略歴は、転職活動の応募書類を書く際に必要になるものです。しかし、「そもそも略歴とは何を指すのか」「経歴との違いは何か」「履歴書や職務経歴書のどこに略歴を記載するのか」などの疑問を抱いている方もいるでしょう。今回は、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が、略歴として記載することの内容や、職務経歴書に記載する際の書き方、注意したいポイントなどを解説します。略歴の例文もパターン別にご紹介するので、参考にしてみてください。
目次
「略歴」とは?経歴・プロフィール・自己紹介との違い
「略歴」とは、一般的にこれまでの学歴・職歴を短く簡潔にまとめて記載したものを指します。転職活動の応募書類となる職務経歴書の冒頭には、3〜5行程度で略歴を書く欄を設けることが一般的です。採用担当者に興味を持ってもらうために、自身の経歴をわかりやすく伝えることがポイントになるでしょう。
経歴との違い
「経歴」とは、これまで経験してきた仕事・身分・地位・学業などのことを指します。
転職活動の履歴書には、学歴・職歴を記載する欄が設けられているため、これまでの経歴を記載します。履歴書に記載する経歴は、学校への入学・卒業(修了)した学歴と、在籍したすべての企業の入社・退社した職歴を省略せずに記載します。
プロフィール・自己紹介との違い
「プロフィール」は、その人の経歴とともに、人物像や人物評価などを伝えることを目的とする側面もあるでしょう。そのため、略歴よりも詳しく学歴や職歴などを記載する傾向があります。
一方、転職の面接の冒頭で求められる「自己紹介」は、自身の人物像を簡単に伝えるためのものと言えます。氏名・略歴に加え、強みと実績、入社意欲などを短く伝えることがポイントとなるでしょう。
職務経歴書の「略歴」の書き方
ここでは、職務経歴書に記載する略歴の書き方を解説します。
略歴を書く場所・内容・文字数
先にも述べた通り、略歴は、職務経歴書の冒頭に書きます。「職務要約」または「職務概要」の欄を設け、そこに記載するのが一般的です。
略歴として記載する内容は、「これまでの職務経歴の要約」と考えましょう。社会人になってから経験した業務・職務・ポジションなどを書きます。多くの応募書類に目を通す採用担当者に、わかりやすく自分の経歴をアピールするためには、3〜5行程度に短くまとめることがポイントと言えます。略歴の文字数は、200〜300文字以内を目安にすると良いでしょう。
略歴を書く前に、自身の経歴をすべて書き出して整理する
職務経歴書に記載する略歴のポイントを抽出するには、すべての経歴を洗い出すことから始めましょう。まずは履歴書用に、時系列でこれまでの職務経歴を書き出していきます。それぞれに対し、部署名や役割・ポジション、具体的な業務内容、携わったプロジェクト内容、実績、創意工夫した点などを書き出すことで整理しやすくなるでしょう。
応募企業に対してアピールできることを抽出する
略歴では、応募する職種・ポジションで求められる経験・スキルや、応募企業が求めている人物像に合致することを抽出してまとめると、よりアピールにつながりやすくなります。直近の職務経歴を中心に、特にアピールしたいことをわかりやすくまとめることがポイントです。
職務経歴書の作成は、テンプレートの活用も有効
職務経歴書を作成するは、テンプレートを利用すると便利です。フォーマットとしては、時系列で職務経歴を記載する「編年体」形式のフォーマットのほか、職務内容や分野ごとにまとめる「キャリア式」などもあります。転職回数が多く、さまざまな経験・スキルがある場合は、キャリア式のフォーマットを利用すると、アピールしたいことを簡潔にわかりやすく記載できるでしょう。
職務経歴書に書く「略歴」の例文【パターン別】
職務経歴書に記載する略歴の例文をパターン別にご紹介します。
1社のみを経験している場合
【コンサルティング営業の例文】
株式会社○○に入社後、人事コンサルティング営業として、採用戦略や研修・教育、人事制度の構築などの提案や運用サポートを手掛け、○○業界の上場企業など大手企業を中心に、延べ○社を担当いたしました。20XX年に全社MVPを受賞し、営業マネジャーとしてマネジメントを経験。20XX年より、○○業界・△△業界などを主に担当する営業部門の部門長となり、営業戦略の立案・実施と所属メンバー30名のマネジメントを手掛けております。
