
転職の選考に進む際には、履歴書と職務経歴書の提出が求められることが一般的で、人事職への応募の場合も例外ではありません。そこで、人事職の経験者が職務経歴書で強みを伝えるための書き方のポイントについて、リクルートエージェントのキャリアアドバイザーが解説します。職務経歴書を初めて作成する方には見本のテンプレートも用意していますので、ダウンロードしてご活用ください。
人事の職務経歴書のテンプレート見本【フォーマットダウンロード】
人事経験者が同職種での転職を希望する際の職務経歴書のサンプルをご紹介します。リンク先よりダウンロードも可能ですので、見本を参考にしながらご自身の経歴を記入し、職務経歴書を作成しましょう。

人事の職務経歴書で企業が見ているポイント
人事職を希望する人の職務経歴書において企業が見ているポイントは、主に「人事としてどのような経験をしてきたか」です。
これまでどのような業務に携わり、そこでどのような成果を挙げたのか。これらを把握しながら、自社の人事職に必要な経験・スキルを有しているかを確認していきます。
人事の職務経歴書の項目ごとの書き方
前述した職務経歴書で企業が見ているポイントを踏まえ、職務経歴書は、「職務要約」「職務経歴詳細」「活かせる経験・知識・技術」「保有資格」「自己PR」などで構成すると、自身の職務経歴や実績、強みなどを分かりやすく伝えることができます。次の点に留意して、各項目を記載しましょう。
職務要約
職務要約とは、求職者のこれまでの職歴をまとめた「あらすじ」のようなものです。職務経歴書の冒頭に記載し、「採用担当者が、求職者の経験・スキルを一目で理解できるようにすること」を目的としています。採用担当者の多くがまず確認する箇所と言ってもいいでしょう。
したがって、記載する際は、まず、人事として担当してきた領域を網羅しながらこれまでのキャリアの概観を記し、その上で、強みや得意とすること、長く経験していることを記していきます。全体の分量は、3~5行(200文字)程度を目安とするとよいでしょう。
職務経歴詳細
これまで従事してきた業務内容とその成果を、勤務先や部署、職位ごとに詳細に記載します。その際、挙げた成果や実績も必ず記載しましょう。なお、成果や実績は、職務経歴詳細に付記する以外にも、職務要約に続けて「主な成果は次のとおりです」などと一文記載した上で箇条書きする方法もあります。
活かせる経験・知識・技術
次の職場で発揮できる経験・知識・技術として、企業にアピールしたいものを記載します。箇条書きで記載すると読みやすいでしょう。その際、経験年数も併記すると、どの領域の経験をどのくらいの年数重ねてきたのかを採用担当者が把握しやすくなります。例えば、同じ「採用」の経験でも、採用担当専任であった時期と「HRBPとして採用業務にも携わっていた」という時期がある場合には、合算して「採用」の経験年数を記載するとよいでしょう。
保有資格
業務に関連する保有資格を記載します。例えば、失効している資格もアピールになる場合は「(失効済)」と付記した上で記載するのもよいでしょう。
なお、記載順に決まりはありませんが、職務経歴詳細の記載順(編年体式または逆編年体式)に揃えた時系列で記載すると、違和感なく読んでもらえる場合が多いでしょう。
自己PR
仕事における自身の強みや特徴としてアピールできるものを記載します。人事職の場合、職務要約や職務経歴詳細で手短に記載している実績や成果をより詳細に説明しながら強みや特徴をアピールしているケースが多く見られます。
実績や成果を説明する際は、「どのような課題(問題)に対して」「どのような打ち手を講じ」「どのような成果を挙げたのか」を具体的に記載しましょう。また、締めくくりとして、自身の強みや特徴を今後のキャリアや応募企業の業務にどのような形で活かしていきたいと考えているかを記載するとよいでしょう。
人事の職務経歴書を書く際の注意点
人事の方々が職務経歴書を書く際に注意したい点としては、主に次の5つが挙げられます。
経験は余すことなく記載する
企業は、職務経歴書を通じて「自社の人事職に必要な経験・スキルを有しているか」「応募者の人事領域の経験・スキルのうち、どれであれば自社の人事業務で発揮してもらえそうか」などを探っていきます。一口に人事といっても、その役割や業務内容は企業によって異なるため、自身の活躍可能性を見出してもらうためにも、これまで経験してきた業務は、余すことなく記載しましょう。
その際、「少ししか経験していないから書かない」という選択をする必要はありません。当該領域の経験が浅くとも、人事としてのある程度の経験・知識があればアジャストしていける業務も多数あります。例えば、「HRBPの経験があるなら、タレントマネジメントを任せられるかもしれない」などと企業が判断する場合もあります。
また、他職種の採用と異なり、人事職の採用選考においては、人事職の方が担当するケースが多いです。人事業務をよく分かっている人が職務経歴書を見ることを念頭に置き、丁寧に記載しましょう。それは、応募企業から活躍可能性を見出してもらえることにもつながります。
人事としての経験・スキルに比重を置いて伝える
管理職経験がある場合、管理職としてのマネジメントスキルや部署間の調整スキルなどを記載するケースもあると思います。その場合も、企業は、職務経歴書の段階ではどちらかというと「人事として何ができるか」「人事としての土台である経験・スキルにはどのようなものがあるか」などの点に着目する傾向にあるため、それらも伝わるよう記載することをおすすめします。
