職務経歴書を作成するときのポイントの一つが「実績」の書き方です。応募企業の採用担当者にうまくアピールするためには、抽象的な表現ではなく、数字などを交えて具体的に伝えることが大切です。この記事では、職務経歴書で効果的に実績をまとめる際のポイントや記載例などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
職務経歴書の「実績」はどのように書けばいい?
職務経歴書に「実績」を記載するときに重要なのは、実績の規模や影響範囲などを採用担当者に伝わるように書くことです。職務経歴欄に業務内容のサマリを入れ、これまで行ってきた業務や実績について、できれば数字などを交えながら分かりやすく書くことを心掛けましょう。
採用担当者は、あなたがこれまで取り組んでいた業務について熟知しているわけではありません。特に異業種や異職種から転職する場合は、書かれている業務についての規模感や難易度がイメージできないことも考えられます。職務経歴書を見る側の視点に立ち、客観性や具体性のあるまとめ方をすることがポイントです。
なお、「実績」というと、営業職など成果が数字で表せる職種だけと思われがちですが、事務系職種や企画系職種、エンジニア職など、営業以外の職種でも実績は重視されています。例えば、経理職の採用で「連結決算を担当」など担当業務だけ書かれていても、どのような規模間の業務で、どのような組織貢献をしたのかまで書かれていないと、その人のスキルレベルを判断しにくいからです。以下で説明する書き方のポイントを参考に、どの職種でも実績を効果的にアピールしましょう。
職務経歴書の「実績」の効果的な書き方ポイント
職務経歴書においての実績の書き方について、効果的に伝えるためのポイントをご説明します。
応募先企業で活かせるものを抽出して書く
職務経歴書の実績を見て、企業から「自社でも活躍してくれそうだ」「採用するメリットがありそうだ」と思ってもらうことが重要。求人広告や採用ホームページなどから、企業が求める人材像を読み取り、それにより合致しそうな実績を伝えましょう。
数字を用いて分かりやすく書く
実績を伝える際には、できるだけ数字を用いて定量的に伝えることも大切です。例えば「目標数字を達成した」だけでなく、「目標数字を110%達成した」「営業部内で150人中トップ10の営業成績を収めた」などと記すと、実績のレベル感が伝わりやすくなります。
箇条書きで読みやすく整理する
実績は、文章で説明するよりも箇条書きで記載しましょう。相手が読みやすいうえ、実績レベルが一目で伝わりやすいというメリットがあります。
社内用語や業界用語は使わない、もしくは補足を入れる
社内や業界内でしか通用しない用語だと、読み手に内容が伝わらない可能性があります。いくら素晴らしい実績でも、企業側が理解できないと意味がありません。別の言葉に言い換えるか、補足説明を加えるといいでしょう。
「実績」がアピールしにくい場合の対処法
「胸を張って実績といえるものがない」「実績を数字で示しにくい」など、実績がアピールしにくい場合の対応方法をご説明します。
実績が少ない場合はプロセスをアピール
社会人経験が短く、実績としてアピールできるものが少ない場合は、成果だけでなくプロセスをアピールしましょう。例えば営業職の場合であれば、売上という最終実績だけではなく、商談の数や受注率、リピート率、顧客満足度などのKPI指標や、営業の過程で注力したことをアピールするといいでしょう。
もしくは、「自社製品を導入いただいたことで、担当顧客A社の収益改善および増収増益に貢献」など、間接的な実績もアピール材料になり得ます。
実績数字が低い場合は、前年比の伸び率や平均値との比較を示す
努力したにもかかわらず、思うような成果が上がらなかったという場合もあるでしょう。「マーケットの変化により事業が縮小していた」「中長期のプロジェクトで担当時には成果が出なかった」などというケースもあると思います。
そのような場合は、前年比での伸び率や、部内やチーム内での平均値との比較を記載するといいでしょう。例えば、「前年の達成率80%から今期は90%にアップ」「チーム内の平均達成率95%に対して98%を実現」など。単月や四半期ベースでの目標は達成しているのであれば、それらの実績をアピールするのも一つの方法です。
