応募先の企業に履歴書や職務経歴書を送る際に同封する送付状(添え状)。採用担当者が最初に目にする文書になることもあり、過不足なく配慮の行き届いた送付状(添え状)を作成したいものです。今回は、送付状(添え状)の書き方やその見本、NG例などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
送付状(添え状)とは?
「送付状」は、挨拶状の一種であり、応募先に応募書類を郵送する際に添えるのが、一般的です。送付状があることで採用担当者は差出人と同封書類の内容が把握しやすくなり、細かく確認する手間を省くことができるため、採用担当者への配慮として同封するケースが多いようです。
送付状は「添え状」や「送り状」、「送付案内状」、「カバーレター」などとも呼ばれることがありますが、基本的には全て同じものを指し、以下のような書類になります。
「誰が」「何を」送ったかを示す書類
応募書類に送付状を添えるのは、「誰が」「誰に」「何を」送ったのかを、採用担当者に伝えるため。前述のとおり、多くの応募書類をチェックしなければならない採用担当者に対する配慮を示すことにもつながります。
応募企業への挨拶や補足事項を伝えることも兼ねている
送付状は、初対面の相手に対する挨拶を書面で伝える役割も兼ねています。また、応募書類には盛り込めなかった「補足事項を伝える」という目的で同封することもあります。
直接企業に持っていく場合は不要
前述の通り、送付状には挨拶を書面で行う役割があります。そのため、面接など直接採用担当者に会う場に応募書類を持参する場合は、送付状は不要です。
送付状(添え状)は必要?
送付状は、合否の直接的な判断材料にはなりませんが、以下のような理由から、応募書類に添えることが望ましいでしょう。
書類の入れ忘れなどを防ぐことができるため
内容物の明細を送付状に記すことで、封入し忘れるミスを予防する副産物的な効果も期待できます。詳しくは後述しますが、箇条書きにすることで、採用担当者だけでなく、自分にとっても封入物の内容が分かりやすくなるでしょう。
ビジネスパーソンとしての姿勢が示せるため
きちんとした送付状を添えることで、ビジネスマナーが身についていることが、採用担当者に伝わります。
送付状(添え状)の書き方見本【テンプレートダウンロード】
決まったフォーマットはありませんが、送付状に書くのは、一般的に「送付年月日」「宛名」「自分の名前・住所・連絡先」「頭語+時候の挨拶」「応募の経緯」「自己PR」「面接の申し込み」「結語」「同封書類」の9点です。簡潔かつ丁寧な印象をあたえる「ですます調」で統一することをお勧めします。
<送付状(添え状)の書き方見本>
【1】送付年月日
応募書類を投函する日付を書きます。西暦・和暦どちらでも問題ありません。
【2】宛名
応募する企業の社名、採用担当者の所属部署と名前を書きます。部署宛ての場合は「御中」、採用担当者宛ての場合は「様」と記載します。
【3】自分の名前・住所・連絡先
郵便番号、住所、氏名、電話番号(携帯電話)、メールアドレスなどの連絡先を書きます。
【4】頭語+時候の挨拶
頭語は「拝啓」が一般的です。挨拶を省略する意味の「前略」は使いません。頭語+時候の挨拶はセットで記載するようにします。季節に合った適切な時候の挨拶を選びましょう。
<時候の挨拶 例>
1月 初春の候、寒中の候、厳冬の候2月 立春の候、余寒の候、残雪の候3月 早春の候、仲春の候、春分の候4月 春暖の候、春光の候、晩春の候5月 新緑の候、立夏の候、向暑の候6月 薄暑の候、入梅の候、向暑の候7月 小夏の候、小暑の候、猛暑の候8月 残暑の候、立秋の候、晩夏の候9月 初秋の候、秋涼の候、秋雨の候10月 仲秋の候、秋冷の候、紅葉の候11月 晩秋の候、立冬の候、初冬の候12月 向寒の候、師走の候、寒冷の候
【5】応募の経緯
採用企業の求人に応募する旨を書きます。求人を知った媒体と、自分が応募する募集職種を記載することも一案です。特に、応募先の企業が複数の職種で求人を出している場合は、どの職種に応募しているのか分かるようにしておくと、採用担当者も判断しやすくなります。
【6】自己PR・志望動機
必要に応じて、自己PRや志望動機を添えます。応募の経緯や募集職種とつながるように、これまでの経験やスキルなどを簡単に記載しておくと、採用担当者が応募書類を確認する前のワンクッションとなり、印象付けられる効果も期待できます。
【7】面接の申し込み
面接を希望している旨を書きます。
【8】結語
頭語に呼応する結語で締めます。頭語が「拝啓」の場合、結語は「敬具」となります。
【9】同封書類
同封書類の種類とその枚数を明示します。最後に「以上」で締めます。
送付状(添え状)の書き方のポイント
送付状の具体的な書き方について、ポイントも交えながら詳しく紹介します。
