【例文あり】リスクマネジメント(リスク管理)の志望動機の書き方とは?押さえておきたいポイントと求人動向も紹介

リスク管理 志望動機

リスクマネジメント(リスク管理)への応募書類に志望動機の記載を求められた場合、どのように書くと評価につながるでしょうか。リクルートエージェントのキャリアアドバイザーが、志望動機の書き方のポイントを解説します。志望動機の例文や、リスクマネジメント(リスク管理)の採用トレンド、求められる経験・スキルなども併せて紹介します。

リスクマネジメント(リスク管理)とは

「リスクマネジメント(リスク管理)」とは災害、情報流出、法令違反、為替変動、外注先の業務停止など、企業が直面するリスクを洗い出し、対策を施して、損失の回避や軽減を図るプロセスです。よく似た言葉に「クライシスマネジメント(危機管理)」がありますが、これは想定外の重大な危機が実際に起きたときに、迅速な復旧や被害の低減を図るための備えであり、事後に重きを置いている点が異なります。

従来のリスクマネジメント(リスク管理)は、法務や財務などの特定部門や、経営企画などがミッションの一つとして行うことが一般的でした。しかしこの場合、「把握すべきリスクに抜け漏れが出る」「経営層に報告する基準が統一されない」といった問題が起こるケースも少なくありません。

そこで近年は、事業の目的達成を阻むあらゆるリスクを洗い出し、組織全体で管理する「全社リスクマネジメント(Enterprise Risk Management=ERM)」の構築を目指し、全社リスクを統合的に管理する人材を求める企業も見られます。

中途採用における募集職種としては「ERM」「全社リスクマネジメント」「リスク管理全般」「リスクコントロール」「コンプライアンス統括」「(リスク管理及び)危機管理」などさまざまな名称が使われており、業務内容もケースバイケース。まだ明確な定義がないため、それぞれの企業がどのような経験・スキルを求めているのかを、しっかり見極める必要があるでしょう。

リスクマネジメント(リスク管理)の仕事内容

企業のリスクマネジメント(リスク管理)に関わるポジションは、大きく「機能別リスクマネジメント」と、全体を横断的に見る「全社リスクマネジメント」に分けることができ、機能別リスクマネジメントには主に下のような領域があります。

※一般的な領域で分類していますが、以下に分類されない領域・カテゴリもあります。

機能別リスクマネジメント 領域図
制作:編集部

機能別リスクマネジメント

  • 法務系(コンプライアンスリスク)…コンプライアンス体系の構築、教育の構築と運用、事業開発に関わる法務リスクの検討と対応(M&Aやライセンス取引)など
  • 財務系(ファイナンスリスク)…為替リスク・金利リスク・信用リスクの評価、管理戦略の策定、金融商品や保険によるリスクヘッジ、コンプライアンスと規制対応など
  • 総務系(BCP・危機管理)…大規模災害に備えたBusiness Continuity Plan (BCP)整備、地政学リスク等の分析や準備などの未然対応、社員への啓発活動など
  • その他専門系(ITなど)…情報セキュリティ対策、サイバーセキュリティ技術対策の企画立案、推進、内部統制(IT統制)など

全社リスクマネジメント(ERM)

「全社リスクマネジメント委員会」の立ち上げ・仕組み構築・運用、経営層に対する報告や意思決定の支援・助言、コンプライアンスに関わるルール整備、リスク意識の向上と浸透活動、対応策準備など。

こうした業務を「リスクマネジメント」等の名称がついた専門チームで行うケースもあれば、特定の部署の人材が全体の管理を担うケースなど、組織体は企業ごとに異なります。中途採用においては、これらの領域や細分化された役割のうち、「企業が求める役割に必要なスキルや経験を応募者が持っているか」という観点でマッチングがなされる傾向にあるでしょう。