ニーズが高い経験は詳細を記載してアピールする
特に、以下に挙げる経験は、昨今の人事職の中途採用市場でニーズが高く、職務経歴書に記載しておくとプラス評価につながるケースもあります。経験がある場合は、多少にかかわらず記載しておくと良いでしょう。
- 人事評価制度の改定/新しい人事制度の企画・導入・運用
(ジョブ型制度の導入など) - 役員報酬制度の企画・改定
- HRBP制の導入
- ダイバーシティ&インクルージョン施策
- 組織風土改革・醸成施策
- エンゲージメント向上施策
- ピープルアナリティクス
- タレントマネジメント
- 幹部人材開発
- サクセッションプラン策定(特に、経営者のサクセッションプラン策定)
- DX人材の採用実績
- タレントアクイジション
- HRIS(人事管理システム)の導入
- グローバル人事
- 労務面のガバナンス強化
- M&A先企業の人事のPMI
一文で終わらせず、実績や成果を記載する
手がけたプロジェクトについては、一文で終わらせず、課題と打ち手、成果などが伝わるように記載しましょう。例えば、「人事制度企画」とだけ記載して終えるのではなく、課題に対してどのような施策を打ったのか、具体的なキーワードを入れて簡潔に記載します。また、成果を挙げた場合は成果も記載しましょう。
例)
「社員のキャリアの選択肢を広げるため、ジョブグレード制度を導入」
「社内コミュニケーション活性化のため、ピアボーナス制度を導入」
経営にインパクトを与える取り組みの経験をアピールする
人事部門はしばらく前まで「コスト部門」として捉えられがちでしたが、昨今は「戦略的な取り組みにより、業績に大きく貢献する」という認識が強まっています。「人的資本経営」に注目が集まる中、経営にインパクトを与えるような変革や新たな取り組みを能動的に行ってきた人は高く評価される場合があります。
そのために、職務経歴書の自己PR欄で、いかに戦略的な取り組みを提案・推進してきたか、また、強みとするスキルを活かしてどのように貢献できるのか…などのメッセージを盛り込むのも一つの手です。
職務経歴書の書き方の基本
最後に、一般的に言われている職務経歴書の書き方の基本を確認しておきましょう。職務経歴書で大切なのは、「読みやすさ」と「わかりやすさ」です。特に、経験豊富であるほど職務経歴の記載が多くなり、強みがどこにあるのかが伝わりにくいことがあります。以下の点を押さえてよりアピール効果が高い職務経歴書に仕上げましょう。
事前に職務経歴を整理し、アピールしたい経験を強調する
職務経歴書を作成するにあたっては、まず、これまでの「所属企業・部署・チーム」「手がけた業務」「成果」「身に付けたスキル」などをすべて書き出します。
ただし、職務経験・実績が多い方ほど、そのまま羅列するだけではアピールしたい経験・スキルや得意分野が採用担当者に伝わりにくくなります。職務経歴書に落とし込む際にはメリハリをつけて記載するようにしましょう。
アピールしたい経験や強みについては、「成果」をはじめ、「成果に至るまでのプロセスや独自の工夫」などまで簡潔に記しておくと、読み手が「入社後の活躍イメージ」を描きやすくなります。
読みやすいレイアウトを心掛ける
職務経験が多い、かつ、過去に所属していた企業の事業内容や担当業務内容が直近の仕事と大きく異なる場合などは、直近の仕事内容から書き始め、時系列をさかのぼって職歴を記載する「逆編年体形式」のレイアウトにすると読み手に伝わりやすくなるでしょう。
また、レイアウトには統一感を持たせましょう。「年・月」「企業名」「部署名」などを記載する位置、各項目の見出し、本文の頭出し位置などを揃えておきます。フォントもすべて統一しましょう。書き方見本が記入されているフォーマットをダウンロードして使う場合、見本の文言を流用する部分と自身で入力する部分とでフォントが異なってしまうことがあるため、注意が必要です。
文章だけでなく箇条書きも活用する
文章だけがつらつらと綴られた文書は、「読むことに時間がかかりそう」という印象を抱かれる可能性もあります。適度に「箇条書き」を活用することでリズムが生まれ、読みやすくなって採用担当者の負担感が軽減されます。
冒頭に「●」「・」をつけたり、項目を【 】で立てたりして、記載情報を整理しましょう。
職務経歴書を作成する際の関連ノウハウ記事一覧
職務経歴書の基本の書き方 (3種類テンプレート付) | 職務要約の書き方 | 職務内容の書き方 |
活かせる経験・知識・技術の書き方 | 資格の書き方 | 自己PRの書き方 |
志望動機の書き方 | 退職理由の書き方 | 役職の書き方 |
履歴書と職務経歴書の違い | 封筒の書き方 | 送付状(添え状)の書き方 |
複数社の経験がある場合の書き方 | 転職回数が多い場合の書き方 | PCスキルの書き方 |
職務経歴書のサイズと枚数 | フォントの選び方 | 用紙の種類 |
高橋紀夫
国家資格1級キャリアコンサルティング技能士。大手スポーツメーカーにて販売促進を経験した後、外資系人材エージェントを経て、2008年に株式会社リクルートキャリア(現株式会社リクルート)に入社。一貫して事務系領域(人事、経理、法務)を担当。現在は人事職領域のハイキャリア層の転職支援を手がける。
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