職務経歴書・履歴書を作成する際に「退職理由を書いたほうがいいのだろうか」と判断に迷う方もいるでしょう。組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に、職務経歴書・履歴書に退職理由を書く際の注意点を伺いました。シチュエーション別の書き方ポイントや例文も合わせてご紹介します。
職務経歴書・履歴書には「退職理由」を書くべき?
職務経歴書・履歴書に退職理由を書くことの背景や、書いたほうがいいケースについて解説します。
退職理由は書かなくても良い
一般的に、職務経歴書や履歴書に退職の理由を細かく記載する必要はなく、「一身上の都合のため」と記載するのみでもOKです。
退職理由を書く際には、その内容や書き方によっては現職(前職)の批判などと受け取られて、書類選考の時点でネガティブな印象を与えてしまう可能性があります。現職ではスキルアップが実現できない、社風が合わない、労働時間が長過ぎる、年収が低いなど、事実であってもネガティブな退職理由のみを書けば、本来伝えたい理由や事情、背景が伝わりにくいと言えます。
以降で退職理由を書いたほうがいいケースをご紹介しますが、それに当てはまる方以外は応募書類に記載する必要はないと考えて良いでしょう。
採用担当者が退職理由を確認する背景
採用担当者は、長く活躍してくれる人材を求めているため、経験・スキルだけでなく、入社後の定着性も確認しています。「すぐに退職・転職してしまわないかどうか」を判断するために、面接では退職理由や転職理由は必ず確認されます。職務経歴書に退職理由を詳細に記載する必要はありませんが、面接で聞かれた際には背景や事情も含めてしっかり伝えると良いでしょう。
退職理由を書いたほうがいいケース
下記のように早期離職を懸念されそうな場合は、採用担当者にネガティブな印象を与えないように退職理由をきちんと書いておく方が良いでしょう。
- 前職を短期間で辞めている
- 短期間で転職を繰り返している
- 離職期間が長い
このほか、複数の職種で転職を経験している場合なども「キャリアに一貫性がない」と受け取られ、早期離職を懸念される可能性があります。また、育児や介護、スキルアップのための留学や資格取得などで退職し、離職期間が長期にわたっている場合は、退職理由を通じて背景や事情を伝えることで採用担当者の納得感を高めることができます。
退職理由を書かなくてもいいケース
在職中に初めての転職活動をしている場合は、退職の経験そのものがないため、これに当てはまると言えます。
一方、退職後に転職活動を行なっている場合でも、離職期間が1〜2カ月程度の場合は早期離職の懸念をされる可能性は低いと言えます。一般的な転職活動の期間は3〜6カ月程度のため、退職理由を書かなくても書類選考に大きな影響を与えることはないでしょう。
ただし、面接では必ず退職理由・転職理由を聞かれるので、きちんと話せるように整理しておくことが大事です。
職務経歴書に退職理由を書く際の例文と解説
履歴書には詳しく退職理由を書く必要はないため、補足したい場合は職務経歴書に書きましょう。職務経歴書の書式は自由であり、退職理由を記載する場所に決まりはありません。自身で「退職理由」の欄を作成しましょう。
早期離職の懸念を払拭したい場合は、職務経歴書の冒頭部分に記載する職務要約の後などに退職理由を書くと良いでしょう。採用担当者が職務経歴書に目を通す際、早い時点で理解を深めることができます。それ以外の場合は、職務経歴の各在籍企業の職務内容の後に記載するなどで、追加要素として伝えることをお勧めします。
自己都合で退職した場合
キャリアアップ、スキルアップを目指そうと考えたことが退職理由となっている場合は、前職での経験と、どのようにキャリアアップしたいと考えたのかを書くと良いでしょう。志望動機と結びついている内容にすると、より説得力を高められます。
例文:キャリアアップが退職理由の場合
現職では営業チームのリーダーを務めておりますが、マネジャーとして組織作りをする経験スキルをできるだけ早く得たいと考え、転職を決意しました。年齢や社歴ではなく、実績やマネジメントスキルで評価する貴社で力を発揮し、営業チームに貢献していきたいと考えております。
一方、現職(前職)の仕事内容、ワークライフバランス、将来のキャリアなどに不安・不満を感じ、希望に合う転職先を探そうと考えた場合には、前職の簡単な状況説明と、転職先で実現したいと考えたことについて書くことをお勧めします。入社後、どのように活躍・成長していきたいか、意欲やビジョンなども書くと説得力が増すでしょう。
例文:ワークライフバランスへの不満が退職理由の場合
現職ではプロダクトマネジャーを務め、人員が足りず、複数のプロダクトを担当しております。開発・改修案件の重複やメンバーの採用・育成などに奔走する中、月時間の残業や休日対応が常態化し、仕事と家庭の両立が難しくなったため、転職を決意しました。働き方改革に積極的に取り組んでいる貴社で、プロダクトマネジャーとしてチームの働き方のマネジメントにも貢献していきたいと考えております。
会社都合で退職した場合
倒産や人員整理など、会社都合によって退職・転職せざるを得なかった場合は、ネガティブに受け取られる可能性は低いでしょう。退職理由を補足する際、入社後の活躍イメージや意欲を伝えておくことでよりポジティブな印象になります。
例文:倒産・リストラが退職理由の場合
○○の影響で会社が業績悪化したことにより、整理解雇となりました。これまで人事マネジャーとして中途・新卒採用を経験し、直近の○年間は組織開発・人材開発も担当する中、人事の仕事にやりがいを感じております。今後も専門性を磨きながら、企業の組織作りを通じて事業成長に貢献していきたいと考えております。
