中途採用では多くの場合、履歴書と職務経歴書の提出を求められますが、いずれにおいても記入が必要なのが「職務内容」です。この記事では、「職務内容」と「業務内容」の違い、そして履歴書、職務経歴書における「職務内容」の書き方や作成のポイントを、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
応募書類における職務内容とは?業務内容との違いは?
「職務内容」とは、「業務内容」を細分化した上で、個々の従業員が担当している業務・役割のことを指します。「業務内容」とは、企業の「事業内容」を細分化したもので、その事業に携わる部署・事業部などが全体で取り組んでいる仕事を指します。
事業内容(企業全体が行っている活動)
↓
業務内容(企業が行っている活動の中で、部署・事業部が行う仕事)
↓
職務内容(業務内容を細分化した上で、各従業員に割り当てられた仕事)
例えば、食品専門メーカーであれば、「食品の製造・加工」「食品の卸売」「食品の販売」などが「事業内容」にあたるでしょう。このうち、「製造・加工業」を担うのが「生産・開発事業部」という場合は、「食品の製造・加工・開発」が「業務内容」になります。さらに、「業務内容」の中で商品開発を行っていた方の場合、「職務内容」は「商品開発」になります。
企業が履歴書、職務経歴書の「職務内容」を見る時のポイント
採用担当者が、履歴書や職務経歴書の「職務内容」欄でチェックするポイントについて知っておきましょう。
経歴と募集要件とのマッチ度
採用担当者が確認したいこととして考えられるのは、今回募集する人材に求める要件と、応募者のこれまでの経歴や担当業務がマッチしているかどうかです。さらに在籍していた企業の職務内容や自己PRから、経験・スキルのレベル感を把握します。業界や職種未経験の応募者の場合は、なぜキャリアチェンジを希望しているのかを知るために、職務内容に加えて志望動機や自己PRにも注目します。
転職回数や在籍期間
採用担当者は、求職者の「転職回数」と「定着性」にも注目しますが、この場合は転職回数の多い・少ないだけでなく、在籍期間が短い=すぐに退職した経験があるかどうかに注目するケースもあるようです。もし自分の転職回数や在籍期間の短さが気になる場合は、職務経歴欄に退職理由まで記入したり、志望動機や自己PRで転職の背景や意図を補足したりしておくことも一案です。
キャリアから見る人物タイプ・一貫性
採用担当者は、求職者の仕事の選び方から「仕事において何を大切にしているのか」といった人物タイプを想像します。そして、キャリアに一貫性を持っているかどうかなども参考にして、自社とのマッチ度を知りたいと考えています。その際に「なぜこの転職をしたのだろう」「なぜ異動になったのだろう」などの疑問があれば、職務経歴書で重点的に確認することになるでしょう。
履歴書では職務内容の全体像を見て、職務経歴書で詳細を確認する
履歴書では「職歴欄」に職務内容を記載しますが、スペースに限りがあるため、要約して書かれているケースが大半です。したがって、履歴書の職務内容は応募者の職務内容の全体像を把握するために確認していることが多いでしょう。
ハイクラス人材になるほど、いろいろな部署を経験していたり、昇進・昇格して役割が変わっていたりするため、職務経歴が長くなりがちです。出向や転籍経験がある人もいることでしょう。このように豊富な「キャリアの歩み」を、履歴書の職務内容欄でわかりやすく要約してあると、応募者のキャリアの全体をつかむことができます。そのうえで、職務経歴書の職務内容欄で詳細を確認し、経験やスキル、人物像をつかんでいます。
履歴書・職務経歴書での職務内容の書き方のポイント
職務経歴書では、経験した職務をはじめ実績やスキルなどを記載するため、文字数が多くなることが想定されます。そのため、思いつくままに書いてしまうと、情報が整理されておらず、読みにくい職務経歴書になってしまいます。採用担当者に分かりやすく伝えるためには、構成を決めてから作成すると良いでしょう。 履歴書の職務内容は、そのサマリーのような位置づけであると考えましょう。すべての職歴と、入社退職年を書くのは必須ですが、要点を絞ってまとめるといいでしょう。
「役割、役職」+「具体的な仕事内容」+「実績」で構成
職務内容の書き方に決まった書式やフォーマットはありませんが、ポジションや役職、従事した具体的な仕事の内容、仕事を通してどのような結果を出したのかを書くのが一般的です。そのため、「役割、役職」+「具体的な仕事内容」+「実績」で構成すると分かりやすくなります。
箇条書きを活用し、簡潔に記載
