転職活動で、履歴書と合わせて提出する「職務経歴書」は、履歴書で具体的に伝えることのできない経験・スキルや自己PRを採用担当者に伝えるために欠かせないものです。これから職務経歴書を作成するという方向けに、基本項目や書き方のコツ、職種別のテンプレートなどを組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。また、編年体式、逆編年体式、キャリア式のWord・Excel形式のテンプレートをダウンロードすることもできます。
目次
職務経歴書とは?記載する項目やサイズ、枚数は?
職務経歴書は、履歴書のような決められたフォーマットはなく、これまでの業務経験や入社後に活かせるスキルなどを自由に記載し、自分自身を採用担当者にアピールするためのものです。
職務経歴書の構成要素
一般的に、職務経歴書は以下のような項目で作成します。
・職務要約
・所属企業の概要(企業名・事業内容・資本金・売上高・従業員数・株式上場など)
・職務内容、実績
・活かせる経験、知識、技術
・自己PR
職務経歴書のサイズや枚数の目安
職務経歴書は、A4サイズ2枚程度にまとめるのが一般的です。ただし、豊富な実績やスキルを持つハイクラス人材の場合は、A4サイズ2枚ではこれまでのキャリアを十分に伝えきれない可能性もあります。
職務経歴書の目的は、自身の経験・スキルとアピールポイントを応募企業に的確に伝えること。そのため、2枚ではこれまでの経験を十分に伝えきれない場合は、読みやすさを意識していれば2枚以上になっても問題ありません。転職エージェントやスカウトサービスを利用している場合は、キャリアアドバイザーやヘッドハンターなど、それぞれの担当者に相談してみることをおすすめします。
履歴書と職務経歴書の違い
履歴書は、採用担当者が応募者の基本情報の確認を行うためのものです。そのため、記載する内容がある程度フォーマット化されており、氏名・連絡先・年齢・学歴・職務経歴・志望動機など、あらかじめ情報を記載する欄が用意されています。
一方、職務経歴書では、経験してきた職務内容や活かせるスキル・技術などを中心に記載します。「職務経歴」「自己PR」などに加え、自身のこれまでのキャリアを勘案しながら、採用担当者にアピールしたい項目を自由につけ加えて記載していきます。履歴書のように、写真や学歴、住所などは不要です。
なお、職務経歴書に「志望動機」を記載することは必須ではありません。履歴書の志望動機欄だけでは「十分に思いを伝えきれない」と感じる場合は、職務経歴書に志望動機の詳細を記述してもよいでしょう。ただし、志望動機は応募企業ごとに記載することが多いため、職務経歴書とは切り離す形で「志望動機書」を別途作成することをおすすめします。職務経歴書は汎用的に使える状態にしておき、志望度の高い企業に応募する場合のみ「志望動機書」を添付するという選択肢もあります。
3種類の職務経歴書の見本・テンプレートダウンロード
職務経歴書には一般的に、3つの形式があります。自身の職務経歴やどのようにアピールするかを考慮し、より効果的に伝わる形式を選ぶようにしましょう。
編年体式
これまでの経験を時系列で紹介していく形式です。
所属企業や部署、業務内容などを過去から順番に記載していくため、異動・転職の回数が少ない方に向いています。履歴書も時系列で職務経歴を記載するため、履歴書と照らし合わせて読むことができるというメリットがあります。
編年体式:見本入りテンプレートダウンロード(Word・Excel形式)
編年体式:見本なしテンプレートダウンロード(Word・Excel形式)
逆編年体式
編年体式とは反対に、直近の職務経歴から順番に記載していく形式です。
大きなメリットは、直近の実績を最初に記載できること。そのため、採用担当者に伝えたい経験・スキルが直近の業務に集中している場合は、より効果的にアピールすることが可能です。
逆編年体式:見本入りテンプレートダウンロード(Word・Excel形式)
逆編年体式:見本なしテンプレートダウンロード(Word・Excel形式)
キャリア式
これまでの経験を時系列ではなく、職務内容や分野ごとにまとめる形式です。
そのため、どのような経験を積んできたのか、どのようなスキルを持っているのかがより明確に伝わりやすくなります。キャリアチェンジの経験がある方や、転職回数が多い方に向いている形式です。
キャリア式:見本入りテンプレートダウンロード(Word・Excel形式)
キャリア式:見本なしテンプレートダウンロード(Word・Excel形式)