複数社を経験している場合
【経営企画の例文】
新卒で入社したコンサルティングファームにて新規事業戦略の立案、○○メーカーにて新規事業企画/投資企画および実行業務に従事。現職の○○メーカーでは、短・中期から長期までのすべての実行計画において、データ分析から実行計画の立案推進まで計画全般に携わってまいりました。特に、中期開発ロードマップの策定・実施では、プランの策定から実際の遂行まで、仮説検証型のビジネス手法によって業務改革を達成。20XX年にマネジャーになってからは、メンバーマネジメントとプロジェクト全体の統括を任されております。
ブランク(離職期間)がある場合
【業務コンサルタントの例文】
金融系シンクタンクにて、ITを活用した銀行向け経営改善コンサルティング業務に○年◯カ月従事してきました。銀行の取引先管理の改善プロジェクトでは、取引先の経営状態診断システムを開発し、導入まで見届けるなど、情報収集や分析レポート作成にとどまらず、導入という泥臭い領域までを経験しました。その後、DX推進の支援に携わったことを機に、経営をより深く学ぶために退職し、2年間の海外留学にてMBAを取得。体系的に学んだ経営知識を活かし、より踏み込んだ視点のコンサルティングを目指したいと考えております。
箇条書きで記載する場合
【IT系技術職の例文】
・○○株式会社にITエンジニアとして○年間勤続。
・20XX年~20XX年の○年間は、主に自動車部品メーカー向けの生産管理システム(開発環境はLinux)の詳細設計・開発・導入後のメンテナンスを担当。
・20XX年以降は、工作機械メーカー向けの業務システムを開発するプロジェクトのPL(プロジェクトリーダー)として、要件定義や案件見積と並行し、業務効率化も担当。
「略歴」を書く際に注意したいポイント
転職活動の応募書類に略歴を書く際に、注意したいポイントを解説します。
社名を記載する場合は、正式名称で書く
職務経歴書の略歴で、前職・現職などの社名まで記載する場合は、正式名称を書きましょう。省略したり、略称を記載したりすることで、採用担当者が正しく把握できなくなる可能性があります。
年号は和暦・西洋歴のどちらかに統一する
略歴に日付や年月などを記載する場合は、和暦と西洋歴を混同させないようにしましょう。また、職務経歴書や履歴書などの応募書類に記載するそのほかの年号と合わせ、すべて統一した方が採用担当者にとって情報を把握しやすくなります。
企業が求める経験・スキルに共通することを中心に、簡潔にまとめる
職務経歴書の略歴では、簡潔にわかりやすく自身の経歴を伝えることが大事です。応募企業が求めている経験・スキルにマッチする部分を強調し、メリハリを付けてまとめましょう。
また、採用担当者が把握しやすくするために、一文を長くしすぎないよう意識することもポイントです。句読点で適宜区切る、「○○に入社」「△△のプロジェクトを経験」というように体言止めを活用するなどで、より読みやすく、わかりやすくすることができます。
実績は数字を交えて記載し、客観的に伝わるようにする
過去の実績を書く際には、客観的な数字を交えて伝えることがポイントです。「生産量が30%増加」「売上3000万円アップ」「コストを5%削減」「プロジェクトリーダーとして30名のメンバーを率いた」など、定量的な書き方をすることで規模感をイメージしやすくなります。
応募書類の作成には、転職エージェント・スカウトサービスを活用するのも一案
キャリアの棚卸しのサポートや応募書類の添削などを行う転職エージェントもあるので、活用するのも一案です。また、スカウトサービスに登録して転職エージェントからのスカウトを受け、応募書類の作成サポートや改善のアドバイスを受ける方法もあります。「よりアピールできる応募書類を作成したい」「在職中に転職活動を行うため、正しい書き方まで把握している時間がない」などの場合にも役立てることができるでしょう。
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粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。