うかを精査するだけでなく、社風や仕事の進め方なども調べ、自身にとって働きやすい環境があるか確認しておきましょう。また、企業の求める人物像なども把握しておき、応募書類や面接の回答でマッチしている部分をアピールすることがポイントです。企業研究の成果は、面接で聞かれることの多い質問への回答作成、逆質問の準備などにも大きく役立つでしょう。

8:可能な範囲で、複数の企業に応募して並行して選考を受ける

「まずは1社に応募し、不採用になったら次の1社に応募する」など、少しずつ活動を進める方もいますが、複数企業に応募しておくことで比較検討がしやすくなります。自身の対応し得る限りで複数企業に応募し、選考を並行しながら希望条件にマッチするかどうか比較することで、より納得感が高い転職につなげることができるでしょう。

また、書類選考や面接選考には一定の期間がかかるため、1社ずつ応募して選考を受ける流れを繰り返すことで、転職活動が長期化してしまう可能性もあります。活動期間が長引くことで疲弊してしまうケースもあるので注意しましょう。

9:面接でよく聞かれる質問に対し、回答を準備する

自己紹介、転職(退職)理由、志望動機、自己PRなど、面接で聞かれる可能性がある質問の回答内容を整理しておくことが重要です。「特に準備しなくても、その場になれば回答できる」と考える方もいますが、選考の通過率を高めるためにも、事前に伝えたい内容をまとめて簡潔にアピールできるように準備しておきましょう。

10:逆質問は複数用意し、志望度の高さを伝える

面接の最後には、「何か質問はありますか」という逆質問をされることがほとんどです。準備をせずに適切に逆質問ができない場合、志望度や入社意欲が低いと判断される可能性があるので、きちんと準備しておくことが大事です。また、面接を進める中では、面接担当者から用意していた逆質問の回答を得るケースもあります。こうしたことも踏まえ、複数パターンの回答を用意しておくと安心できるでしょう。

11:懸念点を聞かれた場合の回答を用意しておく

「自社に対する懸念点」を質問する企業は少なくありませんが、その背景には、ミスマッチの防止やギャップ解消のために、応募者と相互理解を深めたいという意図があります。懸念点についてストレートに聞かれるのではなく、「当社で働くことを想定したときに、何か気になる点はありますか?」「これまでの面接の中で、当社の働き方や処遇などについて確認できていない点や、クリアにしておきたいことなどはありますか?」などの質問をされるケースが多いでしょう。

その際、離職率、残業時間、研修内容、昇給・昇格、事業の成長性など、懸念があることについて質問しても問題はないでしょう。ただし、懸念点のみに言及するのではなく、「なぜその点を気にするのか」「企業から回答を得た際、その情報をどう活用していきたいと考えているのか」など、自身の意図まで伝えてしっかりとコミュニケーションすることがポイントです。

<懸念点について確認する場合の例>

長く定着して働きたいと考えているため、御社の離職率の高さが少々気になっております。どのような企業でも長く継続して働く人とそうではない人がいると思いますが、参考までに、御社で長く定着・活躍されている方々の特徴や、短期間で離職される方の傾向などがありましたら、その理由も併せて教えていただけないでしょうか。自分と定着している方に共通する点を探れたらと考えております。

12:他社の選考状況を聞かれたら必要なことのみを伝える

選考を受けている企業の詳細まで話す必要はありません。他社の選考を並行している場合は、その事実を簡潔に伝えると同時に、入社意欲の高さをアピールすることがポイントです。

また、他社の最終面接に進む予定がある場合は、「できる限り、内定の出る時期が重なるようにしたい。そのため、早めに選考を進めたい」と考える方もいるでしょう。こうした場合は、選考時期について相談しても問題はありません。他社の選考日程や想定できる内定の出る時期を伝え、「同じようなスケジュール感で進めたい」と伝えることがポイントです。

なお、転職エージェントを活用している場合は、担当のキャリアアドバイザーに相談しましょう。

<他社の選考状況を聞かれた際の回答例>

他社の選考も並行しており、そのうち1社はこれから最終面接を受ける予定となっております。ただ、私自身としては、面接を通じて御社の◯◯(事業内容、会社の成長性、任されるミッション、社風、人材の優秀さ、組織力など)について、より強く興味を持つようになっております。

<選考スケジュールを早めたい場合の回答例>

現在、2社の選考を並行しており、◯月◯日前後に最終面接に進む予定です。最終面接の結果は、◯月◯日頃になることを想定しておりますので、できれば御社の選考も同じくらいのスケジュール感で進めることができればと考えております。

13:家族・パートナーに転職活動の相談をしておく

家族やパートナーに相談しないまま転職活動を進めた結果、転職することに反対されることは少なくないようです。年収ダウンや転居が必要なケースなど、配偶者や子どもの生活などに影響がある場合は、難色を示される可能性もあるでしょう。そのため、転職を検討している時点で、事前に相談しておくことも一案です。