リスクマネジメント(リスク管理)の採用トレンドと求められる経験・スキル

リスクマネジメント(リスク管理)の近年の採用ニーズや、求められる経験・スキルには、例えば次のようなことが挙げられます。

採用ニーズと転職トレンド

日本企業のリスクマネジメント(リスク管理)は、保険による財政面の直接的な損失補填などの「守り」が主流となっています。しかしDX化やグローバル化が進み、戦略立案、M&A、投資、新規事業企画などによる事業変革を目指す企業が見られる中で、企業が抱えるリスクはより多様化・複雑化しています。そのため「リスクコントロール(リスクを伴う活動の回避、損失防止・削減、リスクの分離・分散)」を含めた、戦略的なリスクマネジメント(リスク管理)を担う人材へのニーズが高まっています。

ただ、会社全体のリスクを横断的に管理する全社リスクマネジメント(ERM)はまだ新しい領域であり、専任で取り組んだ経験のある人は多くはない印象です。そのため企業は、例えば金融機関の内部監査・財務分析、事業会社の内部統制、IR、経営企画や事業企画部門での新規事業の立ち上げなど、企業の中心に近い組織でのリスク評価経験がある人材を、候補者として視野に入れる傾向があります。また、保険会社の法人向け対リスク商品の営業や、戦略コンサルの経験者もポテンシャルを見込まれることがあるようです。

一方、機能別リスクマネジメント(リスク管理)の領域においては、法務系であればコンプライアンスリスク体系の構築、財務系は財務リスクの評価と管理戦略の策定、総務系は大規模災害に備えたBCP整備といった経験が求められるでしょう。

求められる経験・スキル

リスクマネジメント(リスク管理)は、次の4つのプロセスで実施します。法務、財務、経営企画などの職種や領域において、次のプロセスを検討した経験が求められる傾向にあります。

1.リスクの特定…事業内容や目的の中で起こり得るすべてのリスクを洗い出す。
2.リスクの分析…特定したリスクの規模を、発生頻度と発生した際の影響度の両面から分析する。
3.リスクへの対応…リスクが起きた場合の対応を、リスクコントロール(回避や損失防止・軽減)とリスクファイナンシング(資金手当)の側面から検討し、対応を行う。
4.リスクの評価…リスクマネジメントが機能しているか、残留リスクがないかを評価する。

例えば全社リスクマネジメント(リスク管理)を担うポジションであれば、財務分析や事業分析の知見と共に「事業展開に潜むリスクは何か」「そのリスクを受容してでも推進するべきか」「推進しない場合は事業の方向を変えるか、回避するか」などを検討するスキルが求められる傾向があるでしょう。

したがって、その企業が「リスクマネジメント(リスク管理)に何を求めているか」を精査した上で自身のコアスキルを整理し、「何と何ができる人か」を明確に伝えることが重要になります。

また「課題設定力」「課題の遂行力」「コミュニケーション力」などのポータブルスキルは、多くの企業が期待しているものでもあるため、これらを発揮した経験は積極的に伝えると良いでしょう。

志望動機の基本構成

リスクマネジメント(リスク管理)職に応募する方が、履歴書や職務経歴書で志望動機を伝える際には、次のような構成で記載すると採用担当者の納得を得やすくなります。

書き出し

応募職種ないしは応募企業に魅力を感じているポイントを簡潔に記しましょう。いきなりエピソードから書き始めると、文章に締まりがない印象を与えかねません。

応募企業を選んだ理由

応募職種ないしは応募企業を選んだ理由を伝えます。これまでの経験も踏まえつつ、「抱いている課題意識」「自身が仕事で大切にしたいこと・こだわりたいこと」などを挙げた上で、応募職種・企業であればそれを実現できると考えていることを記載すると良いでしょう。

活かせる経験・スキル

自身の経験・スキルが、応募企業でどのように活かせるかを伝えます。そのためには、これまで培ってきた経験・スキルと、応募企業で求められている要素との共通点を見つけ出すことが大切です。求人情報を確認し、マッチする経験・スキルがあれば、前面に押し出してアピールしましょう。