職務経歴書のサンプル見本と各項目の概要
職務経歴書の各項目について解説します。
【1】年月日・氏名
右寄せにして、提出する年月日(メール送信の場合は送信日、面接に持参する場合は面接の日)と氏名を記載します。
【2】職務要約
採用担当者が職務経歴書を読み込まなくても、人物像がすぐに伝わるようにするための項目です。ポイントを押さえて簡潔に書くように心掛けましょう。目安となるボリュームは3~5行程度です。会社名、職務・職種の内容と経験年数について、現在までの経歴を時系列でまとめていきます。
【3】職務経歴
履歴書とは異なり、詳細に職務経歴を記載します。ただし、経歴を羅列するだけではメリハリがなく、アピールポイントが伝わりにくいため、応募企業に関係が薄い経験はシンプルにまとめ、アピールしたい経歴は細かく記載するなど、といった工夫も必要です。
また、職務経歴は必ずしも時系列でまとめる必要はありません。直近の経験が最も応募するポジションに活かせるのであれば、新しい経歴からまとめるという方法もあります。
【4】活かせる経験・知識・技術
応募企業で活かせる経験はもちろん、スキルなども含めて記載することをおすすめします。例えば、「こんな機器を使用できる」「○○ソフトを操作できる」「Excelは統計関数の使用経験あり」「英語でのプレゼンテーションの経験」といった業務に直結するスキルを具体的に記載していきます。
【5】自己PR
自身の強みやこだわりによって得た成果を、自己PRとしてまとめます。応募企業が求める人材要件との接点を意識して作成しましょう。なお、職務経歴書の自己PRを先に作成し、短くまとめて履歴書に記載すれば、一貫性を保つことができます。
採用担当者が職務経歴書でチェックしているポイント
採用担当者は職務経歴書の主に2つの点をチェックしています。
経験・スキルが募集要件に合致しているか
応募者が経験してきた業務内容やレベル感が募集要件と合致しているかどうかも採用担当者はチェックしています。入社後の活躍がイメージしやすいよう、実績は固有名詞や数字を使って具体的に記載しましょう。
読みやすくまとめられているか
採用担当者は限られた時間の中で数多くの書類選考を行なっています。読み込みにくい職務経歴書は、採用担当者にじっくり読んでもらえないこともあるでしょう。適正な文字数で簡潔にまとめること、箇条書きや見出しなど読みやすい工夫を施すこと、採用担当者になじみの薄い社内用語や専門用語を多用しないといったことに気をつけましょう。
職務経歴書の書き方のコツ
職務経歴書の書き方のコツをご紹介します。
事前に経歴をまとめておく
職務経歴書に記載したい経験がたくさんある場合、そのまま書くだけでは読みにくくなり、特にアピールしたい経験・スキルや強みが採用担当者に伝わらない可能性があります。そのため、職務経歴書を書く前に、これまでに経験した業務、身に付けたスキルや技術、成果などをノートやテキストファイルにすべて書き出し、内容を整理してからまとめることをおすすめします。
読みやすいレイアウトを心掛ける
職務経歴書を読みやすくするための基本は、レイアウトをきちんと揃えること。日付や名前を記載する位置、「職務経歴」「自己PR」などの各項目の見出し、本文の配置などを整理・統一しましょう。また、パソコンで作成する場合、すべて同一のフォントで揃えると、統一感が出ます。
アピールしたい経験を強調する
ハイクラス人材の転職では、多くの経験や実績があるために時系列で職務経歴をまとめるだけでは、ポイントが分かりにくくなる可能性があります。応募企業が求めている人材要件を確認し、接点となる経験や実績を中心に、メリハリをつけてまとめることが大切です。
文章だけではなく箇条書きも活用する
職務経歴書は、「読みやすさ」「分かりやすさ」を意識して作成しましょう。例えば、売上実績、参加したプロジェクト、業務で活用した技術など、複数の項目を伝えたい場合は、シンプルに箇条書きにまとめるという方法もあります。
数字を効果的に使う
過去の実績について書く場合、「生産量30%増加」「売上3,000万円アップ」「5%のコストカット」「リーダー(メンバー30名)」「対前年比20%増加」など、具体的な数字を用いて表現すると、規模感やイメージが湧きやすくなります。
提出前のチェックリスト
職務経歴書は不備がないか以下の確認をしてから提出しましょう。
・記入漏れはないか
・記入日の日付が古くないか
・誤字脱字、書き間違いはないか
・応募企業や職種に合う内容になっているか
・履歴書と職務経歴書の記載にズレがないか