内定を得たときの注意点・チェックしたいこと

内定を得たときの注意点やチェックしたいことについてご紹介します。

14:条件面だけでなく、多様な角度から検討する

仕事内容・役割・ポジション・給与などの条件面だけで入社を決め、後悔するケースもあります。例えば、同業界・同職種で転職した場合、仕事内容は同じであっても、会社によって仕事の進め方や社風・企業文化などが違うものです。そのため、「仕事の進め方になじめない」「社風や企業文化が合わない」などの理由から早期退職するケースは少なくありません。

仕事の進め方や社風などは、選考段階である程度は確認することができます。人事担当者や事業部門長との面接だけでなく、現場で働くメンバーと対話する機会を設けてもらうのも一案です。また、実際に働くオフィスを見学させてもらうなどで、職場の雰囲気を把握することもできるでしょう。

15:仕事内容や各種条件をきちんと確認する

内定を得たら、企業から労働条件を明示されます。「内定通知書」「労働条件通知書」など、企業によって書面の名称は異なりますが、明示される条件面の内容が事前に聞いている話と異なっていないか、双方の認識にズレがないかを確認するようにしましょう。疑問点があった場合は、内定先企業の人事担当者にきちんと確認することも大事です。

また、知人からの紹介など、独自の人脈を活用して転職する方もいますが、こうした場合、「知人同士だから、口頭での条件確認でも構わない」と考えてしまい、トラブルに発展するケースもあるので注意しましょう。内定を得た際には、必ず書面を通じて正確な条件面を確認した上で、入社するかどうか判断することがポイントです。

16:無理のない日程で入社日を調整する

内定承諾時には、内定先企業の担当者と相談の上、入社日を決定します。その際、現職の引き継ぎ期間なども踏まえて無理のない日程とすることが大事です。企業は入社日に合わせて受け入れの準備を行うため、一度入社日を決定してしまえば、再調整の申し出をしにくいケースもあるので注意しましょう。

退職から入社後までの注意点

現職を退職して転職先に入社するまでの間や、入社後などに注意したい点についてご紹介します。

17:社会保険の切り替え手続きに必要な書類を確認しておく

在職中に転職する場合は、退職日と入社日の間に空白期間が無いため、基本的に転職先が社会保険に関する手続きを行ってくれます。社会保険の切り替えのために必要な書類を現職の会社から受け取ったら、きちんと保管しておくことが大事です。
一方、退職してから転職活動を進めた場合は、自身で年金や健康保険の切り替え手続きを行うことが必要なので注意しましょう。

18:退職の切り出し方に注意し、円満退職を心がける

現職の会社に退職を切り出す際には、引き止めされないためにも、退職理由・転職理由の伝え方には工夫が必要です。また、引き継ぎ期間も踏まえた上で、転職先の入社日に間に合うよう、しっかりと退職交渉を進めることもポイントです。スムーズに転職するためにも、円満退職を心がけましょう。

19:入社に向けて必要なものを確認して準備しておく

転職先の人事担当者に、入社の際に必要な書類について確認しておきましょう。現職を退職するときに受け取る書類だけでなく、退職後に受け取る源泉徴収票などの書類もあるので、事前にきちんと確認しておくことが大事です。
退職前に「やることリスト」を作っておき、必要書類に漏れがないかチェックすると安心できるでしょう。また、「転職先の仕事に早くなじめるようにしたい」という場合は、入社までに勉強しておくべきことなども確認しておくことも一案です。

20:転職後は「最初はギャップがあるもの」と考えておく

転職先に入社する際、「新しい仕事や職場になじめるだろうか」という不安を抱えてしまう方は少なくないようです。しかし、新しい仕事の進め方や職場の人間関係になじむまでには一定の時間がかかるものです。入社時点で「最初は何らかのギャップを感じるものだ」と考えておけば、ストレスのピークも乗り切りやすくなるでしょう。

転職活動に不安がある場合は転職エージェントやスカウトサービスの利用も有効

転職活動をスムーズに進めるためには、転職エージェントやスカウトサービスを活用するのも有効です。今回挙げた注意点についても、以下のようなサポートによって不安解消、判断ミスの防止につながります。

<転職エージェントの場合>
・希望にマッチする求人の紹介を受けられる
・面接日程調整のサポートを受けられる
・転職市場動向についての情報提供を受けられる
・プロの客観的な視点から自身の市場価値を把握できる
・転職エージェントとの対話を通じて、強み・志向・価値観などの整理ができ、転職の目的や希望条件の優先順位を明確にできる
・応募企業の社風など、求人情報だけではつかめない情報を聞けることもある
・企業に条件面の交渉を行う際に、アドバイスを受けることも可能

<スカウトサービスの場合>
・自身の経験・スキルに興味を示している企業や転職エージェントからスカウトメールをもらえる
・自身の市場価値の把握や、採用の可能性がある求人の情報収集に役立てることができる

自身の状況・目的に応じて、転職エージェントやスカウトサービスを活用してみるのも一案です。

リクルートダイレクトスカウトは、リクルートが運営する会員制転職スカウトサービスです。リクルートの求職活動支援サービス共通の『レジュメ』を作成すると、企業や転職エージェントからあなたに合うスカウトを受け取ることができます。レジュメは経験やスキル、希望条件に関する質問に答えるだけで簡単に作成可能です。一度登録してみてはいかがでしょうか。
アドバイザー

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。