入社後に実現したいこと

最後は応募企業で働く意欲が伝わるような言葉で締めくくりましょう。入社後にどのような活躍・貢献がしたいかという意思表示をすることで、採用担当者の期待が高まります。

リスクマネジメント(リスク管理)経験者が志望動機を書く際のポイント

応募企業が求めている経験・スキルの有無が重視されるリスクマネジメント(リスク管理)の転職において、書類選考で注目されることの一つとして挙げられるのは、「企業が任せたい仕事ができるのか/できる可能性があるのか」です。

志望動機を書く際も、応募企業が求める経験・スキルと自身のスキルや強み、これまで担ってきた役割がマッチすることを伝えましょう。企業によって「リスクマネジメント(リスク管理)」という言葉が表す範囲は異なるため、相互理解のために、強みを持つ領域や担ってきた役割は噛み砕いて伝えると良いでしょう。

また、同じリスクマネジメント(リスク管理)で転職する場合は、現職の業務や環境にどのような限界を感じ、打開するためにどのようなチャレンジをしたいのかを、ポジティブに志望動機として伝えると、より説得力が増すでしょう。

リスクマネジメント(リスク管理)未経験者が志望動機を書く際のポイント

これまでの仕事で事業の分析やリスクの特定に携わった経験はあるものの、リスクマネジメント(リスク管理)業務そのものは未経験という場合、採用担当者が着目するのは「なぜこの職種に転職したいのか?」という点です。

したがって、自身の経験を活かして「何を実現するために」リスクマネジメント(リスク管理)職として働きたいのかを具体的に記述しましょう。

例えば、「戦略コンサルタントとして顧客の事業投資をサポートしてきたが、アドバイザーとして関与するに留まらず、事業投資や経営を自身で推進していきたい」というケースがあります。この場合は、クライアントの事業環境や財務分析を行ったことを、活かせる経験・スキルとして伝えながら、入社後、リスクマネジメント(リスク管理)の課題にどのように取り組みたいかを伝えると良いでしょう。

リスクマネジメント(リスク管理)の志望動機の例文

上述したポイントを踏まえて、リスクマネジメント(リスク管理)への志望動機例文を紹介します。

リスクマネジメント(リスク管理)経験者の志望動機例文

貴社の戦略的な事業展開に惹かれて志望しました。現職で関連会社の経営管理、投資先の経営戦略の構築支援、投資基準の策定などを通じてリスク評価に携わってきた中、まだ日本企業の間に浸透していない全社リスクマネジメントの重要性を強く感じ、これまでの経験を活かしてERM領域に挑戦していきたいと思いました。今後ERM体制を構築していく貴社において、立ち上げに加わり、迅速な戦略立案と目標達成によって企業価値の向上に貢献したいと考えています。

リスクマネジメント(リスク管理)未経験者の志望動機例文

(※保険会社の法人営業→事業会社のリスクマネジメント部門への応募を想定)

貴社の事業成長性に魅力を感じて志望いたしました。損保の営業では顧客の事業環境財務分析、リスクコンサルティングを行っていましたが、自社商品を前提とした提案となるため、顧客の課題を解決しきれない場面もあることに、もどかしさを感じておりました。そこで事業会社における本質的な経営課題の解決に寄与する仕事をしたいと考えました。培った分析力を活かして事業のリスク回避・軽減に取り組み、貴社の業績向上と企業価値の創出に貢献していきたいと考えております。

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アドバイザー

風藤博信

大学を卒業して2年間家業に従事した後、株式会社リクルートに入社。新卒メディアの営業、製造業のリクルーティングアドバイザー、首都圏のナショナルクライアント営業担当を経て、2024年の4月から現職。ハイキャリア部門のスカウトエージェントとして、法務・総務・コンプライアンス・知的財産・リスクマネジメント領域におけるキャリア支援・採用支援に従事。

※本記事での内容は取材時点での情報になります。