日付は投函日に統一する
送付状の日付は、同封する履歴書や職務経歴書と合わせて、投函する日付を記載するようにします。西暦・和暦はどちらでも構いませんが、送付状を含めて、提出するすべての応募書類で西暦か和暦か統一されていると、見る側が確認しやすくなります。
宛名は正式名称を記載する
宛名は「(株)○○」などと省略するのではなく、「株式会社○○人事部 採用ご担当者様」などと正式名称で記載するようにしましょう。個人宛に送付する場合には、「○○様」と書きます。
連絡先も明記する
署名は「住所」「氏名」はもちろん、連絡先も合わせて記載します。何かあった際にすぐに連絡が取れるように携帯電話の番号やメールアドレスなどを記載しておくのがよいでしょう。
なお、会社に勤務しながら転職活動をする場合、在籍する会社の連絡先は使わないようにしましょう。会社で使っている携帯電話やメールアドレスを転職活動で使用するのは、業務ではなく「私的利用」にあたります。また、メールの送受信記録を残している企業もあるため、送付状を含めた応募書類に記載する場合は、必ず個人の携帯電話の番号やメールアドレスを使うようにしてください。
送付状(添え状)のサイズと同封方法
送付状の用紙サイズや封筒への同封方法についてご紹介します。
職務経歴書などとサイズを統一する(A4サイズで作成するのが一般的)
ビジネス文書はA4サイズが主流となっており、一般的には履歴書(二つ折り)や職務経歴書もA4サイズが使われることが多く見られます。そのため、送付状もA4で作成することが望ましいでしょう。送付状を作成する際は、文書作成ソフトを使用し、分かりやすくシンプルに仕上げるようにします。
応募書類の一番上になるように重ねて送付する
送付状は、履歴書、職務経歴書などの応募書類の一番上になるように重ねて送付します。送付状を一番上にするのは、送付状を見ることで、応募職種や同封書類が一目で分かるようにするためです。
郵送の際は、面接などに持参する場合と同様に、応募書類を全てクリアファイルに入れて、折れ曲がりやシワを防ぐようにしましょう。
送付状(添え状)の気を付けていただきたい点
基本的に、前述の送付状の書き方で紹介した内容と分量で十分であり、それ以上、盛り込む必要はありません。ただ、単に面接の機会を求める事務的な内容だけだと、そっけなく映ってしまう可能性もあります。そこで、その求人にどのような興味を持って応募したのかを、簡潔に述べる程度に書き添えるほうが、スマートに映るかもしれません。また、応募書類でのアピールが足りないと感じた場合は、自身の強みや経験・スキルなどを簡潔に記載することも、可能でしょう。
いずれにしても、度を越したり、不適切な内容を書き添えたりすると、逆効果になりかねません。そこで、送付状の気を付けていただきたい点をご紹介します。
過度なアピールをしている
本来、履歴書や職務経歴書に書くべきアピールを、送付状にまで盛り込むことで、どちらも読まなければならない採用担当者に、余計な労力を割かせることになってしまいます。特に、経験豊かな求職者は、経験やスキルをアピールしようとするあまりに、長くなるケースもあります。
希望条件を書く
送付状に年収や休日休暇、勤務地、勤務スタイルなど、就業に関する希望条件を書くことは不適切です。希望条件がある場合は、必要に応じて履歴書の「本人希望記入欄」等に記載しましょう。
送付状(添え状)についてのよくあるQ&A
応募書類はできるだけ折り目をつけないほうが読みやすくなります。したがって、応募書類も送付状も、折らずにそのまま送るようにしましょう。郵送用の封筒は、A4サイズの書類を折り曲げずに入れられる「角2サイズ」がおすすめです。
A4サイズ・4kgまでの荷物を、切手不要の全国一律料金で送ることができるレターパックは、追跡サービスで配達状況が確認できる点や、郵便ポストに投函できる点で、書類の送付に使われることが多くなりました。応募書類の送付に使っても、問題はないでしょう。
応募書類をPDFなどの形式で送る場合は、メールの本文に時候の挨拶、応募の経緯や自己PRなどを簡潔にまとめ、結びの言葉などで締めます。この場合、メール本文が送付状の役割を果たしているため、別途、送付状を添付する必要はありません。
送付状は、なるべく添えるほうが無難ではありますが、つけ忘れてしまったのであれば、わざわざお詫びの連絡を入れる必要はありません。そのようなことで思い悩まずに済むよう、送付状の存在を意識しておくと、よいかもしれません。
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組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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