職務経歴書は、読みやすさが重要です。ただ文章を羅列するだけでは、採用担当者が一目で把握することは難しく、読みやすい応募書類とは言えません。そのため、「見出しを付ける」「箇条書きにする」、などの手法で簡潔に書くことを意識すると良いでしょう。何が記載されているのかが分かりやすくなる上、アピールポイントの判断もつきやすくなるでしょう。
実績は数値で伝え、規模や影響範囲が判断できるようにする
職務経歴書の職務内容に記載する実績は、規模や影響範囲が客観的に判断しやすいように、数値を交えて記載すると良いでしょう。例えば「昨年対比〇%」「業務時間を〇時間短縮」「〇人中〇位」など、採用担当者が見てもわかるように工夫することをおすすめします。
異業界に転職する場合は用語に注意する
まったく経験のない異業界に転職する場合は、職務内容に記載する「用語」には注意が必要です。業務上何気なく使っていた言葉でも、その業界でしか使われておらず、採用担当者に意図が伝わらない可能性があります。 専門用語を使わなければならない場合は、一般的に使われている用語に変換したり、わかりやすくかみ砕いたりして記載するといいでしょう。
履歴書・職務経歴書での「職務内容」の職種別例文
履歴書、職務経歴書に記載する職務内容の例文を職種別にご紹介します。
営業職の例文
履歴書
年 | 月 | 学歴・職歴 |
職歴 | ||
20XX | 4 | ●●株式会社入社。営業部に配属、主に都内の新規開拓を担当 |
20XX | 4 | リーダーに昇格。既存顧客対応・新規開拓のほか、メンバー5名の教育を担当 |
現在に至る 以上 |
職務経歴書
社名:●●株式会社
勤務期間:20XX年4月入社~現在
部署・役職/首都圏法人営業1部
【具体的な仕事内容】
法人営業
・20XX年4月入社 営業部に配属、主に都内の新規開拓を担当
・20XX年4月 リーダーに昇格。既存顧客対応・新規開拓のほか、メンバー5名の教育を担当
<営業商材>
各種情報機器やセキュリティ商材(ICT関連商品)
・エリア/東京都内
・顧客/100社を担当(●●業界や●●業界がメイン)
・既存顧客5割・新規開拓5割
<内容>
◎既存顧客の対応/新しいサービスや商材の提案・プランの変更・定期訪問
◎新規開拓のための書類作成、営業先のリストアップ
◎技術部門との連携
◎サービス導入・商品納品の際の立ち合い
◎納品後のフォロー
<実績>
20XX年/●●万円(110%達成)●●で表彰(●名中)
20XX年/●●万円(108%達成)
20XX年/●●万円(109%達成)
以上
人事職の例文
履歴書
年 | 月 | 学歴・職歴 |
職歴 | ||
20XX | 4 | ●●株式会社入社 |
総務部人事課に配属。新卒・中途採用に関わる業務を担当 | ||
20XX | 6 | リーダーに昇格。上記の業務に加え、2名の教育係を担当 |
20XX | 1 | 係長に昇進。業務フローの改善や研修の導入にも携わる他、3名のマネジメントも担当 |
現在に至る 以上 |
職務経歴書
社名:●●株式会社
勤務期間:20XX年4月入社~現在
部署・役職/総務部人事課・課長
【具体的な仕事内容】
人事採用
・20XX年4月入社 総務部人事課に配属。新卒・中途採用に関わる業務を担当
・20XX年6月 リーダーに昇格。上記の業務に加え、2名の教育係を担当
・20XX年1月 係長に昇進。業務フローの改善や研修の導入にも携わる他、3名のマネジメントも担当
<内容>
◎採用計画立案
◎予算管理
◎入社・退職の手続き・管理業務
◎新卒・中途採用業務全般
◎導入研修のパッケージ化
◎採用管理ツール(〇〇〇)の導入
<ポイント>
採用フローをより効率化するために、システムを導入し、グループの採用業務時間を1割削減。また、メンバーが個別に行っていた導入研修を標準化した結果、研修関連業務は派遣スタッフで運用が可能に。メンバーが採用のコア業務に集中できる環境を整えた。
以上
管理職の例文
履歴書
年 | 月 | 学歴・職歴 |
職歴 | ||
20XX | 4 | ●●株式会社入社 |
総務部総務課に配属、社内の備品管理や福利厚生に関する業務などを担当 | ||
20XX | 6 | リーダーに昇格。契約書の作成や重要書類の管理など、総務課の重要業務を担当 |
20XX | 3 | 一身上の都合により退職 |
20XX | 4 | ■■株式会社に入社。総務部マネジャーに就任し、 |
全社コンプライアンス担当及び、コスト削減プロジェクト責任者業務に従事 | ||
20XX | 4 | 管理部門本部長に就任。管理部門全体の統括に携わる |
現在に至る 以上 |
職務経歴書
社名:●●株式会社