チームでの実績が多い場合は、チーム実績とそこでの役割をアピール
チームでの実績が多く個人の成果をアピールしにくい場合は、チームとしての実績数字をアピールするとともに、チーム内での自身の役割・担当業務、どのようにチームに貢献したのかなどを記載するといいでしょう。例えば、「チームリーダーとしてスケジュール・タスク管理全般を担当した新製品において、初年度に計画比◯%の売上高を達成」など。チーム内での貢献度合いが伝わります。
数字で示せない職種の場合は、改善したこと、工夫したことをアピール
事務系職種など実績を数字で示しにくい職種、定型業務が多い職種などの場合は、現状を改善したこと、工夫し効率化したことなどを実績としてアピールしましょう。その結果を、「業務効率化で残業時間を前月比で〇%減らした」「連結決算を前年比で〇日早く発表できた」などとできる限り数字を用いて説明すると、より実績レベルが伝わりやすくなります。
職務経歴書での「実績」記入例とポイント解説
職務経歴書における実績の記入例を職種別に紹介します。書き方のポイントも紹介していますので、作成の際の参考にしてみてください。
営業職の場合
20XX年4月 〇〇株式会社入社、法人営業部に所属
20XX年6月 チームリーダーに昇格
【担当業務】
・自社開発の営業管理システムの法人営業(既存顧客営業9割、新規開拓営業1割)
・チームメンバー6名の管理・育成
【実績】
・受注実績
20XX年度:3,200万円(目標達成率99%、営業XX名中X位)
20XX年度:5,600万円(目標達成率101%、営業XX名中X位)
20XX年度:7,100万円(目標達成率103%、営業XX名中X位)
20XX年度:9,400万円(目標達成率105%、営業XX名中X位)
・チーム受注実績
20XX年度:2億6,000万円(目標達成率100%、Xチーム中X位)
20XX年度:3億4,100万円(目標達成率102%、Xチーム中X位)
【表彰歴】
・20XX年度:新規開拓社数ランキングTOP10表彰(営業XX名中5位)
・20XX年度:ベストチーム賞受賞(新規開拓件数Xチーム中1位)
ポイント
売上高や受注件数、目標達成率などと共に、前年との比較や組織内比較など、相対比較できる社内指標を入れるとレベル感が伝わりやすくなります。表彰歴があれば記載しておきましょう。
エンジニアの場合
20XX年4月 〇〇株式会社入社、システム開発部に所属
20XX年10月 チームリーダーに昇格
【担当業務】
・人事給与システムの開発
・勤怠管理システムの企画・開発
・大手流通企業の人事給与システム更新プロジェクトのプロジェクトマネジメント
【実績】
・20XX年XX月~XX月
精密機器メーカーの人事給与システムの設計・開発に参画し、要件定義・基本設計・詳細設計・実装・テストを担当
・20XX年XX月~XX月
新規勤怠管理システムの企画開発プロジェクト(メンバー14人)に参画、○○工程チームのリーダーとして要件定義・基本設計から納品までを担当。人事給与システム導入済みのクライアント4社からの受注に成功(平均受注額〇〇万円)
・20XX年XX月~XX月
生産性向上を目的に、社内共有システムの新規開発・既存システムのリニューアルプロジェクトを担当。プロジェクトマネージャーとしてプロジェクトの計画策定、チーム編成から進捗管理、予算管理、メンバー8人の業務管理などを手掛ける。社員1人あたり生産性を平均XX%改善
ポイント
システムエンジニアでは、担当したプロジェクトやプロダクトの内容(規模、担当業務・役割、開発環境など)などが見られています。数字を交えながら、実績を分かりやすく伝えましょう。
事務系職種の場合
20XX年4月 〇〇株式会社入社、人事部に所属
20XX年6月 HRBPリーダーに昇格
【担当業務】
・新卒採用、中途採用業務
・新入社員の教育研修、オンボーディング
【実績】
・20XX年XX月~XX月 新卒・中途採用担当
新卒採用実績:年間〇名~〇名を採用、目標達成率〇%
中途採用実績:年間〇名~〇名を採用、目標達成率〇%
・20XX年XX月~XX月 新卒社員の新人研修、オンボーディング担当
新卒採用の3年以内離職率〇%以下を実現(20XX年~20XX年比で〇%改善)
・20XX年XX月~XX月 リファラル採用の導入・運用担当