個人事業主・フリーランスの場合
退職理由を補足する際には「実力が伴わず、個人事業主やフリーランスを続けられなかった」などのマイナス印象を持たれないよう、即戦力となれるだけの実績があることを伝えましょう。
また、組織やチームで働ける協調性があるのか懸念を持たれる可能性もあります。志望動機や自己PRに結びつけ、周囲と強調して仕事を進められることも補足すると良いでしょう。
例文
正社員として○社でマネジャーを経験後、フリーランスのITコンサルタントとして独立。主に中堅・大手企業のDX推進し、○年間で○社の顧客と信頼関係を築きましたが、外部からの関わりでは、方針決定や予算獲得などに関与できない状況がありました。組織やチームで大きなビジネスインパクトを生み出す経験を重ね、より成長していきたいと考えたため、再度、組織で働く決意をいたしました。
【シチュエーション別】職務経歴書で退職理由を補足したい場合の例文と注意点
「一身上の都合により退職」などの一般的な書き方では、採用担当者に誤解を与えそうな場合は、職務経歴書を使って2〜3行(120文字)程度のボリュームで補足すると良いでしょう。シチュエーション別に補足例をご紹介します。
前職を短期間で辞めている場合
入社後の早期離職を懸念されないためにも、志望動機などに絡めて「仕事に対する価値観と姿勢」を伝えることがポイントです。前職への不満と受け取られるようなことは書かないように注意しましょう。
【例文】
前職で扱っていた商品には営業職として優位性を感じていましたが、常に達成が難しいノルマを設定され、人材の入れ替わりが激しい状況もありました。商品だけでなく、会社のビジョンや社風にも共感でき、長く活躍貢献できる場で働きたいと考えて貴社を志望いたしました。
転職回数が多い場合
入社後の定着性を懸念される可能性があるので「キャリアビジョンやキャリアプランに一貫性があること」を示すことが大事です。退職理由を通じて自身のキャリアに対する考え方を具体的に伝えましょう。
【例文】
成長性の高いプロダクトを持つ企業でカスタマーサクセスの組織を立ち上げるキャリアを目指しております。「1社○年で成果を出す」と決め、合計○社で多様なフェーズの経験を積んでまいりました。これまでの知見を活かし、貴社の新たな組織作りに貢献していきたいと考えております。
離職期間が長い場合
離職期間が長い場合は、「その間に何をしていたのか」と疑問を抱かれる可能性があります。
キャリアアップ、スキルアップのための留学や資格取得をしていた場合は、その事実を書きましょう。育児や介護などのやむを得ない事情があった場合は、事実と合わせて「業務に支障なく働けること」も伝えることがポイントです。
【例文】留学のために前職を退職した場合
前職のコンサルティング会社は、米国留学のために退職しました。現地の語学学校に1年、○○大学院に2年通ってMBAを取得し、現地の大手IT企業でインターンも経験。身に付けた経営知識や語学力を活かし、貴社の海外事業に貢献していきたいと考えております。
【例文】介護のために前職を退職した場合
母の介護のために前職を退職し、経理・財務の経験を活かして短時間のリモート勤務で対応できる業務委託の仕事で経験を積んでまいりました。このたび、安心できる介護施設への入所が決まり、フルタイム就業が可能となったため、転職活動を開始いたしました。
履歴書に退職理由を書く際の例文と解説
履歴書では、前述した通り職務経歴書とは違って、詳しく退職理由を記載する必要はありません。一般的な退職理由の書き方と履歴書に書く際の例文をご紹介します。
自己都合で退職した場合
労働者が退職を希望した場合は「自己都合退職」となります。履歴書には「退職」または「一身上の都合により退職」と書きます。
記載例
20XX年 X月 ○○株式会社 入社 20XX年 X月 一身上の都合により退職
会社都合で退職した場合
会社側からの申し出により退職した場合は「会社都合退職」となります。履歴書には「会社都合により退職」と書きましょう。
記載例
20XX年 X月 ○○株式会社 入社 20XX年 X月 会社都合により退職
個人事業主・フリーランスの場合
法律上、フリーランスは個人事業主のため、開業届を出して活動している(していた)場合は、必ず開業日を明記し、業務の内容を簡潔に記載しましょう。
廃業した場合は、その年月日を記載して「一身上の都合により廃業」と記載します。
記載例
20XX年 X月 フリーランスのITコンサルタントとして開業 20XX年 X月 一身上の都合により廃業
開業届を出していない場合は「開業」ではなく「活動」もしくは「従事」と記載します。
活動を辞めた場合は、その年月を記載して「一身上の都合により活動停止」と書きましょう。
記載例
20XX年 X月 フリーランスのITコンサルタントとして活動 20XX年 X月 一身上の都合により活動停止
クラウドソーシングなどを通じて仕事を受注していた場合は、登録年月を記載して「個人事業主としてクラウドソーシング○○に登録」と記載します。
退会した場合は、その年月を記載して「一身上の都合によりクラウドソーシング○○を退会」と書きましょう。
記載例
20XX年 X月 個人事業主としてクラウドソーシング○○に登録 20XX年 X月 一身上の都合によりクラウドソーシング○○を退会
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