勤務期間:20XX年4月入社~20XX年3月
社名:■■株式会社
勤務期間:20XX年4月入社~現在
部署・役職/総務部マネジャー
【具体的な仕事内容】
総務部総務課(●●年●月~現在)
・20XX年4月入社 総務部総務課に配属、社内の備品管理や福利厚生に関する業務などを担当
・20XX年6月 リーダーに昇格。契約書の作成や重要書類の管理など、総務課の重要業務を担当
・20XX年3月 一身上の都合により退職
・20XX年4月 ■■株式会社に入社。総務部マネジャーに就任し、会社全体のコンプライアンス徹底に注力すると共に、課全体のマネジメントも担当。また、コスト削減プロジェクトの責任者としても従事
・20XX年4月 管理部門本部長に就任。総務部、人事部、経理部、法務部の管理部門全体の統括に携わる
<内容>
◆ISO14001導入
企画・導入をはじめとするプロジェクトの責任者業務
◆書類や備品のコスト削減(年間5,000万円程度)
各拠点23ヶ所における備品管理・業者選定
◆総務業務全般
オフィスのセキュリティレベルの強化
<ポイント>
コスト削減のための全社プロジェクト責任者を担当。データ分析による印刷環境の改善、通信・光熱費の見直し、消耗品のコスト削減を発案。メンバーを中心に全社に周知する共に、定期的な振り返り・改善を行うことによって2年後に目標を達成。その取り組みが評価され、社長賞にて表彰。
以上
複数職種を経験している場合の例文
履歴書
年 | 月 | 学歴・職歴 |
職歴(法人営業7年、人材採用・育成3年) | ||
20XX | 4 | ●●株式会社入社 |
法人営業部に配属、主に都内の法人顧客の新規開拓を担当 | ||
20XX | 4 | リーダーに昇格 |
既存顧客対応・新規開拓のほか、メンバー5名の教育を担当 | ||
20XX | 9 | 人事部に異動。人材採用チームのリーダー(メンバー3名)として、 |
新卒・中途採用の企画・実行を担当 | ||
20XX | 4 | 人材育成チームのマネジャー(メンバー7名)に昇進 |
新卒・中途採用の企画・実行を担当 | ||
20XX | 4 | 人材育成チームのマネジャー(メンバー7名)に昇進 |
全社の人材開発・研修の企画・運営を担当 | ||
現在に至る 以上 |
職務経歴書
社名:●●株式会社
勤務期間:20XX年月入社~現在
【具体的な仕事内容】
■法人営業
・20XX年4月入社 法人営業部に配属、主に都内の法人顧客の新規開拓を担当
・20XX年4月 リーダーに昇格。既存顧客対応・新規開拓のほか、メンバー5名の教育を担当
<営業商材>
経理システムを始めとする事業システム
・エリア/東京都内
・顧客/40社を担当(●●業界や●●業界がメイン)
・既存顧客5割・新規開拓5割
<内容>
◎既存顧客の対応/新しいシステムの提案・既存システムの更新・定期訪問
◎新規開拓のための営業先リストアップ
◎システム導入現場のヒアリング、ニーズに合わせたカスタマイズ
◎納品対応、納品後のフォロー
<実績>
20XX年/●●万円(110%達成)★●●で表彰(●名中)
20XX年/●●万円(108%達成)
20XX年/●●万円(109%達成)
■人材採用・育成
・20XX年9月 人事部に異動し、人材採用チームのリーダーに就任。新卒採用、中途採用の採用計画立案、採用活動のほか、メンバー3人のマネジメントを担当
・20XX年4月 人材育成チームのマネジャーに就任。7名のメンバーをまとめながら、全社的な教育や研修の企画・運営、新卒・中途入社向けの導入研修、既存社員向けの階層別研修などを担当
<人材採用>
20XX年/新卒採用20名、中途採用5名
20XX年/新卒採用28名、中途採用13名
※いずれも計画通り
<人材育成>
20XX年6月 初のリモートによる新入社員導入研修を実現(28名出席)
20XX年6月 新しい経営ビジョンの説明と中期経営計画の共有を目的とした、全社マネジャー研修を企画・運営(158名出席)
以上
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履歴書と職務経歴書の違い | 封筒の書き方 | 送付状(添え状)の書き方 |
複数社の経験がある場合の書き方 | 転職回数が多い場合の書き方 | PCスキルの書き方 |
職務経歴書のサイズと枚数 | フォントの選び方 | 用紙の種類 |
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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