採用実績:年間〇名~〇名を採用、目標達成率〇%
・20XX年XX月~ HRBP担当
システム開発部門(○○名)のHRBP業務を担当、部門収益目標の達成に向けてエンジニアの業務最適化に注力
ポイント
担当したプロジェクトの概要と役割、影響範囲などを記載しましょう。この例のように、採用実績数字や達成率、改善率など、数字で示せるものがあれば明記を。例えば人事であれば、「評価制度の見直し→モチベーションサーベイが◯%向上」「教育研修・人材開発→研修の満足度〇%向上」「労務→業務効率化により給与計算業務に関わる業務時間を◯%削減」などが考えられます。
企画系職種の場合
20XX年4月 〇〇株式会社入社、マーケティング部に所属
20XX年1月 販売促進課リーダーに昇格
【担当業務】
・自社アパレルブランドの商品企画、育成
・ブランド別販促施策の立案・推進業務
・Webサイトのコンテンツ企画
【実績】
・20XX年XX月~XX月 ○○ブランドの商品企画(調査、商品コンセプトの企画立案)
初年度販売計画〇〇万円に対し、○〇万円を実現(計画比135%)
・20XX年XX月~XX月 自社ECサイトの立ち上げを担当
半年間で年間売上目標○○万円を達成
・20XX年XX月~ 販促リーダーとしてレディースブランド○○、△△の販促担当
○○の販促キャンペーンで計画比120%の売上を実現
△△のブランド認知向上のためWeb広告を展開、特設サイトのPV数〇%増加(前年比)
ポイント
Webマーケティングや販促などを始めとする企画系は、実績数字を示しやすいと思われる職種です。できるだけ数字を交えながら実績をまとめましょう。
販売サービス職の場合
20XX年4月 〇〇株式会社入社、□□店にて副店長を担当
20XX年4月 SVとして20店舗を担当
【担当業務】
・○○市内のFC加盟店に対する経営指導
(店舗運営、経営管理の指導、数値管理や改善提案、売り場提案、販売目標の設定など)
【実績】
・20XX年XX月~XX月 □□店の副店長として年間売上○○万円を達成(○○エリア内の〇店舗中トップ、予算計画比115%)
・20XX年XX月~XX月 担当するA店、B店が、スイーツ販売コンテストで関東〇店舗中、TOP10入り
・20XX年XX月~XX月 ○○市内担当店舗20店全店の増収増益を実現し、社長賞を受賞
ポイント
営業同様、実績数字が示しやすいと思われる職種なのでできるだけ定量でアピールを。売上・件数、達成率などを、前年比較や相対比較できる社内指標(社内順位、社内平均など)とともに記すといいでしょう。数字で示せる実績に自信がない、示せるものがないという場合は、マネジメント力(店舗で何人を束ねているかなど)や、企画力(店舗での販促をいくつ企画したかなど)といったスキルをアピールしましょう。
特にアピールしたい「実績」は、自己PR欄で伝えるのも方法
職務経歴欄に記載する実績は、「具体性・分かりやすさ」を重視し、箇条書きで端的に書くようにするといいかもしれません。ただ、より内容を掘り下げて伝えたい実績がある場合は、自己PR欄を活用することをお勧めします。
その業務に携わることになった背景、自身が設定した目標、成果などを具体的なエピソードを交えて伝えるようにしましょう。
例えば、
法人営業としての実績が買われ、20XX年4月よりエンタープライズ営業チームの立ち上げを任され、リーダーに就任しました。
業績への貢献を期待されているチームであることから、初年度の事業目標○○万円を10%上回るセルフ目標を立てて自ら率先垂範。チームメンバー6名と毎日1on1とロープレを行い、目線合わせを行うとともに、メンバー不安や不調をこまめに解消。結果、初年度は全員が売上目標を達成し、事業目標比115%を達成することができました。
などと伝えると、責任の範囲や期待度、実績レベルなどがより具体的に伝わります。箇条書きで伝えた実績の裏付けもできるため、より高い評価が期待できるでしょう。
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粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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