・誰が読んでもわかりやすい内容になっているか
・見出しや余白など見やすいレイアウトになっているか
職務経歴書の提出方法
職務経歴書の提出方法はいくつかあります。それぞれのケースごとに気をつけるポイントをご紹介します。
メール
メールで提出する際のポイントは以下の通りです。
・職務経歴書はPDFファイルに変換して、念のためパスワードを設定する
・ファイル名は「送信日+職務経歴書+氏名」など採用担当者が整理しやすいものにする
・ファイルサイズは2MB以下にする。超える場合はクラウドストレージサービスで送る
・メールの件名で用件を端的に伝える
・メール本文には「宛先」「氏名」「用件」「結びの言葉」「署名」の5つを簡潔に記載する
職務経歴書をメールで送る際の詳細は以下の記事で紹介しています。
郵送
郵送で提出する際のポイントは以下の通りです。
・封筒は「角2サイズ」がおすすめ
・油性ペンを使用し、宛名は省略せずに縦書きし、左下に「職務経歴書在中」と記載する
・宛先が「部署」の場合の敬称は「御中」、「役職」「担当者個人名」の場合の敬称は「様」、「採用担当」宛となっている場合は「採用担当御中」と明記する
・A4サイズで送付状を作成し、履歴書やポートフォリオなどのほかの応募書類がある場合も一緒にクリアファイルに入れてから封筒に入れる
・封筒の表面と書類の表面が同じ向きになるように封入する
・郵送料金不足が起こらないよう、郵便局の窓口で計量後に投函する
職務経歴書を郵送する際の詳細は以下の記事で紹介しています。
手渡し
面接などで書類を持参し、手渡しで提出する際のポイントは以下の通りです。
・履歴書やポートフォリオなどのほかの応募書類がある場合も一緒にクリアファイルに入れてから封筒に入れ、「応募書類在中」と記載する
・雨天の際はポリ袋などで汚れ防止の対策をとっておく
・面接の際に封筒から出し、封筒の上にクリアファイルを重ね、書類の向きを相手に向けて手渡す
職務経歴書を手渡しで提出する際の詳細は以下の記事で紹介しています。
採用管理システム(ATS)
企業が個別に導入しているATS(採用管理システム)で提出する際のポイントは以下の通りです。
・職務経歴書をPDFファイルに変換する
・企業が指定するATSにアクセスし、必要項目を入力してPDFファイルをアップロードする
【職種別】職務経歴書のサンプル例文
職種別の職務経歴書のサンプルをご紹介します。職務経歴書作成の参考にして下さい。
IT系
機械・化学系
半導体・電気・電子系
医療系
営業系
事務系
企画・マーケティング系
金融系
その他
職務経歴書に関するQ&A
職務経歴書に関するよくある質問をご紹介します。
職務経歴書にお勧めのフォントと文字サイズはある?
一般的にビジネス文書で使用されることの多い「明朝体」フォントを基本とし、文字サイズは読みやすさを重視して11ポイント程度を目安とします。
転職回数が多い場合はどのように書いたら良い?
職種・業務内容別に書く「キャリア式」のテンプレートを用いて、「キャリアの一貫性」や「専門スキルの高さ」をアピールしましょう。転職の理由や目的をポジティブに伝えられるよう意識するようにしてください。
休職であることを職務経歴書に書く必要がある?
企業は休職期間も含めて求職者のキャリアを知りたいと考えています。休職期間も含めた職歴を正確に記載するようにしましょう。詳細は以下の記事で紹介しています。
職務経歴書は市販のものでもいい?
職務経歴書は履歴書と違って書式は自由です。市販のものを使用しても問題ありません。詳細は以下の記事で紹介しています。
職務経歴書を作成する際の関連ノウハウ記事一覧
以下に職務経歴書作成の際に活用できる記事をまとめました。
ぜひ参考にしてみてください。
職務経歴書の基本の書き方 (3種類テンプレート付) | 職務要約の書き方 | 職務内容の書き方 |
活かせる経験・知識・技術の書き方 | 資格の書き方 | 自己PRの書き方 |
志望動機の書き方 | 退職理由の書き方 | 役職の書き方 |
履歴書と職務経歴書の違い | 封筒の書き方 | 送付状(添え状)の書き方 |
複数社の経験がある場合の書き方 | 転職回数が多い場合の書き方 | PCスキルの書き方 |
職務経歴書のサイズと枚数 | フォントの選び方 | 用紙の種類 |
粟野友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
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